友人や知人の車を操作しているときに接触や衝突を起こしてしまった場合、どの保険が使えるのか、責任は誰にあるのか、不安を感じる方は多いでしょう。
実は、他人の車で起こした交通トラブルにも対応できる保険はいくつか存在します。
この記事では、他人の車を借りてハンドルを握る際に知っておきたい保険の種類や注意点について解説します。
- 他人の車で接触や衝突を起こした場合でも使える自動車保険が複数あります。
- 代表的な保険には「自賠責保険」「任意保険」「他車運転特約」「ドライバー保険」「1日自動車保険」があります。
- 「他車運転特約」は自分が加入している保険内容に準じて、他人の車を操作した場合でもカバーされるものです。
- 交通トラブルの責任は「運転する人」と「車を所有する人」の両方に問われることがあります。
- 保険の範囲に含まれる人や車種には制限があるため、事前確認が重要です。
他人の車で事故を起こしたときに使える自動車保険がある
友人や家族の車を借りてハンドルを握っているとき、もしものトラブルが起きたら、どの保険が使えるのか不安になるものです。車の所有者ではない自分に保険は適用されるのか、損害は誰が負担するのかなどの疑問や不安を解消するために、知っておきたいのが、他人の車でも使える保険の存在です。
ここからは、他人の車で交通トラブルを起こしてしまったときに役立つ保険について、カバーできる範囲や注意点を、分かりやすくご紹介していきます。
他人の車で事故を起こしたときに使える5つの自動車保険
友人や知人の車を借りているときに接触や衝突を起こしてしまった場合、対応できる保険は複数存在します。
ここからは、他人の車で接触・衝突を起こしたときに備えて知っておきたい保険について、それぞれの特徴や注意点を分かりやすく解説します。
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、すべての自動車に加入が義務づけられている保険で、交通トラブルの被害者救済を目的としています。そのため、範囲に含まれるのは「相手方のケガや死亡」のみに限定され、物損や自分自身のケガ・車の損傷などに対しては支払われません。
また、保険金額には上限があり、死亡は3,000万円、後遺障害は4,000万円、傷害は120万円までとなっています。
知人や友人の車に任意保険(対人賠償、対物賠償、人身傷害など)がついていれば、相手方への損害だけでなく、自分自身のケガや、車両の損害まで支払われる可能性があります。ただし注意したいのが「運転する人の範囲」です。
保険には「運転者限定」や「年齢条件」が設定されていることが多く、本人や家族以外は範囲に含まれない場合もあります。接触や衝突が起きる前に、運転者限定が「なし」になっているかどうかを必ず確認しましょう。
なお、年齢条件は基本的に他人の運転には影響しないため、変更する必要はありません。
他車運転特約(他車運転危険補償特約)がついていれば、自分が所有していない車を操作しているときの接触や衝突でも、自身が加入しているものから支払いを受けられる場合があります。
この特約があれば、友人や家族の車を借りた際も安心です。
保険会社によって呼び名や細かい内容が異なるため、事前に自分の契約内容を確認しておきましょう。
ドライバー保険は、「免許証は保有しているが、車を所有していない」という人向けのものです。免許証を持っていれば利用できるため、旅行やレジャーで友人の車のハンドルを握る際に有用です。
対人・対物賠償、人身傷害など基本的なものがセットになっているのが一般的ですが、車両保険は付けられない場合が多いことには注意しておきましょう。
範囲に含まれる車種には制限がありますが、自家用乗用車や小型貨物車、二輪自動車、キャンピングカーなども範囲に含まれ、レンタカーでも利用可能です。
年間契約が基本ですが、短期契約ができるプランも登場しており、使い方に応じて選べます。
1日自動車保険は、文字通り「1日単位」で加入できるもので、急な用事やレジャーなど、短期間で車を借りて操作する場合に利用できる便利なものです。期間は24時間で、スマートフォンから手続きが完結する手軽さも人気の理由です。
カバーされる範囲は、対人・対物賠償、搭乗者傷害が基本で、プランによっては車両補償も付帯できます。ただし、範囲となるのは自家用乗用車に限られ、レンタカーや夫・妻の所有車は範囲に含まれません。
例えば、自分が加入しているものに「対人・対物賠償」「人身傷害」「車両保険」などがついていれば、これらが借りた車でも適用されます。特に注目したいのは、車両保険も範囲に含まれる点です。ただし、借りた車の「時価額」が上限となります。また、自分が加入しているのが、対人賠償保険無制限の場合、借りた車で接触や衝突を起こしても、無制限で適用されるため安心です。
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他人の車で事故を起こしたときの責任は誰にある?
他人の車で交通トラブルを起こした場合、運転する人と車を所有する人の両方に賠償責任が生じることが一般的です。これは、自動車損害賠償保障法(自賠責法)によって、運行供用者としての責任が定められているためです。
運行供用者とは、車を自己のために使っている人を指し、所有者だけでなく、借りてその車を操作していた人も含まれます。そのため、交通トラブルでケガさせてしまった場合などは、運転する人と車を所有する人の両方に賠償責任が生じることになります。
ただし、物損の場合は、原則として車の所有者に責任は及びません。
付帯しておくと安心な他車運転特約の詳細
他車運転特約は、自分以外の車を操作する機会がある方にとって、万が一のときに頼れる心強い味方です。友人の車や親の車など、他人の車を借りてハンドルを握ったときに、接触や衝突を起こしてしまった場合でも、自分が加入しているもので対応できるのが特徴です。
他人の車を借りることがあるなら、この特約があるかどうかをぜひチェックしておきましょう。
他車運転特約は、自分が加入中の契約に準じた扱いを、他人の車の操作中にも受けられるものです。正式には「他車運転危険補償特約」とも呼ばれ、友人や親などから一時的に車を借りた場合や、レンタカーでも範囲に含まれます。
自動車保険は基本的に「車」にかけるものであるため、他人の車を借りて交通トラブルを起こした場合は、その車にかけられているものが使われます。しかし、その場合は車の持ち主の等級が下がり、翌年以降の保険料が高くなってしまう可能性があるでしょう。
こうしたケースで他車運転特約がついていれば、ハンドルを握っていた自分が加入しているものでカバーできるため、相手の負担を防ぐことが可能になるのです。
なお、多くの商品であらかじめセットされていることが多いですが、すべての契約に含まれているわけではありません。他人の車を操作する予定がある方は、あらかじめ自分の契約内容を確認しておくと安心です。
他車運転特約はすべての車に適用されるわけではなく、その範囲に含まれるのは「自家用8車種」のみとなっています。具体的には、以下の車種が対象です。
- 自家用普通乗用車
- 自家用小型乗用車
- 自家用軽四輪乗用車
- 自家用小型貨物車
- 自家用軽四輪貨物車
- 自家用普通貨物車(最大積載量0.5t以下)
- 自家用普通貨物車(最大積載量0.5t超2t以下)
- 特種用途自動車(キャンピング車など)
自分(記名被保険者)だけでなく、その夫・妻や一緒に暮らしている身内なども、他人の車の操作中に接触や衝突を起こした場合、カバーしてもらえます。対象となるのは、以下の家族です。
- 記名被保険者
- その夫・妻
- 一緒に暮らしている身内
- 離れて暮らしている未婚の子ども
一方で、離れて暮らしている既婚の子どもや身内は範囲に含まれないため、事前にしっかり確認しておきましょう。
特約があるからといって気軽に使えるものではないため、慎重なハンドル操作を心がけましょう。
他人の車を運転するシチュエーション
普段は自分の車に乗っていても、旅行や帰省、引越しの手伝いなど、ふとしたときに他人の車を操作する機会が訪れることがあります。そのようなとき、「もし交通トラブルを起こしてしまったらどうなるのだろう…」と不安に感じたことがあるかもしれません。
ここからは、友人や恋人の車を操作するシチュエーション別に、加入しておくと安心な保険の活用方法をご紹介します。備えがあれば、いざというときも慌てずに対応できるはずです。
日帰り旅行で友達の車を使ってドライブする際、ハンドルを交代で握る場面もあるでしょう。そのようなときは、事前に1日保険へ加入しておくと安心です。
もしものときでも自分が加入しているものを使えるため、友達の保険を使わずに済みます。その結果、友達の保険料が上がる心配がなく、気兼ねなく交代できるでしょう。
また、保険会社によっては、ハンドル操作を複数の人が交代することを想定したものも用意されています。友達同士で安全に楽しくドライブするためにも、事前の加入を忘れずに行いましょう。
泊まりがけの旅行では、数日間にわたってハンドルを握る可能性があります。1日保険を利用する場合、日数に合わせて契約するようにしましょう。
期間は途中で変更できないため、うっかり切れてしまうことがないよう注意が必要です。なお、保険会社によっては数日分をまとめて申し込めるプランもあります。
旅行スケジュールが決まったら、早めに準備を進めるのがおすすめです。
引越しを自分たちで行うとき、友達の車を借りて荷物を運ぶこともあるでしょう。たとえ短距離であっても、公道を走るなら万一に備えて加入しておくことが望ましいでしょう。
「少しの距離だから大丈夫」と思っていても、もし衝突や接触を起こせば車の修理費や賠償責任が発生します。そのようなときに備えて、1日保険に入っておくと安心です。
もしレンタカーを借りて引越しをする場合は、レンタカー会社が提供するものに加入できるため、1日保険の利用は基本的に不要です。
恋人とのドライブで一時的にハンドル操作を代わるシーンがあるかもしれません。しかし、恋人の車が「本人のみ」を範囲としている場合、自分がハンドルを握っているときに交通トラブルを起こすと、対応してもらえない可能性があります。
事前に範囲を確認し、必要であれば1日保険への加入を検討しましょう。また、自分が加入しているものに「他車運転特約」がついていればカバーできることもあります。
恋人との楽しい時間を安心して過ごすためにも、事前の確認が大切です。
帰省の際に、友人の車を借りて地元をドライブしたり、用事を済ませたりする機会があるかもしれません。そのようなときでも、1日保険に加入しておくと、いざというときの備えになります。
数日間まとめて加入できるものもあるため、帰省中の期間をカバーする形で契約するのが良いでしょう。
ただし、レンタカー会社のものはカバーされる範囲が限定されていることがあり、特に対物・車両保険には「免責金額」が設定されていることが多くあります。オプションで「免責補償制度」に加入すれば、この免責金額を0円にできます。
また、自分が加入しているものに他車運転特約がついていれば、そちらを使うことも可能です。その場合、翌年の保険料への影響が異なる場合があるため、利用前にカバーできる範囲をしっかり確認しておくと安心です。
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他人の車でも他者運転特約が利用できないケース
他人の車を一時的に操作する際、「他車運転特約があるから大丈夫」と思ってはいないでしょうか。確かに便利なものではありますが、カバーされなかったというケースも少なくありません。
走行中以外の事故、一緒に暮らしている家族の車、運転する人の条件など、いくつかの制限が存在します。知らずにいると、いざというときに使えないというケースも考えられるでしょう。
ここからは、特約が使えない主なケースについて解説します。大切な人の車を借りる前に、ぜひ一度確認しておきましょう。
他車運転特約は便利なものですが、その範囲はあくまで「走行中の事故」に限られるケースが一般的です。例えば、駐車していた際に他の車にぶつけられたり、停車中に追突されたりした場合などは、カバーされる範囲に含まれないことがあります。
ただし、信号待ちや渋滞、踏切待ちなどの一時的な停止状態を適用範囲とする保険会社も存在します。どのようなケースが該当するかは契約内容や会社の判断によるため、事前の確認が重要です。
付帯されている車両保険が「エコノミー型」の場合、借りた車によって単独で起こした交通トラブルに対しては、支払いが受けられないケースがあります。
また、そもそも車両保険自体をつけていなければ、借りた車を操作しているときに損傷させても対応できないため、注意が必要です。
他車運転特約は、契約者が加入中の「運転者限定」や「年齢条件」といった制限もそのまま引き継がれます。
例えば「本人・配偶者限定」で契約していた場合、一緒に暮らしている子どもが他人の車を操作して交通トラブルを起こしても、その子どもは範囲に含まれません。また、「年齢は30歳以上」と設定していると、20代の家族はカバーされません。
過信せず、制限条件がどう適用されるのかを事前に確認しておくことが大切です。
記名被保険者本人や、その夫・妻、一緒に暮らしている身内が「所有または常時使用している車」については特約の範囲外です。つまり、たとえ家族間であっても、一緒に暮らしている親の車を借りて交通トラブルを起こした場合には、自分が加入している保険に付帯されているものは使えないのです。
逆に、実家に帰省した子どもなど、離れて暮らしている家族が親の車を一時的に借りて交通トラブルを起こした場合には、その子どもの保険に付帯されたものが適用される可能性があります。
家族間でも「一緒に暮らしているのか離れて暮らしているのか」「所有・使用の頻度」などでカバーされる範囲が変わるため、誤解のないようにしておきましょう。