自動車保険には、車の購入時に強制加入となる自賠責保険と、運転者が任意で加入する任意保険の2種類があります。

この記事では、自賠責保険と任意保険それぞれの補償内容や保険料、使い分けについて解説します。できる限り安い保険料で、安心な運転を実現するために必要な補償を理解しましょう。

軽自動車は任意保険が安くて人気

軽自動車は西暦2000年代に入り、急激に普及していきました。軽自動車が選ばれる理由として多いのが、「価格が安い」「維持費が安い」「小回りが利く」といったもので、生活面に寄り添う使いやすさが人気を呼んでいます。

維持費の中には、車検代、税金、ガソリン代などとともに自動車保険料が挙げられます。軽自動車はその他の一般自動車と比較して、これらの費用がいずれも低価格です。中でも保険料は毎年必ず支払うものであることに加え、金額のインパクトも大きいため、保険料が安く抑えられることは軽自動車の人気に大きく関係しています。

なぜ軽自動車の任意保険が安いのかを含めて、任意保険の仕組みについて解説します。

軽自動車の任意保険の保険料

軽自動車の任意保険の保険料
軽自動車の任意保険料は、一般自動車と比較して安い傾向にあります。保険とは基本的に、リスクが発生する頻度と発生した時のリスクの大きさに比例して保険料が高くなるものです。

まずは軽自動車の保険料について解説していきます。

軽自動車と普通自動車の任意保険料の比較

損害保険料率算出機構という団体が発表している統計データによると、軽自動車にかかる任意保険の保険料は年間およそ50,000円です。小型乗用車と普通乗用車の任意保険料とをそれぞれ比較すると、小型乗用者より約5,300円、普通乗用車より約23,000円安いというデータです。

任意保険の保険料は、ドライバーの年齢や補償内容で異なるため、一律にこの目安が当てはまるわけではありません。しかし、上記の統計データは実際の保険の契約台数と保険料総額から算出したものであるため、相場を知るには有効なデータと言えます。

軽自動車の任意保険料が安い理由

軽自動車の任意保険料が安い理由は、他の車と比較して事故の発生率が低く、1件当たりの被害額が小さいためです。事故率を比較すると、普通乗用車は7.6%、小型乗用車が7.0%であるのに対し、軽自動車は6.2%です。

軽自動車は車体が軽いため、急ブレーキを踏んだ際に停止するまでが早いことが分かっています。それだけ危険に遭遇した時にも、事故を回避しやすいということです。

事故1件あたりの保険金支払額を比較すると、普通乗用車は41.0万円、小型乗用車と軽自動車は34.6万円です。実際に事故が発生した時も、車体が軽いことから与えるダメージが普通自動車に比べて軽くなります。

車体の軽さが事故の頻度と大きさを軽減しているため、保険料が安くなっていると言えるでしょう。

軽自動車の任意保険の普及率はどのくらいですか?
軽自動車の任意保険の普及率は、2020年3月時点の統計データにおいて「77.5%」です。対人・対物ともに同等の普及率であり、多くの人が自賠責保険だけでは補償として不十分と感じていることが分かります。
普通乗用車の任意保険普及率は82%程度、小型乗用車の任意保険普及率は79%程度と、軽自動車の普及率とそこまで大きな差がありません。軽自動車の事故リスクが比較的小さいとはいえ、任意保険への加入の必要性は広く認識されています。

軽自動車の任意保険料の決まり方

軽自動車の任意保険料の決まり方
軽自動車の任意保険料は、補償内容や保険金額の定めのほか、ドライバーの属性や車の使用状況、近年では車の型式によっても変わります。年間およそ50,000円の保険料はこれらの組み合わせによる平均です。

補償内容や保険金額は推奨されるスタンダードなプランがありますが、「ドライバーの属性」や「車の使用状況」は人によってばらつきがあります。

ドライバーの属性とは、年齢、免許証の色(ブルーorゴールド)、ドライバーの範囲(本人のみ、家族のみなど)、ノンフリート等級(事故歴に応じた割引制度)などです。

車の使用状況とは、使用目的(生活用・業務用)、使用地域などです。

上記のような違いが保険料に差をつけます。

任意保険の保険料算出に適用される「型式別料率クラス」とは?

任意保険の保険料算出に適用される「型式別料率クラス」とは?
「型式別料率クラス」とは、自動車の型式によってベースとなる保険料が変わる車両区分のことです。

型式別料率クラスは、自動車の型式ごとに割り振られており、「対人賠償」、「対物賠償」、「人身傷害」、「車両保険」の4つの項目に分類されています。型式ごとの事故実績や保険金支払い実績に基づき事故リスクが評価されており、区分は乗用車の場合、1~17段階、軽自動車の場合は1~3段階です。この数字が大きいほど、事故リスクが高い車両であることを意味しており、保険料も高くなります。

なお、保険の始期日が2025年1月1日以降の場合、軽自動車は1~7段階で区分されるようになりました。

型式別料率クラスの見直しで保険料が変わる

型式別料率クラスは、損害保険料率算出機構が区分しているもので、保険データに基づき年に一度、型式ごとに区分が見直されます。そのため、ある型式で一年間に事故が急増するようなことがあると、料率クラスが急激に上がる可能性もあります。

型式別料率クラスの見直しは、ドライバーの努力ではどうにもならない保険料の要素です。一年間無事故で過ごしたとしても翌年の保険料が上がってしまうこともあり得るため、覚えておいた方がよいでしょう。

軽自動車に任意保険はつけた方がいいの?
任意保険には80%近くの人が加入していることから、運転には自賠責保険だけでは補償しきれないリスクを伴うと判断する人が多いと推察されます。
対人、対物、傷害補償はもちろんのこと、近年では車両保険の需要も高まっています。車両保険は自分の車が損傷した時に、その修理費を補償する保険です。車両保険の保険金の上限額は車の時価相当額です。現在の軽自動車は一昔前と比べて高性能化しているため、残存価値も高いことから車両保険を付加する価値が高くなったと言えるでしょう。
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軽自動車の任意保険料を安く抑える方法

任意保険に加入する際は、できる限り保険料を安く抑えたいところです。

ここでは、前述した保険料を構成する要素を紐解き、どうすれば保険料を安くできるかについて解説します。

型式別料率クラスの数字が小さい軽自動車を選択する

型式別料率クラスの数字が小さい軽自動車を選択する
保険料を安く抑えたいなら、まずは型式料率クラスの区分が低い自動車を選びましょう。同じ車種でも、型式によって型式料率クラスが異なることもあります。

型式料率クラスは、損害保険料率算出機構のホームページから、型式を選択して確認できます。

ただし、料率クラスは毎年見直しがなされるため、低いクラスの型式を購入してもずっと保険料が低いままとは限らない点に留意してください。

運転者の年齢条件と範囲を限定する

運転経験の浅い若者ほど事故リスクが高いため、運転者の年齢は、若年層ほど保険料が高く設定されています。また、車を運転する対象者の範囲が広くなるほど保険料が高くなります。

具体的には、契約者「本人限定」が一番安く、「本人・配偶者限定」、「家族限定」、「制限なし」の順に高くなる仕組みです。

自分の生活を顧みて、できる限り運転手となる人の範囲を限定することが重要です。自動車の運転は必要最低限の人のみとし、無駄な保険料を払わないようにしましょう。

補償範囲や免責金額を見直す

補償範囲や免責金額を見直す
自動車は修理にかかる費用も高額となるため、手元資金に余裕がない人にとっては、車両保険にも加入すべきでしょう。車両保険を付加すると、自損事故で自分の車が破損しても補償されるため安心です。一方、保険料はかなり上がってしまいます。そのため、車両保険の補償範囲の限定と、免責金額の見直しを検討しましょう。

車両保険は一般的に自損事故の多くを補償しますが、必要な補償内容を絞ることで保険料を抑えることが可能です。保険会社によって限定できる事故のシチュエーションが異なるため、よく確認してください。免責金額とは、保険金支払いの際、修理にかかった金額の自己負担分のことです。

自己負担の金額を大きくすれば、その分保険料は下がります。自分の資産状況をよく考慮し、事故が起きた際の車両修理代の捻出と、保険料支払い負担のバランスを考えた補償内容を検討しましょう。

任意保険を年払いに変更する

保険料は、毎月支払うのが一般的です。しかし、保険料を一年分まとめて支払う年払いにすると、毎月支払い分を12ヵ月分支払うよりも保険料が割安になることがあります。自動車保険に限ったことではなく、その他の各種保険や、サブスクリプションサービスにもみられる仕組みです。

年払い保険料は基本的に前払いです。一年の間に途中解約したとしても月割りで返戻されることが一般的であるため、資金繰りにゆとりがあるなら保険料の年払いを検討してみるとよいでしょう。

保険会社を見直す

保険会社を見直す
自動車保険の保険料は、保険会社によっても異なります。近年では、店舗を持たない保険会社がシェアを伸ばしています。

ネット保険は店舗の運営費用や本来店舗に配置すべき従業員の人件費がかかりません。したがって、保険料が安く設定されていることが多く、ネットサービスに抵抗が少ない若年層を中心に人気が集まっています。

事故が起きた時のサポート体制などと総合的に比較してメリットを感じられるならば、ネット保険を含めた保険会社の見直しも検討してみてください。

軽自動車の任意保険に車両保険は必要ですか?
車両保険は、自損事故や自分側の過失割合による負担で修理すべき、自車の修理費用を補償するものです。したがって、自分の運転スキルに自信がない人にとっては必要性が高いと言えます。
この他にも、盗難や当て逃げが多いといった地域特性を考慮して備えておく必要がある人もいるでしょう。保険料は高くなるため、補償内容や免責金額を調整するなど、必要な範囲の保険に限定することで保険料を抑えるよう工夫しましょう。

任意保険と違う軽自動車の自賠責保険とは?

任意保険と違う軽自動車の自賠責保険とは?
自賠責保険は、自動車を運転する人が法律で加入を義務付けられている自動車保険です。任意で加入する任意保険と対比して強制保険と呼ばれることもあります。

ここからは、自賠責保険について、任意保険と比較しながら、性質と使い分けについて解説します。

未加入での運転は違法

自賠責保険は、自動車損害賠償保障法という法律によって加入が義務付けられています。強制加入とされているのは、自動車運転では大きな事故が避けられないため、事故にあってしまった被害者の救済を目的としているからです。

自賠責保険に未加入の状態で運転すると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。さらに刑事罰だけでなく、違反点数も6点加算されるため、30日間の免許停止処分という行政処分も科せられます。

もしも、自賠責保険の保険期間が切れた状態で運転してしまうと、重いペナルティを受けなければならないため、十分注意してください。また自賠責保険が有効でも、証明書を携帯していない場合は30万円以下の罰金となります。しっかりと車の中に保管しておきましょう。

損害賠償金を請求される

自賠責保険に未加入の状態で事故を起こしてしまい、賠償金額が高額であった場合、多くの人はすぐに支払えません。国が被害者に対して賠償金を支払うことがありますが、後に加害者は国から賠償金相当額を請求されます。これを求償といい、加害者は支払いを免れられません。

加害者には国に対する支払い義務が発生しますが、支払いを履行できない場合は、所有する車や不動産が差し押さえられる可能性があります。差し押さえにならないためにも、自賠責保険はしっかり有効な状態にしておく必要があります。

軽自動車の自賠責保険料は地域・契約期間により算出

自賠責保険の保険料は「損害保険料算出機構」が決めています。

損害保険料算出機構は、各保険会社から自動車事故に関する情報を集めて、その情報をもとに基準金利を定める組織です。任意保険と違い、保険会社による保険料差はありません。

自賠責保険料の審査は毎年行われます。社会情勢や周辺環境の変化に鑑みて、必要と判断されれば保険料の改定がなされますが、毎年必ず改定されるとは限りません。

また、自賠責保険の保険料は地域と契約期間によって異なります。地域の区分は沖縄県かそれ以外の都道府県か、離島であるか離島でないかの二軸で4種類のカテゴリに区別されます。

保険料の安い方から順に、沖縄県(離島)、沖縄県以外(離島)、沖縄県(離島除く)、沖縄県以外(離島除く)です。

保険期間は長いほど、保険料が安くなります。

軽自動車の自賠責保険の補償対象

自賠責保険の補償対象は、人身事故により他人を死傷させた場合の損害です。したがって物損や、運転者本人・同乗者のケガなどは自賠責保険では補償されません。

また、車の使用により利益を得る人を「運行供用者」といいますが、運行供用者が被る損害も補償の対象外です。人身事故による被害者の死傷に対する金銭的補償が、自賠責保険の目的です。

軽自動車の自賠責保険の補償金額

軽自動車の自賠責保険の補償金額
自賠責保険の対象となる損害が発生した場合に、損害金額が無制限に補償されるわけではありません。補償の上限金額は相手に与えた損害により大きく3つに分けられます。

  • 傷害:120万円
  • 死亡:3,000万円
  • 後遺障害:種類により金額が異なる

3つ目の後遺障害による損害は、後遺障害の内容により上限金額がさらに以下のように細分化されています。後遺症害は程度に応じて第1級~第14級の等級に区分され、等級ごとに限度額が異なります。

  • 神経系統の機能または精神・胸腹部臓器に著しい障害を残し、介護を要する後遺障害
    1.常時介護を要する場合(第1級):4,000万円
    2.随時介護を要する場合(第2級):3,000万円
  • 上記以外の後遺障害(第1級~第14級):3,000万円~75万円
軽自動車の自賠責保険に加入する方法

自賠責保険は損保会社の他、自動車の販売店や軽自動車検査協会で加入できます。前述した通り、保険会社による保険料の違いはないため、吟味する必要はありません。

原付自転車や125cc~250ccのバイクは、インターネットやコンビニで加入できますが、軽自動車は車検が必要な乗り物であるため、この2つの方法では加入できません。

軽自動車の自賠責保険の加入タイミング

軽自動車の加入タイミングは車の購入時ですが、一般的に保険の加入期間は車検の満了日を目安に設定します。さらに厳密にいえば、車検の満了日の1ヵ月後です。車検に時間がかかったり、手続きの遅れが生じたりして加入期間が切れてしまうリスクがあるためです。

車検を通すためには自賠責保険への加入が必要であるため、保険期間が車検満了日より短いと車検証は発行されません。また、自賠責保険に未加入の状態で運転すると法律違反となります。これらのリスクを避けるため、自賠責保険の加入期間は車検満了日を目安とするとよいでしょう。

軽自動車を廃車する際に、自賠責保険料が返還される

車を廃車にするなどして乗らなくなった場合は、保険会社の窓口にて既存の自賠責保険を解約できます。

加入期間の満了前に解約する場合、未経過分の保険料は月割りで変換されます。ただし、未経過期間が1ヵ月未満の場合は変換されないため、注意してください。

まとめ

①軽自動車は車体が小さくて軽いため、制御しやすく衝撃が小さい。事故率が低く事故の規模も小さいため、任意保険の保険料が安い
②任意保険の保険料は、運転者の属性や、車の使用状況、車の型式で決められる
③任意保険を安く抑えるには保険会社を見直す、保険料を年払いにするなどがある
④自賠責保険は、自動車購入時に加入する強制保険。自賠責保険未加入状態での運転は法律違反
⑤自賠責保険の保険料は損害保険料算出機構が定めており、保険会社によって差はない。相手に与えた損害の種類によって保険金額の上限が決まっている

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