車に関するトラブルのひとつに「ガス欠」があります。燃料が切れてガス欠になれば、最悪の場合、道路で立ち往生して道路交通法違反と見なされかねません。
このようなトラブルが発生した際、頼りになるのがロードサービスです。路上でのトラブルをサポートしてくれるロードサービスは、自動車保険に加入すると自動的についてくるので安心です。
この記事では、ガス欠が起きた場合の対処法や、ロードサービスの利用方法を詳しく解説していきます。
ガス欠はロードサービスで対応可能
車の運転中に、燃料タンクが空っぽになってしまう「ガス欠」が起きてしまったら、自分が契約している自動車保険のロードサービスを利用することができます。
以下では、ガス欠した時の対処法と予防法、ロードサービスのサービス内容を説明します。
ガス欠の内容と注意点
まずは、ガス欠とは何か、その内容を詳しく説明していきます。また、ガス欠を起こした際の危険性や違法性についても紹介するので、確認しておきましょう。
自動車の運転にはガソリンや軽油などの燃料が不可欠です。これらの燃料が完全に切れてしまうことを「ガス欠」と呼びます。
ガソリン車に限らずディーゼル車やバイクでも起こりうることで、ガス欠が起きると走行はできません。また、高速道路を運転中に渋滞に巻き込まれ、エアコンを長い時間使っていても起きます。
JAFの2021年の救援データによると、高速道路の救援依頼の中でも「燃料切れ」は年間で2位となっています。
燃料がなくなってしまえば車は動きません。道路を走っている最中にガス欠が起きると大変危険です。もしも狭い道や道路のど真ん中でストップすれば、渋滞や事故を引き起こす恐れがあります。
特にバイパスや高速道路など、車の通りの激しい場所であればなおさら危険です。高速道路の場合は50キロおきにガソリンスタンドが設置されているので、計画的に活用しましょう。燃料の残量がギリギリになる前に給油するのがベストです。
また、高速道路でガス欠を起こして停車してしまうと、危険なだけではなく違法と見なされる可能性もあります。これは、れっきとした道路交通法違反で、第75条の「高速自動車国道等運転者遵守事項違反」に該当します。
違反と見なされれば、まず違反点数2点です。罰金は、大型車・中型車は12,000円、普通車は9,000円、バイクは7,000円と決まっています。
ガス欠処理の手間に加えて出費もかさむなど、いいことはありません。
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ガス欠になった場合の対応
もしも道路を走行中にガス欠になってしまったらどうすればいいのでしょう?以下で順番に説明していきます。
車がエンストを繰り返すなどガス欠の兆候が見られ始めたら、完全に動かなくなる前に安全な場所で停止しましょう。可能であれば、最寄りのガソリンスタンドに行くのが一番です。
車が完全に停まったら、自力で車を押すか、別の車から牽引してもらって安全な場所に車を寄せます。道路幅に余裕があれば路肩でも問題ありません。
ギアをニュートラルの状態にしてドアを開け、Aピラーという柱を押せば、車をスムーズに動かせるでしょう。
また、車を停めるだけではなく、事故防止の措置も取らなければなりません。まずハザードランプを点灯させます。車が停止していることを後続車にきちんと知らせて、追突事故などを未然に防いでください。
普通ではない形で車を停めていることになるので、衝突事故を起こさないことが第一です。過去にはガス欠が原因で動かなくなった車に大型車が追突し、死傷者が出るという事故も起きているので、特に夜間は配慮が必要です。
車を安全な場所に停止させたら、次は誰かに助けを求めることを考えましょう。とにかく燃料がなければどうしようもないため、何らかの方法で確保する必要があります。
例えば、友人知人に連絡して持ってきてもらったり、ガソリンスタンドまで牽引してもらったりするという方法です。歩ける距離にガソリンスタンドがあれば助けを求めたり、自力で買いに行ったりすることもできますが、高速道路では大変危険なのでやめたほうがいいでしょう。
車を停止させ安全が確保できたものの、周囲に助けを求められる相手がいなければロードサービスを利用しましょう。自動車保険に加入していれば、多くの場合はロードサービスが自動で付帯されているので問題なく利用できます。
自動車保険のロードサービスは、基本的に無料で利用できます。また、とりあえず保険会社のコールセンターに連絡をすると、その場でどのように対処するといいかも教えてもらえるので、慣れない状況の場合は大変便利です。
ただし、こうしたロードサービスは保険会社によってサービス内容が微妙に異なります。例えばガス欠の対応ひとつを取っても、運んできてくれる燃料の量や利用回数が制限されていたり、燃料代だけは有料だったりするケースがあります。
また、連絡すればロードサービスが即座に駆け付けてくれるとは限りません。渋滞が発生しやすい道路や雪道の場合は、到着まで時間がかかることもあります。
前述した通り、ガソリンスタンドに助けを求めることもできますが、考えられる条件もいくつかあります。
まず、いくら近所にガソリンスタンドがあったとしても、高速道路のような危険な場所に燃料を運んできてもらうのは無理があるでしょう。また、規模が小さく従業員も少ないガソリンスタンドだと対応できない可能性が高いです。
あとは自力で歩いていって燃料を購入し、携行缶などに入れて持ち帰る方法がありますが、これも高速道路では無理があります。また、搭乗者が一人だけだと違法駐車と見なされる恐れがあります。
バイクがガス欠を起こした場合、ホースを使い、浸透圧を利用してバイク同士で燃料を融通し合う方法もあります。
かつては普通自動車も可能でしたが、現在は燃料の逆流防止弁がついている車が主流です。配管が複雑でホースを入れにくいことも多いので難しいでしょう。
そもそも、素人が普通自動車同士でガソリンを融通し合うのは大変危険です。車の故障だけでは済まず、火災や爆発事故につながる恐れがあるので、やめておいたほうが無難です。
ロードサービスとは何?
前項までで、ガス欠を起こした場合はどのように対処すればいいのかを説明しました。対処法が複数あることは分かりましたが、以下では、特にロードサービスについて詳しく解説します。
ロードサービスの細かい内容は保険会社によって異なります。しかし、全体的なシステムやサービスの仕様によって保険の等級が下がることがない点などは共通です。
自動車保険の利用者の中には、自分の自動車の使い方に合ったロードサービスを細かく調べる方もいるでしょう。
例えば、ガス欠対応の場合を考えてみると、ガス欠に対応はしているものの、現場に駆け付けて給油してくれる量は10リットルまでが無料でそこから先は有料、という保険会社もあります。
他にも考えられるのが、ロードサービス自体は無料で利用できるが、ガソリンだけは自己負担というケースです。
また、ロードサービスそのものが自動付帯されていない保険会社もあります。この場合は「ロードサービス特約」という形で加入することになります。
自動車のトラブルは、ガス欠以外にもバッテリー上がり、タイヤのパンクやキーの閉じ込み、落輪など様々です。各種ロードサービスがどういった事態に対応しているのか、事前にチェックしておきましょう。
ロードサービスは、自動車保険に加入するとほぼ自動的に付帯されます。そのため、そうしたサービスがついていること自体意識していない方も多いかもしれません。
あるいは、あえてロードサービスをつけないことで保険料が節約できることもあります。もしもロードサービスが不要で保険料を節約したい場合は、保険会社に相談してみるといいでしょう。
通常、物損事故を起こして対物賠償保険や車両保険によって被害者・加害者(自分)が受けた損害を補償すると、保険の等級が下がります。
等級が下がると事故を起こすリスクが高いと見なされ、翌年からの保険料が高くなります。しかし、ロードサービスを活用しても等級が下がることはないので安心してください。
一方、物損事故を起こして動けなくなった場合にロードサービスを利用するという場合は別です。その場合は、保険を使って事故の損害補償をすれば等級は下がるでしょう。
ロードサービスを利用する一般的な流れを確認しましょう。
まず、契約している保険会社のロードサービスセンターに連絡を入れます。そして、受付担当者に保険証券に書かれている番号と契約者氏名、車の登録番号などを伝えてください。
すると担当者から指示があるので、それに従って、保険会社と提携しているレスキューが到着するのを待ちます。あとは、ガス欠であれば補給用の燃料を持ってきてくれるので、給油を済ませれば車を動かせるようになるでしょう。
以上がガス欠時のロードサービス利用の流れですが、注意点もあります。
ロードサービスよりも先に別の業者を手配してしまったり、修理を受けてしまったりすると、サービスの対象外となってしまいます。
また、自分の加入している保険のロードサービスの内容も、念のため確認しておいてください。例えば、給油量が制限されているロードサービスであれば、またガス欠にならないうちにガソリンスタンドへ行くことなども検討しましょう。
ガス欠を起こした際、現場に駆け付けて燃料を届けてくれるロードサービスは頼れる存在です。
ただし、その細かい内容については保険会社ごとに違っています。ガソリン代が有料となる場合もあるので、自分がどれくらいの負担を負うのかについてはあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
ロードサービスが利用できるのは、ガス欠した時のガソリン補給に限りません。
例えば車が事故に遭遇したり、故障で動かなくなったりした場合はレッカー移動を行ってくれますし、タイヤのパンク時にはスペアタイヤの交換も請け負ってくれます。
他にも、バッテリー上がり時に利用することも可能ですし、キーを車内に入れたままロックした際も対応してくれるでしょう。
こうした作業に長けたスタッフが、基本的には時間や場所に関わりなく駆け付けてくれるので安心です。
ロードサービスを提供しているのは保険会社だけではありません。JAF(一般社団法人日本自動車連盟)が提供しているサービスを受けることも可能です。
JAFに加盟していれば、無料で24時間365日、時間や場所に関係なくロードサービスを利用できます。サービス内容は自動車保険のロードサービスと様々な点で異なります。
特徴的なのは加入するのが車単位ではなく「人」単位な点です。自分の車を運転していない場合でも、バイクでもサービスを受けられます。
JAFには、多くの自動車保険のロードサービスにありがちな回数制限もありません。駆け付けてくれるのがあくまでもロードサービスを専門としている業者なので、技術面でも信頼ができるでしょう。
また、JAFは非加入の人でも利用でき、その場合は個別のサービスに対して料金を支払うことになります。自動車保険のロードサービスとは違って全国一律に安価で信頼性の高いサービスが受けられるので、JAFに加入することを検討してもいいでしょう。
バイクがガス欠を起こしたら
バイクがガス欠になった場合も、安全の確保や各機関への連絡など、取るべき対応は普通自動車の場合と同じです。
ただし、やむを得ず道路脇などに停車する場合は、センタースタンドやサイドスタンドができるだけ安定して立てられる場所を選ぶ必要があります。そういう意味でも安全確保が必要です。
燃料の補給は、バイクの場合、ホースがあれば他のバイクから融通してもらうのも難しくはありません。いわゆるサイフォンの原理を利用すれば、他のバイクや携行缶からも簡単に燃料を移せます。
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ディーゼル車がガス欠を起こしたら
ディーゼル車はガソリン車やバイクとは異なり、ガス欠の際は特に慎重な対応をしなければなりません。
構造上、ディーゼル車は一度燃料切れを起こすと次回の給油時にラインに空気が入ってしまうため、エア抜きの作業が必要となります。
またディーゼル車は高圧状態を作り出すので、燃料が不足するとエンジンの焼き付けが起こります。繊細な作りになっているインジェクターが損傷することもあるので、プロによる大掛かりな修理が必要になるかもしれません。
ガス欠を予防するためには
ここまでで、ガス欠の内容や対処法について解説しましたが、ガス欠に陥らないように予防措置を取ることが大切です。以下では、主なガス欠防止方法を見ていきましょう。
ガス欠が起きる直前には、必ずいくつかの兆候があります。
まず、ガソリンが不足すれば走行時のスピードが落ちてしまい、アクセルをいくら踏んでも加速しなくなります。そうなると、上り坂などでも思うように進まなくなるでしょう。また、エンジンから異音が聞こえたり、小刻みな振動を感じたりするようになったら、ガス欠の可能性があります。
こうした兆候をそのままにしておくと、最終的にはエンストを起こして「ガス欠」となり走行不能に陥ります。
ガス欠を予防する方法で最も基本的で簡単なのは、ガソリンメーターをこまめにチェックすることです。
車種によって表示基準は異なるものの、一般的にはガソリンが10リッター以下になるとE(エンプティ)ランプが点灯し、さらに放置すると車種によっては走行中に警告音が鳴ります。
Eランプが点灯しても、数十キロ程度なら走行できることが多いので、まずは慌てずに最寄りのガソリンスタンドの場所を確認してください。
高速道路なら50キロから100キロおきにスタンドが設置されているので、あとはガソリンを浪費しないような走行を心がけて向かいましょう。
ガス欠の予防策として、ガソリンを入れた携行缶を車内に積んでおくという方法もあります。
ガソリンスタンドがほとんど存在しないような場所へ遠出をする場合は、この方法が有効でしょう。
ただし、ガソリンは引火しやすく取り扱いを間違えると一瞬で大惨事になります。夏場にガソリンの入った缶を高温の車内で放置したり、法律で認められていないポリタンクなどにガソリンを入れて持ち歩いたりするのは絶対にやめてください。
ガス欠を繰り返すと故障の原因になる
一度、ガス欠を起こすと給油して次にエンジンをかけた時に、モーターやバッテリーへ負担がかかります。そのため、何回もガス欠を起こすと車に摩擦・摩耗によるダメージを与える結果になり、燃料ポンプが故障する恐れが出てきます。
ガス欠を起こした車は、給油すればすぐ今まで通りに動くわけではありません。一度パイプライン全体にガソリンを行き渡らせなければならいため、モーターを普段以上に多く回す必要があります。
車にも負担がかかるので、ガス欠を起こさないように日ごろから気を付けましょう。