自賠責保険は、その車を運転する限り必ず加入しなければならないため、「強制保険」とも呼ばれています。保険料を支払って加入して、通常は2年間ごとに更新となります。

この自賠責保険の有効期限が残っている時に車を売って手放した場合、先払いしている保険料はどうなってしまうのでしょう?

結論を言ってしまうと、自賠責保険の有効期限が残っている車を売ったとしても、先払いした保険料が還付されることはありません。そのため、なぜ還付されないのか疑問な方も多いでしょう。

そこで今回は、自賠責保険料が還付されない理由や、車の売却と自賠責保険との関係について詳しく解説します。

車の売却と自賠責保険の関係を徹底解説!

自賠責保険は、車を所有・運転する方は必ず加入する必要があります。そのため、車を売却する際に保険料の還付があるのかどうか気になる方も多いかもしれません。

そこで今回は、車の売却と自賠責保険の関係について詳しく解説していきます。

自賠責保険が残っている時・残っていない時どちらのケースでも対応できるようにしておきましょう。

自賠責保険とは?

自賠責保険とは?
自賠責保険は、全ての車の所有者に加入が義務付けられているもので、正式名称は「自動車損害賠償責任保険」といいます。

補償の対象は、被害者及び事故を起こした車の所有者(=加害者)以外の同乗者です。

自賠責保険に加入していない車は公道を走行できず、未加入車で公道を走行した場合は厳罰に処されます。

似ている自動車の保険・補償制度に「任意保険」がありますが、こちらはその名の通り加入する・しないは車の所有者の意思に委ねられています。

そして、両者の最も大きな違いは、自賠責保険が事故の被害者救済を目的として「その車自体」にかけられている保険なのに対し、任意保険は事故発生時の金銭的補償を目的として「契約者(被保険者)」と車にかけられている保険であるという点です。

この違いが、自賠責保険と任意保険の車売却時における納付済保険料還付の有無を変える大きな要因であるため、覚えておきましょう。

自賠責保険が残っている車の売却について

自賠責保険が残っている車の売却について
自賠責保険は、車検を受ける際に、その期間分の保険料を「一括・前払い方式」で支払い、加入することになります。

そのため、車検が残っている車を売却する時は、必然的に自賠責保険の有効期間も残っていることになります。

そこでまずは、車を売る時に自賠責保険が残っていると、どのような取り扱いになるのか整理しておきましょう。

自賠責が残っている車を売ったのに、還付金が戻ってこないのはなぜですか?
自賠責保険は車自体にかけられている保険です。売却しても抹消手続きがなされない限り、その車に自賠責の効果は残り続けるため、還付金が発生することはありません。ただし、3ヶ月以上残っている場合、買取業者によっては残期間分を買取額にプラスしてくれることがあります。
期限が残っている車を売っても保険料が返還されない理由

前述した通り、自賠責保険は人(契約者)ではなく、その車自体にかけられている損害保険です。そのため、車の売却(正確にはその車の所有権移動)に伴い、自賠責保険の契約者も移動することになります。

つまり、自賠責保険が残っている車を売却しても、その車自体にかかっている補償は継続されたままなので、極端な話、売却した車がすぐ事故を起こしたとしても、自賠責保険で被害者への補償は行われます。

自賠責保険の期限が残っている車を売却しても、その補償は継続されているため、前払いした保険料は返還されないというわけです。

一方、任意保険は車に加えて人(記名被保険者)にかけられている損害補償のため、車を売却して所有権が移動した瞬間、その車と任意保険との関係は完全に解消されます。

そのため、関係が解消された車が事故を起こしたとしても、任意保険によって損害を補償されることはありません。

車を売却しても、その車が公道を走行できる限り無保険状態にならないという点が自賠責保険の特徴です。

売却時の査定額に反映される場合がある

自賠責保険が残っていることが、その車の売却において全く有利にならないかといえば、そういうわけではありません。

自賠責保険の残っている車(車検が残っている車)を購入した場合、先ほど述べた通りその車には自賠責の補償が継続しています。そのため、次の所有者は自賠責保険が残っている期間は新たに加入する必要がありません。

自賠責保険の保険料は、自家用乗用車で加入期間25ヶ月の場合、18,160円かかります。満期・満額ではないにせよ、それが節約できるのは購入者にとってうれしいポイントでしょう。

そして、車を買い取って転売している業者からすると、自賠責保険が残っていることを大きなセールスポイントとしてお客さんにアピールできます。そのため、買取店によっては未経過分の自賠責保険料を上乗せしてくれることがあります。

当然、残期間が長いほうが上乗せ額も期待できますが、自賠責保険が残っている車を買ってもそれがすぐに売れるとは限らないため、残期間分全額が上乗せされるわけではありません。

また、自賠責保険の残期間が3ヶ月に満たない場合は、全く上乗せされないこともあります。

自賠責保険料は売却ではなく廃車した時に還付される

自賠責保険も任意保険も、補償が継続している間は保険料の還付も当然ありません。しかし、自賠責保険を解約して補償が切れた時に有効期間が残っている状態であれば、残期間に応じた額の保険料が還付されます。

ここで思い出してほしいのが、自賠責保険は公道を走行する車に必ず加入しなければならない「強制保険」であることです。強制保険であるがゆえ、公道を走行できる、つまり車検が残っている限り解約はできません。

しかし、一時抹消または永久抹消された車には自賠責保険をかける義務が生じなくなり、解約も可能になります。手続きをすれば前払いしている保険料のうち、経過していない分の保険料の一部が還付金(正確には解約返戻金)として返還されます。

自賠責保険料は売却ではなく、その車を廃車(一時抹消もしくは永久抹消)した時に還付されるということです。

ただし、自賠責保険は人ではなく車にかけられている保険のため、必ず加入時の契約者に還付されるというわけではありません。自賠責の還付金は、一時抹消・永久抹消した時の所有者または廃車業者などの代理人に返還されます。

例えば、売却した車を買取業者がまず自分たちの名義へ変更してその後一時抹消や永久抹消した場合、自賠責の還付金は買取業者に返還されます。そのため、手続きの進め方によっては、元の所有者に還付金が渡らないケースもあります。

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自賠責保険が切れている車の売却について

自賠責保険が切れている車の売却について
冒頭でも述べた通り、車を売る時に必ずしも自賠責保険が残っているとは限りません。

そこでここからは、自賠責保険が切れている車の売却について、詳しく解説していきます。

自賠責保険が切れている車を売却することはできますか?
自賠責保険が切れていても、問題なくその車を売ることができます。また、査定額も大きく下がることはありません。ただし、自賠責保険の切れた車で公道を走行することは交通違反に当たるため、取り扱いには注意しましょう。
自賠責保険が切れている車を売却することは可能

繰り返しになってしまいますが、自賠責保険はその車が公道を走るため、絶対に加入しなくてはならない保険です。しかし、その車が公道を走る予定が一切ないのであれば、加入する必要も義務も生じません。

自賠責保険が切れて公道を走れなくなった車は、単なる大きな鉄の置物と化してしまいます。ただし、車としての能力がその瞬間失われてしまうわけではないため、自賠責保険が切れている車であっても問題なく売ることができます。

また、自賠責保険が切れた後に長期間放置し、各所にガタが来て安全で快適な走行に支障がある場合を除き、自賠責保険が切れているというだけならその車の価値が下がるわけでも査定額が大きくマイナスされるわけでもありません。

自賠責保険が切れているだけで、自宅のガレージや空き地などに放置したままの車がもしあれば、走行性能に支障が出ないうちに早めに売却先を探したほうがいいでしょう。

保険の期限切れ&車検切れの車の取り扱いは要注意!

自賠責保険が切れている車でも問題なく売ることはできますが、車の取り扱いには注意が必要です。

自賠責保険の有効期限は通常車検よりも長く設定されています。そのため、自賠責保険が切れているということは必然的に車検も切れていることがほとんどです。

当然、車検が切れている車を運転して買取店へ行くことはできないため、おのずと「出張査定」に対応している買取業者へ査定を依頼する必要があります。

また、自賠責保険まで切れている場合は、臨時ナンバー取得・提示しての公道走行も不可能ですし、レッカー車での公道移動も認められていません。そのため、車載車両で車を引き取ってくれる買取業者を探し、そこに売るしか方法がありません。

このケースでは、業者から引き取り手数料を請求されたり、場合によっては買取自体を断わられたりすることもあります。

スムーズにできるだけ高く車を売りたいのであれば、最低でも自賠責保険が切れてしまう前に買取業者を決めたほうがいいでしょう。

なお、車検切れの車で公道を走行した場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金・違反点数6点・免許停止となります。

無保険(自賠責保険切れ)で走行した場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金・違反点数6点・免許停止となり、厳しい処罰が科せられるので注意しましょう。

車の売却と自賠責保険の手続きについて

車の売却と自賠責保険の手続きについて
ここまでの解説で、車を売却した時に自賠責保険の有効期間が残っていても、基本的に還付されないということが理解できたでしょう。

車にかけられている自賠責保険の補償は、車を売却した後も継続されるということであれば、その際に必要な手続きはないのか気になる方もいるでしょう。

そこで最後に、車の売却と関係する自賠責保険の手続きについて整理していきます。

自賠責保険に関して、車を売るときにやるべき手続きはありますか?
車を売る時は、自賠責保険に関する手続き全般を売却する業者が全てやってくれるので問題ありません。しかし、期限が長く残っている場合は、その分が買取額に反映されているのかどうか、しっかり確認しておきましょう。
車を売却した後に自賠責保険を次の車に引き継ぐことはできない

自賠責保険の保険料を前払いしたのは自分だから、その車を売った後、有効期間が残っている自賠責保険を次に購入した車に引き継げないのかと考える方もいるでしょう。

しかし、残念ながら自賠責保険は車そのものにかけられている保険であるため、その他の条件(契約者の氏名・住所など)が全く同じでも、違う車に引き継ぐことはできません。

なぜ引き継げないのかと不満に感じるかもしれませんが、自分がかかっている生命保険を、家族・肉親に引き継げないのと同じです。

自賠責保険に関わる手続きは売却した業者におまかせでOK

自賠責保険の期限が残っているにせよ、切れているにせよ、契約者名義の引き継ぎや抹消に伴う解約などの手続き全般は、売却した業者に任せて問題ありません。基本的には代行手数料なども発生しません。

また、次の車を購入して自賠責保険へ加入する時も、その車の新規・継続車検の際に業者が行ってくれます。

そのため、車の売却や購入を業者を通して行う場合は、自賠責保険の手続きでユーザー自身が行うことは特にありません。

ただし、友人や知人間での車の譲り渡しやインターネットを介しての個人間売買する場合は、車そのものの名義変更とともに、自賠責保険の名義変更手続きも売り手・買い手のどちらかが行う必要があります。

自賠責保険の名義変更には、その車を譲り渡した方(譲渡人)・譲り受けた方(譲受人)双方の印が押印されている自賠責保険承認請求書や、譲渡人の印鑑証明・身分証明書などが必要になります。

詳しくは、自賠責保険証に記載されている、加入先損保会社に問い合わせれば詳しく教えてもらえます。事前に確認し、必要書類等を準備しておけば、スムーズに手続きできるでしょう。

廃車にして自賠責保険料の還付を受けたいときの手続き方法

売却・購入に伴う自賠責保険の手続きは、基本的に業者任せで問題ありませんし、そのほうがスムーズです。

ただし、廃車をして確実に自賠責保険料の還付を受けたい時は、手続きの進め方に注意が必要になります。なぜなら、一般ユーザーが業者に依頼して廃車(スクラップ)したと思っていても、実際には廃車になっていないことのほうが多いからです。

例えば、業者が廃車にするといって引き取っても、実際には廃車にせず名義変更後に修理・補修を行って転売することがあります。このケースでは、そもそも還付金すら発生しません。

また、名義変更後に一時抹消を行って海外輸出に回したり、パーツ取り用として保管したりするケースもあります。この場合には、一時抹消した際の名義人である廃車業者に還付金が渡ります。

廃車業者の中にはきちんと自賠責の還付金相当額をユーザーに渡す業者もありますが、全く返してくれないどころか、還付金が発生しているにも関わらず、廃車手数料を請求してくるところもあります。

プラスマイナスするとかなりの金額差になるため、自賠責保険が残っている車を廃車業者に引き取ってもらう時は、還付金はどうなるのか事前に確認したほうがいいでしょう。

任意保険の引き継ぎ・解約などは自分で行う必要がある

任意保険の引き継ぎ・解約などは自分で行う必要がある
強制保険である自賠責保険とは異なり、任意保険は加入するもしないもユーザーの判断次第です。そのため、車の売却や購入に伴う新規加入・引継・解約などといった手続きは、ユーザー自身が行う必要があります。

特に重要なのが、売却や購入に伴う「車両変更」の手続きです。これを怠ると次の車を運転している時に事故に遭遇した際、補償を受けることができなくなってしまいます。

さらに、車両変更の手続きをせず新規で任意保険を契約してしまうと、本来なら引き継がれるはずの等級が引き継がれず、スタート地点の6等級に戻ってしまいます。

等級は、1~20等級まであり、等級が上がるにつれ割引率が上昇し、保険料は安くなります。

等級を上げるためには「1年間無事故で保険を使用しない」という条件を満たさなければなりません。

6等級以上の方が車両変更の手続きをせずに等級が下がってしまうと、保険料が上がり、それを元に戻すには長い年月を必要とします。そのため、任意保険に加入している場合は、車両変更の手続きを忘れずに行うようにしましょう。

なお、車の売却に伴って任意保険の解約手続きを行った場合の還付金(正確には解約金・返戻金)は、契約者本人に返還されます。

まとめ

①自賠責保険が残っている車を売っても、還付金が手元に戻ってくることはない
②ただし、自賠責保険が3ヶ月以上残っている場合は、買取額にプラスされることもある
③自賠責保険の還付金は、その車を廃車(一時抹消・永久抹消)した時に発生する
④自賠責保険が切れていても、問題なくその車を売ることができる
⑤自賠責保険の切れた車で公道を走るのは、重大な交通違反に当たるため絶対にしない
⑥売った車の自賠責保険を次の車に引き継ぐことはできない
⑦車を売る時の自賠責保険に関する手続きは、全て業者に任せてOK
⑧一方、車の売却や購入に伴う任意保険の引き継ぎや解約などの手続きは、自分自身で行う必要がある

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