結婚や引っ越しに伴う転居の手続きに追われ、車検証の更新や名義変更を忘れてしまうケースは珍しくありません。
ただ、廃車手続きの場合は車検証の記載情報と現姓・現住所の一致が必要です。
この記事では、車検証上の名字が旧姓になっているケースや、記載住所と現住所が異なる場合の廃車手続きの方法について詳しく解説していきます。
車検証が旧姓のままでも廃車手続きは可能
原則、車検証上の名字が旧姓のままでも廃車手続きは可能です。
例えば、車の購入後に結婚して名字が変わった場合や購入後に離婚して旧姓に戻った場合など、わざわざ名義変更しなくても廃車手続きはできます。
ただし、車検証上の姓と現在の姓が異なると、通常の廃車手続きに必要な書類に加えて本人証明の書類が別途必要になります。
本人を証明する書類の提出が必要!
旧姓と現姓が異なる場合、廃車手続きの際に本人であることの証明として「戸籍謄本」や「戸籍の附票」が必要になります。いずれも、お住まい地域の市役所にて発行可能なため、廃車手続きの必要書類とあわせて発行してもらいましょう。
なお、戸籍謄本や戸籍の附票を始めとした必要書類の発行には、マイナンバーカードや運転免許証など、本人確認書類と印鑑が必要です。場合によっては、廃車手続きに印鑑証明書を必要とするケースもあるため、使用印は登録がある実印を持参しましょう。
車検証の名義が旧姓のまま廃車手続きを進めるための必要書類について
車検証上は旧姓であっても、廃車手続きの手順は通常とほとんど変わりません。ただし、戸籍謄本もしくは戸籍の附票、新姓の印鑑証明書などの準備が別途必要です。
ここからは、車検証が旧姓のまま廃車手続きを進めるための必要書類の準備方法について解説していきます。
印鑑登録とは、使用印を登録することによって「正式な印鑑」として証明できる制度のことです。登録は市役所にて行い、手続き後は印鑑証明書を発行できます。
普通自動車の廃車手続きには印鑑証明書が必要なため、必ず印鑑登録を済ませておきましょう。
名字が変わると旧姓の印鑑登録は自動的に失効するため、現姓で新たに印鑑登録しなければなりません。
印鑑登録の手続きをする際は、以下の持ち物が必要になります。
- 実印用の印鑑(シャチハタ・ゴム印は使用不可)
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)
通常、印鑑登録は数日かかる手続きのため、印鑑証明書の即日発行はできません。しかし、例外として本人確認書類のうち運転免許証やパスポートなど顔写真付きの証明書を持って本人が登録にきた場合は即日発行が可能です。
なお、印鑑証明が必要なのは普通自動車の場合のみで、軽自動車の廃車手続きに関しては不要です。
廃車手続きを行うには、旧姓と現姓が同一人物であることを証明しなければなりません。
本人を証明するには、戸籍謄本または戸籍の附票の提出が必要です。どちらも市役所にて発行が可能なため、他の必要書類と一緒に手続きしておきましょう。
もし引っ越しや出張など、何らかの理由で本籍地の市役所に行くのが難しい場合は、コンビニ交付もおすすめです。マイナンバーカードを持っていれば仕事帰りにコンビニで発行が可能です。
新しい名字で印鑑登録する際の注意点
印鑑登録にはルールがあります。登録情報や使用印によっては申請を受理されないこともあるため、あらかじめ必要事項を確認した上で申請しましょう。
ここからは、新しい名字で印鑑登録する際の注意点について解説していきます。
旧姓で印鑑登録していた場合は名字の変更と同時に失効します。しかし、名前で印鑑登録していた場合は情報が継続されます。
印鑑登録の原則として、住民票に記載されている氏名の全部または一部分が刻印されていれば登録上、問題ありません。
例えば「山田花子」の姓から結婚して「田中花子」に変わった場合、前の印鑑登録を「花子」で行っていれば姓が変わっても登録情報は継続されます。
ただし、「山田」や「山田花子」で印鑑登録している場合は旧姓と新姓で登録情報が異なるため失効対象です。
印鑑登録は一個人を証明する制度のため、世帯内で同じ印鑑を使い回せません。
例えば、夫婦の場合、夫側と妻側で別々の印鑑登録を行う必要があります。各々で登録を行う際は、片方が名字でもう片方は名前で、あるいは双方が名前で印鑑登録するといった手段があります。
印鑑登録に用いるハンコは、原則として変形しやすい材質のものは認められません。
例えば、シャチハタやゴム印は彫刻部分が変形しやすいため使用不可です。自治体によっては100均で売られているプラスチック印も許可していない場合があります。
他にも印鑑登録に使えないハンコは以下のものが挙げられます。
- 印影が欠けていたり、ないもの
- サイズが8mm未満あるいは25mmより大きいもの
- 肩書きやイラストが彫刻されているもの
- 逆彫りのもの
印鑑登録に使うハンコに不安のある方は、お住まいの地域の市役所へ問い合わせてみましょう。
印鑑登録は基本的に本人が行うものですが、委任状を作成すれば代理人にお願いすることもできます。
ただし、代理人申請の場合は以下の書類が必要です。
- 登録印
- 代理人の印鑑
- 代理人の本人確認書類
- 委任状
代理申請の手順は、市役所に上記の書類を提出し、照会書を登録者本人に郵送、届いた照会書を持参して印鑑証明書を受け取る流れです。
また、受け取りも代理人が行う場合は、加えて以下の書類を用意しなければなりません。
- 登録者が署名・押印した照会書
- 登録者の本人確認書類またはその写し
- 受け取りのための委任状
本人が印鑑登録する場合、最短で即日、印鑑証明書を発行できますが、代理人にお願いする場合は照会書の郵送を挟むため、数日かかります。
車検証の住所と現住所が異なる場合
引っ越しをして、車検証の住所と現住所が異なる場合、廃車手続きをする際は、現住所と前住所の結びつきを証明できる書類が別途必要になります。
ここからは、住所が変わった場合の廃車手続きについて解説します。
車の購入から引っ越しが1回かつ5年以内の場合、住民票の発行で住所の証明が可能です。
廃車手続きでは、車検証上の住所と現住所の結びつきが証明されれば書類上、問題はないため、前住所が記載された住民票のみで条件を満たせます。
住民票は前住んでいた地域でなくても現住所の市役所で大丈夫です。また、仕事が忙しくて市役所へ行けないという方は、オンライン請求やコンビニ交付での発行も検討してみましょう。
車検証の住所と現住所の結びつきを住民票で証明できない場合、戸籍の附票を提出しましょう。
戸籍の附票を必要とするケースには、主に以下の2パターンが挙げられます。
- 車の購入以降2回以上、引越しをしている
- 前の引っ越しから5年以上が経過している
住民票は1つ前までの住所を記載しているため、複数回引っ越ししている場合は住所同士の結び付きが証明できません。
また、自治体に保存されている住所情報は、保存期間が5年間と定められています。5年以上前に引越ししている場合、住民票を発行しても前住所の記載が削除されている可能性もあるでしょう。
戸籍の附票なら全ての住所の移動歴が記されているため、確実に住所同士の結び付きを証明できます。
廃車手続きは3種類ある
車の自動車税や自賠責保険の支払いをストップするには廃車手続きを済ませなければなりません。
ここからは、3種類ある廃車手続きと、それぞれの特徴について解説していきます。
永久抹消登録とは、車の登録情報を完全に抹消する廃車手続きのことです。名前の通り、登録情報を永久に消すため、対象の車で二度と公道を走ることはできなくなります。
永久抹消登録は普通自動車の廃車手続きに対する名称で、軽自動車の場合の呼び方は「解体返納」です。
永久抹消登録を行うと、使用状況や手続きのタイミングによっては自動車税や自動車重量税、自賠責保険料の還付が受けられます。
永久抹消登録の手続きは、普通自動車ならお住まい地域の運輸支局、軽自動車なら軽自動車検査協会にて行います。
なお、自賠責保険に関しては抹消登録手続きで解約はできません。廃車手続きが完了した後、契約の保険会社へ問い合わせて解約しましょう。
一時抹消登録とは、車の登録情報を一時的に抹消する手続きのことです。軽自動車の場合は「自動車検査証返納届」と呼びます。
一時抹消登録をした後は車を公道で走らせることができなくなりますが、中古新規登録として再登録を行えば、もう一度走行が可能です。そのため、長期出張や病気、ケガなど、しばらく車を運転しない事情がある場合におすすめの手続きです。
なお、一時抹消登録は走行再開の可能性があるため、自動車税や自動車重量税の還付はありません。
中古新規登録(再登録)をする場合は、登録完了後に交付される登録識別情報通知書が必要です。原則として再発行はできないため、大切に保管しましょう。
また、再登録にあたっては自賠責保険の再加入と車検の実施も同時に必要になります。
解体届出とは、一時抹消登録手続きを行った後に永久抹消登録を行う方法のことです。例えば、何らかの理由で運転予定がなくなった場合や盗難された車の発見目処が立たないときに利用される手続きです。
解体届出手続きをすると2度と同じ車で走行できないため、判断は慎重に行いましょう。
運輸支局における廃車手続きの流れを紹介
ここからは、普通自動車の廃車手続きの流れを解説していきます。
なお、軽自動車の場合もおおよその流れは同じのため、全体的なイメージをつかむ参考にしてください。
必要書類はものによって入手先が「市役所」「運輸支局」「解体業者」の3つに分かれます。
- 印鑑証明書
- 住民票
- 戸籍謄本
- 各種申請書
- ナンバープレート
- 自動車税申告書
- 登録識別情報通知書
- 使用済自動車引取証明書
- 移動報告番号
- 解体証明書
所有者が亡くなった車や放置車両の処分など、何らかの事情で他人名義の車を廃車手続きする場合は、警察署や家庭裁判所など、他の公共機関にて手続きが必要です。
例えば、所有者が行方不明の場合は失踪届を警察に受理してもらわなければなりません。また、所有者が亡くなって遺族へ車を相続する場合、行政書士と協力して遺産分割協議書を作成する必要があります。
基本的に名義人本人の場合は特別な手続きは必要ありませんが、他人名義の車を処分する場合は別の手続きが必要になると覚えておきましょう。
抹消手続きにはナンバープレートの返却が必要です。
永久抹消登録や解体届出なら先に解体業者へ、一時抹消登録なら直接、運輸支局に車を持って行きましょう。
車がまだ運転できる状態なら自身で運輸支局まで行ってナンバープレートを外せますが、走行できない車ならレッカー車を手配しなければなりません。
手続き当日は、行きと帰りの交通手段も段取りしておきましょう。
運輸支局では窓口の指示に従って申請用紙に記入し、手続きを進めましょう。
基本的に即日で手続きは完了しますが、年末年始や3月など混雑する時期だと日をまたぐ可能性があります。スムーズな手続きを望むなら繁忙期は避けましょう。
各書類と申請用紙の受理が完了したら最後に自動車税の抹消申告を行います。申請用紙に記入し窓口に提出しましょう。
これで運輸支局での廃車手続きは完了です。
複雑な手続きは業者への代行依頼がおすすめ!
車の廃車手続きは必要書類や手順が多く、人によっては「仕事で忙しくて時間を取れない」といったこともあるでしょう。そこで、おすすめなのが業者への手続き代行サービスです。
ここからは、廃車手続きの代行を請け負っている業者をご紹介していきます。
廃車買取業者は、廃車関連の手続きを専門とする業者のことです。廃車手続きの代行だけでなく走行が難しくなった車両の買取まで請け負ってくれます。もし処理ではなく売却の望みがありそうなら、一度査定を受けてみましょう。
ただし、廃車買取業者にも様々な種類があり、お店や地域によってサービス内容は大きく異なります。持ち込みしか受け付けていない業者もあれば、廃車手続きを無料でやってくれるところもあるため、まずは近隣エリアの廃車買取業者についてリサーチすることをおすすめします。
中古車の買取を行っている業者の中には、廃車手続きを同時に請け負ってくれるところもあります。
もしも中古車として売れる可能性があるなら、一度持ち込んで査定してもらうとよいでしょう。中古車として売れるならベストですし、難しい場合であってもそのまま廃車手続きを依頼できます。
車の買い替えを検討するならディーラーへ相談するのもおすすめです。廃車から新車購入までの一連の流れを一括で依頼できるため、代車の用意や運転しない期間を大幅に短縮できます。
また、廃車予定の車の価値がよく分からないといった場合、ディーラーに相談すれば買取できるかどうかも判断してくれます。
自走できない車を処理するなら自動車解体工場も手段として挙げられます。
ただし、場所によっては代行手続きを受け付けていない場合やレッカー車の手配を行っていないところもあります。まずはサービス内容を問い合わせて確認しておくことが大切です。
書類準備や手続きに関しては行政書士に依頼することも可能です。ただし、あくまで行政機関の手続きに特化しているため、車両の解体依頼は自身で行わなければならない点に注意が必要です。
他人名義の車を処理する場合や法的に処分が難しい放置車両で困っている場合におすすめです。
なお、行政書士への依頼は解体業者の利用も兼ねるため、他の代行業者よりも費用が高くなる傾向があります。
法的な措置が絡む、トラブルが生じた場合など、自分ではどうしても手続きを進められない場合に頼ることをおすすめします。