ディーラーで新車を購入すると、半年後に「6カ月点検」の案内が届きます。この6カ月点検と、法定12カ月・24カ月点検、そして車検との違いは何なのでしょう?

実は新車購入後の6カ月点検に法的義務はなく、ディーラーが独自で行っているサービスです。

この記事では、6カ月点検を受けた場合と受けない場合でどう違うのか、ユーザー側のメリットとは何なのかといった疑問について、解説していきます。

新車は「6カ月点検」を勧められる

ディーラーで新車を購入すると、半年後に6カ月点検の案内が届きます。

本来、法定点検として受けることが義務付けられているのは12カ月点検と24カ月点検の2つですが、ディーラーから案内される6カ月点検は、それらとは全くの別物です。では、この6カ月点検をおすすめしてくる理由は何なのでしょう?

法定点検や車検との関係、6カ月点検の意味とそのメリット、具体的な点検内容などを以下で説明していきます。

車の主な点検・検査内容

車の主な点検・検査内容
ディーラーから半年ごとに勧められる点検を、ここでは「6カ月点検」と表記しています。では、法定点検として受ける義務がある12カ月点検や24カ月点検、そして車検と6カ月点検はどのような関係で、どんな点に違いがあるのでしょう?

新車6カ月点検

ディーラーから新車を購入すると、購入から半年を迎える頃に、新車6カ月点検と呼ばれる通知が届きます。

これは通知のタイミングや方法に特にルールがあるわけではなく、ディーラー独自の措置です。そのため、ハガキで通知が来ることもあれば電話というケースもあるでしょう。

そしてこの6カ月点検は、法定点検や車検と違って受ける法的義務はないので、点検を受けられなかったとしても特に問題ありません。

しかし、点検を受けるメリットは大きいと言えます。多くの場合無料で受けられる上に、もし事前に故障や不具合を見つけていたらその箇所を修理してもらえます。もちろんそれが保証の範囲内であれば、修理自体が無料です。

点検を受けることで初めて見つかる不具合があるかもしません。そうした可能性を早めに摘み取っておくことで、安心して車を運転することができるでしょう。

12カ月点検(法定点検)

法的義務のない6カ月点検に対して12カ月点検は「法定点検」と呼ばれることからも分かる通り、定期的に受けることが法律で定められています。

12カ月点検は車の故障を事前に防ぐことを目的に行われ、これによって異常や不具合が見つかれば修理・交換が行われるでしょう。

道路運送車両法では第48条に、「自動車の使用者は車の種別・用途に合わせてしかるべき時期に点検を行うべし」と定められています。12カ月点検や次に述べる24カ月点検などの法定点検が行われる根拠となるのは、この条文です。

12カ月、すなわち1年ごとに点検を受けると、点検を受けたことを証明するステッカーが発行されます。ステッカーを所定の場所に貼っておけば、きちんと点検が行われていることの証になるでしょう。

法的義務があるのに加えて証明ステッカーまで発行される12カ月点検ですが、実際にはこの点検を受けなくても罰則がありません。そのため、案内がディーラーなどから届いても点検を受けない方もいます。

24カ月点検(法定点検)

24カ月点検も法定点検で、車の使用者はこれを受ける法的義務があります。しかし、受けなくても罰則がないという点は12カ月点検と同じです。大きな違いは点検項目が多いこと、車検と同時に行われることでしょう。

点検項目については12カ月点検が27項目となっているのに対し、24カ月点検は57項目と約2倍になるので、いかに24カ月点検の重要度が高いかが分かります。これは車検と同時に受けるというのも理由の一つです。

車検は、車が公道を走るにあたり安全面・環境面の双方から見て保安基準を満たしているか否かを点検するものです。多くの場合2年ごとに行われるので、同時に24カ月点検を実施することで車の安全性を保持すると同時に車検そのものもスムーズに済ませることが可能になります。

24カ月点検の重要性は比較的認知度が低いですが、車検はこの点検によって円滑に運用されていると言えるでしょう。

点検を終えると、12カ月点検と同様にステッカーが交付されます。

車検

車検は多くの場合2年ごとに行われ、車の安全性などを点検し、その車両が保安基準を満たしており公道を走っても問題ないかどうかを確認するためのものです。

車検の前には24カ月点検が実施され、その段階で必要に応じて劣化箇所のパーツ交換などが行われます。そのため、専門業者に24カ月点検と車検を依頼すれば、よほどのことがない限り検査にはパスするでしょう。

一方、車検は1回ごとの費用が数万円~10万円単位に及ぶことから、節約のために業者に依頼せず、自分で検査を行う「ユーザー車検」という選択肢もあります。

ユーザー車検は、車検費用のうち法定費用の部分だけが自己負担となります。(修理費用などは別)ただし、専門知識が必要です。また、費用面では確かに節約になりますが、法定点検は別途受けなければならないので専門業者へ依頼する必要があり、二度手間になることは否めません。

その他の定期点検

上記に挙げたものの他に、少し特殊な法定点検として「法定3カ月点検」があります。

これはトラックやバスといった特に安全性が重視される事業用の車両が対象となっており、法定点検の中でも最もスパンが短いものです。

〇カ月点検や車検などの違いとは?

〇カ月点検や車検などの違いとは?
前項までで、12カ月・24カ月点検、そして車検と6カ月点検のそれぞれの内容を説明しました。

次は切り口を変えて、点検を受ける法的義務の有無や作業内容、費用面から見た場合のそれぞれの違いを説明してきます。

法的義務・罰則の有無

車の6カ月点検と12カ月・24カ月点検などの法定点検、そして車検の違いは、まず法的義務と罰則の有無が挙げられます。それぞれユーザーに義務付けられているもの、罰則がないもの、場合によっては罰せられるものなどルールが異なっています。

6カ月点検は、法的義務もなく罰則もありません。半年ごとにディーラーが点検を勧めてくるのは、あくまでもディーラーの判断と業界の慣習に基づくものです。

12カ月点検と24カ月点検は、いずれも受けることはユーザーの法的義務です。しかし受けない場合の罰則はないので、ルールの厳格さで言えば車検には劣ると言えるでしょう。

車検は、有効期間満了日までに受検せずに「車検切れ」になってしまっても、それ自体は違法ではありません。問題はこの車検切れの状態で公道を走った場合で、確実に処罰されるので注意が必要です。

分解整備作業の有無

6カ月点検が12カ月・24カ月点検と大きく異なる点は、車の分解整備作業を行うかどうかです。

法定点検では、車の安全走行に関わる重要なパーツを点検します。特に分解整備という場合の点検箇所は、原動機(エンジン)やミッションなどの動力伝達装置、ホイールなどの走行装置を含む7つに大別され、正式には「特定整備」という名称の点検作業が行われることになります。

一方6カ月点検では、内容はディーラーごとに異なるので一概には言えませんが、少なくとも分解整備は行わずにブレーキの効き具合の確認やタイヤの空気圧をチェックするなど、ユーザーでも日常的にできるような点検が主になります。

点検内容の違いを見ても、法定点検の重要度の高さが分かります。少し車に詳しい方は、6カ月点検の水準のチェック内容なら日常的に自分で実施していることも多いでしょう。

費用の違い

ディーラーによる6カ月点検と、法定12カ月・24カ月点検は費用面でも異なっています。

6カ月点検は基本的に無料なのに対し、12カ月点検は約10,000~16,000円、24カ月点検は約16,000~20,000円です。

ただし点検の結果、整備やパーツ交換などが必要になればさらに金額が増すこともあります。

また多くの場合、24カ月点検は車検費用と合算されて明細書に金額が記されることになります。

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「6カ月点検」の意味は?

「6カ月点検」の意味は?
ここまで法定点検・車検と6カ月点検との違いについて、いくつかの視点から説明しました。以上の内容を踏まえて、ここで改めて「6カ月点検」を受けることにはどんな意味があるのかを考えていきましょう。

6カ月点検のメリット

ディーラーから勧められる6カ月点検は、ユーザーにとってもディーラーにとってもメリットがあります。

デメリットについては特になく、しいて言えば点検を受けに行く時間と手間がかかることくらいです。

以下では、そのメリットについて解説していきます。

ユーザーにとってのメリット

ユーザーにとって6カ月点検を受ける最大のメリットは、故障や不具合などが見つかった場合にメーカー保証が受けられることです。メーカー保証にも有効期間があるので、その期間内に不具合を直すことができます。

また、こうした点検をこまめに受けていると、メンテナンスノートに必ず記録が残されます。将来的に車を下取りや売却に出す際、こまめに点検を受けていたことが分かれば、より高額での査定が期待できるでしょう。

ディーラーにとってのメリット

ディーラー側から見た6カ月点検の持つ大きなメリットは、車の整備点検や顧客の囲い込みだけにとどまりません。車検で多額の出費になることを見越して、そのタイミングで車を買い替えようと考えるユーザーにアプローチをかける機会を作ることにもなります。

つまり、6カ月ごとに定期点検を受けていれば、車検の6カ月前には、その車のユーザーはディーラーのもとを訪れることになります。その時に、次の車検で費用がかさむ前に新しい車に乗り換えることを勧めることができます。

6カ月ごとのスパンでこまめに車の点検を受けるユーザーは、車にこだわりがある方が多いでしょう。そういった方は、ディーラーにとっても車両販売を進めていく上で大切な存在です。

ディーラーにとって車両整備よりも車両販売という側面から見たメリットが特に大きいと言えます。こうした思惑を踏まえつつ、ユーザー側も点検の機会を上手に活用しましょう。

6カ月点検を受けた方がいいユーザーとは?

6カ月点検を受けた方がいいユーザーとは?
ここまで、6カ月点検の内容やメリットを確認しましたが、人によっては、それでも「6カ月点検なんて受ける必要ある?」と疑問を感じるかもしれません。

そこで、以下では特に6カ月点検を受けたほうがいいタイプのユーザーを紹介していきます。

日常点検をしないユーザー

車の日常点検をあまりこまめに行わないタイプのユーザーは、6カ月点検を受けることをおすすめします。

新車を購入してまだ間もないとはいえ、6カ月の間に目に見えない故障や不具合が起きていないとは限りません。むしろそのようなユーザーにとっては、6カ月点検や定期的なオイル交換のために業者のところに車を持ち込むのは「いい機会」だと言えるでしょう。

車の安全性をより確実に保つには、日常点検とあわせて定期的なプロの目での点検を受けることが大切です。

長距離・悪路の走行が多いユーザー

長距離走行や悪路での走行が多いユーザーも、6カ月点検を受けることをおすすめします。

購入したばかりの新車でも、酷使すれば不具合が起きる可能性が高まります。こうしたユーザーにとっても、6カ月点検は「いい機会」だと言えるでしょう。

定期点検・車検時の出費を抑えたいユーザー

12カ月・24カ月点検や車検時の出費をできるだけ抑えたいユーザーにとっても、6カ月点検はおすすめです。

なぜなら、将来的な法定点検や車検でかかるかも知れない修理費用を「先に払っておける」ということになるかもしれないからです。

人の病気と同じで、車の故障や不具合も放置すれば悪化します。早期発見が大切です。6カ月点検によって早めに発見できれば、大がかりな修理や部品交換になる前に少ない費用で直せる可能性があります。

定期点検や車検を自分で行うには?

定期点検や車検を自分で行うには?
6カ月点検の内容を見ると、自分でもできそう!と感じる方もいるかもしれません。

そこで以下では、6カ月点検をはじめとする法定点検や車検は自力でできるものなのか、またその難易度はどれくらいなのかを見ていきましょう。

6カ月点検を自分で行う場合

6カ月点検は、法定点検と異なり「目視」によるチェックが基本になるので、比較的簡単です。ディーラーに依頼すると車種や業者ごとに点検項目が異なりますが、主なものの一例を以下で紹介します。

まず、安全運手に欠かせないエンジンとブレーキについてチェックしましょう。エンジンは、かかり具合に異常がないか、異音はしないかを確認し、ブレーキは踏みしろを点検したり、踏んだ際に異音がないかを確認します。

後はボンネットを開けてバッテリー周辺、オイル関係の点検をします。また、ワイパーやライトは正常に作動するか、シートベルトに問題はないか、そしてタイヤの空気圧や下回りに異常がないかどうかを見ておきましょう。

以上の内容は、車に多少慣れ親しんでいる方ならそう難しくはないかもしれません。ただし、購入からわずか6カ月とはいえ、悪路や長距離の走行などで車を酷使している場合はより綿密にチェックしてください。

12カ月・24カ月点検を自分で行う場合

次に法定点検である12カ月・24カ月点検を自分で行う場合ですが、いずれも法律的には問題ありません。ただし、点検項目が数十か所にも及び、車の仕組みに関する専門知識がなかったり自信がなかったりという場合は、専門家に任せたほうが安全でしょう。

特に難易度が高いのが下回りの点検です。平地で全てのタイヤをジャッキアップし、車の下に入り込んでチェックを行う必要があります。

簡単か難しいかという以前に、安全に行うためにガレージジャッキで持ち上げつつリジットラック(通称:ウマ)で支える作業が必要なので、決して気軽にできるものではありません。

しかし、目視でクリアできるものもあります。例えばタイヤやホールの状態チェック、エンジンルームの水漏れ・油漏れの有無の確認などは比較的簡単です。こうした項目は6カ月点検とも共通しています。

定期点検を自力で行えれば費用の節約にもなります。興味がある方はチャレンジしてみてもいいでしょう。

ユーザー車検を受ける場合

車検を自分で行う方法を「ユーザー車検」といいます。

ユーザー車検の最大のメリットは、通常の車検なら数万円から十数万円の費用がかかるところが、最低限の法定費用などで済むことです。

ただし、ユーザー車検は専門の知識や技術が必要な上に、ちょっとした操作ミスでやり直しになることもあるなど、難易度は高いです。

また、法定点検は別物となるので、車の扱いに慣れている上級者向けの選択肢と言えるでしょう。

まとめ

①ディーラーで新車を買うと「6カ月点検」を勧められる
②車の点検や検査には、法定12カ月・24カ月点検と車検がある
③点検・検査ごとに、法的義務、分解整備作業の有無、費用が異なる
④6カ月点検に法的義務はないが、ユーザーにもディーラーにもメリットがある
⑤6ヶ月点検を受けたほうがいいユーザーの特徴は、日常で車の点検をしない方、車を酷使している方、維持費を抑えたい方
⑥車の点検や検査は自力で行うこともできる

※本記事は公開時点の情報になります。
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