車を購入すると、費用の明細に「リサイクル預託金」という項目があるのに気づく方も多いかもしれません。
購入した車が廃車となった際、リサイクルや処分をするのにも費用がかかっています。自動車リサイクル法という法律が施行され、リサイクルにかかる費用は車の所有者が負担することになっています。
では、購入時に支払ったリサイクル預託金は、車の売却で手放す際に返金されるのかについて確認していきましょう。
車のリサイクルには費用がかかる
車は廃車となっても、使えるパーツが残されていれば取り外して再販することができます。また、鉄やアルミなどの金属が使われており、有用な資源として再利用することも可能です。
そのため、廃車となった車は使用済み自動車として解体業者を通じて、必要な素材やパーツが取り出されます。その後に残る「シュレッダーダスト」と呼ばれるクズは粉砕業者によって処理されます。
こういった一連の使用済み自動車のリサイクルには費用がかかります。
自動車リサイクル法について
廃車となった車をリサイクルし、その後に残るシュレッダーダストを適正に処理するには費用が必要となります。
以前は使用済み自動車を解体業者が引き取り、必要な素材を取り出してから粉砕業者が廃棄物処理し、処分場に埋めていました。
しかし、車の普及とともに使用済み自動車の台数が増加し、処分場が不足する事態となりました。その結果、廃車の不法投棄が急増していったのです。
また、車のエアコンで使われるフロンガスや、不法投棄された車から流れ出た有害物などが環境破壊につながっていることも問題視されました。
廃車の処理が適正に行われるようにするために、自動車リサイクル法が制定され、2005年から施行されています。
自動車リサイクル法では、車のリサイクルにかかる費用は車の所有者が負担することが規定されています。
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自動車リサイクルの流れ
ここでは、車がリサイクルされる流れを見ていきましょう。
- 使用済みとなった車は、引取業者に引き渡されてからフロン類解体業者に渡し、カーエアコンで使用されているフロンガスなどを回収する(フロン類を回収するのは自動車メーカー)
- フロン類が抜かれた車は解体業者に引き渡される
- ドアやハンドルなどのリサイクルできるパーツや素材などを取り除く
- エアバッグも取り外し、自動車メーカーに渡す
- 破砕事業者に引き渡された車は、機械で破砕してから鉄などの金属を回収する
- その際に回収したシュレッダーダストを自動車メーカーに引き渡す
- 自動車メーカーのもとに集まったフロン類、エアバッグ類、シュレッダーダストは適正な方法で安全に処理される
リサイクル預託金の内訳について
リサイクル預託金は、シュレッダーダスト料金、フロン類料金、エアバッグ類料金、情報管理料金、資金管理料金の5つの項目に分けられています。
それぞれどういった用途で使われているのか、見ていきましょう。
まずフロン類やエアバッグ類が使用済み自動車から回収されます。さらに鉄などの有用な金属や素材、エンジンなどのパーツを取り外した後に残った樹脂やゴムなどのクズがシュレッダーダストです。
シュレッダーダストは燃やすことで熱源となったり、原材料に戻したりして、できる限りリサイクルすることで最小限の量に押さえます。
こういった処理にかかる費用がシュレッダーダスト料金です。処理を担う自動車メーカーや輸入業者が料金を設定しています。
エアコンには、暖かい空気を冷やすためにフロンガスが使用されています。フロンガスは温室効果ガスの一つであり、空気中に大量に放出されるとオゾン層を破壊し、地球温暖化の恐れがあるということで規制されています。
エアコンが装備されている車には、フロンガスも搭載されており、廃車にする際はフロン類を取り出し、指定された施設で適正に熱処理しなければなりません。
そのフロンガス処理にかかる費用がフロン類料金になります。フロンガスの回収、処理も自動車メーカーや関連会社が担います。
自動車リサイクル法でエアバッグ類というのは、エアバッグとシートベルトのプリテンショナーが含まれます。
シートベルトのプリテンショナーとは、車が衝撃を受けた際に瞬時にシートトベルトを巻き取り、乗車員の体を固定して衝撃から身を守るための装置です。
エアバッグは爆発性があり、シートベルトプリテンショナーはガス発生器が使用されていて危険なため、回収対象となっています。自動車メーカーが引き取り、指定業者に引き渡します。そして、残った金属部品は資源としてリサイクルされます。
エアバッグ類を分解し適正に処理するには専門技術が必要です。その上、費用もかかるためエアバッグ類料金として負担することとなっています。
自動車のリサイクルにかかわる業務は、公益財団法人自動車リサイクル促進センターが担っています。使用済み自動車の適切な処理の推進や、リサイクル預託金の適正な運用管理、制度の普及啓発などを担っている財団です。
使用済み自動車の処理にかかる情報を管理するために、電子マニフェストシステムを導入しています。さらに、外部からの問い合わせに対応するためのコレクトセンターの運営も行っています。
電子システムやコレクトセンターを維持するために必要な費用として、リサイクル預託金には情報管理料金も加算されています。2023年5月時点での情報管理料金は130円です。
公益財団法人自動車リサイクル促進センターでは、リサイクル預託金の収受や管理、運用をするために費用が必要です。そのため、車の購入者からリサイクル預託金を収受して、車が廃車となるまで保管管理します。
そして、廃車となった車は適正に処理されていく段階で自動車メーカーや輸入業者などに、リサイクルにかかった費用を請求に基づき払い渡すという業務を行います。
この一連の業務にかかる費用が資金管理料金にあたり、リサイクル預託金に含まれています。2023年5月時点での資金管理料金は、新車購入時が290円、使用済み自動車引取時が410円です。
リサイクル品について
使用済み自動車から取り外されたパーツは、リサイクル部品として再販されることがあります。このリサイクル部品は「リユース品」と「リビルド品」に分けられます。
リユース品とは、取り外したドアやハンドルなどの部品に分解などの手を加えていない部品のことです。部品は目視や機器などを使った点検を行った後、きれいに洗浄されてから再販されます。
リビルド品とは、エンジンなどそのままでは再販できない部品に手を加えて再販する部品のことです。部品を分解洗浄し、劣化や摩耗したパーツを交換して修理し、機器などを使って点検し品質を確認してから商品として市場に出回ります。
新品の部品とほぼ同様の品質なのに低価格で手に入るので、リサイクル部品はとてもお得です。
リサイクル預託金を支払うとリサイクル券を受け取るので大事に保管しておきましょう。
リサイクル預託金は、車の購入時に支払うことになっています。既に購入費用に預託金が自動的に含まれているので、別途支払うことはありません。
中古車であれば、既に新車購入時に前の所有者が支払い済みだと考えられますが、前の所有者が車を売却した時に支払ったリサイクル預託金は返金されていることが多いです。
そのため、中古車であっても購入した場合は支払うことになっているので、購入費用に含まれていると考えられます。
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リサイクル券について
リサイクル預託金を支払うと、リサイクル券という書面がもらえます。これは、リサイクル預託金を支払った証明書になるので大事に保管しておきましょう。
リサイクル券は、A券、B券、C券、D券の4つの券で構成されています。
A券は預託証明書です。
シュレッダーダスト料金やフロン類料金など預託金の内訳の金額と合計金額が記載されています。そのため、預託金がいくらなのか確認することができます。
廃車にする際は、このA券を引取業者に渡します。
B券は使用済み自動車引取書です。
引取業者が使用済み自動車を引き取った際に、引取業者の登録番号や名称、所在地などの必要事項を記入します。
これは最終的な所有者に交付する書類なので、B券と必要書類を持参して運輸支局へ行けば廃車手続きができます。
C券は資金管理料金受領証です。
資金を管理する自動車促進リサイクルセンターが資金管理料金を受領したことを証明するものです。
D券は料金通知書兼発行者控えです。
リサイクル券の発行元である事業者の控えとなるため、D券は車の所有者が目にすることはありません。
リサイクル預託金の金額について
リサイクル預託金の金額は、車種によって変わります。
その理由は、フロン類やシュレッダーダストの量、装備されているエアバッグやシートベルトの数が、車種によって異なるからです。
リサイクル部品や廃棄物の量が多いと、その分リサイクル預託金が高くなります。その金額相場は以下の通りです。
- 軽自動車…7,000~10,000円
- 普通車…10,000~18,000円
- 中型・大型トラック…10,000~16,000円
- 大型バス…40,000~65,000円
自動車メーカーのサイトからリサイクル預託金の金額を調べることができるため、気になる方は確認してみてください。
ほとんどの車両が対象となっているリサイクル預託金ですが、対象外となっている車両も一部あります。
乗用車や貨物車、バスやトラック、消防車やパトカーなど、いわゆる特殊自動車は対象です。しかし、他の車に接続して引っ張るトレーラーなどの被けん引車や大型、小型特殊自動車は対象外となっています。
さらに、原付やサイドカーつきのタイプを含む二輪車もリサイクル預託金を支払わなくても良いと規定されています。
リサイクル預託金の返金について
リサイクル預託金は、車が廃車となった際のリサイクルや処分のために使われる費用なので、基本的に返金はされません。
しかし、車の所有者が負担する費用であるため、所有者が変われば返金されるべきだと考えられます。そのため、車を買取に出した際は自分が購入時に支払ったリサイクル預託金が返金される場合があります。
ただし、買取に出しても中古車にならず、廃車となってしまう場合は返金されないので注意しましょう。
車を買い取ってもらう際に、既に支払ったリサイクル預託金は車の買取価格に含まれているケースが多いです。
リサイクル預託金は次の車の所有者に引き継がれる仕組みになっています。そのため、購入時に預託金を支払った車を売却で手放す際は、次の所有者から返金してもらうというのは当然とも言えるでしょう。
ただ、査定時に提示された買取価格に預託金が含まれているとなると、預託金の金額が分かりにくいと感じる方もいるかもしれません。
例えば、買取価格が60万円の場合、60万円にリサイクル預託金が組み込まれているので、実際の車の買取価格は60万円以下です。
こういった場合は返金されているかどうか、買取の明細書で預託金の返金という項目があるかをきちんと確認しましょう。
車の買取金額と分ける形で、リサイクル預託金を支払ってくれる買取業者もいます。
売り手が預託金の返金を忘れていても、別途支払ってくれる業者なら、誠実に対応してくれるという良い印象を抱きやすいでしょう。
例えば、車の買取価格が60万円であった場合、預託金分が10,000円なら全部で61万円買取時に受け取ることができます。
ただし、買取金額と別に預託金を支払うとなると、事務手続きなどが面倒なので別途支払うという業者は少ないのが現状です。
車を手放したのに、リサイクル預託金が返金されないのは廃車にした場合です。
元々、リサイクル預託金は車を廃車し、登録抹消の手続きをして解体業者に引き渡され、適正に使用済み自動車として処理されるのに必要な費用です。
ただし、廃車となると一般的な買取業者では査定額がつかないでしょう。そんな時に廃車専門の買取業者に査定してもらって、価値があると判断されれば買取額がつくこともあります。しかし、その受け取る金額にはリサイクル預託金は含まれません。別途支払われることもないので、間違えないようにしましょう。
車を買取に出す時にリサイクル券は必要?
車を購入した際に発行されたリサイクル券は、車の買取や廃車時に必要です。買取業者や引き渡し業者などに渡さなければなりません。
リサイクル券はリサイクル預託金を納めているという証明になるので、必ず保管しておきましょう。
車を購入した時に車検証などと一緒にファイルに収納されているのが一般的です。助手席前のコンソールボックスや座席下の収納ボックスなどに入っていることが多いので、買取前に確認しておきましょう。
リサイクル券を紛失した場合は?
もしリサイクル券を紛失した場合であっても、買取時に相当額を返金してもらうことは可能です。ただし、失くしてしまったリサイクル券は再発行することはできません。
リサイクル預託金を納めているのは確かなので、それを証明するにはリサイクル券に変わる書類の準備が必要です。
インターネットで「自動車リサイクルシステム」と入力して検索すると、リサイクル料金の支払い状況をチェックできるサイトが開けます。
「自動車ユーザーの方へ」、「リサイクル料金検索」をクリックしてください。車検証を見ながら車台番号などを入力し、「料金表示」をクリックすると「自動車リサイクル料金預託状況」が出力されます。
このページが預託証明書の代わりとなるので、印刷して提示すれば手続きができます。