自分の子どもや孫に新たな車が必要になった場合、今使用している車を譲ってあげたり、新車を購入してあげることは、親や祖父母であれば珍しくないことでしょう。

しかし、自身の所有物を親族に譲渡する場合、多額の税金が発生する可能性があります。

子どもや孫のカーライフを気持ちよく援助するためにも、「贈与税」の仕組みや税金を抑えるポイントを知っておきましょう。

車の売却は贈与税がかかる!

車の売却は贈与税がかかる!
ここからは、車を売却する場合に発生する「贈与税」について解説します。

売却とは、財産や権利、不動産を有償で相手へ譲り渡す行為です。自身が乗っていた車を子どもや孫へ売却したり、譲渡したりするケースを指します。

しかし、譲り渡す財産や権利、不動産の評価金額が年間で110万円を超えた場合には贈与税がかかるため、贈与税の仕組みや贈与税が発生した場合の対応方法を把握しておくことが重要です。

そもそも贈与税とは?

そもそも贈与税とは?
贈与税は、家族や親戚との間で財産や何かしらの権利、不動産を譲り渡す際にかかる税金です。

その年の1月1日~12月31日までの1年間を通して、贈与によって譲り渡した財産等の評価額が合計110万円を超過した場合にのみ課税されます。

この110万円は「基礎控除額」といいます。

実際の計算は、譲り受けた総金額から基礎控除額を差し引いた後の金額が、課税の対象となることをおさえておきましょう。

課税の条件

課税の条件は譲り渡す相手によって変わります。

譲り渡す相手が、ご自身の子どもや孫の場合、車を譲り渡した年の1月1日時点で子どもや孫が成人を迎えているかいないかで課税税率が異なります。

成人を迎えている場合、譲り渡した財産等は「特例贈与財産」に該当し、他の財産贈与と比較して、かかる税率がおさえられるメリットがあります。

この理由は、日常生活における様々なライフイベントでお金が必要になる若年層に対して、親や祖父母世代の財産を譲り渡しやすくする狙いが含まれているためです。

一方で、子どもや孫以外の親族に対して車を譲り渡す場合には、譲り渡す相手の年齢にかかわらず、譲り渡す車は「一般贈与財産」に該当するため、特例贈与財産と比較し税金が高くなることに注意が必要です。

誰が支払うのか

財産贈与を受けた場合、贈与税を支払う対象は財産を譲り受けた者が支払いの対象となります。そのため、自身の車を子どもや孫に譲り渡した場合には、その子どもや孫に贈与税を支払う義務が生じます。

車の贈与の場合、現金を贈与されていないため贈与税を納付するための現金が手元に残っていないことも多々あります。

もし、子どもや孫が贈与税の納付ができず、ご自身が代わりに贈与税を納付した場合、新たな贈与が発生したとみなされることによって、追加の贈与税が発生することもあるため注意が必要です。

贈与税の申告方法

贈与税の申告方法
贈与税は申告用紙を作成する必要があります。その際の申告方法は、以下の2通りがあります。

①税務署や国税庁から用紙をダウンロードして申請

1つ目は、税務署の窓口や国税庁のホームページを経由して、申告用紙を入手する方法が挙げられます。

なお、申告用紙に記入する必要事項は以下の通りです。

  • 贈与を受けて申告する人の氏名や住所
  • 贈与により取得した財産の種類
  • 財産を取得した年月日
  • 財産の価額

財産の価額から贈与税額を計算し、金額を記載することで申告書の作成は完了です。

郵送もしくは税務署の窓口へ持参して申告します。

②確定申告書等作成コーナーで申請

2つ目は、国税庁のホームページにある確定申告等作成コーナーを利用する方法です。この場合、申告用紙を印刷したり手書きで必要事項を記載したりする手間が省けるのでおすすめです。

入力する必要事項は、前述した申告用紙に記入する項目と変わりません。

また、財産の価額を所定のフォームに入力すると贈与税の金額を自動計算してくれるため、贈与税額の計算ミスを防ぐこともできます。

作成した申告書は、国税庁が運営している申告システムである「e-Tax」で申請できます。パソコンやスマートフォンで操作が完結できることがメリットですが、事前にカードリーダーや電子証明書の準備が必要です。

マイナンバーカードを利用する場合は、マイナンバーカード読み取りに対応しているスマートフォンであれば、カードリーダーの準備が不要になるため、以前と比べて申請のハードルが下がりました。

電子申請以外であれば、作成した申告書をプリントアウトしたのち、税務署の窓口に持参するか、書類を郵送することで対応可能です。

贈与税に関する手続きの詳細を調べる方法はありますか?
贈与税に関する手続きについては、国税庁や所轄の税務署のホームページを確認しましょう。
国税庁のホームページであれば、パンフレット「暮らしの税情報」で贈与税に関する情報が分かりやすく公表されています。
また、チャットボット「ふたば」であれば、夜間や土日でも質問が可能です。
もし、ホームページを確認しても分からない場合は、開庁日であれば税務署の窓口にて税務署職員から説明を受けられます。平日の午前8時半~午後5時までが営業時間となります。
愛車の買取相場を知ることで高く売ることができます 愛車のかんたん査定はこちら

贈与でよくある3つのケースを紹介

贈与でよくある3つのケースを紹介
車を譲り渡す場合の注意点は「誰が誰に譲り渡すか」によって変わります。

ここからは、具体的なケースを3つ紹介していきます。

①親が乗っていた車を子どもに譲るケース

親が乗っていた車を子どもに譲るケースでは、譲る車の評価額に注意が必要です。

贈与税の計算に必要な車の評価額は、譲る時点で売却した場合に設定される評価額が設定されるため、車種や年式、走行距離などの車の状態に大きく左右されます。

評価額を自身で決めることはできないため、車の買取業者へ見積り依頼すると客観的な金額が分かるため、おすすめです。

子どもへ車を譲る際に、車の評価額を気にする方はあまり見受けられませんが、「知らない間に贈与税の支払いが発生していた…」といったような状況を避けるためにも、譲る前には車の評価額を確認しておきましょう。

②夫婦間で贈与するケース

夫婦間で車を贈与するケースにおいては、贈与する車の価格に注意が必要です。

夫婦はお互いを扶養する義務があり、生活に必要な範囲内であれば贈与税がかからない特徴があります。そのため、贈与予定の車がいわゆる高級車に該当しなければ贈与税はかかりません。

一方で、贈与予定の車が高級車に該当する場合には、嗜好品の贈与と認定され、贈与税が発生する場合があります。

具体的な例として、日常使いの自家用車があるにも関わらず、妻名義で高級車を購入した場合などが、贈与税の発生するケースに該当します。

③車を子どもや孫に購入してあげるケース

車を子どもや孫に購入してあげるケースにおいては、車を贈与したのではなく現金を贈与したとみなされる点に注意が必要です。このケースにおいて新車や中古車に違いはありません。

子どもや孫に車を購入してあげた場合、子どもや孫へ現金を渡し、そのお金で車を購入したと考えることもできます。そのため、購入した金額がそのまま贈与した金額とみなされます。

一方で、遠方に進学した子どもの生活のために車を購入した場合は、生活費や教育に必要な援助をしたとして贈与税がかからない可能性もあります。

贈与税の課税額の計算方法

贈与税の課税額の計算方法
課税額の計算方法は、贈与した車の評価額から基礎控除額を差し引くことで計算できます。

その計算式は以下のとおりです。

車の評価額-基礎控除額(110万円)=贈与税の課税額

計算式を見ても、実際にどの程度の金額が算出されるかが分かりにくいため、ここからは車の評価額が300万円と仮定した場合のケースで解説していきます。

車の評価額が300万円のケース

車の評価額が300万円の場合、課税価格を計算すると次の金額となります。

300万円-110万円=190万円

この課税価格に対して、実際に必要な贈与税額についても確認してみましょう。

贈与税額の計算には、譲り渡す相手によって税率が次のように変わります。

  • 配偶者や未成年の子どもへの贈与…一般税率
  • 親もしくは祖父母から18歳以上の子どもや孫への贈与…特例税率

課税価格によって上記の税率は変わりますが、今回のケースであれば課税価格が200万円以下であるため、一般税率であっても特例税率であっても税率は10%であり、控除額は該当しません。

実際の計算結果は次の通りです。

190万円×税率10%=19万円(贈与税の課税額)
譲り渡す予定の車の売買価格が分からない場合は、どうしたらいいですか?
車の売買価格を評価してくれる業者が近場にいない場合、減価償却によって中古車としての評価額を計算する必要があります。
減価償却とは、手持ちの資産を法定耐用年数に応じて費用化する方法であり、対象となる資産の耐用年数は法律によって定められています。 車の法定耐用年数は、普通車であれば6年、軽自動車であれば4年です。
しかし、中古車の場合、新車とは異なり劣化が進んでいます。そのため、使用年数に合わせて耐用年数を自身で計算する必要があります。
中古車の耐用年数の計算式は、(法定耐用年数ー経過年数)+(経過年数×0.2)です。
耐用年数の計算以外に必要な減価償却の計算は複雑なため、専門家に依頼することをおすすめします。

新車を購入してローンを組む際は贈与税にも注意が必要

新車を購入してローンを組む際は贈与税にも注意が必要
子どもが新車購入時にローンを組む際に援助する場合も贈与税が発生する可能性があるため注意が必要です。

新車購入のために子どもがローンを組み、返済している場合において、ローンの補填のために援助する親や祖父母は少なくありません。

前述した通り、基礎控除額の110万円を超えない範囲であれば贈与税が発生しないため、毎年100万円を子どもへ渡しても贈与税は発生しないと考えられます。

しかし、定期的に金銭を援助していれば、贈与金額が決まっていたとみなされる場合があります。この場合、ローン金額分を分割して贈与していたとみなされることで贈与税が課税される可能性があります。

車の贈与税を抑えるためのポイント

車の贈与税を抑えるためのポイント
車の贈与税を抑える場合は、次の5つのポイントについて理解しておくことが重要です。

①買取時は複数社に見積もりをとる

車を親族に売却・譲渡する際に発生する贈与税では、車の評価額の計算が必要です。

車の評価額は、買取業者の複数社に見積もりをとることをおすすめします。基本的に車の査定では、一般財団法人日本自動車査定協会(JAAI)が定めた基準によって算出しますが、業者によって査定額が高額になる場合もあれば、低く設定される場合もあります。

贈与税の節税に焦点をあてた場合、車の査定額は低く設定されていることが好ましいです。そのため、基礎控除額の110万円より低ければ、贈与税はかかりません。

②名義変更せずに車を貸与する

車を贈与せずに貸し借りすると贈与税の課税対象外になるため、節税対策としては有効です。

その際に注意が必要なのは、所有者名義を変更しないため、貸与する車の任意保険名義も変更にならないということです。

任意保険の契約内容にもよりますが、車の所有者以外が補償対象外に設定されていると、貸与した子どもや孫が事故を起こした場合に損害賠償請求を自己負担しなければなりません。

車を貸与する場合には、必ず自動車保険の補償内容を確認することが重要です。

③購入時の資金を贈与する

前述の通り、購入時の資金を贈与する場合には注意が必要ですが、月々のローン返済額に対して援助することで節税できます。また、ローン金額の一部として、基礎控除額の110万円を超えない範囲の金額を贈与しましょう。

購入時の資金贈与で注意が必要な点は、基礎控除額を下回る金額であったとしても、定期的に金額を贈与している場合、「定期贈与」として贈与した合計金額が課税対象となります。

具体的な例でいえば、400万円を4年間に分けて100万円ずつ毎年贈与する、といったパターンが該当します。

④中古車を選択する

中古車は新車と比較して贈与税の計算に関係する評価額の金額が低くなる特徴があります。

新車の評価額は購入した金額が該当するため高額になりやすく、中古車だとしても新車に近い状態であれば査定額が高額になるケースがあります。

新車の購入金額や新車に近い状態の中古車の査定額は、基礎控除額の110万円を超えることがたたあるため、必然的に贈与税が発生します。

中古車になるまでは子どもや孫に車を貸与し、評価額が基礎控除額を下回ったタイミングで贈与すると、贈与税が課税されなくなるため、おすすめの対策法です。

しかし、貸与する場合には、自動車保険の名義や契約内容、補償内容を必ず確認することを忘れないでください。

⑤成人した子どもや孫に贈与する

成人した子どもや孫に車を贈与することは、贈与税の税率が一般税率と比較して低くなるため節税対策として有効です。

車を贈与する年の1月1日時点で、子どもや孫が18歳を迎えていれば、若年層に対する財産の委譲として、贈与税の計算に特例税率が適用されます。

特例税率の魅力は、一般税率と比較して税率が軽減される点です。贈与金額が400万円以下を想定した場合、一般税率であれば税率が20%であるのに対して、特例税率であれば15%と、5%も軽減されています。

しかし、特例税率は贈与金額が410万1,000円以上から適用されることに注意が必要です。

贈与税を節税する方法には何がありますか?
まずは、贈与税の基礎控除額を利用する方法があります。贈与する金額もしくは贈与する車の評価額を基礎控除額である110万円以下におさめることです。具体的な方法としては、「ローン金額に対する援助を110万円以下にする」「贈与する車の査定額が110万円以下になるタイミングまで待つ」などです。
また、特例税率を利用する方法もあります。これは贈与する子どもや孫が18歳以上になったタイミングで車を贈与することです。贈与する年の1月1日時点で子どもや孫が18歳以上になっていれば、一般税率と比較して軽減された税率で贈与税が計算されます。

まとめ

①子どもや孫、夫婦間でも贈与税は課税されるが、年齢や車の評価額によって減税もしくは免除されることがある
②贈与税の申告はWeb上でも可能で、手続きに不安がある場合は税務署窓口で対応してもらえる
③贈与税の課税額は、車の評価額、基礎控除額(110万円)、税率が関係する
④評価額は、買取業者に車を査定してもらうことで分かる
⑤贈与税の基礎控除額を利用する方法と特例税率を利用する方法の2つに大別される
⑥車を貸与する場合は、加入している自動車保険の補償内容を確認することが重要

※本記事は公開時点の情報になります。
記事内容について現在の情報と異なる可能性がございます。
車の査定は何社に依頼するべき?
愛車の買取相場を知ることで高く売ることができます 愛車のかんたん査定はこちら