車を売却した場合は、名義変更(移転登録)の手続きが必要です。この手続きは、道路運送車両法によって期限が定められています。

また、早めに名義変更を済ませないと前の持ち主に自動車税の納税義務が課せられるなどのトラブルに発展しかねません。

これらを踏まえて、名義変更手続きはいつまでに終わらせるといいのか、手続きの進め方や注意点について解説します。

車を売却する時の名義変更について

この記事では、車を売却する場合の名義変更(移転登録)手続きについて解説します。

いつまでに手続きを済ませるべきなのか、また車の名義が自分ではなく他人名義になっていた場合の注意点なども見ていきましょう。

車の名義変更について

車の名義変更について
最初に車の名義変更とはどういう手続きなのか、その内容について見ていきましょう。

車の名義変更とは何ですか?
車の名義変更(移転登録)は、車を売却したことにより、車検証の所有者名義が変わる場合に行われる手続きのことです。
買取店に車を売却した場合は、お店側で手続きをしてくれますが、個人売買の場合は売り手側と買い手側がそれぞれ自分で手続きを行うことになります。
車の名義変更とは?

車の名義変更と呼ばれる手続きは、正式には「移転登録」といいます。

車の名義人は、その車の法律上の正式な持ち主のことで、車両の運転や管理に関する責任を負います。その持ち主を変更することが、名義変更になります。

原則、名義変更は「15日以内」に行うこと

まず大原則として、車の持ち主が変わった場合は名義変更(移転登録)の手続きを15日以内に行われなければなりません。

これは、道路運送車両法第13条第1項で定められており、名義変更しないまま15日を経過した場合、50万円以下の罰金が科されることになっています。

名義変更を怠るとどうなる?

名義変更を怠るとどうなる?
車の名義変更を怠った場合、前述した処罰を受けることだけではありません。どのようなリスクが生じるのか見ていきましょう。

自動車税を請求される

車の持ち主(名義人)が変わったのにも関わらず、名義変更の手続きをしていないと、自動車税の納税義務が前の持ち主に課せられることになります。

自動車税は、毎年4月1日時点での車の名義人に納税義務があります。そのため、車の譲渡(売却)に伴う名義変更手続きは、道路運送車両法に基づき「15日以内」に行うことと、「その年の3月末まで」に行うことがベストだとされています。

自動車税に関しては、もしも3月末までに名義変更手続きが終わらないようであれば、車の新旧所有者の間でどちらが自動車税を支払うのか事前に決めておく必要があります。

トラブルに巻き込まれる

車が法律違反をしたり、事故を起こしたりした場合、まず責任を問われるのはその車の名義人です。そのため、車を譲渡したのにも関わらず、名義変更を行わなかった場合、車の前の持ち主が違反金や慰謝料を請求される恐れがあります。

もちろん、実際にその車を運転していたのが別人であれば、最終的には前の持ち主の責任は問われないかもしれません。しかし、トラブルに関わっていないことを証明するために、警察署に出頭したり、時間や手間がかかったりする可能性があります。

車庫飛ばしを疑われる

「車庫飛ばし」とは、車庫証明を取得していない場所で、車を日常的に保管している状態のことをいいます。

車庫証明の取得は、所轄の警察署で手続きを行うので、警察に届け出た保管場所とは違う場所に車を保管しているのは法律違反です。

車の保管場所は、車の持ち主の自宅から2キロ以内の範囲に設定しなければなりません。しかし、車を譲渡したにも関わらず名義変更手続きを行っていないと、車の保管場所が名義人の自宅から半径2キロ以内の範囲から外れてしまうことも考えられます。

こうなると車庫飛ばしを行ったことになり、刑法第157条「公正証書原本不実記載等」の罪に該当します。車庫飛ばしは20万円以下の罰金と定められているため、名義変更を怠ることで法律違反のリスクまで抱えてしまうことになるでしょう。

中古車販売店などの買取業者に車を売却した場合は、名義変更の手続きもきちんと行ってくれるので安心です。しかし、個人間売買などで車を譲渡する場合は、こうしたトラブルに注意しましょう。

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車の売却先によって名義変更の手続きは異なる

車の売却先によって名義変更の手続きは異なる
車の名義変更の手続きは、原則的には車の持ち主が自分で行うものですが、販売店などの業者に車を売却する場合は手続きを代行してもらえるのが一般的です。そうなると全て業者任せになるので、名義変更の手続きのことを意識することもあまりないかもしれません。

一方、個人間売買で車を売買する場合は、売買契約の当事者が自ら名義変更の手続きを行う必要があります。そのため、手間がかかったりミスやトラブルが発生したりする可能性があります。

個人間売買の場合、名義変更などの書面上の手続きだけを専門家に依頼することもできるので活用してもいいでしょう。

車の名義変更の期限について

車の名義変更の期限について
車の売買や譲渡に際して、名義変更の手続きはいつまでに済ませるといいのでしょうか?

その一般的な判断基準について改めて確認しましょう。

車の名義変更はいつまでに済ませるべきですか?
道路運送車両法上、車の名義変更は、実際に持ち主が変わってから15日以内に手続きを済ませなければなりません。また、自動車税が課せられるタイミングのことを考慮すると、その年の3月末までには完了させておくのがベストです。
「15日以内」で「その年の3月より前」に済ませておくこと

車を売却した場合、名義変更の手続きは、道路運送車両法上の期限である「15日以内」に済ませることと、自動車税が課せられるタイミングを考慮した「3月末まで」に済ませることが大切です。

車の持ち主が実際に変わってから、15日以内に名義変更手続きを済ませないと法律違反になります。また、自動車税は金額が数万円に及ぶ上に、機械的に4月1日時点の名義人に課せられます。

もしも名義変更を怠ったままだと、車の前の持ち主は車を既に手放して所有していないのにも関わらず、数万円の自動車税を請求されることになるでしょう。

これが原因でトラブルに発展することもありますので、車の売却に伴う名義変更は3月中に済ませましょう。

なお、車検の有効期間が間近に迫っている車などは、自動車税の問題とはまた別に名義変更のタイミングを見計らわなければいけませんので、車の買い手側とよく相談してください。

自動車税について注意すべきこと

自動車税について注意すべきこと
車を売買する際の名義変更手続きは、少なくとも3月末までには済ませておいたほうがよいことが分かりました。この点についてもう少し掘り下げて、手続き時の注意点を確認しましょう。

3月末ギリギリだと名義変更が間に合わないこともある

ここまで説明した通り、自動車税は毎年4月1日時点の名義人に課税されます。そのため、3月末までに名義変更が完了しないと、車の前の持ち主に納税義務が発生するので注意が必要です。

しかし、中古車買取店などに車を売却する際、3月末日ギリギリまでに車を持ち込めば大丈夫かというと、そうではありません。

3月というのは中古車販売店の繁忙期にあたるため、車の引き渡しなどが3月中に完了しても、その後の名義変更手続きが4月にまたがってしまうケースもあります。

名義変更手続きと一言でいっても、実際には車庫証明を取ったり、印鑑証明を用意したりする必要があります。また、手続きを行う運輸(支)局は平日しか営業していないなどの事情から、全ての手続きを終えるまでには最低1週間は見ておかないといけません。

もちろんこの時、道路運送車両法上の名義変更の期限である15日という日数も計算に入れておかなければならないので、車を譲渡する際は、余裕をもってスケジュールを組み、手続きを進めていくようにしましょう。

旧所有者は自動車税を納めているか

車の名義変更手続きを行う際、その車の自動車税が納められているかどうかの確認は行われません。納税証明書の提出なども必要ないため、車の前の持ち主が自動車税を滞納している状態でも、名義変更は進められます。

もしも車の旧所有者が自動車税を未納・滞納している状態だと、後日どのようなトラブルが発生するのでしょうか?

まず、名義変更後に車の新しい所有者に未納分の税金の督促が届くことが考えられます。さらに、そのまま放置すれば、最悪の場合、財産の差し押さえなどに至るでしょう。

また、自動車税を滞納していないかどうかは車検の際にもチェックされます。未納・滞納であることが分かれば車検を受けられず、そのまま車検切れになれば車に乗ることもできなくなります。

その段階で慌てて納税しても、車検切れ後の車は公道が走れないため、移動などで苦労することになるでしょう。

こういった理由も踏まえて、車の譲渡に伴う名義変更を行う際は、車の旧所有者がきちんと自動車税を納めているか確認する必要があります。

車の名義変更の手続きについて

車の名義変更の手続きについて
ここまでで、車の名義変更(移転登録)の内容と手続きの期限などについて解説してきました。

ここからは、実際に名義変更を行う場合、誰がどのような書類を準備して、どう手続きを進めていけばいいのかを見ていきましょう。

車の名義変更の手続きは、どのように行いますか?
車の名義変更の手続きは、新旧それぞれの所有者が車庫証明書をはじめとする各種書類を準備し、新所有者が運輸(支)局で手続きを行うという流れになります。
①新所有者が車庫証明を取得する

車の名義変更の手続きを行うには、まず最初に車の新しい所有者が、所轄の警察署で車庫証明を取得する必要があります。

警察署で車庫証明を取得するための申込み手続きを行い、後日もらいに行くという流れになります。

所轄の警察署というのは、車の新しい所有者の現住所ではなく、車の保管場所、すなわち駐車場の所在地が基準になります。そのため、現住所と駐車場の住所が異なる場合は、駐車場の住所を管轄する警察署で手続きをしてください。

申込みの手続きをする場所は、警察署の交通課の窓口です。ここで書類に記入捺印した上で、提出します。

3~5日程度で車庫証明が交付され、入手可能になるので、後日もう一度窓口へ赴くことになります。

なお、これは普通自動車の場合で、名義変更の対象となる車両が軽自動車であれば車庫証明の取得が不要なことも多いです。(必要な地域でも名義変更後の申請となる)この点は市区町村によって異なるので、手続きをする前に確認しておきましょう。

②新所有者と旧所有者が必要書類を準備する

次に、車の新所有者と旧所有者が必要書類を準備します。大まかにいえば、車の旧所有者は車の売却時の書類を、そして車の新所有者は購入時の書類をそれぞれ揃えることになります。

名義変更手続きを販売店に代行してもらう場合は、販売店側で何を用意するといいか教えてくれるので、覚えておく必要はないでしょう。

個人間売買の場合は、全ての書類を当事者が自分で調べて準備する必要があるので、以下の内容を覚えておいてください。

新所有者と旧所有者が用意するもの
  • 印鑑証明書
旧所有者だけが用意するもの
  • 譲渡証明書
  • 車検証
  • 住民票(車検証と印鑑証明書の住所が異なる場合に必要)
  • 戸籍の附票(車検証と印鑑証明書の住所が住民票でも繋がらない場合に必要)
  • 理由書(ナンバープレートを紛失するなどして返納できない場合)
  • 委任状(新所有者やその他の人に手続きを代行してもらう場合)
新所有者だけが用意するもの
  • 車庫証明書(ただし車を使用する本拠地に違いがなければ不要)
  • 希望番号予約済証(希望するナンバーがある場合)

書類の中には、新所有者と旧所有者の実印が必要なものがあります。

また、印鑑証明書は発行日から3ヶ月以内のもの、車庫証明書は発行日から1ヶ月以内のものを準備します。有効期限があるので、用意するタイミングには注意しましょう。

③新所有者が運輸(支)局で手続きを行う

必要書類の準備ができたら、車の新しい所有者が運輸(支)局に書類を持参します。

運輸(支)局の場所は、国土交通省のWebサイトから探すことができるので、確認してみましょう。

運輸(支)局へ出向いたら、「名義変更」という案内が出ていますのでそれに従って窓口へ行きます。そして、新たに取得する書類として以下のものがあるので、確認した上で必要事項を記入してください。

  • 手数料納付書
  • 自動車税申告書
  • 自動車取得税申告書
  • 申請書(第1号様式)

上記の書類と持参した書類一式に不備がないか確認を受け、問題がないようなら名義変更の手続きは完了となります。不明な点があれば、窓口で教えてくれるでしょう。

なお、これは普通自動車の名義変更の場合で、軽自動車の場合は運輸(支)局ではなく「軽自動車検査協会」で手続きを行います。間違えないように注意してください。

手続きの煩雑さを避けたい場合は?

前項までで説明した通り、名義変更の手続きは煩雑なところがあります。準備や手続きのための時間がない場合は、サポートしてくれる業者に依頼しても良いでしょう。

費用は1万5,000円~3万円ほどかかりますが、手続き上のアドバイスも受けられるので便利です。

依頼可能な業者としては、ディーラーや車販売店、整備工場、行政書士が挙げられます。このうち、行政書士は手続き代行のみを単体で依頼できますが、販売店などに依頼する場合は車の売却・購入を伴うことが一般的です。単体で手続き代行のみを依頼できるかどうかは、個別に問い合わせて確認してみましょう。

車が他人名義の場合はどのように売却するの?

車が他人名義の場合はどのように売却するの?
ここまでで見てきた名義変更手続きの具体的な流れは、あくまでも自分名義の車を他人名義に変える時の方法です。

実際には、車の名義が他人名義になっていることも珍しくありません。

ここからは、車の名義が他人名義になっている場合、手続きをどう進めていくべきか説明していきます。

原則、車を売ることができるのは所有者(名義人)のみ

車を売ることができるのは、原則として、その車の所有者(名義人)に限られます。

車には所有権があり、車検証の所有者欄に書かれている名義人のみがその車を売却できると同時に、自動車税の納税義務や車の保管義務などを負うことになります。

そのため、車を売却しようとしても名義人が自分以外の人になっている場合は、最初に名義変更の手続きを行わなければなりません。

車検証では、車の「所有者」と「使用者」が異なっていることがあるので、注意が必要です。

普段車を運転している「使用者」は、車を売却したいからといって所有権を他人に譲渡することができません。

そのため、もしも使用者が車を売りたいのであれば、名義人と相談し、所有者の名義を使用者と同一にしなければなりません。

こうした場合の名義変更の手続きには3パターンがあるので、以下で解説していきます。

①ローンを組んで購入した車の場合

ローンを組んで購入した車の場合、名義人がディーラーやローン会社・クレジット会社などであることが多いです。つまり、ローンを万が一返済できなくなった場合に、名義人には車を売却して返済にあてる権利があるわけです。

名義変更は基本的にローンを完済してから行うことになります。ただし、名義人の会社によっては、車の売却益でローンを完済することが認められている場合があります。それであれば、名義変更をせずとも売却手続きが可能になります。

②家族名義の車の場合

家族に買ってもらった車などの場合、使用者が自分で名義人は家族、さらにローンの支払いも家族が行っているということがあります。

この場合、最も簡単に車を売却する方法は、名義人である家族に売却手続きを行ってもらうことです。

あるいは、名義人の許可を得て使用者が車を売ることも可能です。その場合は名義人・使用者の印鑑証明書と双方の実印が押された委任状、名義人の実印が押された譲渡証明書が必要なので、全て用意して手続きを進めましょう。

③亡くなった人が名義の車の場合

名義人が亡くなった車を名義変更する場合は、その前に遺産相続の手続きが必要です。

名義人が故人であることの証明になる戸籍謄本と、相続人全員が署名・捺印した遺産分割協議書を用意しなければなりません。ただし、車の価値が100万円以下であれば遺産分割協議書は不要です。

いずれにせよ、遺産相続になると不動産や預金などの相続も関係してきて話がややこしくなることが多くなります。できれば、相続については法律関係の専門家、車の手続きについては買取店の担当者などに相談して進めていきましょう。

まとめ

①車を売却する際は、車の名義変更(移転登録)をする必要がある
②道路運送車両法で、名義変更は15日以内に行うことが定められている
③自動車税は4月1日時点での車の名義人に課せられるので、名義変更する場合は3月末までに完了させること
④名義変更が遅れると、旧所有者がトラブルに巻き込まれることがある
⑤個人売買では、車の新所有者と旧所有者の双方で書類を用意する必要がある
⑥車が他人名義になっている場合や、自動車税が未納の場合は要注意

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