車は年月が経過すると部品が劣化、消耗して走行に支障をきたす場合もあります。急なトラブルが起こり、故障してしまう場合もあるでしょう。
車をいつもベストな状態に保つためには、定期的な点検が必要です。車の定期点検は法律で規定されており、車種や用途によって周期や検査項目も異なります。
そのため、もし定期点検を受けないで期限が過ぎたら法律違反となるのかも気になるところです。法定点検の内容や業者に依頼する際にかかる費用や、所要時間などのお役立ち情報についても見ていきましょう。
車の法定点検とは?
車の法定点検とは、道路運送車両法という法律で規定され、車の使用者に義務付けられている点検です。ただ義務と言っても、実情は法定点検を受けるかどうかはドライバー次第となります。
受けないと法律違反となりますが、一般の自家用乗用車の場合は罰則がないので罰せられることはありません。法定点検を受けた際は、車の状態や整備の内容などを点検整備記録簿に記載されます。
そして、一定期間保管しなければならないことも法律で決められています。記録簿に車の状態を記しておけば、万一トラブルが起きたり故障したりした場合でも点検時の状況を知ることができるので、参考になるでしょう。
車の法定点検は、期間や車種によって検査項目数が違ってきます。
3ヶ月点検や6ヶ月点検は自家用の軽自動車や普通車は義務付けられておらず、点検を受けるかどうかは任意となります。
3ヶ月点検の対象車両である、バス、トラック、タクシー、レンタカーや自家用の大型トラックの検査項目は50項目です。被けん引自動車20項目と、やや少なくなっています。
バスやタクシーなどは多くの利用客の命を預かるため、点検間隔が自家用車よりも短くなっています。また、大型トラックは車体が大きいため、不具合があると他の車両や歩行者を巻き込み影響が及ぼす恐れがあるので、短期間での点検が義務付けられているのです。
自家用の中小型トラックやレンタカーは法定6ヶ月点検が義務付けられており、検査項目は22項目となっています。
自家用車の12ヶ月点検では26項目もの検査項目があります。具体的にどのような検査を行うか見ていきましょう。
ブレーキペダルを踏みこんだ際の遊びと床板の隙間、ブレーキパッドの摩耗度、ブレーキホースの漏れなどを調べます。ブレーキがしっかり効くか、部品に損傷や消耗が見られないかもチェックします。
エンジンの動力をタイヤに伝えるのが動力伝達装置です。エンジンルーム内のエンジンオイルやトランスミッション、トランスファーの油量や漏れ、ファンベルトやパワーステアリングの緩み、損傷などです。
さらに、排気の状態やエアクリーナエレメントの状態、冷却水の漏れなども調べます。
点火プラグの状態や点火の時期、バッテリーのターミナル部分の接続状態などを見ます。
パワーステアリング装置のベルトの緩みや損傷の有無、バッテリーの液量や消耗度などを見ます。
タイヤの溝や、ひび割れなどの損傷の有無、ホイールナットやボルトの緩み具合などを見ます。
プロペラシャフトやドライブシャフトの損傷の有無、マフラーの損傷の有無や排気状態などを確認します。ヘッドライトなどの灯火類の点灯状況、ワイパーの作動状況、ウォッシャー液の噴射状況などもチェックされます。
24ヶ月点検の項目は、12ヶ月点検の26項目に30項目を加えた計56項目となっています。具体的にどのような項目で点検が行われるか見ていきましょう。
ハンドル操作の不具合やギヤ、ボックスの取り付けの緩み、ロッドやアームの緩みガタなどを調べます。パワーステアリングのベルトの緩みや損傷に加え、油漏れや取り付けの緩みがないかもチェックします。
タイヤの溝の深さや空気圧、損傷、ひび割れなどの有無、ホイールのナットやボルト緩みなどを点検します。フロントホイールベアリングやリアホイールベアリングのガタも調べます。
サスペンションの取り付け部や連結部の緩みやガタ、ショック・アブソーバの油漏れや損傷などを見ます。
MT車の場合クラッチの遊びや床板との間隔、トランスミッションの油漏れ、プロペラシャフトやドライブシャフトの連結部の緩みに加え、ダストブーツの損傷なども確認します。
点火装置の点火プラグの状態や点火時期、バッテリーのターミナル部分の連結、腐食による接続不良などを見ます。電気配線の接続部の緩みや損傷などもチェックされるでしょう。
エンジンの排気ガスの色や一酸化炭素などの濃度、エアクリーナエレメントの汚れやつまり、損傷などを確認します。また冷却装置のファンベルトの緩みや冷却水の漏れ、燃料漏れがないかなども見ます。
エンジンルーム内には有毒ガスの発散を防ぐ装置が備えられており、きちんと機能しているか、部品に損傷がないかを確認します。例を挙げると一酸化炭素等発散防止装置の配管の損傷や取り付けの状態などで、他にもブローバーガス還元装置や燃料蒸発ガス排出抑止装置などが備わっています。
マフラーの取り付けの緩みや損傷の有無、機能、そしてボディやフレームの損傷有無などを見ます。日常点検にも含まれるエンジンオイルやブレーキフルードなどの液量や劣化具合、灯火類の点灯状況、ワイパーの機能などもチェックしていきます。
3ヶ月もしくは6ヶ月点検というのは、バスやレンタカーなどの事業用車、トラックやけん引車などの貨物車に義務付けられている点検です。
自家用車も受けることはできますが、任意なので受けなくても問題ありません。一方、バスやトラックは受けないと法律違反となり罰則が科せられます。
特に高速バスや長距離トラックは短期間でかなり長い距離を走行するため、走行距離も多くなります。そのため、エンジンなどへの負担も自家用車より重く、トラブルが起こりやすいので短いスパンでの点検が必要となるのです。
車体が長く、車両重量なども重いので交通事故が起きると被害が大きくなるリスクもあります。そのため、検査項目数は多く内容も自家用車とは異なります。
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車検と法定点検の違い
公道を走行する車が、必ず受けなければならないと法律で明記されているのが「車検」です。車検は国が定める保安基準に満たしている車かどうかを検査します。
一方で、法定点検というのは車に不具合が生じているか否かを調べるための点検です。故障を未然に防ぐために点検し、必要な整備を行います。
車検を受けずに車検期限が切れた車両で公道を走行すると、無車検ということで法律違反となります。さらに、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金といった罰則が科せられます。違反点数も6点となり、少なくとも30日間の免許停止処分を受けることにもなるでしょう。
一方で、法定点検を行うのはドライバーの義務ではありますが、受けなくても罰則が科せられることはないという違いがあります。
法定点検を受けることは、ドライバーの義務です。しかし、自家用乗用車の場合、車検と違って行わなくても罰則がありません。
そのため、法律上は不利益を被ることはないでしょう。法定点検を受けずに期限が過ぎてしまった場合も同様に、何か罰則を科せられることはありません。
しかし、例えばメーカーの保証期間内に車が故障した場合の対応が違ってくることもあります。法定点検を受けることが保証の条件となっている場合が多く、点検を受けずに突発的な故障が起きても無償で修理してもらえません。
そのため、修理費用を請求されるかもしれません。一方で、バスやトラック、タクシーなどの事業用車は法定点検が法律で規定されており、決められた点検を受けない場合は罰則が科せられます。
事業用のバスやトラック、タクシーなどの車両が法定点検の期限を過ぎた状態で公道を走行した場合は、罰則か科せられるので注意が必要です。
車の法定点検は、ディーラーやカー用品店などで依頼してやってもらうことができます。業者が認証工場の場合は、点検後にステッカーが貼られます。
認証工場というのは一定規模の作業場や設備を備えており、分解整備などができる資格を有する整備士が在籍し、地方運輸局長が自動車分解整備事業者として認可した工場のことです。法定点検後に貼られるステッカーには、次回の法定点検期日が表示されています。
外から見るといつ法定点検を受けたのか、次回はいつなのかということも一目瞭然なので忘れにくいでしょう。
また、法定点検は認証工場でなくても受けることは可能です。ただし、法定点検のステッカーは貼られません。
認証工場で法定点検を受けた場合、フロントガラスに貼られたステッカーには次回の法定点検の実施時期が表示されています。しかし、その期日までに法定点検を受けずに、期日が経過してしまった場合は要注意です。
期限が過ぎた法定点検ステッカーをフロントガラスに貼ったままにしておくと、保安基準違反となってしまいます。フロントガラスに貼っても良いものは保安基準で定められており、ダイヤルステッカーもその一つです。
しかし、表示期間が過ぎたステッカーをフロントガラスに貼ったままにしておくこと自体、整備不良となってしまいます。勝手にステッカーを剥がして良いか悩むという人もいるかもしれませんが、期限切れのステッカーは貼ったままにしておくと違反となります。
ステッカーの裏側に警告文が記載されているはずなので、確認しておきましょう。
法定点検の期限が過ぎてしまった場合、もう点検が受けられないのではと思われがちです。しかし、基本的に次回の点検期限経過後であったとしても、法定点検を受けることは可能です。
特に申請などの手続きも不要で、ディーラーや整備工場などに法定点検を依頼して、通常通りやってもらえば問題ありません。むしろ、期限を過ぎたとしても受けておくのが得策です。
車の部品は日々少しずつ劣化しており、特に走行距離が多い場合は部品の消耗も進みます。そのため、安全に車を走行させるにはやはりプロの確かな目で車の細かな部分までしっかり点検しておいてもらったほうが安心できるからです。
また、トラブルが起きる前に劣化した部品を交換することで、ひどい故障を防ぐことができるとも言えます。もし点検を怠って重要な部分が故障したら、さらに修理費用がかさんでしまうことにもなりかねません。
定期点検を怠ったがために、メーカーの保証が受けられない可能性もあるので要注意です。例えば、新車で購入してから車のトラブルが生じて部品交換を余儀なくされた場合、メーカーの保証期間内であれば無償で修理してもらえます。
しかしメーカー保証を受けるのに、法律で義務付けられた法定点検を受けていることが条件となる場合があります。故障しても法定点検を受けていないと保証対象外となり、実費での修理となってしまうリスクがあるのです。
そうならないように、やはり法定点検は受けておくべきでしょう。
法定点検の依頼先としては、ディーラーなどの車販売店や車検専門店、カー用品店やガソリンスタンド、民間の整備工場などが挙げられます。
ディーラーは部品交換の際に純正部品を使うのと、技術料が含まれるので割高になることが多いです。ただし、整備技術の質は高いので安心して任せられます。
ガソリンスタンドやカー用品店は純正以外の部品も使用するためリーズナブルとなる傾向もありますが、店によっては技術力に差が生じます。
整備工場はベテランの整備士がいれば技術力が高いですが、小さな工場だと部品が取り寄せとなるので、やや割高になる場合もあるでしょう。
各業者の費用を比較してみましょう。
軽自動車が9,000円~15,000円程、普通車が排気量のクラスにもよりますが、10,000円~20,000円程が相場となっています。
7,000円~15,000円程です。
5,000円~15,000円程です。
6,000円~20,000円程です。
法定点検にかかる時間は業者や車の状態によって異なります。
12ヶ月点検だと検査項目も多くないので、車検専門業者なら1時間位で終わることも多いです。ディーラーやカー用品店、整備工場なども1~2時間程度で済むはずです。
一方で、24ヶ月点検となると12ヶ月点検の倍位の検査項目があり、タイヤを外したりと大掛かりな点検になります。また、車検と一緒に申し込みをして点検の後に車検を行うという便宜上やや時間がかかります。
ディーラーでは1日で終えるのは難しいため、2~4日程車を預けることになりますが、代車を無料で貸してもらえる場合がほとんどです。
車検専門業者やカー用品店なら1~2時間程度で済むことがあります。ただし、車検証は即日発行してもらえず、車検証の代わりになる検査標章を受け取り、車検証は後日受け取ることになります。
整備工場はディーラーよりも短期間ですが、1~2日程度かかるでしょう。代車はサービスで貸してもらえることが多いため、安心です。ただし、整備箇所が多かったり手の込んだ修理が必要となったりした場合は、車検専門業者であっても数日整備に時間がかかることもあるので、覚えておいてください。
セルフ点検もできるがハードルが高い
ディーラーや車検専門業者などの業者に法定点検を依頼すると、どうしても代行手数料がかかります。少しでも費用を抑えたいなら、自分で点検することも可能です。
セルフ点検は車の整備に詳しい人ならできるでしょう。ただし、比較的簡単にできる日常点検と違って、素人では難しい点検項目もあります。
間違った部品を外したり付け方を誤ったりすると、車の安全性にも関わります。慣れていない人は無理しないでプロに頼んだほうが安心です。
またセルフ点検では十分な点検ができず、トラブルや故障を見落とすリスクもあることを忘れないでください。