車を所有している方の多くが任意保険に加入しています。

実際に損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」によると、自動車保険の「対人賠償保険」は全国で75.4%の方が「対物賠償保険」は75.5%の方が加入しています。

また、もっとも加入率が高い大阪府では8割を超える方が自動車保険に加入しています。

しかし、任意保険は保険会社が多く、内容も様々なため「どのような保険で、何を補償してくれるか分からない」と悩む方もいるでしょう。

この記事では、車の任意保険についての概要と全損状態になった場合の補償内容について解説します。

車の任意保険に加入して全損事故を補償しよう

車は購入した際にもしもに備えるため、自賠責保険という強制保険に加入します。また、多くの人はそれにプラスして任意保険にも加入します。

車を走行させる場合、無保険状態だとトラブル時のリスクが非常に大きいでしょう。例えば、無保険で車を運転していて衝突事故を起こし、相手を怪我させてしまったという場合、数千万円や数億の賠償責任が発生する可能性もゼロではありません。

賠償金を抱えたままの生活は困難なため安全運転はもちろん、任意保険への加入も検討しましょう。

車の任意保険とは?

車の任意保険とは?
ここからは、車の任意保険について詳しく解説していきます。

車の保険には、強制的に加入する自賠責保険と任意で加入する任意保険があります。両者は義務や補償内容などが大きく異なるため、違いを押さえた上で使うタイミングを理解しましょう。

任意保険の加入は自分の意志で決められる

任意保険は加入が必須ではないため、自賠責保険でカバーできない範囲を補償できるよう、自分で条件を選んで加入します。

例えば、万が一歩行者を怪我させてしまった場合に備えたい場合は対人賠償を手厚くした保険を選ぶ。事故で周辺のものを壊してしまった場合に備えて対物賠償保険をつけるなどが挙げられます。

また、車両保険をつけると事故で自分の車が全損状態になった場合にも補償を受けられます。

このように任意保険は万が一の時に急な出費を防ぐ役割があります。「なかなか貯金ができない」「リスクに備えたい」と考えている方は任意保険の加入を検討しましょう。

自賠責保険との違い

自賠責保険と任意保険の違いは「加入義務」「補償対象」です。

自賠責保険は交通事故による被害者を救済ことを前提に、加害者が負う経済的負担を補う目的の保険です。自賠責保険では被害者に対する「人身的な補償」を行います。

補償される具体的な金額は以下の通りです。

傷害の場合…120万円まで
死亡の場合…3,000万円まで
後遺障害の場合…4,000万円まで

一方、任意保険では相手に対して「人的物的補償」を行え、かつ「自身の補償」も行えます。さらに、自分で補償金額を設定できる点も特徴です。

事故で人的被害を出した場合、莫大な賠償金が発生し場合によっては自賠責保険で賄えない可能性もあるでしょう。そのため、自賠責保険とあわせて任意保険に加入する方が多い傾向にあります。

なお、自賠責保険は原動機付自転車(原付)を含む、全ての自動車に加入義務があります。近年流行している電動キックボードも原動機付自動車に該当するため、自賠責保険への加入対象です。

任意保険に加入するメリット

任意保険に加入するメリット
ここからは、任意保険に加入するメリットを3つ紹介します。

任意保険に加入すると、事故発生時の金銭的負担を軽減するだけでなく、事故対応のサポートもしてもらえるため不安を軽減できます。

事故後の対応がスムーズになる

任意保険に加入すると、事故後の対応をスムーズに行えます。

事故後は保険会社が介入し対応や相手との示談交渉、保険料の交渉を行います。そのため、事故後でパニックになっていたとしても正しい対応をサポートしてもらえるでしょう。

また、万が一車が自走できない状態になった場合でも、ロードサービスを任意保険でつけているとレッカー車の手配も行えます。

事故を起こした場合、どのように行動すればいいかわからず戸惑いますが、保険会社のサポートを受けることで、適切な対応を迅速に行えるでしょう。

万が一の事故に備えられる

任意保険に加入すると自賠責保険でカバーできない範囲を補償してもらえます。

自賠責保険では被害者の人的補償のみ行います。しかし、被害者から車の修理費用を請求される可能性もあるでしょう。その場合、任意保険に入っていなければすべて自分で支払うことになります。

任意保険に入っていると自賠責保険で払いきれない金額の補償が可能です。また、任意保険では自身の怪我や車の損傷に対しても補償をつけられるため、様々なリスクに備えられるでしょう。

自分で補償内容を決められる

任意保険のメリットとして、自分で補償内容を決定できる点が挙げられます。

保険会社によって補償内容や特約の種類が異なるため、自分が求める内容を選択しやすい特徴があります。

新車を運転する場合につけられる新車特約をつけたり、自然災害で手厚い補償を受けたい場合の特約など、様々なオプションがあります。

自分が不安に思う点をカバーできる保険商品を選択しましょう。

任意保険は車の運転以外でも補償を受けられますか?
歩行中に自動車にはねられた場合に補償される特約や、自転車で歩行者に接触してしまった場合に賠償金の補償が可能な特約もあります。様々な特約があるため、契約時や更新時に担当者に確認してみましょう。
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任意保険における全損状態とは?

任意保険における全損状態とは?
ここからは、任意保険を使用する時に知っておきたい「全損」の定義を紹介します。

車が動かない状態を一般的に全損と表現しますが、任意保険における全損は2つに分類されていて、それぞれ意味が異なります。状態によって取るべき行動も変わってくるため、理解を深めましょう。

物理的全損:修理不可能な損傷

物理的全損は修理が不可能な損傷を受けた車を指します。

例えば、玉突き事故で車が前後から押し潰されてしまった、衝突で車の前方が潰れたなどが挙げられます。

修理のしようがないと整備工場や保険会社の担当者が判断すると、全損として保険金を受け取れたり他の補償を受けられたりします。

経済的全損:時価額を上回る修理費用

経済的全損は車の時価額よりも修理にかかる費用が高い場合を指します。

例えば、車の時価としては80万円。修理すれば乗れる状態だが修理は総額で120万円かかるという場合です。

経済的全損は修理するよりも買い替えを検討した方がお得なケースもあります。

車の全損に対する補償は任意保険で

車の全損に対する補償は任意保険で
ここからは、任意保険を使用する際に知っておきたいポイントを3つ紹介します。

車の全損に対して補償される金額は「時価」で判断されるため、思ったよりも補償を受けられない可能性があります。

普段から自分の車の価値をチェックしておくことが大切です。

受け取れる保険金額は時価額が基準

車が全損状態になった場合、任意保険で受け取れる保険金は時価額です。

保険に入っていれば「車を購入した時の金額が支払われる」とイメージする方も多いですが、実際は事故に遭う前の車の価値が補償されます。

時価額は車が古くなるにつれて下がるため、今の金額を知りたい場合は更新時に受け取る書類を確認しましょう。

車が盗まれて見つからない場合は全損扱いになる

車が盗難被害にあった場合も全損扱いになり、保険金を受け取れます。

盗難被害に遭うと車が手元にないことから修理も買い替えもできず悩みます。その場合は盗難届を出し、車が見つかるのを待ちながら保険金を受け取る準備も行いましょう。

参考までに、盗難届を出す場合は下記の流れで進めます。

  1. 盗難被害に遭った日時や場所などを整理する
  2. 車検証を用意して最寄りの警察署へ行く
  3. 警察で盗難届の提出と聞き取りを受ける
  4. 盗難届が受理されると「受理番号」を渡される

盗難届を出した時に受け取る「受理番号」は、様々な手続きに必要なため、保管しておきましょう。

なお、保険金を受け取ると車の所有権は保険会社に移ります。そのため、保険金を受け取った後に車が見つかった場合は保険会社に受け取った保険金を返還し、車を受け取ります。ただし、保険金の支払いから60日が経過するとこの決まりは無効になります。

【注意】車が古いと時価額が低くなり保険金も少なくなる

車が全損状態で任意保険を使う場合、時価の把握が欠かせません。

年式が古い車では、自分に非がない「もらい事故」で相手の対物保証を受ける場合でも時価以上の保証は受けられません。そのため、必要な修理費用に届かず経済的全損になる可能性があります。

その場合は、新たに資金を用意したり貯金を切り崩したりすることになるので注意が必要です。

経済的全損と言われましたが、車を手放したくない場合は修理をしても大丈夫ですか?
経済的全損であれば修理後の走行は可能です。ただし、車の時価額よりも高額な修理費用がかかることから、買い替えの方が費用を抑えられる可能性もあります。修理費用と車購入どちらが適しているか見極めが大切です。

任意保険でも全損が補償されないパターン

任意保険でも全損が補償されないパターン
ここからは、任意保険に加入していても補償不可能なケースを6つ紹介します。

保険料を支払っているため事故の際は必ず補償されると考える方も多いですが、自分に明らかな過失がある場合や自然災害の場合は難しいでしょう。

飲酒や薬物を服用しての運転

飲酒運転や薬物を服用して運転した場合、違法運転にあたります。そのため、保険金の支払いは行われません。

違法運転をはじめとした「自分に明らかな過失がある場合」は保険金を受け取れないため絶対に避けましょう。

なお、自分が違法運転の車にぶつけられ被害者となった場合は補償を受けられます。

無免許での運転

無免許運転で事故を起こした場合も違法運転に当たるため、保険金は支払われません。さらに、無免許運転には下記の罰則があります。

3年以下の懲役または50万円以下の罰金
違反点数:25点

無免許の定義としては「運転免許をそもそも取得していない人」「運転免許に効力がない時に運転する人」「原付免許のみの場合に普通車を運転する人」などがあげられます。

なお「免許を忘れてきてしまった」という場合、反則金の支払いが求められます。

いずれにせよ免許を持っていない状態での運転は違法にあたるため、必ず免許を携帯して運転しましょう。

父母・子供・配偶者が相手の事故

事故の被害者が父母や子供配偶者の場合、任意保険の補償を受けられません。

任意保険における対人賠償・対物賠償は他人に対して支払われる保険です。例えば「自宅のカーポートに車を止める際、親の車に自分の車をぶつけてしまった」という場合、補償は受けられません。

この場合は、自身の車両保険を使い修理を行います。範囲対象は保険会社によって少しずつ異なるため、契約時に確認しましょう。

地震・噴火・津波による損害

自然災害が原因の全損も補償は受けられません。具体的には、地震・噴火・津波が挙げられます。

自然災害の場合、一度に極めて大きな損害が発生する可能性があるため、保険料の設定が困難です。そのため、補償はなく自身で資金を用意することになります。

しかし、地震・噴火・津波においては別途、特約をつけることで一時金が支払われるものもあります。この特約は保険会社ごとに少しずつ名称が異なりますが「地震・噴火・津波危険車両全損時一時金特約」といった名前で扱われることが多いでしょう。

近年は日本全国で地震に対するリスクが高まっています。自然災害に備えたい場合は特約の検討もおすすめです。

故意に引き起こされた事故

故意に事故を引き起こした場合も補償は受けられません。保険金を目的とし事故を起こした場合が挙げられます。

なお、故意の事故については、犯罪防止の観点から対人賠償・対物賠償も支払われません。

60日以内に報告がなかった事故

任意保険の補償を受ける場合、事故から60日以内に報告が必要です。60日を超えると補償が受けられなくなります。

通常は事故が起こると警察や救急車などとあわせて保険会社にも連絡を行います。特に全損の場合はすぐに保険会社に連絡をし、修理か廃車かの判断を行うことが多いでしょう。そのため、ほとんどの方が60日以内に報告することになります。

事故による軽微な傷や故障の場合、修理を行わない方も見られますが乗っているうちに傷の範囲が広がったり、思いがけないタイミングで大きな損壊につながる可能性もあります。

事故を起こした際は、必ず保険会社に連絡することが大切です。

台風による損傷は任意保険の補償対象ですか?
台風は任意保険の補償対象です。しかし、補償を利用すると1等級ダウンを受けるため修理金額と保険の値上がり額を照らし合わせて決定しましょう。

お得な任意保険を見つけるなら複数社で見積もりを取るのがおすすめ

お得な任意保険を見つけるなら複数社で見積もりを取るのがおすすめ
任意保険を選ぶときは、複数の保険会社で見積もりを取るのがおすすめです。

保険商品は内容がどの保険会社も似ていますが、細かなサービス内容や組み合わせなどが少しずつ異なります。保険の一括見積もりを活用したり、気になる保険会社に問い合わせたりして、5社程度を比較してから決定しましょう。

なお、保険会社を選ぶ際は下記のポイントを意識しましょう。

  • 代理店型かダイレクト型か
  • 事故対応の質
  • ロードサービスの有無
  • 口コミ

保険会社は間に代理店が入ってやり取りを行う代理店型か、保険会社の専門スタッフが対応するダイレクト型があります。

代理店の場合は、担当者と対面でやり取りを行える反面、保険料がやや高くなる傾向があります。

ダイレクト型の場合は、オンラインや電話で対応してもらう形です。事故後は電話でのやりとりのため、人によっては「対応が物足りない」と感じることもあるでしょう。しかし、保険料を抑えられる点が大きなメリットです。

また、ロードサービスがつけられるかも確認したいポイントです。事故以外でのバッテリー上がりや修理時の車両搬送などができるかも確認しておきましょう。

また、保険会社の評判を口コミでチェックする方法もおすすめです。実際に加入している方の声を参考にしましょう。

【参考】全損車の扱いについて

【参考】全損車の扱いについて
車が全損状態の場合、任意保険を使って修理を行うか廃車にするかと選択肢が分かれます。物理的全損で明らかに修理できない場合は廃車手続きを取りましょう。

廃車手続きとは、車を解体して陸運支局に書類を提出する流れを指します。しかし、解体は自分で行えないため解体業者に依頼するか廃車専門業者に依頼して解体から書類提出まで代行してもらうことが必要です。

なお、保険金を受け取ったり廃車を決めたりする場合は保険会社に相談しながら進めましょう。所有権が保険会社に移っているにも関わらず手続きを進めようとするとトラブルの原因になります。

保険会社に相談すると、適切な方法や必要な流れを教えてくれるためスムーズに対処できるでしょう。

まとめ

①車の保険は自賠責保険と任意保険がある
②自賠責保険では最低限度の補償しかされないため任意保険への加入がおすすめ
③任意保険は相手だけでなく自分の損害も補償できる
④違法運転や自然災害、故意の事故の場合などは任意保険で補償を受けられない
⑤任意保険の内容は各会社で少しずつ異なるため、複数社で見積もりをとって信頼できるところを選ぶのがおすすめ

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