軽自動車を売却したり、友人知人に譲ったり、相続したりする時は「名義変更」の手続きによって所有者名を変更しなければなりません。

変更しないままだと、納税義務など、車に関するさまざまな責任を前の持ち主が負うことになります。では、名義変更の手続きは具体的にどのように行うといいのでしょう?

今回は、名義変更の手続きする場所、必要書類、手順、費用などについてまとめました。今後手続きが必要になりそうな方は参考にしてください。

名義変更は車の所有者が変わるときに行う

車は常に「誰の所有物であるか」が決まっており、車を売却する権利などを持っているのはそのつどの所有者(名義人)だけです。

その所有者を変更する手続きを、名義変更と呼びます。(正式名称は移転登録です)

例えば、家族や友人知人などの身近な人から車を譲渡されたり、ネットオークションで購入したりするような場合でも、持ち主が変わる以上は名義変更が必要です。

これを怠ると車検が受けられず、譲渡・廃車もできません。

名義変更の種類は?

名義変更の種類は?
軽自動車の名義変更は、「車検証上の所有者や利用者を変更する手続き」と「納税者が変わることを申請する手続き」の2つの手続きが合わさったものです。

手続きは、軽自動車検査協会でまとめて行うことができます。

また、所有者の氏名だけが変わる時も名義変更が必要です。具体的には、結婚その他の理由によって姓が変わる場合などです。

名義変更しないと車の名義人が前の持ち主のままになるので、車の新しい所有者は車を借りているような状態になってしまいます。そのため、車を所有したら、すぐに手続きを行うようにしましょう。

名義変更が必要になるケース

名義変更が必要になるケース
道路運送車両法によると、車を入手したら必ず15日以内に名義変更手続きを行うよう定められています。この規則には特に罰則はありません。

しかし、名義変更をしていないとトラブルに巻き込まれる可能性があるので注意が必要です。

例えば、違反を起こした場合に前の持ち主が責任を問われます。また、軽自動車税の納税義務はあくまでも4月1日時点の名義人に課されることになります。

以下では、車の手続きが必要になるケースを説明しましょう。

車を売却する場合

手持ちの車を売却したい場合は、まず車検証で所有者(名義人)が誰であるか確認しましょう。家族に買ってもらった車の場合、名義人が家族になっていることもあります。

車の売却手続きができるのはあくまでも名義人だけなので、登録内容が実態と違うなら変更手続きをしてください。

ちなみにこの後、車を中古車販売店に売却すると次の名義人は販売店ということになり、こうして名義変更手続きはどんどん繰り返されることになります。

車を譲渡する場合

車を他人に譲るのが、車の「譲渡」です。

例えば、家族や友人知人に、販売店やネットオークションの落札者に、車を売ったり無償であげたりするのも「譲渡」になります。

車が相手の手元に移動した段階で「譲渡した」というのが一般的な感覚ですが、法律的には譲渡手続きは名義が変更された時点で完了したことになります。

ニュアンスの違いはありますが、「他人に車をあげる」なら名義変更が必要なのだと覚えておきましょう。

車を相続する場合

軽自動車の所有者が亡くなり、その車を「相続」する場合も、やはり名義変更が必要なケースに該当します。名義変更の手続き自体が相続手続きそのものになると考えていいでしょう。

軽自動車の相続(名義変更)手続きは簡素化されていて楽なのですが、その前に法定相続人と協議して遺産分割協議書を作るなど、民法上の手続きを行う必要があります。

その手続きを踏まずに、他の相続人に断ることなく故人の所有物だった車を勝手に処分してはいけません。

もし勝手に譲渡や廃車手続きなどを行うと、後でその車の時価相当額分の損害賠償を求められる恐れがあります。

中古の軽自動車とはいえ、売ればお金になる立派な遺産だからです。

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名義変更を怠るとトラブルに発展する?

名義変更を怠るとトラブルに発展する?
道路運送車両法第13条では「車の購入及び納車後、15日以内に届け出をしなくてはならない」と定められています。

名義変更をしなくても罰則はありませんが、デメリットが大きいことも事実です。

つい「別に困らないしいいか」と最初に思ってしまいがちですが、所有していない自動車税の納税義務が発生したり、自己や違反の責任が問われるたりするといった後々トラブルになる可能性があります。

ここでは具体的に考えられるデメリットを3つ紹介します。

軽自動車税の納税義務が発生する

名義変更が行われていないと、前の使用者に軽自動車税の納税義務が課せられます。

軽自動車税の納税義務は、4月1日時点の所有者に発生するので、これを避けるためには、3月31日までに名義変更手続きを完了させておかなければなりません。

車を中古買取業者に売って、一連の手続きを全て業者に任せた場合、名義変更完了までに約1ヶ月かかることもあります。売却後に納税通知書が届いた場合は、名義変更が行われていないか4月1日までに間に合わなかったと考えていいでしょう。

車を手放したつもりでいたのに納税通知書が届いたというケースは実際にあるので、3月に車を売却する場合は、名義変更が月をまたぐことも考慮に入れて業者と相談しておくようにしてください。

買取業者との売買契約の内容によっては、売却後でも納税義務が発生することもあります。

事故などで責任を負わされる

車の名義変更が行われていないと、その車が起こした事故や違反行為などに関する責任がついて回ります。

車を手放したにも関わらず、ある日突然駐車違反の罰金を支払うよう通知が来た、などという事態になりかねません。

車が起こした違反の内容によっては、警察からの出頭命令が届くこともありえます。もちろん事情があって名義変更がされていないことを説明すれば理解される可能性もありますが、最悪の場合は慰謝料や違反金の支払い義務を負わされるかもしれません。

いずれにせよ、譲渡した車の名義変更が行われないままでは、車をただ貸しているような状態なので、後々トラブルが生じる可能性があります。

車庫飛ばしの処分を受ける可能性が出てくる

車の名義変更がされていない場合、保管場所違反で行政処分を受ける恐れもあります。

車の保管場所は、名義人の自宅から半径2キロ以内と決まっていますが、そこからはみ出していたり虚偽の証明を行っていたりした場合には「車庫飛ばし」と見なされるかもしれません。

名義変更が行われていないと、車庫証明に登録されている車の保管場所が、車検証上の名義人の自宅から半径2キロ以上離れてしまうことは十分ありえます。そうなると内容が矛盾するため、車庫飛ばしになるのです。

車庫飛ばしによる罰則は、3ヶ月以下の懲役または200,000円以下の罰金です。

車の譲渡が行われたらすみやかに名義を変更し、こうしたリスクを避けるようにしましょう。

名義変更はどこで行うのか

名義変更はどこで行うのか
軽自動車の名義変更は、「軽自動車検査協会」に直接出向いて行います。

軽自動車検査協会は、軽自動車(ただし軽二輪は除く)の検査や、それに関わる事務手続きを国に代わって行う機関で、1972(昭和47)年から道路運送車両法にもとづいて事業を実施しています。

車を公道で走らせるには、国の安全基準を満たしていなければなりません。そこで全国でスムーズに検査事務を行うことを目的に設立されたもので、ホームページも充実しています。

名義変更時の必要書類は?

名義変更時の必要書類は?
名義変更の手続きは比較的簡単で、必要な用紙を準備して提出するだけです。

一連の手続きを業者に依頼することもできます。ただし、車を3月に売却して名義変更を業者に任せた場合、手続きが月をまたいでしまうと、売却したはずの車の納税義務を負わされることもあります。

自動車・軽自動車税は4月1日時点の名義にもとづいて課されるからで、状況によっては自分で手続きを行うことを検討してもいいでしょう。

以下では、自分あるいは業者が手続きをする場合の必要書類を3つのパターンに分けて説明します。

1.自分で手続きをする場合の必要書類

名義変更の手続きでは、以下のものを準備します。

①新使用者の住民票(発行日から3ヶ月以内のもの)
②新使用者の申請依頼書
③新所有者の申請依頼書
④旧所有者の申請依頼書
⑤車検証
⑥車の前後のナンバープレート(ナンバー変更がある場合)
⑦軽自動車税申告書
⑧申請書(軽第1号様式)

なお、⑦⑧は当日に検査協会でもらいます。②③④の申請依頼書も、協会窓口でもらうか協会HPからダウンロードして押印しましょう。

普通車(登録車)の場合は印鑑登録している実印が必須ですが、軽自動車の場合は認印(シャチハタは不可)で大丈夫です。

2.業者に代行してもらう場合の必要書類

名義変更手続きを業者に代行してもらう場合は、以下の書類を用意します。自分で行う場合とほとんど同じです。

①新使用者の住民票(発行日から3ヶ月以内のもの)
②新使用者の申請依頼書
③新所有者の申請依頼書
④旧所有者の申請依頼書
⑤車検証
⑥車の前後のナンバープレート(ナンバー変更がある場合)

車の売却に伴う名義変更手続きであれば、ほとんどの場合は販売店が手続きを代行することになるでしょう。その場合は、上記の書類を用意して、費用と一緒に渡すだけで後はお任せになります。

ただ、代行手数料がいくらになるかは業者によって違います。また、車の買取金額から差し引かれる場合もあります。

3.相続により名義変更をする場合の必要書類

相続による名義変更の場合、必要書類は以下の通りです。

①新所有者の住民票(発行日から3ヶ月以内のもの)
②新所有者の認印
③車検証
④亡くなった方の戸籍謄本(所有者亡くなった事実と新しい所有者が相続人であることが確認できる書面)

相続による名義変更の手続き自体は簡単ですが、その前に行う民法上の手続きとして、相続人の「印鑑証明書」や「遺産分割協議書」などが必要となります。

特に分割協議においては、大変な手間がかかることもあります。よって、軽自動車の相続案件が発生した場合には、全体の相続手続きの流れの中で効率的に書類を準備してください。

また、このようなケースでは必要書類が地域によって違うこともありますので、あらかじめ都道府県の管轄の軽自動車検査協会に問い合わせておきましょう。

名義変更の手続きの順序

名義変更はどこで行うのか
名義変更手続きの流れは以下の通りです。

ナンバーを変更する場合は手続きがいくつか増えるので確認しておきましょう。

  1. 必要書類をあらかじめ準備しておく
  2. 軽自動車検査協会の窓口で手続きの流れを確認する
  3. 協会内で入手した用紙に必要事項の記入を行う
  4. ナンバーの変更や図柄ナンバーへの交換を希望する場合は、隣接した予約センターで「希望番号予約証」をもらう
    ※希望ナンバーや図柄ナンバーを希望する際には事前に申請をする必要があります。
  5. 書類を書類整備確認窓口へ提出する
  6. ナンバーを変更しない場合は、地方税申告窓口で軽自動車税の申告が行われ、算出された軽自動車税環境性能割を支払う
  7. ナンバーを変更する場合は、隣接したナンバー返納窓口から専用のドライバーを借りてナンバープレートを外し、返納する
  8. 書類一式を協会窓口へ提出する。新しい車検証が交付されるまでの間、しばらく待機する
  9. 窓口で新しい車検証の交付を受ける。車検証に記載ミスなどがないかどうか確認し、ナンバーの変更がなければここで手続き終了
  10. ナンバーの変更があれば、地方税申告窓口に軽自動車税申告書と車検証を提出する。軽自動車税環境性能割をここで納税する
  11. 交付窓口で新しいナンバープレートを受け取り、軽自動車に装着して終了

車庫証明の届け出が必要なこともある

車庫証明の届け出が必要なこともある
多くの場合、軽自動車の名義変更では「自動車保管場所証明書(車庫証明)」に関する手続きは不要です。

しかし、地域によっては名義変更後に警察署への届け出が義務づけられていることがあります。あらかじめ警察署への届け出が必要かどうか聞いておきましょう。

問い合わせ先は、車の所有者の自宅住所を管轄する警察署ではなく、車の「保管場所」を管轄するほうの警察署になります。

届け出のための申請書は、警察署のホームページからプリントアウトも可能です。そして必要に応じて保管場所使用承諾証明書などを用意して、記入した申請用紙と一緒に提出することで最短当日でステッカーが交付されます。

普通自動車の名義変更の場合は、車庫証明の届け出を行ってから名義変更の手続きとなります。この点が軽自動車とは違うので覚えておきましょう。

名義変更が完了しているか不安な場合はどうしたらいい?

名義変更が完了しているか不安な場合はどうしたらいい?
手放した軽自動車の名義変更が済んでいるか不安な場合は、軽自動車検査協会に電話して確認できます。

現在の名義人の個人情報を聞き出すのは無理でも、現在の名義が自分かそうでないかは教えてもらえるでしょう。

準備するのは当該車のナンバー、元所有者の住所氏名の情報です。

受付時間内にコールセンターに電話して確認ができます。

名義変更手続きにかかる手数料は?

名義変更手続きにかかる手数料は?
軽自動車の名義変更を行うと、さまざまな費用がかかります。

具体的には以下の5つの費用になります。

  • 軽自動車税環境性能割
  • 住民票や印鑑登録証明書の発行手数料
  • 収入印紙代
  • ナンバー変更の場合の費用
  • 保管登録場所標章の交付手数料

また手続きを代行してもらうと、検査協会での手続きと、警察署の車庫証明申請(必要な場合)の「代行手数料」も加わるので総額はさらに増えます。

金額は業者ごとに違いますが、車の売却に伴い買取業者が手続きをする場合は、費用は売却金額から差し引かれることがほとんどです。

以下では、こうした各種手数料を含めた全体の費用について説明します。

自分で手続きをすれば節約も可能なので、ここで全体像を一度確認しておきましょう。

自分で手続きをする場合の手数料

軽自動車の名義変更手続きを行うと、以下の3つの費用がかかります。

  • 軽自動車税環境性能割
  • 住民票や印鑑登録証明書の交付のための手数料
  • 収入印紙代

軽自動車税環境性能割は、普通自動車の「自動車取得税」に代わるものです。税額は新車当時の価格や経過年数によって変動してくるので、いくらになるのか一概には言えません。金額的には数千円程度です。

これらに加えて、ナンバープレートを変更する場合は1,500円~5,000円を払うことになるでしょう。この時、普通のプレートではなく希望の数字や柄の入ったものを希望すると、さらに1,000円~2,500円程度がプラスされます。

また、地域によって違いがあるものの、別の項目で説明した通り、車の保管場所について警察署への届け出が必要になることがあります。その場合は、保管登録場所標章の発行にあわせて約500円の交付手数料を払うことになるでしょう。

業者に代行してもらう場合の手数料

車の売却に伴う名義変更手続きの場合は、買取業者に手続きを任せる場合がほとんどです。

検査協会に支払う費用とは別に、代行手数料だけで約10,000円~25,000円、さらに車庫証明の届け出も依頼すれば総額で40,000円程になるでしょう。

これらの手数料は売却代金から差し引かれる場合がほとんどですが、代行業者に依頼した場合は直接払いになります。

業者によって手数料は違ってくるので、利用する前に調べておくと安心です。

まとめ

①名義変更は売却・譲渡・相続などで車の所有者が変わる時に行う
②名義変更しないと納税義務が発生し、事故や違反、車庫飛ばしなどの責任を負う
③名義変更は軽自動車検査協会で行う
④名義変更時の必要書類は、業者が代行する場合と相続の場合はそれぞれ別途準備するものがある
⑤車庫証明の届け出が必要なこともある
⑥名義変更が完了しているか確認することはできる
⑦業者が代行すると、手数料は数万円プラスされることもある

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