車の車検費用は思いのほか高くつくものですが、この中には「自動車重量税」という税金も含まれています。
自動車重量税とはどういったもので、なぜ車検のときに支払うシステムになっているのでしょう?この記事では、そんな疑問にお答えします。
また、車にかかる税金は「自動車税」や「環境性能割」などがあります。その詳細や、エコカー減税や改造(カスタマイズ)などにより自動車重量税の税額が変更になるケースなども説明していきます。
車検費用には税金が含まれている
車に関する税金には様々なものがありますが、車検費用の中にも税金が含まれています。それが「自動車重量税」という国税です。これは車の重さによって税額が決まり、車検を行った業者を通して支払う間接税なのが特徴的です。
ここからは、自動車重量税とそれ以外の車に関する税金との関係や税額が変動するケースについて解説していきます。
これらを知っておくと、車検を受けたときの見積書や請求書の見方が分かり、費用の節約などに役立てられるでしょう。
車検費用は大きく分けて3種類ある
高額になりがちな車検費用ですが、その内訳を少し細かく見ていくと、「法定費用」「車検基本料」「部品交換費用」の3つに分類できます。
以下では、まずこの3種類の内容と特徴を見ていきましょう。
法定費用は「自動車重量税」「自賠責保険料」「印紙代(検査手数料)」の3項目からなっています。
これらは車種によって金額が決まっているので、どの業者で車検を受けても同じ金額になります。
車検費用のうち税金が含まれているのはこの法定費用です。
車検基本料は、法定費用とは異なり、店の料金体系によって金額が大きく異なります。さらに細かく分類すると「基本点検技術料」「整備技術料」「事務手数料」となっており、店側の技術料や手間賃にあたることが分かるでしょう。
基本点検技術料は、車検と同時に行われる法定点検の費用で、整備技術料は車を車検にパスさせるための整備費用です。そのため、修理箇所や部品の交換が多ければ多いほど高額になります。
車検費用を抑えたいなら、この車検基本料をいかに節約するかがポイントです。
例えばディーラーに依頼すれば、点検のきめ細やかさなどから安心感がありますが、費用はその分高くなります。
一方、車の点検・整備に特化した車検専門店に依頼すれば、ディーラーよりもスピーディーかつ安価に車検が終わることがあります。こうした業者は品質面でばらつきが出てきますが、車検基本料を抑えたい方にはおすすめです。
部品交換費用は、劣化などの理由から交換が行われたパーツの費用です。これも交換した部品の内容によって金額が異なってくるので、法定費用のように最初からいくらかかるかは分かりません。
車検費用の節約という観点で考えればこうした項目でもお金をかけたくないかもしれませんが、車のパーツは時間が経てば劣化するものなので、費用を削減することは難しいでしょう。また、輸入車の部品の場合は高くつくことが多いです。
傾向として、長い間乗られたことで経年劣化が進んだ車や走行距離が長い車などは、交換しなければならない部品も増えるので部品交換費用も高くなるでしょう。できるだけこうした事態にならないようにするには、車検前に見積もりを出してもらうのが有効です。
車検は高額な費用がかかるので、事前に見積もりをもらうのは珍しくありません。見積もりがあればあらかじめ車検にかかる費用が把握できますし、複数の業者の金額を比較して安いところに頼むこともできます。
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法定費用に税金が含まれている
ここまでで、車検費用は大まかに3種類に大別できることを説明しました。このうち「法定費用」は、税金である自動車重量税や、自賠責保険料、印紙代で構成されています。その内訳について、さらに細かく掘り下げていきます。
自動車重量税は、原則として1年ごとに課されるものです。ただし車検の際に、その有効期間の年数分を前払いする形になっています。そのため、普通自動車と軽自動車は新規登録時に3年分を、それ以降は2年分ずつを支払います。
普通自動車の場合だと重量税の税額は車両の重さ0.5トンごとに変動しますが、軽自動車は重さに関係なく定額という違いがあります。
また、新車登録から13年・18年とそれぞれ経過するごとに税額がアップします。
次に、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)料です。これは自動車重量税と同様に、車検の際に有効期間と同年分の保険料を前払いする形となります。
自賠責保険に加入する理由は、万が一交通事故などに遭遇した際に被害者を救済し、また同時に加害者が負うことになる経済的な負担を軽減するためです。これは法律で定められているため、自賠責保険に加入せずに公道を走ると「無保険運転」となって処罰の対象となります。
車検の際に自動的に加入・更新されるので年間契約のイメージがありますが、自賠責保険料は月単位で計算されています。そのため、万が一車検切れになっても、事故の補償だけはできるように車検有効期間よりも1カ月だけ多く加入するのが一般的です。
車を売却・廃車した場合、保険料の残額が月単位で計算されて返金されることがあります。また、車検を受けなくてもいい検査対象外軽自動車は、最低12カ月分から月単位での加入が可能です。
検査手数料にあたる印紙代も、法定費用に含まれます。印紙というのは、納付した税金や支払った手数料を国に対して証明する証票のことです。
車検を行った業者は、陸運局の窓口に印紙を貼った納付書を提出し、国に対して手数料の支払いを証明することになります。車検を受けるユーザーは、そうした業者側の事情を意識する必要はありませんが、ユーザー車検の場合は自分で専用の印紙・証紙を購入することになるので注意しましょう。
なぜ自動車重量税は車検時に払うのか
自動車税や軽自動車税は毎年5月頃に納付書によって納めるのに対し、重量税だけはなぜ車検時に支払うのでしょう?
はっきりした理由は不明ですが、自動車税や軽自動車税は地方税なのに対し、重量税は国税なので、より徴収しやすい方法を採用していると考えられます。車を所有している全国民に対して、納付書を送ったり口座振替の手続きを促したりするのは大変なコストがかかります。
車検は定期的に受けることが義務付けられているので、納税をひとまとめにすれば、未納や滞納を避けられます。また、車のユーザーが直接支払うのではなく業者を介する間接税になっているので、自動車重量税は特に取り立てやすいシステムになっていると言えます。
重量税を払わなければ車検を受けられないので滞納が発生しませんし、税金は実質的に車検業者が集めることになるので人件費などもかかりません。少なくとも自動車重量税の納付システムは、徴税する側(国)にとってメリットの大きいやり方だと言えるでしょう。
車に関するその他の税金
ここまでで、車検費用の内訳全般とそこに含まれる自動車重量税のことを説明してきました。一方、車に関する税金は自動車重量税だけではなく、自動車税や軽自動車税、環境性能割があります。以下ではそれらの詳細を解説します。
まず車にかかる税金として、普通自動車に課せられる自動車税が挙げられます。これは知道府県に対して納める地方税で、毎年4月1日時点でのその車の所有者(名義人)に対して課せられるものです。
自動車税は重量税とは異なり、納付書によって金融機関窓口やコンビニで納めます。しかし車検と無関係ではなく、納付した際に半券の形で受け取る「納税証明書」がないと、車検を受けることができません。
そのため、納税証明書を入手したら、車検時の必要書類である車検証と自賠責保険証明書と一緒にしておきましょう。一般的に、メンテナンスノートなどと一緒にまとめて車のダッシュボードに入れておく方が多いです。
なお、口座振替やクレジットカード払いに設定している場合は、納税証明書は後日送付されてきます。仮に紛失したとしても、各総合支庁の税務担当課へ車検証などを持参して手続きを取れば再発行が可能です。
普通自動車は自動車税が課されますが、軽自動車の場合は「軽自動車税」が課されます。これも地方税で、4月1日時点での車の所有者が市町村に対して支払うことになります。
また、自動車税と同様に車検時には「納税証明書」が必要になります。自動車税の場合はペーパーレス化が進んでおり納税証明書が不要な場合もありますが、軽自動車税は違います。まだこうしたペーパーレス化の動きには対応していないため、必ず車検時には納税証明書を用意しましょう。
自動車に関する税金として、かつて車の購入時にその取得価格に対して課される「自動車取得税」がありました。しかし現在は、消費税増税のタイミングとあわせて廃止され「環境性能割」という名目の税金が導入されています。
環境性能割は、車の燃費性能に応じて課されるもので、エコカーを始めとした燃費のいい車であればあるほど税額が軽減されます。通常、登録車は0~3%、軽自動車は0~2%の幅で課税され、電気自動車は非課税です。
ちなみに環境性能割の税率は新車・中古車ともに同じですが、取得価額の計算が異なるため税額が違ってくる点に注意が必要です。製造から長い時間が経っている中古車の場合は、さらに計算が異なります。
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自動車重量税の金額が変わるケース
自動車重量税の税額は状況によって変動します。例えば、エコカー減税制度によって減額されることもあれば、長期間の保有やカスタマイズによって増額となることもあります。これらを知っておくと、よりお得に車を保有するヒントになるでしょう。
まず、自動車重量税が安くなるケースとして「エコカー減税」が挙げられます。燃費面で一定の基準を満たしている車が減税措置を受けられ、この優遇措置によって25~100%の幅で重量税が軽減されるというものです。
軽減の区分は、車の製造年、グレード、車種によって細かく定められています。
ただし、新車登録されてから13年以上が経過した車は減税の対象外です。また、後述するようにさらに時間が経ったものはかえって増額となるので、注意しましょう。
自動車重量税は、新車登録されてから13年が経過すると増税します。例えば、0.5トン以下の普通乗用車なら最初の重量税額は8,200円ですが13年を超えると3,200円プラスされます。そして、その後18年目を過ぎるとさらに1,200円プラスとなります。
重量のある車なら、増税額はさらに上がるでしょう。最も重い3トンの車の場合、最初の税額は49,200円ですが13年で68,400円、18年で75,600円になります。
いわゆる車好きの方だと愛車に改造を施すこともあるかもしれませんが、この改造の結果として車の重さが増すと、重量税も増額となることがあります。
例えば、後付けのパーツを取り付けたりすると、車の重みは増すでしょう。このように、改造によって車の重量が増した場合に問題となるポイントなどは、次の項目で説明します。
改造によって重量が増すと構造変更の手続きが必要になったり自動車保険料が変動したりすることもあるので、要注意です。
改造(カスタマイズ)で重量が増した場合
改造(カスタマイズ)したことによって車の重量が増すことがあります。この場合、自動車重量税の税額アップのほかにも、そもそも車検に通るかどうかについて注意する必要があります。
では、どのような点に気を付けるべきかを以下で説明します。
2017年10月1日の車検の審査事務規定の変更を受けて「車両総重量が改造によって1.1倍をオーバーしたら車検に通らない」と言われることがあります。しかし、実際はそこまで単純ではありません。
そもそも車両総重量は、空っぽの車両に「乗車定員数×55キロ」の人が乗った重量のことで、改造によってさらにその1.1倍の重さになることは稀です。
また、継続車検では車両総重量は測定しないので、ほとんどの場合は気にする必要はありません。
改造によって車両総重量が1.1倍をオーバーした場合に問題になるのは、ブレーキです。ブレーキが純正品であれば問題ありません。
しかし、社外品のビッグキャリバーやビッグローターを装着している場合は、ブレーキを変更したことになり増加した車の重量にそのブレーキが耐えられるかが問われることになります。そのため、改造によって車両総重量が1.1倍をオーバーし、それに加えて社外品のブレーキを装着している場合は要注意です。
審査事務規定にのっとって検査を行うとすれば、この条件に当てはまる場合は検査が厳密に行われ、場合によっては車検に落ちることもありうるでしょう。
しかし、実際の車検、特に継続車検の現場では、こうした想定もあまり意味がありません。そもそもブレーキに社外品が使われていれば、総重量に関係なく点検するのが一般的です。
また、先述した通り車検時に車の総重量を測定することはほとんどありません。最も注意すべきなのは、次項で説明する「構造変更」の手続きの場合です。
車を改造した場合、陸運(支)局で構造変更の手続きが必要になることがあります。
構造変更とは、改造によってそのままでは車検が通らない形態になってしまった場合、今までと全く違う車に生まれ変わったと見なし、車検を最初から受け直すものです。
この構造変更手続きの車検では、必ず車の総重量を測定します。先の項目で、基本的に車検で車両総重量を測定することはないと書きましたが、それは継続車検の話で、構造変更における車検の場合は「1.1倍」という数字が意味を持ってきます。
つまり、改造によって総重量が1.1倍以上になっており、なおかつブレーキが社外品である車は要注意です。構造変更のための車検でこれらの事実が判明すると、検査に通らなくなる可能性があります。
なお、これは構造変更検査に限ったことではなく、一度廃車にした車を再び新規登録する「中古新規」の場合でもありえます。車の新規検査でも、車両の総重量を測定するからです。
重量税額の確認方法
エコカー減税はありがたい制度ですが、一方で税額の計算が従来より分かりにくくなったのも確かです。そのため、車検の前に自動車重量税の金額を確認したい場合は、Web上の自動計算ツールを用いるのがおすすめです。
こうしたWebサービスは国土交通省のホームページ内にあるので、気軽に利用できます。また、「自動車重量税計算ツール」で検索すれば民間のWebサイトもヒットするので、車検証を手元に用意して利用してみましょう。