車の運転はどうしてもリスクがあるため、普段から安全運転やもしもの事態への備えが欠かせません。特に任意保険への加入は、急な出費を軽減できるリスク管理のためおすすめしたい選択肢です。

この記事では、ユーザーが単独事故を起こし、車が全損状態になった場合に知っておきたい対処法や保険商品について解説します。

車の単独事故と対人事故は全損の補償が異なる

車が修理できない状態になったり価値がなくなったりした状態を「全損」と言います。

全損も細かくは2つに分けられ、修理が困難な状態を「物理的全損」と言い、修理費用が車の価値を上回る状態を「経済的全損」と言います。いずれも好ましくない状態のため、すぐに対処が求められるでしょう。

単独事故の場合、相手がいないことから自分のケアや手続きのみで済みます。しかし、比肩を使える条件や商品の把握、次の車手配など、行うことは多くあるでしょう。そのため、事前に見通しを持ってスムーズに動けるよう理解が欠かせません。

事故のケース別!使える保険について

事故のケース別!使える保険について
ここからは、事故のケースごとに使える保険を紹介します。

単独事故の扱いを中心に解説しますが、万が一に備えて相手がいた場合の事故対応や保険利用も確認しておきましょう。

単独事故による全損

単独事故は人を巻き込まない事故を指します。具体的には、下記のような事故が挙げられます。

  • 脇見運転をしてガードレールに車がぶつかった
  • 眠気に襲われて電柱に衝突した
  • 細い道で対向車を避けた際、ハンドル操作を誤って電柱にミラーをぶつけて取れてしまった

単独事故は「物」を巻き込んだ場合のため、物損事故と呼ばれることもあります。相手(人)が存在しない事故だと思っておきましょう。

単独事故で修理に保険を使う場合、自身が加入する車両保険を使って修理を行いましょう。

なお、単独事故において「相手がいないから警察に連絡は不要だろう」と考える方も見られますが、単独であっても事故には変わりないため必ず警察に連絡しましょう。

特に物を破損している場合は弁償の可能性もあります。また、駐車している無人の車にぶつけ、そのままにすると当て逃げとなり罰則の対象になります。

「事故を起こしたら警察に連絡」はいかなる事故においても徹底しましょう。

自分に過失のある事故による全損

事故では相手を巻き込むケースも考えられます。具体的には、下記のような事故が挙げられます。

  • 対向車がいるにも関わらず無理やり右折しようとして衝突した
  • 前方不注意でブレーキが間に合わず先行車に衝突してしまった

自分に原因(過失)がある場合、保険契約時に定めた過失割合分の補償を受けられます。また、相手を巻き込んだ事故の場合は相手への補償も必要です。

事故後に適切な対応を行わなければ罰せられる可能性もあります。警察や救急車、保険会社に連絡して安全確保や正しい状況の報告を行いましょう。

相手に過失のある事故による全損

事故の中には自分の過失がない「もらい事故」もあります。具体的には、下記のような事故が挙げられます。

  • 車を駐車した状態で衝突された
  • 信号待ちで停車中に追突された

この場合、車の修理は相手が入っている保険の対物賠償保険で補償されます。そのため、自身の保険を使う必要はありません。

ただし、相手の保険金額や修理費用によっては満足に補償されない可能性もあるでしょう。

また、相手がいる事故の場合、個人間でやり取りを行うとトラブルの原因になります。そのため、保険会社や弁護士に依頼して手続きを進めましょう。保険商品によっては弁護士特約が使えます。

車両保険の補償を受けられない全損事故はありますか?
自身に重大な過失がある場合や、地震・噴火・津波など自然災害によって生じた全損は保障されない可能性があります。例えば、運転手が無免許運転だった場合や酒気帯び運転だった場合は明らかに非があり事故を起こす可能性が高いからです。また、災害に関しては被害が甚大かつ具体的な見通しが持てないことが理由として挙げられます。

車の単独事故による全損時に利用できる特約について

車の単独事故による全損時に利用できる特約について
ここからは、単独事故を起こして車の修理が必要になった場合に活用できる保険の特約を紹介します。

保険商品は通常の保険内容にプラスして自分が気になる要素をカバーできる特約のしくみがあります。

特約は単体での契約はできませんが、保険のメイン商品に自由につけられるので、参考にしてみてください。

新車特約

新車特約は、新車の価値を補償してくれる特約です。

新車の場合は価値が高いため修復した車の場合、買取金額が大幅に減額されます。車にもよりますが相場から数十万円下がる可能性もあるので、ユーザーが不利益を被ることが多いです。

新車特約をつけておくと、事故で車が損害を受けた場合に新車を買い替えられます。具体的な期間は保険会社ごとに異なりますが、大体2年~3年程度がほとんどです。

レンタカー費用補償特約

レンタカー費用特約は、事故により車を修理する期間にレンタカーを使用する費用が補償される特約です。

全損から修復する場合は数ヶ月、車を使えないケースもあるため代車が必要です。しかし、修理業者では短期間しか代車を出してもらえない可能性もあります。特に修理業者が繁忙期の場合はレンタカーの使用も否めません。

レンタカー費用特約をつけておくと、一日あたり5,000円程度から補償を受けられます。普段使っている修理業者のサービスを見て必要だと感じた場合はつけておきましょう。

事故付随費用補償特約

事故付随費用補償特約は、事故の発生により修理以外に必要な費用の補償を行う特約です。

例えば、旅行先で事故を起こしてホテルに急遽宿泊する必要があったり、車を置いて公共交通機関で帰宅した際にその費用を補償します。

事故以外の費用にも備えたい場合におすすめです。

身の回り品補償特約

身の回り品補償特約は、車内にある荷物まで補償してくれる特約です。

事故に遭った時、車内に積んでいたゴルフバッグやカバンなど手荷物への補償を行います。そのため、車に高額なアイテムを積む場合や事業用で使う機会がある場合におすすめの特約です。

事故を起こしたり、巻き込まれたりすると車や怪我の状態に真っ先に注目しますが、車が大破した際は手荷物までなくなってしまうため備えとして検討しましょう。

全損時諸費用特約

全損で車の修理を行わない場合、保険金が支払われますが、次に購入する車や廃車手続きの内容によっては心もとない可能性もあるでしょう。

その場合に全損時諸費用特約で増額することができます。具体的な金額としては、車両保険の10%程度としている保険会社がほとんどで、最大で20万円程度でしょう。

廃車手続きは、無料で行えるところもあれば、5万円以上かかるところもあります。特約をつけておくと買い替えにかかる諸費用までカバーできるため、大きな出費を防げます。

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車両保険を利用する時の注意点

車両保険を利用する時の注意点
ここからは、事故を起こし、車両保険を使う際に知っておきたい注意点を紹介します。

全損状態の場合、車両保険の使い方によっては車の所有者が自分でなくなることもあるので注意が必要です。

保険金を受け取る場合は車の所有権がなくなる

車が全損状態で修理を行わない場合でも保険金として補償を受けられます。しかし、保険金を受け取る場合は車の所有権が保険会社に移るため注意しましょう。

車の所有者が自分でない場合は、売却や廃車手続きを個人で行えません。保険金を受け取る場合は車の扱いを考えてから手続きを行いましょう。

等級が下がり保険料が高くなる

車両保険を使うと車の等級がダウンします。

等級とは、支払う保険料の割増引率を決める基準となる区分を指します。

一定期間保険を使わなければ等級が上がっていきますが、保険を使うと3等級など大きなダウンにつながるため、保険料も割高になります。

保険料が高くなる期間は事故の内容によって様々ですが、1年〜3年間程、保険料が高くなります。そのため、軽微な修理であれば車両保険を使わないほうがお得になる可能性もあります。

もしも事故で保険を使う場合は、保険料の割増分と修理費用を照らし合わせて決定しましょう。

支払限度額は年数を重ねると下がる傾向がある

支払われる保険金額はだんだんと下がります。

保険金額は車の時価を元に算出されます。時価は車の年式や走行距離などから判断されますが、年式が古い車はどうしても時価が下がってしまうため、毎年自動車保険の更新時に確認しましょう。

市場でプレミアがついており、ニーズがあったとしても、保険の基準としては満足できない可能性もあるでしょう。

車の価値が下がると事故の際に補償される金額も少ないため、必要に応じて車の買い替えも検討しましょう。

故障には適用されない可能性がある

車両保険は故障状態の車に適用できません。具体的には、ヘッドライト交換やエンジンの調子が悪くてかからない等が挙げられます。

故障に対して補償を受けたい場合は適用になる商品や特約を選択しましょう。

車に乗っている限り消耗品の交換や故障による修理は避けられません。保険を手厚くするか、資金を準備しておくか備えが大切です。

ただし、全てをカバーするために特約をつけすぎたり見合わない保険に加入すると毎月の支払いが困難になる可能性もあるので注意しましょう。

全損した車の対処方法

全損した車の対処方法
ここからは、全損状態になった車の扱い方を紹介します。

方法としては、廃車して新しい車を用意するか、修理を行うかになります。車の状態や予算と照らし合わせて最善の対処法を取りましょう。

廃車手続きを行って処分する

車が自走不可能な状態、もしくは修理費用が補償でまかないきれない場合は廃車手続きを行いましょう。

修理費用が100万円を超える場合、中古車の購入や少し手出しをして新車を購入した方が良いケースもあります。

廃車手続きは、陸運支局に車の登録抹消を申し出ることを指します。一般的に全損状態の車を廃車にする手続きを「永久抹消登録」と言います。

永久抹消登録は、車を解体業者に依頼してスクラップしてから、必要書類を陸運支局に提出します。その際に必要となる書類は下記の通りです。

  • 永久抹消登録申請書
  • 手数料納付書
  • 所有者の印鑑(登録)証明書
  • 所有者の委任状(実印の押印)
  • 自動車検査証
  • 自動車登録番号標

車の廃車手続きを業者に依頼する場合は委任状も用意しましょう。

なお、永久抹消登録申請書や委任状は国土交通省のホームページでダウンロードができたり、陸運支局でもらえたりします。

印鑑証明証は区役所や市役所で発行してもらう他、マイナンバーカードを持っている場合はコンビニで発行可能です。

必要書類が多いため余裕を持って準備しましょう。

参考までに、陸運支局は平日のみ開局しています。そのため、書類提出が難しい場合は廃車専門業者に委託すると手続きがスムーズでしょう。

修理を行い再び乗る

全損の中でも「経済的全損」の場合、修理できる可能性があります。修理費用こそかかりますが、お気に入りの車だったり比較的年式が浅い場合は修理を検討しましょう。

ただし、古い車の場合は部品がすでに廃盤になっていたり、他の車種の部品でも賄えなかったりするケースも見られます。

修理は見積もりを出してもらったり部品の有無を確認したり、現実的かどうかを鑑みて決断しましょう。

なお、修理に出す際は保険会社への連絡が必須です。修理に関する情報を伝えずに直してしまうと保険の適用外となってしまう恐れもあります。

保険を使う場合は些細なことでも担当者に確認しながら進めましょう。

全損した車にもう一度乗ることはできますか?
車の価値よりも修理費用が高くなる「経済的全損」の場合、修理をすれば乗れる可能性があります。しかし、修理費用が100万円以上など、高額になる場合は買い替えの方がメリットが大きいでしょう。

単独事故による全損で車を買い替える際の手段について

単独事故による全損で車を買い替える際の手段について
ここからは、単独事故を起こしてしまい、新しい車の手配が必要な方向けに、3つの方法を紹介します。

車が全損した場合、廃車手続きを行うと同時に新しい車を探しますが、車の購入にはまとまったお金が必要で悩む方もいるでしょう。

その場合は、中古車を購入したり、リース契約を選ぶ方法がおすすめです。

①中古車の購入を検討する

新たに車を購入する場合、中古車であれば比較的費用を抑えられます。

軽自動車の場合、状態が良いものを100万円程度で購入できる可能性もあります。また、中古車の中でも展示や試乗のみに使われていた車もあるため、複数の中古車販売店で確認してみましょう。

なお、中古車を探す際はオンラインで大まかに情報収集してから現地に赴く方法がおすすめです。自分が乗りたい車のイメージを決めてから、最寄りの販売店に行きましょう。

なお、全損の車を一度買取査定に出してみる方法もおすすめです。単独事故を起こした車でも、パーツのみ買取可能なケースもあります。新しい車の資金確保に効果的です。

②カーリースの利用を検討する

車の購入が難しい場合はカーリースも検討しましょう。

カーリースは車を業者から借りるサービスです。そのため、車の所有者がリース会社で使用者が自分になる点が特徴的です。また、月額料金を支払えば車に乗れるため、一定期間しか車を使わない方や、出費を安定させたい方におすすめです。

なお、リースの月額料金には車両代の他、車検費用や保険代金が含まれています。そのため、月々の支払いは月額料金とガソリン代のみです。

しかし、リース車はあくまで「借り物」のため、カスタマイズができなかったり、契約期間中は原則、途中解約ができない点に注意が必要です。

③新車の購入を検討する

車の廃車を機に、思い切って新車に買い替える方法もおすすめです。資金に余裕がある場合や気になる車が発売されたタイミングの場合は適しています。

新車の場合、起こりうるトラブルが少なくかつ性能が良いためランニングコストを抑えられます。特にハイブリッド車を選ぶとガソリン代を軽減できるでしょう。

また、近年は各メーカーで安全性能に力を入れているため自動運転があったり、駐車をサポートしてもらえたりとメリットが豊富です。

長く乗れる車を探す場合は新車も選択肢に入れてみましょう。

【参考】特約を利用して補償額を上げておく

参考として、車両保険に「新車特約」をつけていると新車が全損状態になった場合、買い替えをお得に行えます。

保険会社の商品によっては「車両新価特約」「新車買い替え特約」と呼ばれることもありますが、いずれも新車に対して手厚いサポートを受けられます。

新車特約をつけておくと、時価で換算された車の価値と実際の新車価格の差額を補償してくれます。

車の運転が不慣れだったり、使用頻度が高い方が新車を購入する場合は検討してみましょう。

新車は価値が高いため、事故で全損状態になると価格が激減します。しかし、特約をつけておくと万が一の事態に備えられるでしょう。

新車特約はどれくらいの期間までつけられますか?
新車特約はあくまで「新車」の補償を重点的に行うため、車の新規登録から2年または3年程度です。1度目の車検が来るまでという場合もあります。
ただし、保険商品によっては1年など、期間が短いものもあります。そのため、特約を検討する場合は期間を必ず確認しましょう。

まとめ

①単独事故と相手がいる事故とでは、使える保険や対応が異なる
②単独事故でも警察への連絡は必ず行う
③単独事故で車が全損状態の場合は廃車手続きか修理を行う
④全損の場合は修理費用が車の価値を上回ることが多いため、保険を使わずに買い替えも検討しよう
⑤車の買い替えには新車や中古車があるが、カーリースという選択肢もある

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