車の廃車を検討する場合、自動車税の支払いや自賠責保険、任意保険の手続きに不安を感じます。とくに軽自動車は普通自動車と異なるため税金面で理解が大切です。
この記事では、廃車時に知っておきたい軽自動車の税金について詳しく解説していきます。
軽自動車は自動車税が還付されないことから、お金が何も返ってこないと勘違いしている方もいますが、返ってくるお金もあります。
廃車手続きと同時に知識をつけてスムーズに手続きを行いましょう。
軽自動車を廃車すると軽自動車税は還付されないが還付されるものもある
軽自動車も普通自動車同様に毎年、自動車税を支払っているため「廃車の月によっては還付金が受けられるのでは?」と考える方も多くいます。
しかし、軽自動車の場合は軽自動車税の還付がありません。還付があるのは「重量税」と「自賠責保険」になります。
また、還付を受けられる条件が決まっているため、タイミングを見極めて廃車手続きをとりましょう。
軽自動車の重量税とは?
ここからは、軽自動車でもお金が返ってくるものの一つである「重量税」について詳しく解説していきます。
軽自動車税と比較して重量税はあまり知られていないため、しっかりと確認しておきましょう。
自動車重量税は車の重量や車種、経過年数ごとに税額が異なる国税です。軽自動車の自動車税は地方税のため納付先が異なります。
なお、自動車税は1年ごとに支払う税金ですが、重量税は新規登録時や車検時に向こう3年ないしは2年分を一括で支払います。
普通自動車の場合は項目ごとに金額が異なりますが、軽自動車は一律料金です。
軽自動車の場合は重量によって差がありませんが、経過年数によって下記のとおり金額が異なります。
エコカーの場合 | 1年あたり2,500円(2年で5,000円) |
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エコカー以外かつ13年未満 | 1年あたり3,300円(2年で8,200円) |
13年以上経過したもの | 1年あたり4,100円(2年で8,200円) |
18年以上経過したもの | 1年あたり4,400円(2年で8,800円) |
環境配慮の観点から重要な税金のため、年数がたった車は税額が高い傾向にあります。
上記の金額から、廃車のタイミングによって還付金額が変わります。
近年は環境保全に着目した車づくりが盛んです。地球温暖化の原因になる二酸化炭素排出量をおさえたり、電気の力を使って環境に配慮したりする「エコカー」については、税面でも特例措置を設けています。
具体的には、2023年12月までに新車登録を行った場合において燃費基準の達成度合により「25%」「50%」「100%」の3段階で減税を受けられる仕組みです。
なお、エコカー減税は当初2023年4月30日までの予定でしたが半導体の不足や世界情勢から3年間の延長が決まっています。今後も変更が考えられますが、現状としては下記の流れで移行していくとされています。
- 2023年5月1日~2023年12月31日まで・・・現状の特例措置を据え置き
- 2024年1月1日~2025年4月30日・・・段階的に基準を引き上げ
- 2026年5月1日~2026年4月30日・・・段階的に基準を引き上げ
軽自動車の自賠責保険とは?
ここからは、強制保険である自賠責保険について解説します。
自賠責保険は多くの場合、車を購入した際に自動的に加入しているもののため詳しく知らない方も多いでしょう。どのような保険かや廃車時の解約方法を解説します。
自賠責保険は「自動車損害賠償保障法」により、公道を走行する車全てに義務付けられており、下記の根拠があります。
(引用:自動車損害賠償保障法)
具体的な金額は、自賠責保険の損害調査などを行う機関が算出されるデータを元に、金融庁が自動車損害賠償責任保険審議会に諮問を行い決定します。そのため、金額が上がったり下がったりしますが基本的には一律です。なお、沖縄をはじめとした離島では若干金額が異なります。
自賠責保険に加入していない車を公道で走らせた場合は事故を起こさなくとも下記の刑罰の対象になります。
- 1年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 自賠責保険(共済)の証明書を所持していなかっただけでも30万円以下の罰金
- 無保険での運転は交通違反のため違反点数6点。かつ即座に免許停止処分
廃車手続きの際は自賠責保険とあわせて任意保険の解約も必ず行いましょう。
自賠責保険を解約しても任意保険を忘れていては、引き続き支払いが発生します。廃車のタイミングに合わせて保険会社に連絡して手続きを行いましょう。
なお、早めに解約すると直前に事故を起こした際に補償を受けられないため注意が必要です。
軽自動車税のことを考えると廃車するタイミングはいつが良い?
軽自動車税は還付されないため、いつ廃車してもいいように思えますが、翌年度のことや周囲の状況を鑑みて、適切なタイミングで手続きするのがおすすめです。
ここからは、適切な廃車のタイミングについて解説します。
軽自動車の場合、軽自動車税の還付金がないためタイミングは比較的自由ですが、翌年度の税金が発生しないようにするなら3月までに手続きするのがおすすめです。
自動車税は、4月1日時点に登録がある車が対象なので、その日に登録が抹消されていない車は納付書が送付されます。
軽自動車税は金額が10,800円(2023年現在)です。普通自動車と比べると低い金額ですが、決して安い出費ではありません。そのため、3月中に登録抹消を完了させて新年度の出費を減らしましょう。
廃車手続きを3月までに終わらせたい場合、業者に依頼するのがおすすめです。
年度末は仕事やプライベートが忙しく廃車手続きが行えず「もう4月になってしまった…」という事態も考えられます。業者であれば必要書類を揃えれば手続きを代行してくれるため労力を省けます。
3月は廃車手続きも他の月と比較して混み合う傾向にあるため、早めに業者を選定して車に乗らなくなったタイミングで依頼できる状態を整えましょう。
廃車はどこで行う?選択肢は3つ
ここからは、廃車手続きを行える場所を3つ紹介します。
廃車後の流れを考えながら依頼先を選ぶとスムーズに進むでしょう。
車を今後購入する予定がない場合は廃車専門業者への依頼がおすすめです。解体から廃車手続き(申請)の代行まで担当してくれるところもあります。
廃車専門業者のメリットは費用の安さです。無料や低価格で依頼できるためコストをおさえたい場合におすすめです。
現在の車を廃車して中古車を購入する場合は中古車販売店での手続きがおすすめです。納車までのスケジュールを把握し、逆算して廃車手続きの段取りを組んでもらえるためタイムラグを防げます。
また、中古車販売店の場合は廃車ではなく、買い取ってもらえる可能性もあるでしょう。車の状態が良くて価値のある車種の場合は、売却代金が手に入ることも考えられます。
特定のメーカーで新車の購入を考えている場合はディーラーで廃車手続きをとる方法もあります。
新車の購入サポートから納車と廃車のタイミング調整、廃車手続きまで一貫して任せられる点がメリットです。しかし、ディーラーは廃車手続きに数万円程度の費用がかかります。
いつも同じメーカーで車を購入している場合や付き合いがある方におすすめの選択肢でしょう。
廃車手続きは個人でも行えます。必要書類を揃えて軽自動車検査協会に提出するため、手続自体は可能です。
しかし、永久抹消登録の場合は解体作業を伴うため、どうしても業者への依頼が必要になります。自動車リサイクル法により定められた業者以外が解体作業を行うと罰せられるため、無理に解体しようとしたり不法投棄したりするのは厳禁です。
解体業者や廃車専門業者は解体から手続きまでリーズナブルに対応してくれるため、解体を伴う場合は業者依頼がおすすめです。
なお、車を自分の手元に残し、ナンバープレートを返す一時抹消登録の場合は自分で手続きが可能です。
廃車ではなく買取も検討しよう
廃車の流れを確認すると、軽自動車であっても難しさを感じたり手間がかかって時間の捻出に悩んだりするでしょう。その場合には、買取の選択肢もおすすめです。
ここからは、廃車予定の車を買取査定に出すメリットを紹介していきます。
廃車する場合、無料で手続きを行えることもありますが、解体料やレッカー移動で費用を取られるケースもあります。
買い取りであれば、その車に価値がつく可能性があります。人気の車種の場合は需要の高さからお金になるかもしれません。
近年では、税金が安くデザイン性が高い軽自動車への人気が集まっているため、査定に出す価値は十分にあるでしょう。
車を新たに購入する場合は、買い取りだけでなく「下取り」への理解も欠かせません。
買い取りは車を売却した代金が手元に残ります。一方で下取りは、該当車の価値を算出し、次の車にかかる費用からその金額を差し引くことを指します。そのため、所有者の手元にお金が来ることはありません。
しかし、下取り価格分、次の車の価格が値引きされるため、お得に新車を購入できます。
車の買取は日本自動車査定協会によってある程度、査定金額が決まっているため、業者ごとに大きな差はないでしょう。
しかし、市場でのニーズや売却のタイミングなど細かな要素で変動したりします。そのため、一社のみで査定するのではなく、複数社に見積もりを依頼して相場を確認しましょう。
相場の確認は直接各店舗に車を持ち込んで査定してもらうほか、一括見積もりサイトを活用する方法があります。車の年式やグレードなど様々な情報を入力すると、おおよその査定額が分かるため便利な方法です。
買取査定に出しても値段がつかなかった場合は廃車手続きに進みます。なお、車自体に価値がつかなくともパーツのみ買取可能なケースもあるため、査定時はできる限り相談がおすすめです。
【参考】廃車手続きには2種類ある
最後に、ここからは廃車手続きの詳細を分かりやすく解説します。
廃車には「一時抹消登録」と「永久抹消登録」があり、その内容は異なります。自分はどちらの手続きが必要なのか、見極めるために役立てましょう。
一時的に車を使わない場合は一時抹消登録がおすすめです。
一時抹消登録をすると公道の走行が不可能になりますが、車は自分で保管できます。そして、登録自体が抹消されているため軽自動車税や重量税、保険料などは請求されません。そのため、転勤や長期間の入院で車を使わない場合におすすめの手続きです。
なお、手続きは軽自動車検査協会で行います。主な必要書類は下記のとおりです。
- 自動車検査証返納証明書交付申請書
- 自動車検査証返納届出書(軽第4号様式)
- 車検証
- ナンバープレート
- (代理人が申請する場合)申請依頼書
- 手数料:350円
なお、ナンバープレートが無い場合には「車両番号標未処分理由書」の提出が必要です。
必要書類は自治体やケースごとに若干異なるため、軽自動車検査協会の公式ホームページを確認したり問い合わせたりしてから手続きを進めましょう。
今後、車に乗る予定がない場合は解体して車を完全に手放す永久抹消登録がおすすめです。
永久抹消登録をする場合は、まず解体業者に車を引き渡してスクラップします。その後に解体報告の書類を受け取ってから手続きを行います。
手続きには時間を要するため、ゆとりをもったスケジューリングが大切です。なお、主な必要書類は下記のとおりです。
- 使用済自動車引取証明書
- 車検証
- 解体届出書(軽第4号様式の3)
- ナンバープレート
- (代理人が申請する場合)申請依頼書
「使用済自動車引取証明書」においては、リサイクル券の番号記入が求められるため事前に確認しておきましょう。
なお、代理人が申請する場合は申請依頼書の他に所有者のマイナンバーや代理人の運転免許証が必要です。
こちらも自治体やケースごとに必要書類が若干異なるため、事前に確認をした上で手続きを進めましょう。
廃車手続きの種類を知ると自分に必要な手続きはどちらか迷う場合もあるでしょう。結論として、今後少しでも運転する可能性がある場合は一時抹消登録がおすすめです。
一時抹消登録であれば車体を保管しておければ、いつでも車を復活させられます。
なお、再び車に乗る場合は「中古車新規登録」を行います。こちらも軽自動車の場合は、軽自動車検査協会で行えるため必要な機会が来たら下記の必要書類を揃えて申請しましょう。
- 保安基準適合証
- 点検整備記録簿
- 自動車検査証返納証明書
- 譲渡証明書等(軽自動車検査証返納確認書含む)
- 使用者の住所を証する書面
- 自動車損害賠償責任保険証明書または自動車損害賠償責任共済証明書
- 申請審査書(手数料納入補助シート)
- 自動車重量税納付書
- 新規検査申請書(軽第1号様式)
- 軽自動車検査票
- 住民票の写しもしくは印鑑登録証明書