車が事故に遭い、全損や半損になってしまった場合、どのように対応したらよいか分からない方は多いでしょう。また、全損や半損は車がどのような状態になることを言うのでしょうか?

そこで、この記事では全損や半損の意味とともに、全損や半損に備えて車両保険に加入しておいた方がよい人の特徴や一緒に契約を検討したい特約について紹介していきます。

全損や半損した車の処分方法も解説しますので、万が一事故に遭ってもスムーズに対処できるよう対応方法の選択肢の幅を広げましょう。

全損と半損は車の修理費用に違いがある

全損と半損は車の修理費用に違いがある
全損は修理しても車が走行できない状態や、車の時価額よりも修理費用が上回ってしまう状態を指します。

半損は車の修理費用が新車価格相当額の50%以上の状態のことです。

それぞれの損傷状態の違いやそれにかかる修理費用の割合によって区別されています。

全損は2種類に分けられる

全損は2種類に分けられる
ここからは、全損からさらに細かく分類される「物理的全損」と「経済手全損」の特徴を紹介します。

全損と聞くと車が大破してしまい走行できないほどボロボロな姿をイメージしますが、必ずしもそうではありません。

全損の種類と特徴を知って、それぞれに適した修理や買い替えなどの対処法を理解しましょう。

修理が不可能な「物理的全損」

物理的全損とは、修理しても走行できないほど損傷している状態を指します。多くの場合、車が大破しボロボロになった状態です。

事故に遭遇して車が全損になったと聞くと、多くの場合は物理的全損の状態を想像するでしょう。

物理的な損害を受けていて、修理をしたとしても走行できる可能性が低いため、車を解体して廃車手続きを行うことが多いです。

また、車が盗難に遭い発見されない場合も扱いは物理的全損になります。もし車両保険を付帯していれば盗難でも保険金が支払われます。

修理費用が時価額を上回る「経済的全損」

経済的全損とは、修理をすれば走行に問題はないが、車の時価額よりも修理費用が高くついてしまう状態を指します。

車の時価額とは、同一の車種・年式・型で同程度の使用状態・走行距離などの車を中古市場で取得する場合にかかる費用のことです。

見た目に大きな損傷がなくとも修理費用が80万円かかり、時価額を調査したところ40万円だったという場合は、修理費用が時価額を上回っているため経済的全損に該当します。

イメージとしては、修理するより買い替える方が安く済む状態です。

半損は修理費用が5割

半損は修理費用が5割
半損とは、事故を起こした車の修理費用が新車価格相当額の50%以上の状態を指します。

新車価格相当額とは、自動車共済の特約である「車両新価特約」にて、非共済自動車を評価した価格のことです。車両標準価格表などに基づいて契約時に協定する新車の市場販売価格相当額と同じ価格を指しています。

半損は車両新価特約の中で車の状態を表す言葉として用いられている用語です。

車両新価特約における半損以上の条件には、損傷が内外装や外板部分だけではなく、車体の本質的構造部分に大きな損傷が生じていることも含まれています。

事故で車が全損状態でも車両保険は適用できますか?
全損状態の車でも車両保険は適用されます。全損の場合、保険適用後は車の所有権が保険会社に移ります。保険会社が保険金を支払い、車の所有者から事故にあった車を買い取るイメージです。
愛車の買取相場を知ることで高く売ることができます 愛車のかんたん査定はこちら

車両保険に加入して全損・半損に備えたほうがよい人

車両保険に加入して全損・半損に備えたほうがよい人
ここからは、車両保険に加入して全損・半損に備えたほうがよい人の特徴を紹介します。

自動車保険に加入するとき、車両保険まで入っておくべきか悩む人も多いでしょう。

車両保険に加入しておくと事故による大きな修理や買い替えの費用を保険金で補えますが、その分保険料が増加します。

自分には車両保険が必要か判断するためにも、加入したほうがよい人の特徴を見ていきましょう。

時価額の高い車を所有している人

車両保険の支払いは、車の時価額を上限に行われます。そのため、時価額が高い新車や高級車を所有している人は車両保険に入っておくと、修理費用や買い替え費用の負担を大きく軽減できるでしょう。

新車の場合、購入してすぐ事故に遭ってしまっても修理費用や買い替え費用をまかなえるため、ショックや負担も小さく済みます。

高級車の場合、小さな損傷でも修理費が高額になるケースも多くあります。そのため、車両保険に加入しておくと負担が減り安心できるでしょう。

一方、初度登録から年数が経過するほど車の時価額は低下します。特に初度登録から10年以上経過している中古車は車両保険に加入していても、保険金の支払いが少なくて修理費用のほうが高くなる可能性があります。

年数が経過している中古車の場合は車両保険の必要性が低くなるといえるでしょう。

車の運転に自信がない人

免許を取得したばかりや運転から一時的に離れていて運転に自信がない人は、車両保険に入っておきましょう。

免許を取得したばかりの場合は、公道の運転に慣れていない可能性があります。走行自体に慣れていないと自分自身が事故を起こしてしまう可能性もゼロではありません。

免許を取得したばかりで事故に遭い、大きな出費が発生してしまうのは避けたいものです。万が一の負担を減らすためにも車両保険への加入がおすすめです。

また、しばらく運転から離れていた人も同様に、公道の運転に慣れていない可能性があるため車両保険への加入を検討しましょう。

車を運転する頻度が高い人

日常的に車を使用している場合も車両保険の必要性が高いといえます。

普段利用している車が事故で大破して処分しなければならなくなったとき、すぐに別の車を用意する必要があります。食品や日用品の買い物や子どもの送り迎えなど、毎日車が必要な用事がある場合はすぐに買い替えを行わないと不便を強いられてしまうでしょう。

車両保険に加入していれば、購入や修理費用の負担を軽減できるため、すぐに新しい車の用意ができます。

交通事故に遭い、使用している車に乗れなくなったときに生活面で不便を感じる可能性があると判断できる場合は、車両保険に加入しておきましょう。

保険適用後の車の所有権について

保険適用後の車の所有権について
全損と判断された場合、基本的に車の買い替えが必要になります。その時に車両保険を適用させると車の所有権が使用者から保険会社に移転します。

所有権を受け取った保険会社が車の処分方法を決めるため、保険適用後は自分で車を修理したり売却したりなどができません。

自分の車に愛着があり、走行できない状態であったとしても修理して外見をきれいにして自宅に置いておきたい場合は、自費で修理する必要があります。

事故による全損が発生したら、車両保険を適用するかどうかは一度保険会社に相談しましょう。

車両保険を利用する場合は保険会社の指示を待つ

車両保険の適用後は所有権が保険会社へ移転するため、適用後に自分で修理に出したり売却したりしないよう注意が必要です。

所有権が自分にないにも関わらず、車を修理や売却に出してしまえばトラブルに発展しかねません。

全損扱いで保険を利用する場合は、車をどうするか具体的な内容を保険会社に確認しましょう。また、保険会社の指示のもと対応を進めることをおすすめします。

所有権を移したくない場合は保険会社に相談する

全損で車両保険を適用する場合、基本的には所有権が保険会社へ移ります。しかし、思い入れのある車で走行できない状態でも手放したくないと考える方もいるでしょう。

車を解体したくない、手元に置いておきたいなどの理由がある場合は、保険適用しても希望が叶うか一度保険会社に相談してみましょう。

所有権や車の対処の決定権は保険会社にありますが、会社によっては相談に対して柔軟に対応してくれる可能性があります。

全損と判断されましたが手放したくない場合は保険を利用しない方がいいですか?
全損の場合、車両保険を適用すると所有権が保険会社に移り、処分方法の決定は保険会社によって行われます。そのため、全損と判断された車の対応を自分で行いたい場合は、自費で修理する必要があります。しかし、保険会社によっては所有権について相談に乗ってくれる可能性もあるため、一度問い合わせてみるとよいでしょう。

車両保険と一緒に加入しておきたい特約について

車両保険と一緒に加入しておきたい特約について
ここからは、車両保険と一緒に加入しておきたい特約を紹介します。

車の保険は大きく分けると「自賠責保険」と「任意保険」の2つがあります。さらに、任意保険には様々な補償が付いた特約が存在します。

車両保険とあわせて利用すると便利なものもあるため、どのような種類があるか把握して、自分に合った特約を選択しましょう。

新車特約

新車特約とは、事故で車が全損状態または修理費が新車価格相当額の50%以上となる半損状態になった場合、新車を購入する費用を補償してくれる特約です。

例えば、車両保険において新車で契約する際に保険金額を200万円に設定したと仮定します。

年数が経過すると車両の価値は下がっていくため、保険金額も減少していきます。一般的に20%ずつの減価償却です。そのため、契約時に200万円で設定していても2年目以降に受け取れる金額は200万円を下回ります。

新車特約を契約していると、契約時に200万円と設定していれば3年、5年と経過しても200万円を上限に購入費用の補償が可能です。

車内手荷物等特約

車内手荷物等特約とは、車が事故に遭い室内やトランク内に収納されていた個人が所有する現金や物品に損害が生じた場合や車ごと盗難にあった場合に、修理費などの損害費用について、保険金額を上限に支払う特約です。

例えば、保険金額が30万円で、ゴルフクラブセットの修理費が15万円の場合、15万円が補償されます。

また、契約車の室内にあった荷物であれば所有者だけではなく、家族や友人の荷物も補償の対象です。家族や友人で遠方へ出かけ事故に遭ってしまったとしても、同乗者の荷物も補償されるため物品の被害を抑えることが可能です。

全損時諸費用特約

全損時諸費用特約とは、事故により車が全損となった場合に廃車や買い替え時の諸費用を上限20万円として車両保険金額の10%が支払われる特約です。

車両保険金額が100万円以下の場合は、10万円が支払われます。

代車費用特約

代車費用特約とは、事故で車の修理が必要となった場合に、修理期間中の移動手段として借りたレンタカーの費用を補償してくれる特約です。補償金は基本的に日額で支払われます。

補償期間や金額は保険会社によって異なるため、自分が契約している保険会社にて確認しましょう。

レンタカーを借りる際は保険金の範囲内もしくは保険金に自分で予算を追加して借りられます。

また、保険会社によっては事故に遭った車を修理に出している間、無料で代車を提供してくれる場合もあります。そのため、代車費用特約を契約する前に利用する保険会社の代車サービスがどのようになっているか確認しましょう。

地震・噴火・津波車両全損時一時金特約

地震・噴火・津波車両全損時一時金特約とは、車両保険ではまかないきれない地震・噴火・津波による車の全損を補償する特約です。

地震・噴火・津波によって車が全損した場合、記名被保険者が臨時で必要な費用として、50万円を受け取れます。

補償の対象となる全損例は以下の通り。

  • 地震で建物が倒壊し、車が瓦礫の下敷きになって全損した
  • 地震による津波で車が浸水して全損になった
  • 噴火による噴石や火山灰の影響で全損になった

なお、車両保険の保険金額が50万円未満の場合は、車両保険金額と同額が支払われます。

また、全損による保険金の受け取りに関して、所有権は使用者自身のままになるため、廃車や処分の手続きは自分で行う必要があります。

故障運搬時車両損害特約

故障運搬時車両損害特約とは、車が故障により走行不能となり、レッカー車による移動を行った場合の費用が支払われる特約です。

保険金は、車両保険金額もしくは100万円のどちらか低いほうを上限に支払われます。

ただし、構内専用車や改造車、並行輸入車、外務省登録自動車などは対象外となるため注意しましょう。

車を購入したばかりのため、万が一の事故に備えたい場合はどの特約がおすすめですか?
新車を購入している場合は新車特約がおすすめです。車両保険の保険金額は一般的に年数が経過すると受け取れる金額が減っていきます。新車特約を契約しておけば、数年後も最初に決めた保険金額を受け取れます。

全損や半損の車も買取してもらえる可能性がある

全損や半損の車も買取してもらえる可能性がある
ここからは、全損や半損の車も買取してもらえる場合の条件について紹介します。

事故に遭い、車が全損や半損状態になってしまうと、解体して処分するしかないと考えられがちですが、全損や半損状態でも買取をしてもらえる可能性はあるため、どのような場合に買取ができるのかチェックしましょう。

業者によっては高値を付けてもらえる

全損・半損状態の車でも、解体をして利用できるパーツを販売している業者であれば、高値で買取ってくれる可能性があります。

通常の中古車販売店では、買い取った車を修理して再販売することを目的としているため、全損や半損状態の車は買取ってもらえないケースが多いでしょう。

廃車買取専門の業者は、買い取った後に車をそのまま販売するのではなく、解体を行い利用できるパーツごとに販売を行います。そのため、全損・半損状態でも利用できるパーツがあれば買い取ってもらえる可能性が高まります。

少しでも手元にお金を残したい場合は、複数の廃車買取専門の業者から見積もりをもらい比較して、利用する業者を決めましょう。

年式が新しい場合は高値が付きやすい

年式の新しい車は、全損でも比較的高値で買い取ってもらえる可能性があります。具体的な年数でいうと、新車登録から3年以内で最初の車検を行う前の車です。

車市場では年式が新しければ価値が高いとみなされる傾向があります。そのため、購入したばかりで事故に遭ってしまったと落ち込まず、まずは高額買取が可能か査定を依頼しましょう。

納得のいく買取価格であれば売却を進めて、保険金を受け取った方がお得だと判断すれば車両保険の適用を進めましょう。

海外で人気の車であれば買取してもらいやすい

海外に販路を持つ業者に、海外で人気の車を売却すれば全損・半損状態でも買い取ってもらえる可能性があります。

日本の国産車は海外での人気が高いため、全損であったとしても修理して再販すれば需要があるとして買い取ってもらいやすい傾向です。

修理は日本で行わず、全損状態のまま海外に輸出します。修理費用が安い国で修理を行い、中古車として販売します。

海外のユーザーはあまり車の事故歴や修復歴、走行距離を気にしません。そのため、日本の国産車であれば全損でも人気がつき売れると考えられます。

年式が古くても諦めずに査定してもらう

年式が古く、全損・半損状態だからと諦めずに一度、査定依頼に出してみましょう。

これまでの条件を見ると、年式が古い全損車では買取が難しいのではと感じますが、業者によっては買い取ってもらえる可能性がゼロではありません。廃車処分を行うよりもお得になるため、ダメもとでも一度査定を依頼するのがおすすめです。

廃車買取業者での買取が叶えば、解体や廃車などにかかる費用や手続きを業者側が負担してくれます。車の状態が少しでもよければ手元にお金が入ってくる可能性もあるでしょう。

自分で処分を進めたり、車両保険を適用させたりする前に、まずは業者への査定依頼をおすすめします。

まとめ

①全損には「物理的全損」と「経済的全損」がある
②物理的全損は、修理しても走行できない状態を指す
③経済的全損は、修理費用が車の時価額を上回る状態を指す
④半損とは、車の修理費用が新車価格相当額の50%以上の状態を指す
⑤車両保険や特約は、万が一の事故の際に手厚い補償が受けられる

※本記事は公開時点の情報になります。
記事内容について現在の情報と異なる可能性がございます。
車の査定は何社に依頼するべき?
愛車の買取相場を知ることで高く売ることができます 愛車のかんたん査定はこちら