任意で加入する自動車保険には、保険料が安くなる「年齢条件」の設定があります。しかし、自賠責保険の場合は契約内容があらかじめ全て体系的に決まっているため、年齢条件を設定することができません。
また、年齢条件の設定については定期的に見直すことが重要です。契約した当時のままの内容では損をすることもあります。
この記事では、自賠責保険で年齢条件を設定できない理由や、自動車保険で年齢条件などを活用して保険料を節約するコツを紹介します。
自賠責保険に「年齢条件」はない
任意で加入する自動車保険は、保険料を安くすることができる年齢条件の設定というサービスがあります。車を運転する人の年齢を限定することで、事故のリスクを減らすと同時に保険料の節約にもつながるというものです。
ただし、このサービスはあくまでも自動車保険での話となり、自賠責保険では利用することができません。
ここでは2つの保険の違いと年齢条件との関係、自動車保険料を節約する方法として他にどのようなものがあるのかを説明していきます。
年齢条件とは?
年齢条件という設定は、自動車保険の保険料を節約することができるサービスです。しかし、自賠責保険にはこのようなサービスはなく、保険料を安くすることはできません。
ここからは、年齢条件について詳しく解説していきます。
自動車保険の年齢条件は、正式には「運転者年齢条件」と言います。車を運転する人の年齢を限定することで事故を起こすリスクを軽減する仕組みで、運転者の年齢が年長であればあるほど保険料も安くなります。
年齢条件を設定することで保険料を安くできるのは、より若い人のほうが事故発生率が高いという過去の統計結果があるためです。つまり、若い人が運転する車ほど事故が起きやすく、保険会社にとっても保険金を支払うリスクが高いということです。
年齢条件は契約時から設定可能で、更新の時期にかかわらず契約途中でも変更ができます。運転者が誕生日を迎えたり、家族構成が変わったりしたタイミングでいつでも変えられます。
ただし、設定した年齢以外の人がその車を運転して事故を起こした場合は、補償が適用されません。保険料が節約できるからと安易に設定せず、最初にきちんと状況を見極めることが大切です。
年齢条件を設定することで保険料を安くするという方法が使えるのは自動車保険だけです。
自賠責保険は、保険料の金額があらかじめ全国一律で体系的に定められており、特定の条件で保険料の金額が変更されるということはありません。
自賠責保険は保険料や補償内容が全て決まっており、年齢条件の設定などによる変更の余地はありません。変更があるとすれば、全体的に内容の改正があった場合に限られます。
もともと自動車事故の被害者に対する補償は、自賠責保険だけで賄い切れないケースも少なくありません。その不足分をカバーするために存在しているのが自動車保険です。
ドライバーは両方の保険に加入し、自賠責保険で最低限の補償を確保しつつ、保険料の節約などの調整は自動車保険で行うことになります。
自賠責保険の名義変更は必要あるの?手続きの仕方も教えます!
自賠責保険の条件は一律
自動車保険には年齢条件の設定や補償内容の変更によって保険料を調整・節約できるサービスがありますが、自賠責保険にはこのようなサービスは存在しません。
自賠責保険の補償内容や保険料は、そもそも変更することができません。その理由について詳しく説明していきます。
自賠責保険の補償内容は「死亡の場合で3,000万円、怪我の場合で120万円、後遺障害の場合は程度に応じて75万円~4,000万円」と、全国一律で決まっています。
このような内容の保険にドライバーが強制的に加入させられることで、自動車事故の被害者に対する最低限の補償が確保されているのです。
自賠責保険の補償内容は車種による違いはありませんが、保険料は車種ごとに異なります。これらの金額もあらかじめ体系的に決まっているので、自動車保険のように年齢条件などを設定することで保険料を安くすることができません。
例えば、自家用の普通乗用車なら12カ月で12,700円、24カ月で20,010円、36カ月で27,180円です。
その他、軽自動車や普通・小型貨物車、大型・小型特殊自動車、原付を含む各種バイクまで細かく定められています。
自賠責保険の保険料の金額には、若干ですが地域による違いもあります。
自賠責保険では、日本を以下の4地域に区分けしています。
- 本土
- 本土の離島
- 沖縄県
- 沖縄県の離島
本土よりも沖縄県は保険料が安く、離島の場合はさらに安く設定されています。
地域によって金額が違う理由は明確ではありませんが、自賠責保険には保険料の収入と保険金の支出に赤字・黒字が発生してはいけないという原則があるため、沖縄県や離島は交通事故が少なく保険金の支出も特に少ないから、という理由が考えられるでしょう。
年齢条件のメリットと設定方法について
ここまでで、年齢条件、自動車保険、自賠責保険の三者の関係を見てきました。
ここからは、自動車保険で年齢条件を設定するメリットや、設定方法について押さえておくべきいくつかのポイントを説明していきます。
年齢条件を設定することの大きなメリットは、保険会社にとっては事故による保険金の支払いリスクを軽減できることで、契約者にとっては保険料を節約できることです。
例えば、何らかの理由で保険料が上がった際に、年齢条件をつけることで上がる前の水準の金額に下げてバランスを取るという調整が可能です。
ただし、いくつかの条件があり、年齢条件の設定対象になるのは保険契約者とその配偶者、また同居の親族に限られます。
家族や親族ではない年下の友人などが運転する場合などは対象外となるので、気を付けましょう。
年齢条件の設定は必ず「〇歳以上の人が運転する」という形で行われます。言い方を変えれば「若い人が運転しない」と約束することでもあります。つまり、若い人が運転する車ほど保険料は高くなるのです。
10代や20代のドライバーは事故発生率が高く、保険会社も保険金支払いのリスクが大きいことから、このように保険料も高くなります。
また、自動車保険料の金額を決める要素として「等級」がありますが、若いドライバーはこの等級の水準が低いことが多いです。そのため、等級が低いことも、保険料が高くなる一因となっています。
自動車保険料の金額は、ドライバーの等級や契約車両、希望する補償内容によって異なります。そのため、年齢条件を設定することで具体的に何円安くなるかは一概には言えません。
保険料というのは「純保険料」と「付加保険料」とで構成されています。このうち純保険料の保険料率は、運転者の年齢条件を「全年齢補償」から「26歳以上補償」に変えることで3分の1になると言われています。
そのため、年齢条件の設定による節約効果は、確実にあると言えるでしょう。
年齢条件は、自動車保険の契約更新のタイミングなどにこだわらなくとも、契約途中でも変更可能です。
例えば、前に自動車保険を契約し何年も自動更新としていたが、気が付いたら年齢条件をさらに引き下げられる状況になっていた、ということもあるでしょう。そのため、折に触れて見直すことで保険料を安くすることができます。
詳細は後述しますが、家族の誕生日や子供が独立・引っ越しするタイミングなどが最適と言われています。
年齢条件の見直しに適したタイミングは、まず普段その車を運転する人が誕生日を迎える頃が挙げられます。自分や家族の年齢が変わったら、年齢条件の変更が可能かもしれません。ぜひ、確認してみましょう。
また、年齢条件以外にも保険料を安くする方法として、車を運転する人を「家族」に限定するという方法もあります。(運転者限定特約)
家族が誕生日を迎えたタイミングで運転者限定特約にすることで、ますます保険料を節約できるかもしれません。
年齢条件を見直すことで保険料を安くする一例としては、例えば20歳の人が21歳に、25歳の人が26歳の誕生日を迎えたタイミングで手続きを行うというのがあります。20歳から5年ごとに設定変更するというのが一般的です。
どの年齢だと保険料がいくら安くなるのかは、保険会社により異なります。少なくとも、10代後半から20代前半にかけては最も保険料が高いので、その時期を過ぎたら年齢条件の見直しを検討しましょう。
誕生日に関係なく、家族構成が変わった段階で年齢条件を検討するのもひとつの手です。進学や就職などがきっかけで未婚の子供が家を出て別居するという場合は、その子供は家の車を運転しないものとしてカウントできるでしょう。
特に20歳前後や30歳以前の年齢というのは、引っ越したり、自分の車を持ったりするなど、ライフスタイルに変化がある年代となります。
家族構成が変わって親の車と子供の車が別になるタイミングは、年齢条件を変更するチャンスです。
先述した通り、年齢条件とは別に車を運転する人を「家族」に限定することでさらに保険料を抑える方法もあります。ただし、家族限定の補償範囲は、運転者から見て同居の親族か別居中の「未婚の子」までと決まっています。そのため、別居している子供が結婚し、なおかつその車を運転するなら家族限定ではなく年齢条件のみとなるでしょう。
年齢条件と家族限定の関係には注意が必要です。
保険料を安くする方法
ここまでは、自動車保険で年齢条件を設定することで保険料を抑えられることを説明してきましたが、実は保険料を節約する方法はこれに限らず様々なものがあります。そのため、以下でいくつか紹介していきます。
自動車保険の保険料を安くする方法として、年齢条件の設定以外にも「運転者限定特約」をつける方法があります。
前述しましたが、運転者限定特約とは普段その車を運転する人の範囲を限定するものです。
例えば、保険で契約した車両を若い人が普段運転しないのであれば、その人が運転しない設定にすることで、年齢条件を設定するのと同じ節約効果が期待できるでしょう。運転者を限定することで、事故が起きるリスクを軽減するわけです。
運転者限定特約で限定可能な範囲としては、まず「本人」「本人と配偶者」の2種類が挙げられます。この場合の配偶者は必ずしも婚姻届に基づく必要はなく、内縁関係でも認められます。
ただし、運転者限定特約をつける上で、その内縁関係が認められるかどうかは保険会社の判断次第で、契約者が勝手に決められるものではありません。
また、保険会社によっては「本人」だけの限定特約はつけられないこともあるので、前もって確認しておきましょう。
運転者限定特約は、前項で説明した「本人とその配偶者」の他にも「家族限定」でつけることもできます。
ただし、どのような人が家族に入れられるかは、あらかじめ確認しておいたほうがいいでしょう。
この特約でいう家族とは、細かく言えば「同居している親族」で、まずは同一の家屋の建物内部で生活していることが条件です。
また、親族は「6親等以内の血族・配偶者および3親等以内の姻族」を指し、傍系血族も含めれば、6親等のいとこやはとこの孫、曾祖父母の兄弟の子まで含まれます。
このように親族の範囲はかなり広いのですが、注意が必要なのは別居している子供がいる場合です。別居している子供が未婚であり、なおかつ過去に婚姻歴がない場合のみこの特約の家族に含められます。
また、同居の考え方にも少し難しいところがあります。建物は同一でも、水道やガスなどが完全に分かれている二世帯住宅もあるでしょう。こうした場合も同居と見なすかどうかは、保険会社に確認する必要があります。
車を購入するタイミングだけで使える方法ですが、もしも同居している親族が高い等級を持っている場合、名義変更によって等級を引き継ぐことができます。等級が高ければ保険料は安くなるので、有利な方法だと言えるでしょう。
例えば、親が20等級の保険を持っているとします。そこで、親が新しく車を購入して車両入替を行うと等級を新しい車に引き継ぐことができ、そのまま車の名義を子供に変更すれば子供は新しい車と20等級の保険を手に入れられます。
この場合、親は自動車保険に新しく入り直すことになりますが、年齢的に考えて、年の若い子供が新規に契約するよりも保険料の合計は安くなることがほとんどでしょう。また、親は年齢条件や運転者限定特約をつければ保険料を抑えられます。
ただし、このやり方が可能になるのは、高い等級を持っている親と子供が「同居」している場合に限られます。子供が一人暮らしをしている場合はできないので注意してください。
自動車保険の保険料を節約するために、車両保険の「免責金額」を大きくすることも検討してみましょう。
免責金額とは、簡単に言えば保険金が支払われるような損害が発生しても、保険会社が支払わなくてもいい金額のことです。つまり、実質的に保険の契約金額を減らしていることになるので、保険料も安くなります。
もちろん実際に事故などが発生すれば免責金額分は自己負担となりますので、いざという時に自分で支払える分とのバランスを考える必要があります。
また、その車が中古車である場合、そもそも車両保険をつける必要があるか見直してみるのもいいでしょう。車両保険の保険金額はあくまでも時価の相当額なので、古い車の場合は大きく補償はされません。
それであれば、車両保険分の保険料を払い続けることが最初から損だと考えることもできます。ただし、中古車をローンで購入した場合は車両保険の必要性も高いので、慎重に考えましょう。
自動車保険の保険料の支払方法には「年払い」と「月払い」があります。
月払いにしている方で、年に一度まとめて支払う余裕があるのであれば、年払いに切り替えることで保険料を安くできるでしょう。
一般的に支払方法を月払いから年払いに切り替えると、保険料が5%ほど安くなるとされています。
ただし、保険料を一括年払いで払ってから間もなく保険を解約すると、未経過分の保険料は全額返ってこないので注意が必要です。
もともと、保険会社には独自で保険料の割引サービスが用意されているものです。
例えば、満期日よりも前に契約することで割り引かれる「早期契約割引」などが挙げられ、こうしたサービスを上手に活用すれば保険料を節約できます。
その他にも紙の保険証券を発行しない「証券不発行割引」や、Webサイトを通して契約手続きを行うことで適用される「インターネット割引」もあります。
サービス内容は保険会社によって異なるので、事前に確認しておきましょう。
自動車保険の保険料は保険会社によって異なるので、自分の希望する補償内容と実際の補償、そして保険料の金額などを比較検討して、保険会社を切り替えるのもひとつの手です。
例えば、代理店型の自動車保険からインターネットで契約できるダイレクト型自動車保険に切り替えるという方法があります。
保険の内容を詳細に比較検討するのは根気が必要です。インターネットの普及によって今は保険商品も多様になっていますので、Web上の一括見積もりサービスを活用するのもいいでしょう。
自賠責保険の名義変更は必要あるの?手続きの仕方も教えます!