車を売却する際は、任意の自動車保険についても忘れずに手続きをする必要があります。
しばらく車に乗らないものの今後再び乗る可能性がある場合には「中断証明書」を発行しましょう。
この記事では、中断証明書とは何か、発行できる条件と発行方法について詳しく解説していきます。
車を売却する時に必要な自動車保険の手続きについて
車を売却する際、任意の自動車保険の手続きも忘れずに行う必要があります。
車の買い替えであれば車両情報の入れ替えを、今後もう車に乗る予定がないのであれば解約となります。
しかし、車を売却してすぐに新たな車を買う予定はないものの、いずれ再び車を購入し乗る可能性がある場合は、中断証明書を発行しましょう。
任意の自動車保険は、事故を起こしてしまった時に、契約者本人や被害者が死亡またはケガをした場合や車や公共物などの物が破損した場合に補償が受けられるものです。
自動車保険には「ノンフリート等級別料率制度」というものがあります。この等級制度が適用されるのは、他社での保険も含め、契約者が所有している車が9台以下の場合です。
事故の有無や内容によってリスクが基本的に1~20等級に分けられていますが、一部の共済では22等級までとなっています。等級によって保険料の割引率が変わるため、それに合わせて保険料も変動する形です。
最初の契約時は6等級から開始となりますが、保険期間中に事故を起こさなければ最大で20等級まで上がり、保険料が安くなります。もし事故を起こして自動車保険を使用すれば、次回の保険の更新時に等級は下がり、保険料が高くなってしまいます。
目次
自動車保険の中断証明書とは?
自動車保険の中断証明書は、自動車保険の契約を継続していなくても、現在の等級を一定期間保存できるというものです。
車を売却したり、海外への赴任などのために保険契約を中断または解約した場合に、保険会社に依頼すると発行してもらえます。
中断証明書に記載されているのは、契約者名、自動車保険の等級、保険を契約していた期間、事故情報、用途車種などです。
中断証明書の有効期間は、中断の場合は保険契約の満期日から10年間、解約の場合は解約日の翌日から10年間となっているのが一般的です。
また、中断証明書の発行費用はかかりません。
中断証明書を発行するメリットは、現在の等級を引き継げることです。
自動車保険は等級によって割引率が変わってきますが、等級が高ければ高いほど割引率も高くなります。
中断証明書を発行しなかった場合、再び自動車保険を契約すると最初の6等級からのスタートとなってしまいます。
参考として、6等級と7等級以上の等級での、無事故の場合の割引率の差を確認しておきましょう。
20等級 | 63%割引 |
---|---|
19等級 | 57%割引 |
18等級 | 56%割引 |
17等級 | 55%割引 |
16等級 | 54%割引 |
15等級 | 53%割引 |
14等級 | 52%割引 |
13等級 | 51%割引 |
12等級 | 50%割引 |
11等級 | 48%割引 |
10等級 | 46%割引 |
9等級 | 44%割引 |
8等級 | 38%割引 |
7等級 | 27%割引 |
6等級 | 13%割引 |
自分はもう車を所有するつもりがなくても、中断証明書を発行しておけば、今後配偶者や同居している家族が乗ることになった場合に等級を引き継ぐことができます。
契約を中断または解約してから10年以内に家族の誰かが車を所有する可能性があるなら、中断証明書を発行しておくことをおすすめします。
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中断証明書の種類と発行条件
中断証明書は、自動車保険の契約を中断または解約する理由によって、「国内特則」「海外特則」「妊娠特則」の3つに分けられています。
それぞれで発行条件は多少異なりますので、一つずつ見ていきましょう。
契約中に事故をおこして保険を使用した場合は、次に契約する際に7等級以上であることが必要となります。
車の売却、廃車、盗難などの理由で保険契約を中断または解約する場合、国内特則の発行条件に当てはまっていれば、中断証明書を発行してもらうことが可能です。
発行の条件は、以下の通りです。
①中断または解約した契約が7等級以上である
②契約中に事故を起こして保険を使用していた場合、それによって等級が下がったとしても7等級以上である
③現在の車が自家用8車種である
※自家用8車種とは以下の車種になります。
・普通乗用車
・小型乗用車
・軽自動車
・小型貨物車
・軽貨物車
・最大積載量0.5t以下の普通貨物車
・最大積載量0.5t超2t以下の普通貨物車
・特殊用途車(キャンピングカーなど)
④契約の満期日または解約日から13ヶ月以内に申請している(5年以内となっている保険会社もあり)
⑤車を売却、譲渡、廃車、返還する場合
契約の満期日または解約日の前に車を売却、譲渡、廃車、リース業者へ返還している
⑥車検切れの場合
契約の満期日または解約日の翌日時点で車検証の有効期限を過ぎており、車検を受けていない
⑦車が盗難、災害にあった場合
契約の満期日または解約日時点で盗難や災害により車が手元にない
その他、特別なケースとしては下記もあります。
⑧医師より、記名被保険者が重い傷病のため継続して運転が不可能な状態と診断が出されている
なお、車検の残り期間がある車を手元に置いたまま自動車保険だけを中断もしくは解約する場合は、中断証明書の発行対象外です。
一時的な観光ではない海外渡航の場合、下記の海外特則の条件に当てはまっていれば中断証明書を発行してもらうことが可能です。
①中断または解約した契約が7等級以上である
②契約中に事故を起こして保険を使用していた場合、それによって等級が下がったとしても7等級以上である
③現在の車が自家用8車種である
④契約の満期日または解約日から13ヶ月以内の申請である(5年以内となっている保険会社もあり)
⑤海外への出国日が、中断する契約の満期日または解約日より6ヶ月以内である
妊娠特則は、名前の通り妊娠により契約を一時的に中断または解約する時のものです。四輪自動車ではなく、二輪自動車や原付きといったバイク保険の場合の特則で、保険会社によってはこの特則がないこともあります。
発行条件は、以下の通りです。
①中断または解約した契約が7等級以上である
②契約中に事故を起こして保険を使用していた場合、それによって等級が下がったとしても7等級以上である
③中断する契約の満期日または解約日までに、母子保健法の15条で定められている通り、市町村長に妊娠の届け出を行っている
中断証明書の発行時に必要な書類
・中断証明取得依頼書
・譲渡証明書
・保険証券その他、保険会社によっては下記の書類も求められます。
・自動車検査証
・売買契約書
・登録事項等証明書(普通自動車)
・登録識別情報等通知書(普通自動車)
・検査記録事項等証明書(軽自動車)
中断証明取得依頼書(中断証明書発行依頼書)は、自分の契約している保険会社から入手できます。
なぜ中断証明書を発行してほしいのか、理由の記載が必要です。その理由によって、その他提出を要求される公的書類が異なってきます。
車を売却・譲渡した場合には譲渡証明書が必要です。一部の保険会社では提出不要とされていることもあります。
車を買取業者に売却した場合には、業者が書類を準備し記入方法についても説明してくれるでしょう。
しかし、個人間での売却の場合は、自分で譲渡証明書を作成しなければなりません。テンプレートは、国土交通省や各保険会社のWebサイトから入手できます。
車両情報、旧所有者の氏名・住所、譲渡年月日、新所有者の氏名・住所を記載します。旧所有者のみ、実印の押印も必要です。
保険証券とは、自動車保険の契約が成立した後に保険会社から発行される、契約の内容が記された書類のことです。
紙で発行されている場合、通常は車のグローブボックスなどで保管していることが多いです。
最近ではペーパーレスにより、Webサイト上での発行となっているケースもあります。
車の売却契約書も、中断証明書を発行する時に提出を求められる可能性があります。こちらはコピーでも問題ありません。
業者に車を売却した場合には、買取業者が売買契約書を準備してくれるでしょう。個人での売買の場合には、自分で売買契約書を準備する必要がありますが、フォーマットはWebで入手できます。
なお、売買契約書への記載が必須となるのは下記の項目です。
・対象となる車
・売買の代金
・支払い時期および支払い方法
・受け渡し日程および受け渡し方法
・自動車税・車検代・車の陸送費用など車の代金以外で必要となる費用
売却または譲渡した車の自動車検査証(車検証)の提出を求められる可能性もあります。こちらもコピーで問題ありません。
普通自動車の場合、登録事項等証明書の提出が求められることがあります。
登録事項等証明書とは、普通自動車の自動車検査証の記載内容を確認する時に発行する書類です。
現在証明(現在の車検証の記載内容)と詳細証明(現在の内容+新規登録してからの履歴)の2種類があるため、どちらが必要なのかは保険会社に確認しましょう。
登録事項等証明書は運輸支局で発行してもらえます。手数料は現在証明の場合は1件300円、詳細証明の場合は1件1,000円です。
必要な書類はOCRシート申請様式第3号様式(登録事項等証明書交付請求書)、手数料納付書、本人確認ができる身分証(免許証・健康保険証・パスポートなど)となります。
OCRシート申請様式第3号様式や手数料納付書は、運輸支局の窓口かWebサイトから入手できます。
軽自動車の場合、検査記録事項等証明書の提出が必要になることがあります。
検査記録事項等証明書とは、軽自動車の自動車検査証の記載内容を確認する時に発行する書類です。
現在記録ファイルに記録されている事項にのみ係るもの(現在の車検証の記載内容)と、現在記録ファイルおよび保存記録ファイルに記録されている事項に係るもの(現在の内容+過去の記録)の2種類があるため、どちらが必要なのかは保険会社に確認しましょう。
検査記録事項等証明書は、軽自動車検査協会で発行してもらえます。手数料は現在記録ファイル事項の場合は1件300円、現在記録ファイルおよび保存記録ファイル事項の場合は1件1,000円です。
必要な書類は、検査記録事項等証明書交付請求書(軽第3号様式)となります。
この検査記録事項等証明書交付請求書は、軽自動車検査協会の窓口かWebサイトから入手可能です。
中断証明書の発行の流れ
中断証明書の発行は、書類さえきちんと準備ができていれば難しいことはありません。
一例として、車を売却した場合の中断証明書の発行手続きの流れを見ていきましょう。
- 車を売却する
- 車の売却先に譲渡証明書を発行してもらう
- 中断証明書の発行を保険会社に依頼する
- 自宅に「中断証明取得依頼書」が送付される
- 必要事項を記入し、譲渡証明書などの必要書類を準備して保険会社に返送する
- 後日、保険会社から中断証明書が発行される
保険会社に必要書類が届いてから中断証明書の発行までは、1~3週間ほどかかります。
書類が足りていなければ、さらに時間がかかってしまうため注意しましょう。
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中断証明書を使って自動車保険を再開する場合
中断証明書を使用して自動車保険の契約を再開する場合、いくつか条件があるので注意が必要です。
その条件とはどのような内容なのか、以下で詳しく見ていきましょう。
中断証明書を使用して自動車保険を再開する場合の条件は以下の通りです。
・中断証明書の有効期間内である
国内特則、海外特則どちらも契約の満期日または解約日の翌日から10年以内に再開の手続きをすることが必要です。
妊娠特則は保険会社によって満期日または解約日の翌日3年以内または10年以内となります。
・中断証明書の使用対象者である
中断証明書を使用できるのは、契約者本人もしくはその配偶者や同居の親族のみ
・以前の契約、再開後の契約どちらの場合も契約する車が自家用8車種であること
・新しい車を入手後1年以内に再開の手続きをすること
・出国日から10年以内、帰国日から1年以内に再開の手続きをすること
自動車保険を再開するにあたり、どのような契約内容にするか見直すことをおすすめします。以前とは年齢や状況、環境も全く同じとは言えず、大きく変わっていることもあるからです。
見直しのポイントは以下の5つになります。
①どの保険会社にするか
※中断証明書を使用して、以前とは別の保険会社で再開することは可能です。
②運転者の年齢や範囲、走行距離
③車両保険の補償の範囲
④同乗者への補償
⑤任意の特約
中断証明書を使用して自動車保険を再開するために必要な書類は、以下になります。
・中断証明書(原本)
・今回契約する車の自動車検査証(コピーでも可)
・海外特則の場合、出国また帰国が分かるパスポート(コピーでも可)
自動車保険を再開する時の流れは、以下の通りです。
- 契約を希望する保険会社に保険を再開する旨を伝える
- 申込日より1週間ほどで保険会社から届く返信用封筒に、必要書類を入れて返送
- 保険再開、保険会社より保険証券が紙で送られるかWebで閲覧可能となる
引っ越しなどがあると、中断証明書を紛失してしまうこともあるかもしれません。その場合には、保険会社に再発行を依頼すれば手続きを案内してもらえます。
必要な情報は保険の契約者名・記名被保険者名・保険証券番号・車の登録番号・車の所有者名ですが、全て分からなくても保険会社で確認してくれるので問題はありません。
ただし保険会社によっては、契約者本人からの電話連絡を求められる場合もあります。
なお、契約再開時の保険会社が以前と同じ場合、中断証明書の再発行が不要となるケースもあります。
車を売却する時の自賠責保険の手続きについて
車を売却した時は自賠責保険の手続きが必要となりますが、もし売却先が買取業者なのであれば、業者側で手続きを対応してくれるので問題ありません。
しかし、車検期間が残っている状態で車を売却する場合、自賠責保険の未経過分の還付金相当の金額が売却価格に上乗せされているか確認しましょう。
なお、個人間で車を売却する場合は、自分か車を買った相手が自賠責保険の名義変更手続きを行う必要があります。