車の買取で「瑕疵担保責任」と呼ばれていた考え方は、現在の民法では「契約不適合責任」として整理されています。売却した車が契約時に説明された種類・品質・状態に適合しない場合、売主が契約上の責任を問われる可能性があります。

車の売却では、修復歴、冠水歴、故障、警告灯、メーター交換など、把握している情報を査定時に申告することが重要です。契約書では、何を申告事項とするか、引き渡し後に不具合が見つかった場合の減額・解除・補償、通知の方法を確認しましょう。

この記事では、瑕疵担保責任と契約不適合責任の関係、売主の責任が問題になる条件、買取手続きで確認する契約条項を解説します。

車の買取にかかる瑕疵担保責任について

売買契約をめぐる民法の法律用語で「瑕疵担保責任」というものがあります。現在は「契約不適合責任」という言葉に変わっていますが、大まかな意味は同じです。

以下では、この概念が車の売買契約においてどのように関係してくるのか詳しく解説していきます。

瑕疵担保責任について

瑕疵担保責任について
瑕疵担保責任は、民法改正前に、売買の対象に通常の注意では分からない欠陥があった場合の売主責任を説明するために使われていた用語です。現在は、引き渡されたものが契約で合意した種類・品質・数量などに適合しているかを基準とする「契約不適合責任」として整理されています。

中古車の買取で確認するポイントは、次のとおりです。

①契約内容に適合しているか

修復歴、冠水歴、重大な故障、警告灯、メーター交換などについて、契約書や査定書の説明と実際の車両状態が一致しているかを確認します。

②売主が何を申告したか

把握している事故・修理・不具合は、口頭だけでなく申告書や契約書へ記録してもらいます。不明な事項は推測で断定せず、分からないことも含めて伝えましょう。

③買主がどの対応を求められるか

契約内容に適合しない場合、修理、代金の調整、契約解除、損害の補償などが問題になる可能性があります。どの対応が適用されるかは、不適合の内容と契約条件によって異なります。

④通知・確認の条件

引き渡し後に不具合が見つかった場合の連絡方法、通知期限、再査定、減額、契約解除の条件を契約書で確認します。具体的な期間は契約や法令上の条件を確認して判断します。

売却前には、修理明細、点検記録、事故時の写真などを整理し、申告した内容の控えを残しましょう。トラブル時は、買取店の説明だけで判断せず、契約書と申告記録を照合して対応します。

瑕疵がある車を売却した場合はどうなる?

瑕疵がある車を売却した場合はどうなる?
ここまでで、瑕疵担保責任という概念の意味と、中古車売買にどのように関係するのかを解説してきました。

次に、「瑕疵」がある車を買取業者に売却してしまったケースについて、その瑕疵の存在を知っていた場合とそうでない場合に分けて見ていきましょう。

瑕疵があると知らずに売却した場合

車に「瑕疵」があることを知らずに売却した場合、これまでは売り手が瑕疵担保責任を負うとされてきました。

この条件はかなり厳しく、その瑕疵の存在を知っていたかどうかに関わらず責任を負わされる「無過失責任」が原則だったのです。

このことから、瑕疵担保責任は怖いルールだという認識が長らく根付いていました。

例えば、中古で購入した車を売却したら、前の持ち主が起こした事故によって故障が発生したという場合でも責任を負わされてしまうということです。

しかし、2020年4月の法改正で瑕疵担保責任が契約不適合責任に変わってから、その内容も変わりました。

現在、売主が責任を負うのは納品するまでの間に売主が知っていた瑕疵(欠陥など)に限るとされています。そのため、現状では上述の例の場合だと、車の売主は前の持ち主が起こした事故を原因とする故障については責任を負わないことになります。

瑕疵があると知っていて売却した場合

車に瑕疵があることを知っていて売却した場合、売主は買主に対して瑕疵を隠して販売したとして瑕疵担保責任を負うことになります。

これは、瑕疵についてあえて黙っていた場合も「瑕疵はない」と嘘をついた場合も同様です。

また、新設された契約不適合責任では、買主の利益の保護がさらに強くなっていると同時に売主の責任もまた重くなっています。損害賠償請求や契約解除の他に、追完請求や代金減額請求も求められることがあります。

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瑕疵担保責任をめぐるトラブルと対策について

瑕疵担保責任をめぐるトラブルと対策について
ここからは、瑕疵担保責任をめぐるトラブルの事例やその対策について、主に販売店から個人が購入したケースを例に挙げて解説していきます。

トラブルの実例

トラブルの実例としては、購入直後から不具合が頻繁に起きていて、いくら修理しても直らない、といったケースが挙げられます。

特に、従来は買主が「契約の目的を達成できない」ことを要件として瑕疵担保責任が問われていましたが、契約不適合責任の観点では「そもそも契約内容に適合しない」と認められることで責任を問われます。

この他のトラブルの実例としては多岐に渡り、車の走行距離の詐欺や隠された事故歴、故障の隠蔽などです。

「4WDと聞いて購入したが実際には2WDだった」といったケースも該当します。

悪質な業者も存在する

車の買取に関しては悪質な業者も存在します。

例えば、一度は買取査定を行って買い取った車を、後になってから欠陥が見つかったとして減額してくるケースです。

こうした場合に業者側が盾に取るのが、売主が責任を負う瑕疵担保責任(契約不適合責任)です。

他には、車を売却して何カ月も経ってから、瑕疵が見つかったからと契約の解除を求めてくるようなケースもあります。買い取った車が期待した価格で売れないと分かったため、難癖をつけて返してしまおうというわけです。

悪徳業者対策としての消費者契約法

悪徳業者から身を守るためには、消費者契約法が役立ちます。同法の第10条は、消費者(買主)の利益を一方的に害する条項は無効としています。

もしも契約書に売主の過失の有無に関係なく、一方的に契約を解除できるような文言があればそれが該当します。

そのため、瑕疵担保責任や契約不適合責任を盾にして契約解除を主張してくる業者に遭遇したら、この法律を根拠に反論することをまず考えましょう。後は弁護士などに相談するのが一番です。

トラブルに巻き込まれたら

瑕疵担保責任をめぐるトラブルに巻き込まれた場合は、消費者センターや国民生活センター、日本自動車購入協会の「JPUC車売却消費者相談室」などにどう解決すればいいか相談しましょう。

これらの機関では、消費者トラブルなどの相談を受け付けています。また、電話相談だけでは具体的な解決策が見えてこないようであれば、売買契約書などを用意して法テラスや弁護士などに相談するのも選択肢の一つです。

瑕疵担保責任を問われないようにする方法について

瑕疵担保責任を問われないようにする方法について
ここまでで、瑕疵担保責任という法的概念が中古車売買のシーンでどのように関係してくるかを解説してきました。

最後に、車を買取業者に売却する際、売主が後で瑕疵担保責任を問われないようにするための方法について説明します。

車の事前チェックは怠らない

車を売却するにあたって後で瑕疵担保責任を問われないようにするために、買取査定を受ける前に車の状態を事前にチェックしましょう。

注意すべき箇所は、エンジンルーム、タイヤ、ボディ、内装、走行距離、修復歴などです。

プロの査定士なら、素人が見ても気付かないような「瑕疵」にも、すぐに気付くでしょう。しかし、絶対とは言えないので、前もってこちらで車の状態をチェックしておき、査定時にきちんと情報提供することが大切です。

査定時に瑕疵の存在を隠さない

査定を受ける際、その車に故障や不具合など「瑕疵」にあたるものがあれば、隠したり嘘をついたりせずに全て伝えてください。

メンテナンスノートも用意し、過去のトラブルや修復歴も正直に申告しましょう。

瑕疵の存在を申告すると、査定額が下がりそうで抵抗があるかもしれません。しかし、軽い気持ちで隠してしまうと、後で損害賠償や契約解除、最悪の場合は訴訟沙汰に発展する可能性もあるので、注意しましょう。

契約書の内容を確認する

中古車買取の手続きでは、売買契約が成立した段階で交付される契約書にも、しっかり目を通しておきましょう。

通常、契約書には瑕疵担保責任の範囲や期間、その他の重要な事項が明記されていますので、よく読んでからサインするようにしてください。

しかし、専門的な内容の長文を熟読して読み通すのは困難だと感じるかもしれません。その場合は、あらかじめ契約書の概要を調べておき、瑕疵担保責任も含めて重要だと思われる項目について、買取店の担当者から直接話を聞いて確認してもよいでしょう。

会話を録音する

後で瑕疵担保責任を問われないように万全を期すなら、買取業者との会話を録音するという手もあります。

録音しておけば、約束事や説明内容が後で異なる場合に証拠として利用することができます。特に「言った・言わない」の問題に発展した場合に有効です。

ただし、プライバシーの問題でもある上、相手の了承を得ずに録音を行うことは違法行為となることがあります。くれぐれも盗聴行為はせず、録音する場合は事前に相手方の許可を得るようにしましょう。

信頼できる業者を選ぶ

悪徳業者を避けるためには、信頼できる買取店を選ぶことも大切です。口コミや実績、社会的信頼性などをポイントにして、買取店を探すとよいでしょう。

査定時の車の状態や契約書の内容は素人には分かりにくいので、査定から見積もりを提示するまでの間に、不明な点は気軽に尋ねられる業者だと信頼できます。回答をはぐらかしたり、早く契約するように迫ってきたりするような業者は避けましょう。

複数の業者に査定を依頼することも重要で、2社~5社程度の複数の買取店と並行して査定のやり取りを進めてましょう。その中からより信頼できそうで、なおかつ高値で買い取ってくれるところがあれば申し分ありません。

また、「JADRI」という団体に加盟しているかどうかを基準にして買取店を絞り込むのも有効です。JADRIに加盟している業者は、買取後の再査定を禁止しているので安心して利用できます。

クレームガードという選択肢もある

万が一、瑕疵担保責任を問われた場合のために、クレームガード保証をつけておく方法もあります。

クレームガード保証とは、瑕疵担保責任に問われる事態になった場合に、売主が損害を受けないようにするための保証です。

この保証に加入していれば、車を売却した後のクレームに保証範囲内で対応してもらうことが可能となります。

取り扱っている買取業者は査定の際に加入をすすめてくることがあるので、売却する車の状態に不安があれば利用するとよいでしょう。

ただし、保証が適用される範囲には限りがあるので注意しましょう。加入前に保証となる対象の範囲や期間、補償内容についてきちんと確認しておくことが大切です。

よくある質問(FAQ)

車買取における瑕疵担保責任とは何ですか?
民法改正前に使われていた用語で、現在は契約内容に適合しているかを基準とする契約不適合責任として整理されています。売却車の状態が契約時の説明と違う場合に、売主の責任が問題になることがあります。
売主が不具合を知らなかった場合でも責任を負いますか?
知らなかったという理由だけで、必ずしもすべての責任を免れるとは限りません。最終的な責任の有無は、不具合の内容だけでなく、契約書に書かれたルールや、買取店がどのような査定を行ったかなどを総合的に見て判断されます。
契約不適合があると買主は何を求めることがありますか?
不具合の内容に応じて、修理、減額、契約解除、損害賠償などを求められる可能性があります。実際にどの対応をとるかは、契約書の内容や不具合の状況によって変わります。トラブルを防ぐために、契約を結ぶ前に「再査定・減額・解除のルールや連絡期限」を必ず確認し、査定時に伝えた内容の控えをしっかり手元に残しておきましょう。

まとめ

①瑕疵担保責任は買主を保護する民法の法律用語で、中古車売買にも適用される
②瑕疵がある車を売却すると、売主が責任を負う
③瑕疵担保責任を悪用して、査定後に減額する悪徳業者もいるので注意が必要
④車の買取査定では瑕疵を隠さずに申告しなければならない
⑤どの時点の瑕疵が問題になるのか、時効はいつまでなのかも重要
⑥売却前に車をよくチェックする、不具合がある場合は正直に申告する、クレームガードを付けるなどの方法で瑕疵担保責任を問われないようにすることが大事

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