車を購入してから1年が経つと、ディーラーなどから「1年点検(12ヶ月点検)」の案内が届きます。
車の調子が良いと、点検は不要ではないかと疑問に感じている方も多いでしょう。さらに、車検との違いや点検費用など、わからない点も多いかもしれません。
この記事では、車の1年点検の必要性や点検項目、受けるタイミングや費用などについて詳しく解説します。
- 法定12ヶ月点検(1年点検)は道路運送車両法によって1年ごとに実施が義務付けられている定期点検です。(未実施でも罰則はありません)
- 車検(2年ごとの継続検査)は車が保安基準に適合しているか確認する検査であり、1年点検は安全維持のためのメンテナンス点検です。
- 1年点検ではブレーキやタイヤなど全26項目の状態をプロが確認し、不具合の早期発見・修理につながります。
- 点検費用はおよそ10,000〜20,000円前後で、作業時間は1時間程度が目安です。(不具合があれば別途整備費用がかかります)
- 1年点検はディーラーのほか認証整備工場やカー用品店などでも受けられます。自分で点検することも可能ですが、専門的な知識や設備が必要です。
車の1年点検(12ヶ月点検)は義務だが罰則はない
車の1年点検は義務ではありますが、怠ったとしても罰則はありません。
ここからは、車の1年点検の概要や、車検と2年点検の違いなどについて詳しく紹介します。
車の1年点検(12ヶ月点検)とは?
法定12ヶ月点検(1年点検)とは、道路運送車両法で定められた定期点検整備の一つです。自家用の乗用車では新車登録から1年後、その後も1年ごとの実施が義務付けられています。
車検と異なり国の検査ではなく、ユーザー自身が責任を持って行う点検であり、車を安全な状態に保つことが目的です。
点検項目は約26項目におよび、エンジンルームから足回りまで車両全体を総合的にチェックします。
1年点検と車検は、目的やタイミングに明確な違いがあります。1年点検は車の安全性を維持するために定期的に行うメンテナンスです。一方、車検は車が法律の定める安全基準に適合していることを確認するための2年ごとの検査手続きです。
そのため、1年点検を実施しなくても直ちに罰則はありませんが、車検を期限までに受けないと公道を走れなくなり罰則が科されます。
また、車検は検査を通過した時点での安全性を確認するに過ぎず、次の車検まで故障しない保証にはなりません。定期的な1年点検で継続的な整備が安全に乗り続ける上で重要です。
1年点検は12ヶ月ごとに行う点検ですが、24ヶ月ごとに行う2年点検は点検項目がより多く設定されているのです。2年点検はちょうど車検のタイミングで実施されるため、法定12ヶ月点検の内容に加えてサスペンションや駆動系部品など詳細なチェックが行われ、総点検項目数は約54項目にもおよびます。
24ヶ月点検は車検と同時に必ず実施されるため漏れが少ない傾向です。12ヶ月点検は車検の中間にあたるため未実施のまま乗り続けているケースも見受けられます。しかし、安全維持のためには2年を待たずに1年ごとの点検を受けることが望ましいでしょう。
12ヶ月点検を定期的に受けることは、車を安全で快適な状態で維持する上で重要です。点検ではブレーキパッドの摩耗やブレーキオイル漏れ、タイヤの溝の深さやひび割れ、エンジンオイルの漏れや冷却水の量など、日常点検では見落としがちな劣化や不具合を発見できます。
例えば、ブレーキホースのわずかな亀裂も点検で早期に発見できれば、走行中のブレーキトラブルを未然に防げます。定期的な点検整備により、不具合の早期修理が可能となり、大きな故障や事故のリスク低減が可能です。
また、適切なメンテナンスは車両の寿命延長にもつながり、長期的には修理費用の節約にもつながるでしょう。記録簿に点検整備の履歴が残ることで、中古車として売却する際の評価が高くなるといったメリットもあります。
道路運送車両法により、ユーザーには日常点検と定期点検(12ヶ月点検・24ヶ月点検)を実施する義務があります。しかし、1年点検を実施しなかった場合でも直接の罰則規定は設けられていません。そのため、法律上は車検さえ通していれば走行は可能です。
ただし、点検を怠って不具合を放置した結果、事故につながった場合には、整備不良による事故責任を問われる可能性があります。罰則がないからといって1年点検を軽視せず、安全のためにもきちんと受けることが大切です。
点検を先延ばしにする期間が長くなるほど、不具合が進行したり見落としたりするリスクが高まります。多少遅れても問題ありませんが、本来の点検時期に合わせて定期的に受けることが理想的です。
車検付きメンテナンスパックは必要なのか?費用対効果を徹底解説!
1年点検を受けるタイミング
12ヶ月点検を受けるタイミングは、新車登録日や前回の車検(または点検)からちょうど1年後が目安です。ディーラーで車を購入した場合、初回の12ヶ月点検時期が近づくと案内ハガキや電話で知らせてくれることが一般的です。
点検の期限となる日付は車検証にも記載されていますが、多少前後して受けることもできます。例えば、長距離ドライブの前に早めに点検したり、都合で多少遅れて受けたりしても構いません。1年ごとの周期で継続的に点検整備を行うことが重要です。
新車の場合は初回1年目と2年目に1年点検を実施し、3年目に初回車検(2年点検)を迎える流れです。以降も車検の間の年は12ヶ月点検を受ける形で、毎年何らかの点検整備を行うことが望ましいでしょう。
1年点検に必要な書類
法定12ヶ月点検を受ける際に準備しておく書類は、それほど多くありません。自動車検査証(車検証)とメンテナンスノート(整備手帳)の2つです。
車検証は車両に常備しているはずのため、点検の際にも必ず提示しましょう。また、メンテナンスノートは過去の点検整備の記録簿で、ディーラーや整備工場に持参すれば点検結果を記入してもらえます。
万一、メンテナンスノートを紛失していても点検自体は受けられますが、その場合は整備工場で新しい記録簿を作成してもらうと良いでしょう。
前回の点検ステッカー(フロントガラス等に貼付される次回点検期限を示すシール)が残っている場合は、そちらも参考として役立ちます。
1年点検の所要時間と費用相場
1年点検にかかる時間と費用は、依頼する業者や車種によって多少異なりますが、おおよその目安があります。作業時間は概ね1時間前後です。
ディーラーや整備工場に事前予約して持ち込めば、その場で1時間程度待っていれば点検が完了するケースが多いでしょう。ただし、混雑状況や追加整備の有無によっては2〜3時間程度かかったり、車を預けて後日引き取りになったりする場合もあります。
費用に関しては、点検基本料がおよそ1〜3万円程度となることが一般的です。軽自動車やコンパクトカーなら1万円前後、輸入車や大型車では2〜3万円以上かかる場合もあります。
これに加えて、点検の結果消耗品の交換や整備が必要となれば、その部品代・工賃が別途発生します。事前に見積もりを確認し、必要に応じて整備内容を相談すると安心です。
しかし、実際には26項目にわたる専門的なチェックを素人が行うのは簡単ではありません。例えば、車体下部のブレーキホースの点検には車両を持ち上げる設備が必要で、ブレーキパッドの残厚確認や点火プラグの状態確認には専門知識が求められます。
自動車に詳しく工具類も揃っている方であれば、点検項目表に沿って一通りチェックするのは不可能ではありません。その場合でも、点検結果を整備記録簿に記載し、必要な整備があれば早めに対処するのが望ましいでしょう。
一般の方の場合は無理に自分で実施しようとせず、資格を持った整備士に点検を依頼する方が確実といえます。
車検付きメンテナンスパックは必要なのか?費用対効果を徹底解説!
1年点検の点検項目
ここからは、1年点検で点検・整備の対象となる主な項目を紹介していきます。
ハンドル(ステアリング)の操作を車輪に伝えるかじ取り装置では、パワーステアリング装置の状態を点検します。
具体的には、パワーステアリングの作動油の漏れや量を確認し、ベルトの緩みや損傷がないかをチェックします。ハンドル操作時の遊びや異音の有無も点検し、正常に操舵できることを確認するのです。
ブレーキペダルは車の減速・停止を指示する重要な装置です。
点検では、ブレーキペダルの遊びの量と、床板とのすき間を確認します。踏みしろが規定範囲にあるか、踏み込んだときに十分な制動力が得られるかをチェックし、ペダルの戻り具合に異常がないかも点検します。
駐車ブレーキは停車時に車両を固定する装置です。レバー式やペダル式がありますが、いずれの場合も引きしろの量が適切かを点検します。
駐車ブレーキを完全に作動させた際に、所定の引き代でしっかり固定できること、解除時にブレーキの引きずりがないことを確認します。
ブレーキホース・パイプはブレーキ液を各輪のブレーキに伝える配管です。
点検では、ホースやパイプからの液漏れがないか、表面に亀裂や損傷がないか、取り付け部が緩んでいないかをチェックします。ブレーキ液が漏れて配管に損傷があると、十分な制動力が得られなくなるため、慎重に確認します。
ブレーキの油圧系統を構成する部品として、ブレーキマスターシリンダー、ホイールシリンダー、ディスクキャリパーの状態を点検します。
主に各部からのブレーキ液漏れがないかを入念にチェックし、シール部品の劣化が疑われる場合は整備が必要です。
ドラムブレーキを採用している車両では、ブレーキドラムとその内部のブレーキシューの状態を点検します。
点検では、ドラムとシューとのすき間が適正かを確認し、ブレーキシューの摩耗具合をチェックするのです。シューに摩耗や亀裂があれば交換が必要ですし、調整式の場合はすき間の調整を行って制動力を確保します。
ディスクブレーキを採用している車両では、ブレーキディスクとブレーキパッドの状態を点検します。ブレーキディスクとパッドの間のすき間が適切か、パッドの残量が十分にあるかを確認し、パッドの偏摩耗やディスクの摩耗・損傷がないかもチェックします。
パッド残量が少ない場合は交換を、ディスクに歪みや摩耗が見られる場合も必要に応じて研磨や交換を行います。
走行装置としてタイヤおよびホイールの点検も重要です。
タイヤは空気圧が適正か、溝の深さが十分か、ひび割れや損傷がないかをチェックします。また、4本のタイヤの摩耗状態を確認し、偏った磨耗がないかを見ます。
ホイールについては、ナットやボルトの緩みがないか、ホイール自体に損傷や変形がないかを点検されるでしょう。
マニュアルトランスミッション車の場合、クラッチの点検も行います。
クラッチペダルの遊びや、クラッチが完全に切れたときの床板とのすき間を確認し、適正な範囲にあるかをチェックします。クラッチの切れ具合を確かめ、異常なすべりや引きずりがないかも点検されるでしょう。
必要に応じてクラッチワイヤーの調整やクラッチ液の補充を行います。
トランスミッションおよびトランスファーの点検では、主にオイルの量や漏れを確認します。
マニュアルトランスミッション車ではミッションオイルの滲みや漏れ、オイル量の不足がないか点検するのです。オートマチック車でもオイルパンやシール部分からのATフルード漏れがないか確認します。
トランスファー装置についても同様に、オイル漏れやオイル量の点検が行われます。
プロペラシャフトやドライブシャフトの点検も実施されます。
プロペラシャフトでは、連結部のボルトの緩みや、ユニバーサルジョイント部にガタつきがないかを確認します。
ドライブシャフトでは、ジョイント部を保護するゴム製のブーツに亀裂や破れがないかをチェックするのです。ブーツが破れてグリスが漏れていると、ジョイントの寿命に関わるため重要な点検項目です。
エンジンの点火装置も点検項目に含まれます。点火プラグの状態を抜き取り点検して、電極の摩耗や汚れ具合を確認するのです。必要に応じて清掃や交換を行います。
また、古い車種では、ディストリビュータキャップやプラグコードの劣化具合も点検されるでしょう。点火時期については近年の車は電子制御のため基本調整不要ですが、エンジンの調子を確認する一環としてプラグの状態から判断します。
バッテリーの状態確認も欠かせません。端子部の接続状態を点検し、緩みや腐食があれば清掃・締め付けを行います。バッテリー液が減っている場合は補充が必要です。
バッテリー上がりの兆候がないか電圧を測定し、必要に応じてバッテリーテスターで性能を診断します。
エンジン本体の点検では、エンジン周辺からのオイル漏れや異音の有無などを確認します。
シリンダーブロックやシリンダーヘッド周囲にオイルの滲みがないか、エンジンを始動して異常な振動や音が出ていないかを点検します。
また、エンジンマウントの状態も視認できる範囲でチェックし、必要があれば整備を検討されるのです。
エンジンの潤滑装置に関する点検では、エンジンオイルの量と汚れ具合、漏れの有無を重点的に確認します。
オイルレベルゲージで適正量が維持されているか、オイルフィラーキャップ付近にスラッジが溜まっていないかなどをチェックします。
オイル漏れについては、オイルパンやフィルター取り付け部からの漏れがないかを見られるでしょう。
オイルの汚れや交換時期に達している場合は、このタイミングでオイル交換を行うことが推奨されます。
エンジンの冷却装置では、冷却水の量や漏れを点検します。リザーバータンク内の冷却水が適正な量にあるか、足りなければ補充します。
また、ラジエーターやホース類からクーラント漏れが発生していないかを確認するのです。ホースバンドの緩みやホースの劣化がないかも点検し、異常があれば交換が必要です。
冷却ファンの作動やサーモスタットの機能も含め、冷却系が正常に働いていることを確かめます。
排気系統では、エキゾーストパイプやマフラーの取付状態と損傷の有無を点検します。
車体下に潜り、排気管やマフラーが緩んでいないか、吊りゴムが劣化していないかを確認します。また、排気漏れを起こす穴や亀裂が排気管やサイレンサーにないか、遮熱板がしっかり固定されているかもチェックするのです。
異常が見つかれば排気漏れの補修や部品交換が必要です。
燃料装置の点検では、燃料漏れがないかを中心に確認します。
エンジンルーム内の燃料配管や接続部からガソリンが滲んでいないか、燃料タンクや燃料ホースに損傷がないかを点検されるのです。
燃料漏れは火災など重大な事故につながるため、入念にチェックします。古い車では、ホースの劣化による漏れがないか注意が必要です。
上記のほか、法定12ヶ月点検では灯火装置や視界を確保する装置の点検も行います。
具体的には、ヘッドライトやブレーキランプ、ウインカーといった灯火類が正常に点灯・点滅するか、レンズにひび割れや汚れがないかを確認します。
ワイパーやウォッシャー液も視界確保に重要な要素です。そのため、ゴムの拭き取り性能やウォッシャー液の噴射状態を点検し、必要であればワイパーゴムの交換や液の補充を行います。
ホーンが正しく鳴るか、スピードメーターや警告灯類が正常に作動しているかも合わせてチェックされます。
比較的安価に抑えられるのは、民間の認証整備工場や車検専門店、カー用品店です。これらの業者でも国家資格を持つ整備士が点検を行うため、基本的な品質は確保されています。料金設定がディーラーより低めで、割引キャンペーンなどが行われることもあります。
また、ガソリンスタンド併設の整備工場などでも法定点検を受け付けており、価格競争がある分コストを抑えやすいでしょう。
1年点検を受けられる場所
1年点検は車を購入したディーラーはもちろん、それ以外の様々な場所で受けることが可能です。
ここからは、1年点検を受けられる主な場所を紹介します。
メーカー系ディーラーでは、自社ブランドの車に精通した整備士が点検を行います。純正部品を用いた確実な整備が期待できますが、高額です。新車購入時の特典で初回1年点検が無料になることもあります。
国の認証を受けた民間の整備工場でも法定点検を受けられます。ディーラーと比べて費用が抑えられることが多く、地元に密着したきめ細かい対応をしてくれるメリットがあります。
車検のコバックなどの車検専門チェーン店やオートバックス・イエローハットといったカー用品店でも12ヶ月点検サービスを提供しています。短時間・低価格を売りにしているところもあり、予約なしで対応してもらえる場合もあります。
一部のガソリンスタンドには認証整備工場が併設されており、オイル交換の延長で12ヶ月点検を依頼できることがあります。給油ついでに点検できる手軽さはありますが、設備や技術力は店舗によって差があります。