車に乗っていると、ちょっとした不注意で壁や柵などと接触したり、飛び石が当たったりしてボディに傷やへこみができることがあります。
傷やへこみが入っている中古車は、きれいな中古車より売却額が下がってしまうイメージがあるかもしれません。しかし、どれぐらい売却額に影響を与えるのかを正確に把握している方は少ないでしょう。
そこで今回は、中古車買取における傷やへこみの査定基準について詳しく解説していきます。
中古車の傷が売却額に与える影響と高く売却する秘訣
中古車買取の査定基準やポイントは多岐に及びますが、基本的には新車の状態を「満点」とし、そこからダメージを負っている部分や劣化している箇所を「減点」していくことで、最終的な売却額が決まります。
そして、車に入っている傷やへこみは目で見える明らかなダメージや劣化になるため、買取査定時に減点要素となることは確かです。しかし、全ての傷が減点要素に加えられるわけではありません。
傷の種類や大きさなどに応じて上手に買取業者を選択すれば、傷やへこみが多く入っている車でも高く売ることが可能です。
そもそも中古車に傷が入っているのは当たり前!
新車から数年経過している中古車に傷やへこみが入っているのは、至って自然なことです。そのため、買取業者は年式と走行距離を確認した時点で、ある程度傷が入っていて当たり前という考えで査定を進めていきます。
この大前提を知っておけば、これから説明する傷やへこみと車の売却額との関係性が分かりやすくなるでしょう。
前述した通り、車の買取査定は減点方式で行われます。外装に関しては、新車で傷がない状態から傷の深さ・形状・数などに応じて査定額が差し引かれます。
もっと詳しく言うなら、店頭販売が可能な見た目に持っていくためにかかる労力とコストの分、査定評価額が引き下げられることになります。
ただし、全ての傷が減点要素になるわけではありません。微細な線傷や洗車傷、素人には発見できないような場所に入っている傷やへこみに関しては、それほど影響が出ないとされています。
車のデザイン性や景観を損なわない程度の傷に関しては、たとえ入っていても大して労力やコストをかけずに買い取ったそのままの状態で店頭に並べて販売することができるため、減点要素に加える必要がなく、売却額に影響を与えることもないというわけです。
売却額に影響が出にくい傷について補足しておくと、新車時の外装がきれいな状態では目立つ傷であっても、年式が立つと自然に傷が入ってくるため目立ちません。
そして、プロである査定士から見ても、それが経年使用で入った傷か、ユーザーの不用意な取り扱いで入った傷なのかを判別できない程度の傷は「年式なりの傷」として査定が進みます。
この年式なりの傷は、その中古車の概要をチェックした時点で「入っていることが当たり前」と判断されています。そのため、売却額そのものには影響しない可能性も高いです。
反対に、年式にしては傷が少なくきれいな状態が保たれている場合は、転売時のセールスポイントとして使える加点要素と評価され、売却額がUPすることもあります。
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売却額が減額になる主な傷の程度や種類
全ての傷やへこみが売却額に影響を与えるわけではないということを説明してきましたが、そうなると自分の車の傷は査定額にどれほど影響を与える傷なのか気になる方もいるでしょう。
そこでここからは、どのような傷が減額として評価されてしまうのか、その程度や種類について1つずつ解説していきます。
線傷とは、薄く細く糸を引くようにボディについてしまった線状の傷のことです。
他の傷と比べてドライバーが気付かない時に入ってしまうことが多く、主な原因として以下のような時が挙げられます。
- 予備洗浄が不十分だった洗車
- ワックスに含まれるコンパウンドによる研磨
- 道路にはみ出した小枝との接触や飛び石によるもの
線傷は入りやすく防ぐことも難しいですが、そもそも目立ちにくいのでさらに目立たなくすることも比較的容易です。そのため、程度が軽く範囲も狭ければ、「年式なりの傷」と判断され売却額に影響が出ないこともあります。
ただし、線傷を目立たなくするにはコンパウンドでの研磨が必要です。慣れない方が不用意に行うとかえって線傷を増やしたり、悪化させてしまったりすることがあります。
特に、ボンネットの中央など目立ちやすい場所に広範囲にわたって線傷が入っている場合は、目立たなくするのにそれなりの技術・手間・コストがかかるため、その分マイナス査定される可能性があります。
ひっかき傷は、線傷と形状や入ってしまう原因も似ていますが、線傷よりやや深く幅も広めで塗装面が爪でひっかかれた跡のように剥がれてしまっている傷を指します。
こすり傷は、縁石や車輪止め、壁やガードレールなどに車が接触してすれてしまった時にできてしまう傷です。
いずれも、「ゴリッ」「ガリッ」などといった音を伴うため、運転中に傷が入ったと自覚がある方も多いでしょう。
線傷と異なり、塗装面が傷ついていることが多いため、特に下地が見えているほど傷が深い場合、目立たなくするためには再塗装をしなければなりません。
また、深く広範囲にわたるひっかき傷やこすり傷の場合は、入ってしまった場所に関わらずどうしても目についてしまいます。そのため、線傷では問題視されないような場所でも、減額ポイントに加えられる可能性が高いです。
へこみ傷は、ボディ面にへこみを伴う傷で、壁や塀など硬く重い物体に車が衝突したり、車にぶつかってきた時に生じる傷です。
へこみ傷が入ってしまった場合、他の傷も併発していることが多いため、へこみを板金作業で元に戻したのち、傷の部分を研磨・再塗装などで目立ちにくくする二重の手間とコストがかかります。
また、大きなへこみ傷が入っている場合、例えばドアがへこむとウィンドウが開閉しづらくなるなど、へこんでいる箇所全体がひずみ、景観だけではなく静粛性・耐久性・機能性など車そのものの性能が低下する場合もあります。そのため、傷の中でも最も減額幅が大きくなります。
傷の程度や種類による減額幅の目安
ここまで、どのような傷が査定額に影響を与えるのか説明してきました。
次に、車に入った傷やへこみが具体的にいくらぐらい売却額を下げてしまうのか、傷の程度や種類による減額幅の目安を見ていきましょう。
車種やグレードによって異なりますが、車のボディ塗装は以下の「3層構造」になっています。
- 塗装のベースとなりサビを防ぐ効果もある「下地層」
- その車のカラーリングを決定する「中塗り・上塗り層」
- 塗装の酸化や劣化を防ぎつつ光沢を出す「クリア層」
このうちクリア層でとどまっている傷(洗車傷などの線傷で爪に引っかからない程度のごく浅い傷)は、年式なりと判断されて減額対象にならないケースもあります。
ただし、ボンネットなどの目立つ場所に広範囲にわたって入っている場合は、1ヶ所当たり5,000円程度の減額対象となることがあります。
また、白・黒・赤などのカラーリングの車はクリア面に入った傷が目立ちやすい上に、減額幅も他のカラーリングより大きくなるため、メンテナンスや管理には注意が必要です。
爪にかかるほどの深い線傷やひっかき傷・こすり傷などで、「クリア層」を超え「中塗り・上塗り層」までダメージが及んでいる場合は、再塗装が必要になります。
そのため、再塗装にかかるコスト分が売却額から減額されますが、それでも1cm未満の小さい傷であればさほど影響はありません。しかし、それ以上の大きさになると査定での減点対象となります。
厳正な中古車査定の実現を目指す第三者団体・日本自動車査定協会によって、以下の通り減額基準が定められています。
- 傷の大きさがカードサイズ未満 …約1万円の減額
- 傷の大きさがA4サイズ未満 …約1万~2万円の減額
- 傷の大きさがA4サイズ以上 …約2万~4万円の減額
ただし、これはあくまでも指針であり、法的な拘束力・強制力があるわけでもありません。そのため、買取業者の判断でこれ以上減額されることもあれば、減額されないこともあります。
また、高級車や限定カラーの車、傷が「下地層」まで達しサビが発生している車は、上記の基準より減額幅が大きくなることもあります。
車に入ってしまった傷の中で最も減額幅が大きくなるのが、へこんでいて板金作業が必要となる傷です。
その理由は、板金作業には塗装以上の高い知識と技術が必要で、多くのコストと時間がかかってくるからです。
板金が必要となるへこみ傷に関しても、日本自動車査定協会において、以下の通り大きさごとの減額基準が定められています。
- 傷の大きさがカードサイズ未満 …約2万~5万円の減額
- 傷の大きさがA4サイズ未満…約2万~8万円の減額
- 傷の大きさが当該パネルの半分以上 …約7万~20万円の減額
ただし、板金作業はかかるコストの大半を業者の判断次第で決まる人件費(工賃)が占めるうえ、自前で完結するところと外注しなければならないところでコストが変化します。そのため、塗装のみで済む傷より、業者による減額幅の差が激しいのが特徴です。
なお、傷が激しくボディにひびや割れが発生していて、板金では修復ができず、パーツ交換が必要となる場合もあります。このケースでも当然大きく売却額は減額されますが、どの程度減額されるかは破損している箇所や交換するパーツによって異なります。
傷が入った車を高く売る秘訣と注意点
前述した通り、車に傷が入っているとその程度や種類によって買取査定額から減額されてしまうことがあります。ただし、ポイントを押さえておけば、傷が入った車でも高く売ることは十分可能です。
そこでここからは、傷が入った車を高く売る秘訣と、気を付けておくべき注意点をいくつか挙げていきます。
年式・車種・グレード・装備・カラーリングなど、その車の素性に関する査定基準は、それほどどの買取業者でも変わりません。
一方、傷に対する評価は、買取業者はもちろん、その車を実際に目で見て査定を行う担当者単位でも異なります。
ある買取店から派遣された査定士が、基準に基づいて「3万円減額」と判断しても、別の買取業者の査定士は「1万円の減額でいい」と判断するケースもあります。
また、買取業者の多くは中古車販売も手掛けています。店の在庫を充実させるため、どうしても買い取りたい車種であれば多少の傷には目をつぶり、ライバル店に競り勝とうとしてくることもあるでしょう。
そのため、愛車を少しでも高く売りたいのであれば、買取店を1つに絞り込むのではなく、複数の業者に査定を依頼して、それぞれの見積もり(傷への評価)を比較することが大切です。
買取業者では、車の傷を目立たないように修復してから「売れる車」「売りやすい車」に商品化するため、その時にかかるコスト分をマイナス査定します。そのため、傷の程度や種類によって減額幅は異なります。
わかりやすく言うと、時価評価額100万円の車に修復コスト10万円の傷が入っている場合、その買取額は90万円になるというわけです。ただし、この「修復コスト」が業者によって異なります。
修復を全て外注に頼っている業者は10万円のコストがかかったとしても、板金・塗装工場を併設していて修復を自前で済ませられる業者は7万円しかかからない場合があります。
つまり、傷の程度が同じでも、前者より後者のほうが車を高く買い取ってくれる可能性があるというわけです。
特に傷の程度が重く範囲が広くなるほど修復コストの差も大きくなるため、板金・塗装工場を併設しているか否かは意識しておいたほうがいいでしょう。
傷の入っている車は修復コストがかかる分、減額査定されると前述しましたが、ここで言う「修復コスト」とは、あくまでも業者が支出する「原価」です。
そして、一般ユーザーが板金・塗装業者に修理に出した時にかかる費用は、当然ながらこの「原価」を上回ります。
つまり、査定前に修理に出して高く売れたとしても、修理前との差額が修理にかかる費用を超えることはほとんどありません。そのため、結果的に損をする可能性が高いです。
また、コンパウンドによる傷隠しやタッチペン・スプレーなどを用いてのDIY塗装をしようと思っている方もいるかもしれませんが、やめておいたほうが無難です。下手にDIY修復するとかえって商品化に経費と手間がかさみ、その分減額幅が大きくなってしまう可能性もあるからです。
車の売り時はいつ?タイミングを誤ると損することも!
結論!傷が入った中古車でも高額売却をあきらめないことが大切
傷やへこみが多少入っている車でも、買取業者ごとにその評価は異なり、減額幅の小さい業者に当たれば高く売れる可能性があります。
また、海外ではボディに入っている傷をさほど気にしないユーザーも多いため、走行性能に問題がなければ海外輸出用として好んで買い取る業者もたくさん存在します。
傷が入った中古車でも高額売却をあきらめず、複数の業者に査定をお願いしてみましょう。