様々な理由から車が乗れない状態になった時、廃車を考えます。
廃車は車を維持したまま登録のみ抹消する「一時抹消登録」と完全に解体してしまう「永久抹消登録」があります。そのため、自分が必要な手続きはどちらなのか確認してから進めましょう。
この記事では、一時抹消登録と永久抹消登録の違いを解説します。具体的なケースを挙げて解説するため、手続きの流れを簡単に理解できるでしょう。
廃車手続きの一時抹消登録と永久抹消登録について解説
ここからは永久抹消登録と一時抹消登録について、概要と必要書類を紹介していきます。
いずれも書類が多かったり複雑だったりしますが、自分で揃えるものはマイナンバーを使ってコンビニで発行できたり、自治体でもらえるものばかりです。
廃車手続きが2種類ある点と申請に必要な書類を大まかに理解するだけでも安心して手続きを進められるでしょう。
一時抹消登録とは?
一時抹消登録は、何らかの理由でしばらく車に乗らない場合に行う手続きです。廃車手続きではありますが、車自体は残しておく点が特徴的で、解体はしないものの税金の支払いがストップするため車の維持費を抑えられるメリットがあります。
主な必要書類は下記のとおりです。
- 印鑑証明書(発行日から3ヶ月以内のもの)
- 実印
- (代理人が申請する場合)印鑑証明書の印鑑(実印)が捺印された委任状
- 手数料印紙(検査登録印紙)
- 車検証
- 申請書(第3号様式の2と記載があるもの)
一時抹消登録の場合も印鑑証明書や車検証は必要ですが、解体はしないため報告記録等は不要です。
こちらも自治体やケースによって必要書類が若干異なるため運輸支局への問い合わせがおすすめです。
永久抹消登録とは?
永久抹消登録は、車を解体して完全に乗れなくする手続きを指します。車の解体を行い、解体を証明できる各書類を業者にもらった上で永久抹消登録の手続きを進めます。
なお、主な必要書類は下記のとおりです。
- 印鑑証明書(発行日から3ヶ月以内のもの)
- 実印
- (代理人が申請する場合)印鑑証明書の印鑑(実印)が捺印された委任状
- 対象車の解体報告記録がなされた日や移動報告番号
- 車検証
- 申請書(第3号様式の2と記載があるもの)
印鑑証明書は自治体やマイナンバーを使って発行できます。ただし、発行から期間が定められているため手続きのタイミングとあわせて準備しましょう。
また、所有者が他の人に手続きを依頼する場合は委任状が必要です。こちらは廃車を担当する業者のほか、国土交通省の公式ホームページでもダウンロード可能です。
お住まいのエリアによっては必要書類が異なるため、まずは最寄りの運輸支局に確認しましょう。
それぞれの違いは車体の有無
一時抹消登録と永久抹消登録の違いは「車の有無」です。
車を保管したまま登録だけを抹消するか、車ごと無くすかが根本的な違いです。共通点としては、自動車税や自賠責保険の支払いが無くなる点があります。
どちらを選択するかは、まず「車をまだ残しておきたいかどうか」です。そこにライフプランを加味して決めましょう。
廃車の手続きの方法はどうやって選ぶ?
ここからは2種類の手続きについて、どちらを選べばよいか大まかな基準を紹介します。
車をどうしたいか、また本当に乗る可能性はないかを鑑みて判断するのがおすすめです。
免許を返納したり海外移住を決めたり、完全に車に乗らないと分かっている場合は永久抹消登録がおすすめです。
車をまったく触らない状態が続くと、いたずらをされたり犯罪に利用されたりする可能性が高くなります。そのため、早めの廃車手続きを行いましょう。
転勤の期間がある程度定まっていたり、怪我や病気から回復後にまた運転したりする場合は一時抹消登録が適しています。
車を解体したり売却したりすると乗りたい時にゼロから手続きが必要です。車の購入に費用がかかったり、保険の等級が変わったり様々な悩みが発生するでしょう。
一時抹消登録の場合は車を適切に保管すると、次に乗りたい時に登録や保険を再開することができます。そのため、車を再度購入するよりも手間を省けるでしょう。
廃車の具体的な事例を紹介
ここからは、自分の廃車手続きが、一時抹消登録と永久抹消登録のどちらに適しているか判断するために具体的なケースを紹介します。
シーンをイメージすると適した選択肢が見えてくるでしょう。
年齢が高くなると認知機能や体力の衰えから事故を起こしやすくなるでしょう。自分では気をつけているようでも危険を察知してからブレーキを踏むまでに時間がかかったり、視野が狭くなり内輪差で障害物を巻き込んだりするケースも見られます。その場合は免許返納が必要です。
このケースにおいては永久抹消登録が適しています。もしも自分の両親が免許返納する場合は手続きと同時に廃車手続きもサポートしてあげると安心してもらえるでしょう。
仕事の関係で5年程度、海外赴任になった時は家族がいるかどうかで判断が変わります。
単身で車の保管場所がない場合は、永久抹消登録がおすすめです。しかし、実家に車庫があって保管できる環境であれば預けるのも一つの手です。
家族は国内に残って自分だけ海外赴任する場合は、一時抹消登録で保管しておくか、名義変更して家族に乗ってもらう方法があります。名義変更は必要書類を揃えて陸運支局で行うか、代行業者に依頼します。
なお、名義変更の手続きは「現在の所有者」と「新しい所有者」とで必要書類が異なるため、事前に確認して準備を進めましょう。
下記は必要書類の抜粋です。
- 印鑑登録証明書(発行から3ヵ月以内のもの)
- 委任状(実印)
- 譲渡証明書(実印)
- 車検証
- 印鑑登録証明書(発行から3ヵ月以内のもの)
- 委任状(実印)
- 自動車保管場所証明書(発行から1ヵ月以内のもの)
家族で長期間国内を離れる場合、自宅を売却したり賃貸に出したりするのとあわせて車も永久抹消登録を行いましょう。
10年以上離れると自宅も車も管理が難しく、維持費だけがかかります。そのため、永久抹消登録をして一度車を手放しましょう。
もしも親族が管理してくれる場合は、一時抹消登録で置いておく方法もありますが、トラブルや万が一を想定すると廃車もしくは売却がおすすめです。
現在高校生のお子さんがいて、卒業後に車を使う場合は一時抹消登録で保管するのがおすすめです。
2年程度であれば、車庫で定期的にメンテナンスをしながら保管するとよいでしょう。車を走らせなくともエンジンをかけたり洗車したりすると劣化を防げます。汚れが気になる場合は車専用のカバーの購入も検討しましょう。
なお、お子さんに車を渡す場合、譲渡になるため名義変更が必要です。普通自動車の場合は運輸支局、軽自動車の場合は軽自動車検査協会で手続きします。
また、車を渡すと同時に各種保険の変更や新規加入も必要なため、あわせて注意しましょう。
廃車は所有者が手続きを行うため、亡くなった場合はまず相続して名義変更を行います。誰も車を使わない場合は解体し、永久抹消登録を進めましょう。
なお、軽自動車は相続の対象でないため名義変更のみで構いません。
また、相続する前に車検証で所有者の確認をしましょう。ローンが残っている場合は所有者がローン会社やディーラーの名称になっています。
ローン残高が残っている場合は返済を行い、名義変更の後に廃車手続きに進みます。さらに、任意保険に加入している場合は保険の解約が必要なため必ず行いましょう。
廃車前に知りたい「買取」の選択肢
車を手放す場合、真っ先に廃車が思い浮かぶ方もいるでしょう。しかし、車は買取の選択肢もあります。
ここからは、廃車前に検討したい買取のメリットや注意点を紹介していきます。
車の走行距離がまだ短かったり、古くてもまだ状態がよかったりする場合は査定に出してみましょう。
ひょっとしたら数万円〜十数万円でも売却金を得られる可能性があります。とくに新生活を始める前は何かと準備が必要なため資金が手に入ると嬉しいものです。
車体で価値がつかなくても部品を売却できる可能性もあります。お住まいの地域にある買取店に連絡して持ち込んだり、ネットの一括査定を使って相場を確認したりするのがおすすめです。
買い取りの場合、引き渡し後は他のオーナーに車を使ってもらいます。自分にとって大切な車をスクラップするのに抵抗を感じる方は売却がおすすめです。
家族の思い出がつまった車や社会人なって少し背伸びして購入した車はなかなか手放しにくいと感じます。スクラップの場合はなおさら躊躇うでしょう。
しかし、買取の場合は大切な車に価値を見い出せ、かつ乗り継いでもらえます。車に思い入れがある場合は廃車よりも買取がおすすめです。
買取はメリットが豊富ですが、業者を選ぶ際は2〜3社に見積もりをとり慎重に選びましょう。
査定額はおおよそ決められているため大きく変動することはありませんが、対応は業者ごとに異なります。せっかく納得できる金額を提示してもらっても対応が不快な場合、不満が残ります。
買取を検討する場合は複数社見積もりで相場を把握し、信頼できる業者を探しましょう。
買取業者選定のポイントは3つ
ここからは、買取業者を選定するためのコツを紹介します。
買取を検討する場合、査定額に大きな差がなくとも対応によって不信感を募らせたり、なんとなく後味が悪い車の引き渡しになったりします。
事前に選定ポイントを確認して後悔がない車の売却を目指しましょう。
第一に、しつこい連絡をする業者はおすすめできません。
査定は、店舗に車を持ち込んで現物査定してもらうケースと、ネットで車の基本情報を入れて一括査定してもらう方法があります。
一括査定は現地に行かずとも複数の会社から概算を出してもらえるため便利なツールです。しかし、ただ金額を知りたかっただけにも関わらず、情報登録後にしつこい電話がかかってくる業者も稀に見られます。
「またお願いする場合は連絡します」とさり気なく断っても「また電話しますね」と言われたり、定期的に「その後はどうですか」と連絡があったり煩わしさを感じます。
しつこい連絡をしてくる業者はお客様の立場を考えていないため、買取の依頼は避けましょう。
査定時に丁寧に説明してくれる業者はおすすめです。
車の買取は頻繁に行うものではないため不安がつきまといます。査定基準が分からず「この金額は適正なのか…?」「なぜ相場よりも低いのだろう?」と疑問を感じることもあるでしょう。
査定時に「この金額は、ここの傷で減額になっています」「この車種はいま需要が高いため査定額が高めになっています」など、金額や内訳を詳しく教えてくれる業者は信頼できます。
業者を選ぶ際はキャンセルについて丁寧な説明があるところを選びましょう。
査定金額に納得したらいよいよ売買契約に進みますが、契約後は原則としてキャンセルができません。
買取業者はすぐに買い手を探すため、売買契約してからすぐに買い手が見つかる可能性も高いでしょう。その場合、キャンセルすると非常に多くのコストと手間がかかるため契約後のキャンセルは原則として認められません。
キャンセルが可能であったとしても、キャンセル料が発生するケースもあります。このキャンセル料について契約前に説明があるかも確認しましょう。
悪徳業者の場合は説明されなかったり、法外な金額を請求されたりする可能性もあります。
【廃車の場合】業者選定のポイントは3つ
ここからは、廃車を依頼する際に知っておきたい業者選びのポイントを3つ紹介します。
買取同様に担当者の対応や料金の説明などを説明してくれる業者選びがおすすめです。
まず初回の対応態度をチェックしましょう。電話で問い合わせた時や店舗に行った際の対応が不快でなかったか、違和感を覚えなかったかを確認します。
入店して挨拶がなかったりすぐに「査定ですか?車見せてもらいますね。」と配慮がなかったりする場合、取引の中で不満を抱える可能性が高いでしょう。
車の買取は双方の信頼関係の上で成り立ちます。「この人には任せたくないな」と感じた場合は他の業者を選定したり、さり気なく担当者を替えてもらったりしましょう。
廃車は買取よりも料金の内訳が分かりにくいため、説明がある業者は親切です。
例えば、「自走できないのでレッカーで〇〇円かかり、リサイクル代で〇〇円、解体に〇〇円かかります」と細かく説明があると安心して依頼できるでしょう。
廃車のタイミングによっては自動車税や自賠責保険の還付を受けられます。
廃車手続きを代行してもらう場合は「○月末までには手続きを終えられそうなので、還付金はこれくらいの時期ですね」と、見通しを持たせてくれる業者は信頼できます。
さらに「任意保険に加入されている場合は解体日に合わせると○日くらいがいいですね」など、具体的な日程に配慮してもらえるとより任せやすいでしょう。