自動車保険のグレード(等級)という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。自動車保険の新規加入時や切り替え更新時に耳にしたことがあると思いますが、その概要や保険料との関係性を詳しく知っているという方は少ないかもしれません。

そこで、今回は自動車保険のグレード(等級)とはそもそも何かというところから、保険料とどのように関わってくるのかを解説していきます。

自動車保険のグレード(等級)とはどんなもの?

まずは、自動車保険においてグレード(等級)というものがどのような意味を持ち、どのような役割を果たしているのかについて説明していきます。

自動車保険の等級は加入者の「格付け制度」

自動車保険の等級は加入者の「格付け制度」
自動車保険におけるグレード(等級)とは、自動車保険という大きなくくりの中で、加入者がどの階級にいるのかを示す「格付け制度」のようなものです。

自動車保険のグレード(等級)は、1等級~20等級に区分されています。(一部の共済保険では22等級まであるところもあります。そして、数字が大きいほど階級が上であると、一目で判断できるようになっています。

ちなみに、契約者が所有・使用する自動車の総台数が9台以下のものを「ノンフリート契約」、10台以上のものを「フリート契約」と言い、この等級制度は前者にしか存在しません。そのため、この等級制度のことを「ノンフリート等級」と呼ぶことがあります。

自動車保険に初めて加入する時は「6等級」からスタート

自動車保険を新規で契約すると、1等級からではなく6等級からスタートします。そして、それは加入者の年齢・運転免許の所有年数・帯の色・運転歴・事故違反歴など一切関係なく、自動車保険の加入歴にのみ影響されます。

例えば、20年間無事故無違反での運転歴があり、ゴールド免許を所持している優良ドライバーが、新規で自動車保険に加入するとしましょう。この方がこれまで一度も自動車保険に加入したことがない、もしくは何らかの理由で保険契約が断然している場合、新人ドライバーと同じく「6等級」に格付けされるというわけです。

ただし、1台目の契約が11等級以上になっている方が新規で2台目を契約した場合に限り、7等級からスタートする「セカンドカー割引」が適用されるケースもあります。

グレード(等級)の数字が上がると割引率が大きくなる

自動車保険の等級は「格付け制度」となるため、上位等級を持っている方にはそれなりの特典が用意されています。自動車保険の等級が上がると保険料の割引率が増え、保険料が安くなる仕組みです。

どの程度、保険料が安くなるのか、6等級の方と20等級の方の加入条件(車種・年式・用途など)をそろえ、保険料を比較してみましょう。

等級による保険料の割引率は各保険会社共通で、6等級の場合は13%割引、20等級の場合は63%割引(無事故)と決まっています。

そのため、元となる年間保険料が50,000円だとしたら、6等級の方が「43,500円」なのに対し、20等級の方は「18,500円」です。(保険料が25,000円も安くなります!)

全く同じ契約内容だったとしても、6等級と20等級ではこれだけ保険料の差が生じるということです。

グレード(等級)の数字が下がると割引率が小さくなる

反対に等級が下がると保険料の割引率が減っていくため、当然保険料も高くなります。また、4等級を切ると保険料は割引されず逆に割り増しされるため、保険料はさらに高くなっていきます。

先ほどの例をもう一度引き合いに出すと、元となる年間保険料が50,000円だった場合、6等級の方の保険料は「43,500円」でした。これがもし1等級まで下がってしまうと、割引ではなく108%の割増率が加算されるので保険料は「104,000円」になってしまいます。

この等級の上下による割引率と割増率は、特約の付帯や車両保険料を含む、すべての保険料に影響を及ぼします。つまり、自動車保険の保険料を節約するためには等級を地道に上げていき、下げることがないようにすることが重要です。

自動車保険のグレード(等級)が変化する条件とは?

自動車保険のグレード(等級)が変化する条件とは?
ここまでの解説で、自動車保険の等級が保険料に大きく影響を及ぼすことが分かったでしょう。

ここからは、自動車保険の等級がどのような要因で上下するのかについて説明していきます。

自動車保険のグレードは1年に1等級ずつ上がっていく

自動車保険は、加入者が事故を起こして相手側に損害を与えた、もしくは自らが損害を被ってしまった場合、それぞれの損害を補償するものです。

そのため、保険会社は事故リスクが高いと考えられる方から多く保険料を徴収し、事故リスクの少ない方の保険料を安くするため、この等級制度を採用しています。

そして、各保険会社は「1年間の保険期間中に一度も事故を起こしていないこと」を、事故リスク判定の判断基準としています。しかし、民間会社である保険会社が、警察や行政も介入していないような小さな事故をすべて把握することは現実的に不可能です。

そのため、各保険会社は「契約期間中一度も保険を適用しなかった」ことをもって事故がなくそのリスクが下がったと判断し、その加入者の等級を1つ上げます。

極端な話をすると、どんなに重大な事故を起こしたり、遭遇したりしたとしても、その損害をすべて自前で賄い保険を使わなかったら、次の更新で等級は1つ上がるわけです。そのため、相手のいない自損事故で損害の程度が小さい場合、自前で修理をしたほうがコスト的に安上がりになるケースも多々あります。

反対に下がる時は一気に3等級ダウンする!

どんなに規模が小さく損害が些少で済んだ事故であったとしても、保険を適用して補償を受けた場合、翌年の更新で自動的に保険の等級は下がります。

事故の種類によって下がる等級は異なりますが、ほとんどの場合で一気に「3等級」下がってしまいます。

3等級ダウン事故の例は以下の通りです。

  • 他人にケガをさせ、対人賠償保険を適用した
  • 他車との衝突で車や物を破損し、対物賠償保険を適用した
  • 単独事故や当て逃げなどにより、契約車両を破損し車両保険を適用した

例えば、事故前に10等級だった方が3等級ダウン事故を起こして保険を適用し3等級下がると、46%だった割引率が、事故あり7等級の14%まで下がります。

この時、元の年間保険料が50,000円だったとすると、27,000円だった保険料が43,000円になってしまいます。

その上、保険等級が上がっていくのは1年に1つずつなので、最短でも3年間は無事故(保険を適用しない)を続けないと、元の水準には戻りません。

等級が1等級ダウンする事故の例

事故を起こして保険を適用した場合、ほとんどのケースで3等級ダウンすると述べましたが、1等級のダウンで済む事故もあります。

1等級ダウン事故の例は以下の通りです。

  • 盗難・落書き・台風による被害で車両保険を使った場合
  • 飛来物(飛び石など)との衝突で被害を受けて車両保険を使った場合

例えば、事故前に10等級だった方が1等級ダウン事故を起こして保険を適用し1等級下がると、46%だった割引率が、事故あり9等級の18%まで下がります。

この時、元の年間保険料が50,000円だったとすると、27,000円だった保険料が41,000円になってしまいます。

しかし、この場合は1年間無事故で(保険を適用することなく)過ごせば、保険料は以前の水準に戻ります。そのため、被害の程度が大きい場合は保険を適用したほうが、総合的に見て自己負担が少ないケースも多いでしょう。

ノーカウント事故と等級が一切ダウンしない事故もある

自賠責保険を含めた自動車保険は、本来事故に遭遇した損害を被った被害者の金銭的負担を軽減するために存在するものです。

そのため、自動車保険の補償対象となる事故で保険金を受け取ったとしても、等級が下がらない事故も存在します。それを「ノーカウント事故」と呼びます。

例えば、人身傷害保険や搭乗者傷害保険など自分や同乗者・搭乗者のケガの治療費(実費)や、後遺障害による逸失利益、介護料といった「人の損害の補償」を受け取ったとしても、翌年の等級は下がりません。

それに関連して、以下の各種特約のみを適用した場合も、等級ダウンに値する事故としてカウントされることはありません。

  • 無保険車傷害特約
  • 被害者救済費用特約
  • ファミリー傷害特約
  • ファミリーバイク特約
  • 弁護士費用補償特約
  • 自転車賠償特約

なお、上記の特約に関しては、保険会社によって故障やノーカウント事故としての取り扱い(事故の種類や補償範囲)が異なる場合があります。そのため、加入時にどこまでがノーカウント事故として扱われるのか、しっかり確認しておくようにしましょう。

事故有係数および事故有係数適用期間について

事故による等級ダウンの解説をしている中で「事故あり〇等級」という表現を使用しましたが、これは「事故有係数を適用されている等級」という意味です。

事故有係数とは、契約中に事故があって保険を適用した場合、次回締結する契約の等級が7等級以上のケースで適用される割引率のことです。

例えば、同じ9等級でも「事故を起こさず8等級から上がってきた方」と「事故を起こし12等級から下がってきた方」がいます。

この時、事故を起こしていない9等級の方と事故を起こした9等級の方の割引率が同じだと不公平感があります。その不公平感をなくすため、事故を起こして9等級になった方の割引率を小さくしているのが事故有係数というわけです。

ちなみに、「事故なし9等級の割引率は44%」ですが、「事故あり9等級の割引率は18%」とかなり大きな差があります。

また、事故有係数はダウンした等級と同じ年数(3等級ダウン事故は3年間、1等級ダウンは1年間)継続されます。この継続期間のことを「事故有係数適用期間」と言います。

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グレード(等級)が変化するタイミングと保険料

グレード(等級)が変化するタイミングと保険料
自動車保険の等級は、保険期間中に事故を起こして保険を適用したかどうかによって上下すると前述しました。では、いつどのタイミングで等級は変化し、保険料が高くなったり、安くなったりするのでしょうか?

保険のグレード(等級)は、加入中の保険が満期を迎えて翌年に契約を更新した時にしか上下しません。そのため、保険料も次回契約更新まで変化することはありません。

この等級と保険料が変わるタイミングは自動車保険の切り替えや補償内容見直しのタイミングを決めるポイントとなるため、覚えておきましょう。

等級の引き継ぎと保険切り替えのタイミング

等級の引き継ぎと保険切り替えのタイミング
自動車保険の等級制度は、一部共済保険で最高等級が異なる(22等級)場合もありますが、基本的にはすべての保険会社が同じルールの下で採用しています。

そのため、保険料や補償内容の見直しで保険会社が変わったとしても、ごく一部の例外(教職員共済・町村職員共済・都市職員共済・自治労共済・トラック共済など)を除いて前契約の等級を引き継ぐことができます。

また、記名被保険者本人はもちろん、その配偶者と両者の同居親族に関しても等級を引き継ぐことができます。

もし自動車保険を切り替えたとしても、それまで積み上げてきた等級を無駄にしてしまう心配はありません。しかし、切り替えるタイミングを誤ると損をしてしまう恐れもあるので注意が必要です。

保険期間中に事故が無い場合は満期での切り替えがベスト!

前述した通り、1年間無事に保険を適用せず過ごせれば、翌年の契約更新時に等級は自動的に1つ上がります。しかし、契約期間中に保険料の見直しなどで保険会社を乗り換えた場合、等級UPのカウントはゼロに戻ってしまいます。

例えば、4月1日に満期を迎える自動車保険に加入しているとしましょう。その保険の補償内容や保険料に不満を感じ、11ヶ月目の3月に他の自動車保険に切り替えたとします。すると、次の保険へは現時点の等級がそのまま引き継がれ、等級UPのカウントはまた1からやり直しです。

つまり、少しでも早く等級を上げたい場合は満期まで待ってから切り替えを行ったほうが良いということになります。

万が一事故があった場合は保険料や補償内容を見て検討する

万が一事故を起こし保険を適用した場合は、翌年の更新から保険料がぐんと上がることになります。しかし、事故を起こし保険を適用した瞬間から保険料が上がるわけではなく、幾分猶予が残されているでしょう。その猶予期間は有効活用しましょう。

家計の負担増加に備え、満期を迎える前にいろいろな保険会社の見積もりを取り、保険料と補償内容をよく見比べて、少しでも経済的な保険を選ぶことをおすすめします。

なお、実際に保険を切り替えるタイミングに関しては、満期を迎え等級が下がるまで保険料もそのままです。そのため、満期を迎えてから行ったほうがお得です。

自動車のグレード(仕様)とは何?

自動車のグレード(仕様)とは何?
自動車保険のグレードとは、ここまで解説してきた等級及びその制度のことです。しかし、自動車保険に関わってくるグレードというワードには、保険等級のほかにもう1つ、その車の「仕様の違い・格差」を示す意味も含まれています。

同じ車種・型式の自動車でも装備や内装、排気量などに違いがあり、その違いのことを「グレード」や「仕様」と呼んでいます。

保険の等級とは一切関係ありませんが、車両価格はもちろん、乗り心地や快適性、安全性などが変わるため、車を選ぶ時の重要な指標・目安となります。

車のグレード(仕様)は、車検証にも記載されておらず、エンジンルームなどにあるコーションプレートを見ないと確認できません。また、購入先に聞けばすぐに教えてもらえます。自動車メーカーによっては検索機能がWeb上にあるので、気になる方は確認しておくと良いでしょう。

自動車のグレード(仕様)が変わると保険料も変わる

車のグレード(仕様)が上がると、車両本体価格も上昇します。その結果、車両保険の上限額が若干引き上げられることもあります。

また、グレードによっては安全装備の装着・未装着が変わってくる場合が考えられます。安全装備が充実している車は事故にあってもその被害が軽減されるケースもあるため、保険料が安くなるかもしれません。

現在はまだそこまで広く普及していませんが、自動運転などの先進技術に関しても、グレードによって区分されるようになる可能性もあります。そうすれば、車のグレードは近い将来、保険料算出の大きな判断材料になってくるかもしれません。

まとめ

①等級とは、自動車保険というくくりの中で加入者がどの階級にいるのかを示す格付け制度である
②等級は新規加入の場合、通常6等級からスタートする
③等級が上がると保険料が安くなる
④等級が下がると保険料が高くなり、3等級以下になるとさらに高くなる
⑤1年間保険を適用しなければ、翌年から等級が1つ上がる
⑥事故を起こして保険を適用した場合、多くのケースで一気に3等級ダウンする
⑦1等級ダウン事故やノーカウント事故も存在する
⑧事故を起こしても、保険を使わず自費で賄えば等級は下がらない
⑨等級や保険料が変わるタイミングは、翌年の保険更新から
⑩基本的に自動車保険の切り替えは、満期を迎えてから検討したほうが良い

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