車を売却した場合の仕訳はケースに応じたものを選択します
車は課税取引となっており、また一部の料金については非課税となっています。そのため車の売却にあたって仕訳をする場合は「税抜き処理」と「税込み処理」どちらで帳簿を記載しているかで書き方が変わってくるのが特徴です。
また、法人か個人事業主かでも勘定科目や所得の種類が異なってきます。自分の帳簿に合った方法を探して記入しましょう。
まず仕訳方法を選びましょう
車を売却してその仕訳を帳簿に記入する時は、8つの記入方法があります。
正確な記入方法を知るためには、まずこの8つの記入方法のうちどれを取るかを選ばなくてはなりませんが、実際には2種類からどちらにするかを選んでいくことを繰り返すだけで自ずと記入方法が決まります。
まず、消費税の問題です。
車の取引は基本的に課税対象となります。また一部の処理については非課税のものもあります。そのため複雑な消費税の計算が必要です。
もともと帳簿を税抜処理で記入しているか、税込処理で記入しているかによって書き方も異なってきます。
車は高額な資産であるため、記帳にあたっては減価償却の必要があります。
しかし、この減価償却を帳簿上でどのようにするかは直接法と間接法の2通りあり、どちらか書きやすいほうを選ばなければなりません。
「差し引く」か「積み重ねる」かの違いということです。
一般的に、単純に書きやすいのは直接法と言われています。一方で記帳は面倒であるものの後で見返すときに便利とされているのが間接法です。
もう1つ、記帳の書き方を分ける重要なポイントが、車を売却した当人が法人であるか、それとも個人事業主であるかです。
これは迷うことはない項目でしょう。
実は法人と個人事業主では、それぞれ車を売却した時どのような所得になるかが異なります。
法人の場合は車を売却すると、その売却損益は事業所得として扱われます。そのため帳簿に記入する際も事業所得として「固定資産売却益」あるいは「固定資産売却損」という勘定科目を使って仕分けするのが通常です。
一方で個人事業主になると実は事業所得としては扱われません。
個人事業主の場合は、車の売却で得た利益あるいは損は譲渡所得として扱われます。勘定項目としては「事業主借」あるいは「事業主貸」を使うことになり、たとえ事業と同じ銀行口座に車の売却額が振り込まれたとしても「事業の外で得たお金を事業用の口座に振り込む」という形をとるのです。
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譲渡所得の仕組みについて覚えましょう
個人事業主の場合は事業所得ではなく譲渡所得として仕訳しますが、この譲渡所得は事業所得と別になるだけあり、税金がお得になるポイントがいくつかあります。
最終的に確定申告する際に必要となるため覚えておきましょう。
譲渡所得において、ぜひ覚えておきたいポイントとしては、税金を計算する際に50万円分の特別控除が適用されるという点です。
簡単に言ってしまえば、車を売った際にもし50万円以下の利益しか出なければ、売却額に対して税金はかからないということになります。最終的な譲渡所得は以下の計算式で算出することが可能です。
譲渡所得 = 譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額50万円
また譲渡所得は総合課税です。そのため確定申告の税金を計算する際は、事業所得と譲渡所得で通算して損益を出すことが可能となっているのもポイントです。
つまり車を売って損した分を事業所得の利益分と相殺することができます。またもちろん逆に事業が赤字となってしまった場合に、その補填として車を売って得た利益を充てることが可能です。
もっとも通常車を売却してもともとの価値より高い値段で売れる、つまり得をするケースはごくまれです。あまり使われない手段ではありますが両方のパターンを覚えておくとよいでしょう。
この合算によって所得税を大きく節約することもできます。
売却した車について、最初に車を購入してから売却まで5年以内だった場合は「短期譲渡所得」と呼ばれ、全額が課税対象になります。しかしもしも5年以上乗っていた場合は「長期譲渡所得」と呼ばれ、売却金額の1/2に対してのみ課税されるのも譲渡所得の特徴です。
長く乗ることで税金が若干お得になります。個人事業主限定ではありますが、車の売却にあたってはこうしたお得なポイントがいくつかあるためよく覚えておきましょう。
リサイクル預託金の扱いを覚えましょう
車を売却する場合、査定価格の他に必ずついて回るのがリサイクル預託金です。
実際にこのリサイクル預託金が使われるのは車を廃車として完全に処分する時に限られます。しかし、どのみち払うものであるため確実に徴収するためにも新車として購入する段階で既にリサイクル料金を含んだ金額を預託金として請求しているのです。
さて、このリサイクル預託金ですが「新車購入の段階で支払い、車を廃車する時に使われる」ということは中古車売却の時点では使われていないことになります。そのため中古車を売却するとリサイクル預託金も帰ってくるのが普通です。
そして、もしも車を購入する際にはまた、リサイクル預託金を払うという仕組みになっています。もちろん、売った車を購入した誰かもまた、その車のためにリサイクル預託金を支払います。
このような仕組みのリサイクル預託金ですが、実は車を売却する際にリサイクル預託金を別にして渡されることは少なく、どちらかと言うと査定金額にリサイクル預託金相当分を合算して買取価格としているところが多くなっています。
実際に査定された時に査定の内訳を見せてもらうと、リサイクル料金としていくらか追加されているはずです。因みにたまにリサイクル料金を返してくれない業者もいるため、よく確認した方がよい項目です。
実は車本体と違い、このリサイクル預託金は中古車売却においては「金銭債権の譲渡」という扱いで非課税になるのです。そのため、帳簿もそのつもりで記載しなければなりません。
廃車時は本来の用途であるリサイクル料として機能するため、金銭債権の譲渡には当たらず課税取引となります。
細かな注意点を把握した上で記帳しましょう
細かく分かれる車の仕訳ですが、他にも注意すべき点があります。中古車売却の時点ではあまり気にされませんが、とくに売却後、購入した段階で記帳するべき項目もあるのです。
実はリサイクル預託金には1つ落とし穴があります。それはリサイクル料として含まれるもののうち一部の費用だけ勘定科目が異なる点です。
リサイクル預託金には実は次の5つの料金が含まれています。
- シュレッダーダスト料金
- エアバッグ類料金
- フロン類料金
- 情報管理料
- 資金管理料
このうち資金管理料金は、このリサイクル預託金を文字通り管理するための費用となっています。そのため売却時に戻ってくる費用というわけではなく、車購入時にリサイクル預託金を支払った時点で「支払手数料」の勘定科目で仕訳しなければならないのです。
もちろん利用料として支払っているため、課税取引になります。車売却後、あらたに車を購入する時はとくに注意しましょう。
車売却の仕訳は非課税と課税の境目や、いつ記帳するのかのタイミングなどが難しく、最初はよくわからなくなりがちです。もし余裕があれば、税理士などに相談して正確な書き方を覚えておくとよいでしょう。
また企業であれば専門の経理担当がいるため問題ありませんが、個人事業主の場合は会計ソフトの利用や税務署の指導などの機会を利用して問い合わせるのも便利です。
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(まとめ)車を売却するときの仕訳はどうしたらいいの?
車を売却して仕訳する時、法人か個人事業主かでなんの所得になるのか、どんな勘定科目を使用するのかに差が出てきます。また課税取引であるため税金の処理も必須となっており、仕訳帳が税抜き処理か税込み処理かで書き方が異なってくるため注意が必要です。
仕訳方法としては、税抜き処理をしているか税込み処理をしているか、減価償却の記載を直接法にするか間接法にするか、あるいは法人か個人事業主かで、すべて掛け合わせると合計8パターンに大別されます。好きなものを選びましょう。
車を売却する際、個人事業主であれば譲渡所得となります。そのため専用の控除が適用されたり、車の所有年数によって減税があったり、損益通算が可能になったりするというメリットがあります。
便利であるため覚えておきましょう。
リサイクル預託金は車を廃車にする際、リサイクルのために必要となる料金で、新車購入時にあらかじめ支払います。この預託金は車売却の場合非課税となり、査定価格に含まれて戻ってくるのが特徴です。
車売却の際に問題になるリサイクル預託金は、実は車を購入する時も仕訳上注意が必要な項目です。専用の勘定科目を使うべき部分もあり、最初はわけがわからくなりがちになります。
余裕があれば専門家に相談しながら、丁寧に仕訳していきましょう。