車を買い取ってもらう際に「事故歴があると買い取ってもらえるのか?」「査定額が大幅に下がってしまうのではないか?」など不安なことがあるかもしれません。
実際、状況によって査定額が下がってしまうこともありますが、買取業者の選択や方法によって、高価買取をしてもらえる可能性もあります。
この記事では、車に事故歴があると買い取ってもらえるのか、事故歴と修復歴の違いや買い取ってもらうためのポイントについて詳しく解説していきます。
事故歴がある車は買取ってもらえるの?
「事故歴がある車は買い取ってもらえない…」と思うかもしれませんが、車の買取業者にはそれぞれ得意分野があるので事故車に強い買取業者も存在します。
車が走行不能な状態であっても、使える部品を再利用することで利潤を得る業者があるので、動かない車にも価値があり、買い取ってもらうことが可能です。
買取に出す際は、業者に見積もりを取ってもらうことをおすすめします。また、1社だけではなく、複数の買取業者に見積もりを依頼しましょう。
その理由は、業者によって車の価値に相違があるからです。中古車市場での相場もありますが、業者のニーズはそれぞれ異なりますので、高く買い取ってもらえるケースもあります。
まずは事故歴がある車であっても、買取業者に相談してみることが大切です。
事故歴と修復歴の違いについて
事故を起こした車の場合、事故車として扱われる可能性が高くなります。ただし、中古車業界で重要視されるのは事故歴ではなく、修復歴であることが多いので、その点を知っておくと良いでしょう。
ここからは、事故歴と修復歴の違いについて査定面も踏まえて詳しく解説していきます。
事故歴は、車が自然災害の被害を受けたり、事故を起こした(貰い事故に遭った)履歴のことを指します。車が損傷した時には事故歴としてみなされるため、事故車として扱われます。
自然災害で受けた損傷のような、こちらに非がない場合であっても事故歴になってしまう点は注意が必要です。
修復歴がある車のことを「修復歴車」と言います。
修復歴があると判断されるのは、車の骨格部分を修理・交換した場合です。その骨格部分とは、以下の部位になります。
- フレーム(サイドメンバー)
- クロスメンバー
- インサイドパネル
- ピラー
- ダッシュパネル
- ルーフパネル
- フロア
- トランクフロア
- ラジエータコアサポート
(参考:財団法人日本自動車査定協会)
上記の骨格部位に損傷があると走行に不具合が生じやすいため、修理を行ったとしても販売する際は「修復歴あり」として告知することが義務付けられています。
もし、購入する中古車が修復歴車であれば、状況をしっかり確認してから購入することが大切です。
修理の有無を調べる方法としては「点検記録簿」があります。これは「定期点検記録簿」や「分解整備記録簿」とも言われており、整備工場が12か月点検や24か月点検を行った際の作業内容や整備内容が記録されています。
しかし、点検記録簿には修復歴が記載されているわけではないので、自分で車の外見を確認して歪みがないか観察することも大切です。もし不安であれば、販売業者には告知義務がありますので、査定書などを保管していれば確認できるでしょう。
修復歴は骨格部位の損傷が基準になるため、事故を起こして修理したとしても全てが修復歴車になるわけではありません。
修復歴車は安全性も考慮して査定額が大幅に下がりますが、修復歴に該当しない損傷については、大きく査定額に影響しないでしょう。
修復歴に当たらないケースは具体的に以下のような場合です。
- バンパーの交換
- ドアのへこみを修理
- サイドミラーを交換
- フロントガラスの傷を直す
- 傷の塗装修理
ただし、ドア部分に関しては骨格部分になるピラーを修復していると修復歴車になります。もし自分で判断できない場合は、査定の際に修理箇所などを伝えておくと安心です。
一般的に交通事故で損傷を受けやすいのは、以下の部位です。
- バンパー
- ロアスカート
- ボンネット
- フェンダー
- サイドシルパネル
- フロントガラス など
上記の部位は車の骨格部分ではないため、修理をしたとしても修復歴車として扱われることはありません。
修復歴がある車は、車に重要な骨格部分を損傷しているため、査定額は大幅に下がると考えておきましょう。
その理由は、骨格部分の修理をしっかり行ったとしても、走行性能に不具合が出てくることがあるからです。具体的には、まっすぐ走行している状態であっても微妙に曲がってしまうなどのケースです。
そのため、車に修復歴があれば安全面に不安がある状態なので、査定額は下がってしまいます。
車の買取査定を依頼する際、事故歴や修復歴がある時は業者に伝えておくことが賢明です。もし修復歴があることを伝えないと「契約不適合責任」に問われることがあります。
契約不適合責任とは、納品された車に関して契約内容と相違がある場合、買主に対して売主が責任を負うことです。
以前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていましたが、2020年4月に民法が改正されて名称が変わりました。
車を買い取ってもらう時は、査定士がしっかりと車の状況を確認して査定額を算出します。そのため、修復歴があることを見逃すことはほとんどないのが現状です。
しかし、売却の際に伝えていないことによって、査定額が後から減額されたり、損害賠償請求されたりするケースもありますので、事故歴や修復歴があることは買取業者に伝えておきましょう。
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事故の責任が相手側にある時の対処法
事故を起こしてしまったが、自分の責任ではなく相手側の過失による事故の場合もあるかもしれません。例えば、自分の車を停車していた時に追突事故をされた時です。
このケースでは、修理費用に関しては自動車保険で支払われますが、修復歴がある場合、評価損の保証があるわけではありません。そのため、事故にならなければ評価されていた金額が受けられないことになってしまいます。
このような状態であれば、事故減価額証明書を発行してもらうことで、相手側の保険会社に評価損分を請求することもできます。しかし、過失割合にもよりますので詳細の確認は必要です。
ここからは、事故減価額証明書について詳しく解説していきます。
事故減価額証明書とは、事故などによって修復歴となってしまった車の評価損分を証明する書面のことです。一般財団法人日本自動車査定協会によって発行されます。
この証明書があれば、評価損を埋められる可能性があります。しかし、修復歴に当たらない車は事故減価額証明書の対象外になるので注意しなければなりません。その場合、発行してもらえないケースもあります。
ただし、修復歴車として扱われないことを証明できますので、買取査定の際に大幅な減額をされることはないでしょう。
評価損を利用するとよいのは「走行距離が短い車」「年式が新しい車」「人気の車種」です。こういった車は中古車市場でも需要があり、車を売る際、修復歴によって査定額に影響を与えやすいため、評価損を認められやすいでしょう。
事故減価額証明書を発行する際、必要書類や手続きの流れは以下の通りです。
- 自動車検査証(車検証)
- 自賠責保険証
- 整備手帳(保証書)
- 取り扱い説明書
- 修理見積書の写し
- 査定する車(エンジンを始動させるため、車の鍵も必要)
- 日本自動車査定協会に問い合わせを行う
- 事故内容の詳細を説明する
- 査定してもらう日時を設定する
- 指定の日時に査定する車を持ち込む(出張査定してもらう)
- 査定時間は30分程度で完了
- 後日、事故減価額証明書が送付される
(参考:日本自動車査定協会)
日本自動車査定協会は、第三者機関として公正な立場で証明することが目的であるため、示談交渉には関与することはありません。そのため、事故減価額証明書を発行してくれますが、保険会社との評価損の交渉は行われないという点は注意しておきましょう。
事故減価額証明書を発行した際は、相手側の保険会社に請求することができます。しかし、自分で保険会社と交渉を行うことは難しく、評価損の補償を拒否される場合も多いでしょう。
保険会社に対して保険金の支払交渉を行う際は、評価損に関する証拠を充分揃えてから臨む必要があります。そのため、精通している弁護士に相談すると良いでしょう。
もし自分の自動車保険に弁護士費用特約が付いているのであれば、利用するのも一つの方法です。
弁護士費用特約とは、交通事故を起こして相手方と示談交渉を行う時に、弁護士に依頼する費用を限度額内で保険会社が支払ってくれるものです。それ以外にも、着手前の弁護士相談料も補償されます。
物損事故の場合、損害額がそれほど大きくならないケースもあります。実際、弁護士費用を支払って損害賠償請求を行ってもリターンが多くならず、弁護士費用が高くなってしまう「費用倒れ」になってしまうことも考えられます。
そんな時に、弁護士費用特約を利用することで、弁護士費用の自己負担をかからない状態にできる可能性が高く、費用倒れになる心配もなくなります。
事故歴がある車を買取ってもらうためのポイント
事故などで、車に傷やへこみができてしまうこともあるでしょう。そのような車を買い取ってもらう時に注意する点はあるのでしょうか?
ここからは、事故歴がある車を買取ってもらうためのポイントについて詳しく解説していきます。
ポイントの1つ目は、修理をせずに売却したほうが良い場合があるということです。
車の状況にもよりますが、骨格部分ではない箇所に傷やへこみを作ってしまった時は、そのまま買い取ってもらう方がトータルとして買取額が高くなるケースがあります。
例えば、バンパーの傷やドア部分にへこみがあったとしても、修復歴として記載されることはありません。そして、その部分を修理して綺麗にしたとしても修理する金額より査定額が引き上がることはないでしょう。
車買取業者によっては、そのような修理を一般的な業者に比べて安価にできる場合が多いため、査定額を引き上げるために修理をしてもかえって損をしてしまう可能性があります。
また、傷やへこみを自分で修理することでさらに状況が悪化してしまい、査定額が下がるケースもあります。修理するのが不安な場合は、そのままの状態で売却するのが良いでしょう。
ポイントの2つ目は、複数の業者に査定見積もりの依頼をすることです。
査定額を複数出してもらうことで、競合させることができます。そして、その中で高価買取してもらえる業者に売却するのが良いでしょう。
車種やメーカー、損傷の状況によって、買取業者は得意分野があります。査定額は中古車市場の需要によって決まりますが、買取業者の再販売する流通ルートによっても価格は変動します。
もし特定のメーカーを中心に再販売している時は、そのメーカーの車を高価買取するような場合もあります。そのため、複数の業者に査定依頼を行うことは、高価買取をしてもらえる可能性が高くなると言えるでしょう。
ただし、複数の買取業者に依頼すると業者からの連絡が多くなりますので、一括査定で行う際には注意が必要です。複数の業者に依頼するとしても、ある程度絞り込んで個々に依頼することをおすすめします。
ポイントの3つ目は、修復歴車であれば買取実績が多い業者に依頼することです。
修復歴車は安全性に影響があるため、日本の中古車市場では査定額が大幅に下がってしまうでしょう。しかし、車買取業者の中には海外に中古車を販売している業者も多数あります。
海外では、国によって修復歴車であってもあまり問題視しない地域もあります。そのような販売網を持っている買取業者は、修復歴があったとしても査定額が最低限の引き下げになることもあります。
さらに、海外では「日本車は故障しにくく壊れにくい車」という認識が強く、人気が高いため、日本では売れなくても海外では売れることが多いです。
修復歴がある車であっても、海外の買取実績が多い業者であれば、高価買取してもらえる可能性が高いでしょう。
ポイントの4つ目は、事故歴や修復歴のある車であっても使用できるパーツがあれば買取ってもらえることです。
再販売を目的としている車買取業者の場合は、事故車の買取を積極的に行わないかもしれませんが、使えるパーツを再利用して販売する買取業者であれば、動かない車であっても部品としての価値を生み出すことができるため、買取を積極的に行ってくれます。
実際、廃車専門業者が買取する目的は、車のパーツや金属部分を資源として扱っているからです。そのため、自分の車がどのような状況であるか知った上で適切な買取業者に依頼することも、高価買取をしてもらえる一つの方法です。
走行に支障がない車は中古車販売業者に、走行に支障がある車は廃車専門の買取業者に依頼するのが得策と言えます。事故歴や修復歴があったとしても安易に業者選びを行わず、慎重に選択していくと良いでしょう。