車を所有している方は、加入が義務付けられている自賠責保険の他に、自分で手続きをする任意保険にも加入しているでしょう。
車を売却する際は、今後も車を運転するか、いつから運転するかによって任意保険の契約内容を変更しなければなりません。
任意保険には、解約・契約中断・車両入替の3種類の手続きがあります。そのうち、車を売却した後「しばらくの間は車に乗らない」という場合に有効な契約中断の手続きについて詳しく解説していきます。
任意保険の手続きは3種類ある
車を売却する場合、任意保険は保険の契約者が自分で保険会社と連絡を取り合って、所定の手続きを行わなければなりません。この時、手続きの種類としては解約・契約中断・車両入替の3種類が考えられます。
以下では、この3種類の手続きについてと契約中断の内容と手続きの流れ、必要書類などを説明します。
車を売却する予定のある方は、自分がどの手続きをする必要があるのか確認しておきましょう。
車の任意保険について
最初にそもそも任意保険とは何なのかということについて解説します。
車の保険には、加入が義務付けられている自賠責保険と、自由に加入できる任意保険の2種類があります。両者を比較しながら任意保険の特徴を確認していきましょう。
任意保険は、加入が法的に義務付けられている自賠責保険ではカバーし切れない分を補償するための保険です。民間の保険会社で扱っており、そのサービスや補償の内容は会社やプランによって異なります。
交通事故によって発生する損害は大きく、保険による補償がなければ賠償できないことも珍しくありません。自賠責保険でもある程度はカバーできますが、それだけでは不十分であることも多いです。そのため、自賠責保険の補償に任意保険の補償を上乗せするのが一般的です。
もちろん加入するかどうかは自由ですが、加入しておけば自動車事故で自分だけが怪我をした場合や、物損が生じた場合も補償されることになります。
自賠責保険と任意保険の最も大きな違いは、前者が強制加入で後者は加入する・しないが自由である点です。
また、自賠責保険は補償金額に上限がありますが、任意保険はプランによっては上限なしの無制限に設定することも可能です。
また、自賠責保険はあくまでも「車」に対する保険であり「人」に対するものではないので、その車を廃車にしなければ解約はされません。つまり、車の売却時に自賠責保険の解約手続きは不要ですが、保険の名義変更の手続きは必要になるということです。
一方、任意保険は「人」に対する保険のため、車の売却時は解約などの手続きが必要になります。
車を売却する際、その車がお店側によって転売される場合は、自賠責保険の名義変更が必要です。廃車になる場合は前述したように解約となりますが、いずれにせよ買取店側で全て手続きを行ってくれます。
自賠責保険の手続きは、原則的には車のオーナーが自分で損害保険会社などに直接足を運んで手続きを行いますが、多くの場合は車の販売店で代行してくれます。そのため、複数回車を乗り換えた経験がある方でも、自分で自賠責保険の手続きをしたことがある方は少ないでしょう。
ただし、これは中古車販売店などの専門業者に車を売却した場合の話です。個人間売買によって車を譲渡した場合は、車の名義変更とあわせて、自賠責保険の手続きも車の新・旧オーナーが連絡を取り合いながら速やかに済ませる必要があります。
一方、任意保険は売却や廃車などの理由で車を手放した場合、車の持ち主が自分で保険会社などに赴いて手続きを行います。具体的には、解約、契約中断、車両入替のいずれかを行うことになるでしょう。
車の売り時はいつ?タイミングを誤ると損することも!
任意保険の解約について
車を売却した後、今後車を購入したり、自分で運転する予定がない場合は任意保険を解約することになります。
解約すると、契約していた内容は完全にリセットされ白紙に戻ると考えてください。そのため、仮にその後新しく車を運転することになり、新たに任意保険に加入することになった場合は保険会社と新しく保険契約を取り交わすことになります。
ここで注意したいのが、任意保険は車を乗り換える際に「等級」の引き継ぎができるという点です。
任意保険には等級というランク付けが存在します。これは、事故を起こさずにいると優良ドライバーとしてランクアップし、保険料も安くなるというものです。
しかし、任意保険契約を一度解約してしまうと、この等級もリセットされてしまいます。一方、契約中断や車両入替の手続きを行うと、等級を保ったままで別の車に乗り換えることができます。
また、等級は同居している家族への引き継ぎもできるので、自分自身は車を運転しないとしても、それまでの契約内容を家族のために活用することも可能です。
任意保険の契約中断について
任意保険の契約中断とは、文字通り任意保険の契約を一度「中断」するものです。10年以内にまた車を運転することになり任意保険を再契約することになった場合は再び契約を「再開」できます。
契約中断をすることで、中断する前の等級を引き継ぐことが可能です。任意保険を一度解約してもう一度新規で契約すると、本来なら等級が6等級からのスタートになります。しかし、この契約中断を活用すれば、中断前に等級が高かったドライバーはその等級のままで保険を再開できるのがこの制度の長所です。
反対に言えば、等級が7等級以下のドライバーや免許証を返納したなどの理由から今後は一切車に乗らない場合は、解約しても問題ないでしょう。契約中断にするか解約にするかは、状況を見て判断してください。
もしも任意保険の契約中断をする場合は、中断証明書を必ず取得するようにしましょう。
任意保険の契約中断の手続きを進めるためには、中断証明書の発行が必須となります。
中断証明書は任意保険を再開する際に必要になる書類です。この書類の有無が再開時の等級に影響してくるので、覚えておきましょう。
例えば、中断証明書がない状態で任意保険契約を再開すると、必ず6等級からのスタートになります。一方、中断証明書があれば中断した時点の等級からの再スタートになるので、その等級が7等級以上であれば保険料も割引率の高い有利な状態から始められるでしょう。
前述しましたが、任意保険の契約を中断する場合は中断証明書の発行が必要です。しかし、中断証明書を発行してもらうには、以下の3つの条件に該当しなければなりません。
①中断する時点での等級が7等級以上である
②保険契約の解約日あるいは満期日から13カ月以内に申請している
③廃車や譲渡の手続きが完了しているか、盗難・災害・車検切れなどの理由で契約車両がすでに手元にない状態であること
特に②と③については、車を正式に手放すタイミングと契約中断の手続きをするタイミングの兼ね合いが大切です。これらの条件に該当しないと、中断証明書は発行できないので注意しましょう。
中断証明書の発行の流れ
中断証明書を発行する場合、以下の流れで手続きを進めていきましょう。
- 車を売却あるいは廃車にする
- 売却先などから「譲渡証明書」を交付してもらう
- 契約中断手続きのための必要書類(保険証券など)を用意する
- 必要書類を持って保険会社で手続きを行う
保険会社に中断証明書の発行を依頼すると「中断証明書取得依頼書」が届くので、これに記入をして必要書類とワンセットにして郵送するとおよそ1~3週間で中断証明書を入手できます。
譲渡証明書とは、旧所有者から新所有者へ車が譲渡されたことを証明するための書類です。中古販売店に車を売却した場合は、販売店が用意してくれます。
もし個人間売買で車を譲渡・売却した場合は、運輸(支)局あるいは国土交通省のサイトから所定の用紙を入手し、記入・作成をしましょう。
保険証券とは、保険加入時に保険会社から送られてくる任意保険証券(自動車保険証券)のことです。ここには契約内容が詳しく記載されています。
保険証券は契約中断のみならず、契約更新や保険金の請求時にも必要になる重要書類です。最近はペーパーレス化が進んだことで紙の証券は希望者にしか交付されないこともあるので、自分の場合はどうか確認しておきましょう。
任意保険の契約中断の手続きで確実に必要になる書類は、譲渡証明書と保険証券の2つです。保険会社によってはこの2つ以外にも書類の提出を求められることもあるので、前もって確認しておきましょう。
譲渡証明書と保険証書以外に必要になる書類として一例を挙げると、まず譲渡(売却)した車両の車検証のコピーを求められることがあります。車検証は基本的に車のダッシュボード等に常時保管しておくものなので、用意するのは難しくはないでしょう。
また、普通自動車の場合は「登録事項等証明書」が必要になることもあります。自動車の登録内容が詳しく記載された書類で、「登録証明」と呼ばれることもあります。
軽自動車の場合は「検査記録事項等証明書」となりますので、注意してください。
「登録事項等証明書」あるいは「検査記録事項等証明書」は、車の所有者だけが申請・交付可能です。
これらの書類に加えて、車両を売却した際の売買契約書のコピーが必要になることもあります。
車の売り時はいつ?タイミングを誤ると損することも!
車両入替について
最後に、車を売却した後に新しい車を購入する際に行う「車両入替」の手続きについて、その流れや条件などを見ていきましょう。
古い車の処分に伴って別の車に乗り換える場合は、車両入替の手続きをします。
車両入替は任意保険の対象となる車両の情報だけを変更するというものです。自賠責保険の場合は、車両ごとにかけられている保険の名義変更が必要になりますが、任意保険はその反対で保険に入っている車の内容だけを変更するので簡単です。
車両入替なら、買い替え前の車の等級を引き継げるというメリットもあります。
任意保険の車両入替の手続きにも一定の条件があるため、注意が必要です。当該車両の「所有者」と「用途車種」がこの条件に該当しないと車両入替はできません。
具体的な条件の内容は以下の通りです。
- 所有者は、買い替える前の車の所有者と同一人物であること
- 所有者が記名被保険者(車を主に運転する人)であること
- 所有者が記名被保険者の配偶者であること
- 所有者が記名被保険者またはその配偶者の同居の親族であること
- 契約期間が1年以上の場合で、所有者がディーラーやリース会社であること
- 自家用普通乗用車である
- 自家用小型乗用車である
- 自家用軽四輪乗用車である
- 自家用軽四輪貨物車である
- 自家用小型貨物車である
- 自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン超2トン以下)である
- 自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン以下)である
- 特殊用途自動車(キャンピングカー)である
これらの条件は保険会社によって異なることがあるので、手続きの前に一度確認しておきましょう。
自分の車が車両入替できる条件に該当するかどうかを確認したら、いよいよ保険会社での手続きとなります。大まかには、次に乗る車の納車日を決めて、その車の車検証の準備ができたら保険会社に連絡をするという流れになります。
車両入替の手続きは、新しい車が納車される前に行いましょう。そうしないと、納車されてから保険の手続きが済むまでの間、万が一事故に遭遇しても任意保険が適用されなくなります。
また、車両入替ができる期間は決まっていることが多いので、できるだけ早めに手続きをするか、前もって期限を確認しておくことをおすすめします。その確認をした時に、必要書類や具体的な手続き方法を聞いておくと良いでしょう。
具体的な手続きの流れは保険会社によりますが、車検証のコピーを郵送で送る場合やインターネット上の手続きだけで完了できる場合などがあります。
個人間売買の場合の任意保険の手続きは?
個人間売買で車を譲渡・売却する場合は、車の新しい所有者が運転する時点で任意保険の手続きが終わっているのがベストです。
単なる車の引き渡しや運搬でも、公道を運転する以上は事故に遭遇する可能性があります。その時に保険の手続きが済んでいないと、補償を受けられない恐れがあるからです。
自動車は、ひとたび事故に遭遇すると修理費用が何十万もかかったり、高額の賠償を請求されたりすることも珍しくありません。そのため、個人間の売買であっても、保険の手続きはきちんと進めておきましょう。
ポイントは車の譲渡が決まった段階で、前の持ち主が新しい持ち主にすぐに車検証のコピーを送っておくことです。その段階で名義変更手続きが済んでいない、名義変更前の車両でも任意保険に加入することは可能です。ただしその後、名義変更の手続きが改めて必要になります。
もしも新しい持ち主が車を乗り換えるのであれば、車両入替の手続きとなります。ただし、車両入替を行うと、乗り換える前の車は任意保険の補償対象外になるので注意しましょう。