現在の自動車市場は、新車よりも中古車の方が1.5倍近く多いため、中古車を査定する技能を有する「中古車査定士」の資格が注目を集めているのです。特にコンプライアンスが重要視される昨今においては、業界の健全性を担保するため、企業も中古車査定士の育成、採用に力を入れています。

この記事では、中古車査定士の資格概要や保有メリットに加え、中古車の査定にはどのようなポイントがチェックされているのかを解説します。

中古車査定士は車の買取時に査定を行う仕事

中古車査定士は車の買取時に査定を行う仕事
中古車査定士は、中古車の買取や下取り時に、明確な基準をもって適正な価格を査定する仕事を担う者です。中古車の価格査定に関して適切なスキルを有していると認められた者に対して付与される民間資格です。

車買取業者は中古車査定士を従事させることで、消費者に買取事業者としての信頼性をアピールできます。

一般的に中古車価格の適切な相場観を知っている人はいないでしょう。その中で正しい価値基準で車を査定し、ユーザーに対して説得力ある価格を提示する中古車査定士は、中古車市場の健全な価格形成において大きな役割を果たしています。

中古車査定士とは?

中古車査定士は、正式名称を「中古自動車検査士」と言います。

自動車の走行距離、使用年数、事故歴、ボディなどの外観、内装状態などを総合的に判断し、基準に照らし合わせて適正な価格を見積もる技能を有しています。

ただし、資格を取得するためには試験への合格が必要です。

中古査定士は民間資格

資格には「国家資格」「公的資格」「民間資格」といった種類があり、それぞれ発行主体によって呼ばれ方が区別されています。

国家資格は国・政府機関、公的資格は行政機関・自治体・公的業界団体が認定している資格であるのに対し、民間資格は民間団体・民間企業が認定、発行している資格です。

中古車査定士は民間資格に該当します。一般財団法人日本自動車査定協会(JAAI)が発行しているもので、中古車市場における査定方法や基準を統一し、秩序ある健全な価格形成を目的として資格の管理をしています。

資格保有者は、消費者にとっても販売会社にとっても重要な役割を担うため、拡大する中古車市場において大変重宝される存在です。

中古車査定士の資格は主に2種類

中古車査定士の資格は主に2種類
中古車査定士の中でも小型車査定士と大型車査定士の2種類の資格があります。

ここでは「小型車」「大型車」が示す範囲と、それぞれの資格試験の特徴について解説します。

小型車査定士

小型車査定士が査定できる車の範囲は「乗用車、商用車及び最大積載量4t未満の貨物車」です。家庭用で使われる車の大半は、中古車市場における「小型車」に該当します。

中古車市場が拡大しているのも、家庭用の需要が大きいため、2種類の中古車査定士のうちの多くが小型車査定士です。

自家用車を査定してもらいたいときは、買取事業者の従業員が小型車査定士の資格を保有していることを確認しましょう。

大型車査定士

大型査定士の査定範囲は「小型車以外の大型貨物車、バスなど」と定義されています。したがって、基本的にはトラックやバスなどの商用車が該当します。

小型車と比較すると中古車市場においての流通量が少ないため、資格の保有者もごく少数です。

運転免許と違い、大型車の資格を取得したからといって小型車査定士の資格は名乗れません。買取査定を依頼するときは、自分の車に対する査定士の資格を保有していることを確認してください。

中古車査定士の試験は難しいですか?
試験の合格率は概ね70%台と高い水準が続いているため、民間資格として難易度は決して高くない方です。大型車査定士に関しては合格率が90%台後半に達する年もあります。運転免許(普通自動車免許)の合格率が70%台であることを考えると、しっかりと対策をしていけば合格は難しくないでしょう。
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中古車査定士の受験資格

中古車査定士の受験資格
中古車査定士の試験は誰でも受験できるわけではありません。ここでは、3つの受験資格について解説します。

中古車試験を受験しようとしている人にとっては、どれもそれほど難しい条件ではありません。満たしていない条件があるなら、むしろ条件をクリアすることで合格へ近づくものとも言えるため、合格のチャンスと前向きに捉えましょう。

運転免許証を取得する必要がある

小型車査定士であれば普通運転免許以上、大型車査定士であれば大型第1種免許以上の運転免許が必要です。

小型車に比べて大型車査定士が極端に少ないのは、運転免許保有条件が大きなハードルとなっているからです。油断してはいけませんが、大型車査定士試験の合格率は100%に近いため、条件さえ満たせば合格は見えていると言えるでしょう。

販売の実務経験がいる

受験資格の一つに、「中古車の販売もしくは整備業での実務経験を半年以上有していること」という要件があります。

中古車査定士は、勤務先の要請により取得を求められる従業員の受験が多いため、もともとこの要件を満たしている人がほとんどです。

実務経験が試験内容の回答に大いに活かされます。まだ条件を満たしていない人は、要件となる半年間を試験勉強のつもりで臨むと効率的に学習できるでしょう。

研修を受ける必要がある

受験する前にJAAIが実施する研修を受講する必要があります。研修は3日間の講習です。現在ではオンラインでeラーニングによる受講も可能であるため、手軽に受講できる環境が整っています。

講習を受けるのが面倒だと思うかもしれませんが、試験問題は研修内容から出題されるものが多いようです。受験する人は、単なる通過儀式と思わず、真面目に受講して知識を吸収することが合格への近道です。

中古車査定士の試験内容は?
小型車査定士、大型車査定士どちらの試験も「学科試験」と「実技試験」の2段階で構成されています。
学科試験は、自動車や中古車査定に関する法令や、自動車の機能・構造に関する基礎知識を問うものです。
実技試験は、査定の実技に関する設問に回答します。実技試験とはいっても、設問を通して査定スキルを問うペーパーテストであるため、どちらも知識レベルを採点する内容です。

中古車査定士の試験日

中古車査定士の試験日
試験日は、小型査定士と大型査定士で異なります。

小型査定士の試験は年に2回、6月と12月に行われ、大型査定士は6月のみの年1回です。

大型査定士は高い合格率ではあるものの、落ちてしまうと次の受験までに1年間隔が空いてしまいます。試験頻度の低い試験ほど、一度試験に失敗した後のモチベーション維持が難しいため、一発で合格できるようしっかりと対策していきましょう。

また、試験申し込みの受付期間は試験日の2カ月前ぐらいに始まり、数週間で終わってしまいます。早いうちから受付期間を確認し、忘れずに申し込み手続きしてください。

中古車査定士の受験料

小型車査定士の受験料は18,150円、大型査定士は18,975円です。

中古車査定士にかかわらず、資格試験の受験には受験料が必要ですが、国家資格や公的資格の各種試験と比較すると高い受験料です。

試験に失敗した場合、再度受験する場合にはまた同額の受験料を支払わなければなりません。経済的負担も大きいため、必ず合格するつもりで試験に臨みましょう。

中古車査定士の試験を受ける際に必要なもの

中古車査定士の試験を受ける際に必要なもの
受験の際には以下のものが必要です。

  • 技能検定申請書
  • 写真・2枚(縦40mm~横30mm)
  • 運転免許証もしくは住所が確認できる書類

写真は受験者のなりすましを防止するために必要となるもので、顔がしっかりと確認できるものでないと認められません。

また、証明写真用の撮影機で撮影してください。プリクラは不可です。受験日から3カ月以内に撮影されたものでないといけないため、別件で撮影した証明写真の残りを使いまわすときは、撮影日時に注意してください。

小型車、大型車いずれかの査定士試験を合格している人は免除となる試験科目があるため、上記に加えて合格している試験の合格証書もしくは査定士証を提示する必要があります。

中古車査定士の試験内容

中古車査定士の試験内容
試験内容は「学科試験」と「実技試験」に分かれています。

学科試験では、自動車査定に関する法令、自動車の構造に関する基礎知識といった、自動車査定業務にかかわる総合的な周辺知識が問われます。合格点は70点以上です。

実技試験もペーパーテストで行われます。提示された車両の情報から文章と略図によって車両の状態を示し、回答した机上査定が採点されます。

中古車査定士の資格は3年の有効期限がある

中古車査定士の資格には3年の有効期限があります。ただし、3年ごとに改めて試験を受ける必要はありません。

技能向上研修会を受講することで中古車査定士の資格が更新されます。技能向上研修会は毎年7月~8月に開催されます。

試験の合格は一度だけで構いませんが、合格証書の再発行はされないため、大切に保管してください。

中古車査定士として働くためには登録が必要

試験に合格しただけでは中古車査定士の資格は付与されません。日本自動車査定協会への登録をすることで査定士としての仕事ができるようになります。

登録には試験の合格のほか、「18歳以上であること」「協会または査定業務を営む店舗に所属していること」の要件を満たしていることが必要です。

登録を受けることで、正式に査定士証が交付されます。

中古車査定士の資格を取得するメリット

中古車査定士の資格を取得するメリット
中古車査定士の資格を持っていると、職場で買取査定業務ができること以外にもメリットがあります。

資格の取得に対してなかなかモチベーションが上げられないという人は、ここでお得になる具体的なメリットを知り、勉強の励みとしてください。

年収アップにつながる可能性がある

企業によっては、中古車査定士の資格に対して資格手当を支給することがあります。

近年は、テクノロジーの進展により自動車寿命の長期化や、消費者の節約志向の高まりにより中古車市場が拡大しています。そんな中、中古車査定士の資格が重宝されるようになった一方で、働き方の多様化や労働者人口の減少により、企業も働き手の不足に対して対策を講じるようになりました。

このような背景の中、事業者による有資格者の確保のため、資格手当を用意する会社が増えています。

有資格者は単に業務のためではなく、年収アップに繋がる可能性があるため、取得する価値の高い資格です。

転職時に有利になる可能性がある

中古車販売店はもちろんのこと、大手販売代理店の中古車ディーラーや整備事業者の間でも中古車査定士が求められています。

合格者に対しての受験料の負担など援助を出している企業もあります。中古車査定士は、それだけ業界で強く求められている資格であるため、保有していると転職時に有利です。

有効期限の経過などで一旦失効しても、転職先で所定の手続きを行えば復活登録が可能です。

転職時には、PR事項として履歴書に記載しましょう。

中古車査定士の資格を取得するメリットは?
中古車査定士の資格は、中古車を取り扱う業界において重宝されています。その背景は、技術の進展や車に対する経済的価値観の変化による自動車使用期間の長期化を理由とした中古車市場の拡大です。
社会的に中古車査定士の需要が増えているため、毎月の給与に資格手当を付与する企業もあります。数千円程度でも、年間でみれば数万~十数万円とインパクトのある金額です。資格の難易度や受験料を考慮しても十分ペイできます。
中古車業界では必須としている企業もあるため、資格を保有していると転職する際も大きなアドバンテージとなります。

中古車査定士がチェックする買取時のポイント

中古車査定士がチェックする買取時のポイント
ここからは、実際に中古車査定士がどういったポイントをチェックして車を査定しているのか解説していきます。

車の売却や下取りを検討している人は、以下で紹介するポイントを押さえて、なるべく高い価格での査定となるよう気を付けておきましょう。

外観でチェックするポイント

車のボディやウィンドウ、ライト、その他各種装備品の外観は査定価格に大きく影響します。

ボディの少々の傷やへこみであればさほど問題ありませんが、数が多かったり極端に目立つものがあったりすると査定ポイントがマイナスとなります。他にも全体的な色褪せをみなされるとマイナスです。

また、パワーウィンドウやサンルーフの開閉動作も、外観でチェックされるポイントです。

装備品は純正品以外の取り付けていると、マイナス査定となる可能性があるため注意してください。

内装でチェックするポイント

内装の査定ポイントは清潔かどうかです。シートやマットがシミなどで汚れているとマイナス査定となります。

見た目のきれいさだけでなく、車内の臭いも評価対象です。特にたばこを吸ったりペットを同乗させたりしている人は、臭いが染みつきやすいため、日ごろから換気や消臭対策をしておきましょう。

また、カーナビやオーディオなどの車内装備品も内装のチェックポイントに含まれます。正常に作動しないものであれば、査定前に取り外した方がよいものもあります。

内装は外装に比べて、売却の直前でも対策できることがあるため、査定前には手を抜かずできる限りの点検と清掃をしておきましょう。

エンジンと下廻りでチェックするポイント

エンジンは車の心臓とも言うべき重要部品です。エンジンのかかり具合や正常な音を発しているかなどが評価され、査定ポイントに影響します。

エンジンを健全な状態に保つため、日ごろからこまめに点検し、エンジンオイルの交換を適切に実施してください。

バッテリーの状態もチェックされるため、寿命が近かったりバッテリー液が少なかったりするとマイナス査定されます。

下廻りとは主にタイヤ・ホイールのことです。タイヤでは溝やひび割れ状態などの劣化具合、ホイールは傷の有無が評価されます。

走行距離でチェックするポイント

車は走行距離による寿命の目安があるため、車種ごとの寿命の目安に対しての走行距離の割合が査定価格に大きく影響します。

しかし、走行距離が少ないほど査定が高くなるとは限りません。極端に動いていない車のエンジンは逆に故障しやすくなるためです。

1年間の車の平均走行距離は10,000km前後です。この距離を大きく上回っても下回ってもマイナス査定となります。

所有している車は適度に走らせることが重要です。

書類でチェックするポイント

車の状態だけでなく、関連書類が揃っているかどうかも重要なチェックポイントです。

例えば、定期点検整備記録簿は、新たに購入する人にとって、車の情報が記載された貴重な書類です。したがって書類が揃っていれば、査定ポイントにプラスされる可能性があります。

また、取扱説明書も次の購入者にとってプラスとなる書類です。車を購入したときの書類や、点検・車検などで追加された書類はまとめてダッシュボードに保管しておくとよいでしょう。

まとめ

①中古車査定士とは、一般財団法人日本自動車検査協会(JAAI)が運営している民間資格
②小型査定士と大型査定士に分類され、小型検査士は年2回、大型査定士は年1回開催される。どちらもそれほど試験の難易度は高くない
③受験には条件があり、「該当する査定士の運転免許」「中古車の販売もしくは整備の半年以上の実務経験」「受験前の3日間にわたる研修の受講」の3つが必要
④中古車査定士の資格を有していると、会社によっては資格手当を受けられることもある。市場ニーズも高いため転職にも有利
⑤車の査定価格は、外観、内装、エンジン、下廻り、走行距離などの総合的な評価の他、関連書類の有無もポイント

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