教習所で路上教習を受ける前に行う日常点検は、免許取得後も安全運転をしていく為に必要なことです。
車の性能も高まり以前より壊れにくくなっていますが、車を長く使えるようにするためにも行っていきたいものです。しかし、どのようなことに気をつけたり、どの点検項目があるか忘れている方もいると思います。
今回は車の日常点検の項目と、そのやり方について詳しく解説していきます。
教習所の第2段階は車の点検から行われる
教習所で運転免許を取る為には、第1段階で場内で運転技能を習得し、仮免許を取ります。仮免許が取れると第2段階に入り、路上教習が始まります。
そこで運転前に実施することが「車の日常点検」です。路上運転にあたっての注意と路上運転前の準備を行います。
車を公道で運転することは、他の車も一緒に走行しているため、事前に車の状況を確認しておくことで安心して運転することができるようになります。今後、安全運転していくためにも車の点検方法は何があるのか説明しましょう。
車を日常点検するやり方のポイント3つ
車の日常点検で行う箇所はどこかというと、以下の3つになります。
- エンジンルーム内
- 車まわり
- 運転席
日々安全に走行するためにも毎日実施するのがベストですが、少なくとも1か月に一度は実施しておきたいものです。タクシーやバスなど事業用の場合は、使用前の日常点検が必須となります。
車を利用する時の点検はポイントを押さえて実施していきましょう。それでは、日常点検のやり方のポイント3つを詳しくお伝えしていきます。
車検付きメンテナンスパックは必要なのか?費用対効果を徹底解説!
ポイント1:エンジンルーム内の点検
まず、1つ目のポイントとなるエンジンルーム内の点検について解説していきます。
エンジンルーム内は車の心臓部ですので、点検箇所の5点を確認していきます。なかなかボンネットを開ける機会は少ないかもしれませんが、定期的に点検をすることで、急な故障等を未然に防ぐことにも繋がるでしょう。
特に重要視して見た方がいい箇所を紹介しますので、機械に苦手な方でも十分対応できるはずです。国産車であれば基本的に形状は似ているので、実際やってみるとそれ程手間もかからず行えます。
それでは、1つずつ解説していきます。
ウインドウォッシャー液は、フロントガラスやリアガラスを洗浄する液体です。一番見る頻度が高い箇所とされています。
カー用品店やホームセンターでも販売されているので、購入したことがあるという方も多いかもしれません。
寒冷地であれば、冬季の温度が低くなるため凍結しないように原液を利用することも多いですが、そうでなければ水で薄めて使用することも可能です。しかし、洗浄力は落ちてしまいますので、気をつけてください。
青色になっているウォッシャー液はタンクの中の残量がわかりやすくなっています。残量が少なくなっていれば適時入れておきましょう。
また、車のトランクに予備を常備積んでおけば、万一切れてしまったときにも安心できます。
バッテリーは、電気系を使う車にとって必要不可欠な部分です。バッテリーの補充液は過充電が行われていくと減る傾向があります。
寒冷地仕様のバッテリーは、それ以外の地域に比べて一回り大きい形状です。使用条件によってバッテリーの減りの早さは異なります。
日々運転しているときには発電もしているため、あまり影響を受けることはありません。しかし、週末のみ、もしくは短時間単距離でしか運転しない車の場合はバッテリーが上がりやすく、上がってしまった場合はエンジンがかからなくなることもあります。
補充液が減り、電極部分が空気にさらされると性能が落ちてしまうので確認しておきましょう。また、充電状況が目視できるように色で判断できる「のぞき窓」があるバッテリーもありますので、正常かどうか判断する指標にもなります。
エンジンルームの中にピンク色か緑色の液が入っている箇所が、冷却水です。「クーラント」ともいいます。
エンジンは高温になるので、それを冷却する為に必要な部分です。リザーブタンクを見て適切な量が入っていれば問題ありません。
冷却水がなくなるとオーバーヒートの原因になりますので、特に夏場は注意して確認しておきましょう。
エンジンオイル、はエンジン内部を円滑に動かす上で欠かすことができないものです。適量にオイルが入っているか確認します。
確認方法は、まずエンジンについているレベルゲージを引き抜きます。付いているオイルを拭き取ってから再度差し込んでください。それから再度引き抜き、レベルゲージに記された「Hi−Low」の間にオイル量が収まっていれば正常です。
極端にオイルが減っていたりする場合には、オイルパンから漏れている可能性もありますので、修理業者に点検してもらいましょう。
ブレーキは制御する上で重要な役割を担っています。ブ
レーキ液の入るタンクの外側には、上限下限のラインが引いてあります。その中にオイルが収まっていれば正常です。比較的エンジン内部の見やすいところにありますので、分かりやすいと思います。
プレーキ液が少なくなっている時は、原因としてブレーキパッドの摩耗や配管の損傷による漏れの可能性がありますので、注意が必要です。
ポイント2:車まわりの点検
2つ目のポイントは車まわりの点検です。
特に意識して点検しておくと良いところは、「タイヤ」と「ライト」です。タイヤは唯一路面と接している部分であり、ライトは走行するときに合図や周りを照らす上で必要なものとなります。
それでは、どのような点に気をつけて点検していけばよいか、解説していきます。
タイヤの空気圧の適正値はどのくらいなのか分からない…という方もいるかもしれません。わからなければ、運転席のドアを開けた部分にシールが貼られており、空気圧が記載されています。
目視したときに空気が減ってタイヤが潰れている状態であれば、直ぐに近くのガソリンスタンド等に行って空気を入れましょう。その時は適正値で入れることをおすすめします。
空気を入れる器具には空気圧を測定できる目盛りも付いているので、それを見ながら空気を足していきます。
また、タイヤの溝の深さもチェックしてください。タイヤにはスリップサインが記されています。そこを見たときに溝が適度にあるかどうかを確認します。
溝がない場合には、スリップの危険性も高まるため、早急にタイヤを交換しましょう。
タイヤは劣化してくると側面や接地面に亀裂が入ってくることもあります。年数は経っていなくても、車を頻繁に利用しないと車体の重さがタイヤにかかってきます。一定の場所に力がかかる状態なので、ヒビ割れなどを起こす要因となるのです。
また、タイヤの側面を何らかの場所で引っ掻いてしまったときにも注意が必要です。バーストの危険性が高まります。
タイヤ表面にネジや釘が刺さっているときには直ぐに抜こうとせず、ガソリンスタンド等に行って修理してもらいましょう。
タイヤの摩耗は、基本的に駆動する部分やエンジンが乗っているフロント部分(リアエンジンであればリア部分)から減っていきます。前輪駆動であれば、前側から摩耗します。
そのため、定期的にタイヤのローテーション(前後の入れ替え)をすることで、タイヤを長持ちさせることが可能です。日々の点検で様子を見ながら変える時期を考えましょう。
ヘッドライト、ブレーキランプ、テールランプ、ウインカーなど正常に作動するかの確認は、安全運転を行うときに必要です。
仮にブレーキランプが点灯しない場合には、後続車に知らせることができず、追突事故を引き起こすことにもなります。日常点検でも意識して取り組んでおきたいものです。
特に後部にあるブレーキランプやテールランプは知らないうちに切れていることも多いので、気をつける必要があります。
確認方法として、シャッターやコンビニなどの店舗の窓ガラスに反射させて確認することや、ブレーキ棒をブレーキペダルに置いて点灯しているか目視することもできます。
点検の際には汚れや損傷がないかも確認しておきましょう。
ポイント3:運転席に座って点検
運転席でも日常点検をする箇所があります。運転席周りは、実際に安全走行するときに操作をするところですので、不具合があると事故を起こすことにもなりかねません。
実際にどこを点検すればよいのか、ポイントを5つ解説していきます。
1つ目はパーキングブレーキです。車を安全に駐車するときに必要な部分となります。
近年のパーキングブレーキは、レバー式のものからベダル式に変わっている場合が多いです。
どちらも共通する点検方法は、レバー又はペダルをいっぱいに引いた(踏んだ)ときに引きしろ(踏みしろ)が適度になっているか確認するということです。特に少なすぎたり多すぎたりしていない状況であるか、チェックしましょう。
近年増えてきた電動タイプのパーキングブレーキは、自分自身で点検することが困難なので、プロに見てもらってください。
2つ目はブレーキぺダルです。
踏んだときに床との隙間がある状態が正常です。アクセルペダルとは違って硬い感触になります。踏みごたえがあれば問題ないでしょう。
感覚で確認できますので、運転する前に確認するようにしてください。
3つ目はエンジンのかかり具合です。
エンジンをかけたときにスムーズにかかるのであれば問題がありませんが、エンジンがかからない状態だとバッテリーが上がっていることも考えられます。
エンジンをかけた後はアイドリング状態になりますが、エンジンから異音が聞こえたり、エンジン回転数が不安定な状態である時は注意が必要です。
タイミングベルトが緩んでいたり、オルタネーター(発電機)の故障による音とも考えられます。その際は、早急に専門業者に見てもらいましょう。
4つ目はエンジンの低速部分と加速する状態を確認することです。エンジンを暖機させてみてから行います。
エンジンを徐々に加速させていきスムーズに回転数が上がれば正常です。その際、アクセルペダルについても踏んだときに引っかかりや動きに問題がないか、確認するようにしておくと良いでしょう。
5つ目はフロントガラスの状況確認です。
ウインドウォッシャー液を噴射したときに、フロントガラス方向に適度な高さであるかチェックします。また、ワイパーを動かしたときにきちんと動いているか、フロントガラスから水滴が取れる状態になっているかも確認します。
ワイパーゴムは劣化しやすく使用頻度も高い部分です。水滴の筋が付いてしまったり、ゴムの接地面と取り付け部分が切れてしまっている時は交換するようにしてください。
前方の視界が不十分であると悪天候の場合には危険です。視界の確保のためにも日常点検の中に取り入れて行きましょう。
車検付きメンテナンスパックは必要なのか?費用対効果を徹底解説!
車を日常点検する義務はあるのか?
日常点検する箇所を大きく3か所に分けて解説してきました。普段から実施することで、安全に走行することや車の寿命も呼ばすことも可能となりますので、この機会に行っていきたいものです。
日常点検は積極的に行っていきたいものですが、義務なのか知りたいという方もいるでしょう。車の点検というと「車検」と「法定点検」が浮かぶと思います。
次から「車検」「法定点検」も含めた日常点検の義務があるかどうかについて詳しく解説していきます。
車検は「自動車検査登録制度」が正式名称です。乗用車の場合、新車購入時の初回は3年後に、それ以降は2年ごとに行います。
2回目以降に車検を行う場合には「継続検査」とも言われます。車検証に記されているので、見ている方も多いかもしれません。
車検の役割は、安全性の確保や公害防止の為に点検・整備・検査を行い、国の保安基準をクリアしているかどうかチェックすることです。車検を通すことで公道を走ることが可能になります。
車検が切れたまま走行することは法律違反です。道路運送車両法違反になり刑事処罰の対象になり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
また、自賠責保険が切れていると自動車損害賠償保障法違反になり1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
車検切れによる違反点数は6点、自賠責保険切れの違反点数は6点、合わせて12点になりますので、免許停止を避けることはできないでしょう。
車検を行う際に自賠責保険と自動車重量税も同時に支払います。自賠責保険に加入していない場合、自動車保険は適用されません。
万一、車検切れの車で事故を起こしてしまった場合は、怪我をした相手に対して保障を受けることも出来ない状態になります。つまり、車検を受けることは、公道を走行するための義務ということです。
法定点検は車検と似ているように感じるかもしれませんが、目的は異なります。
法定点検は、車が故障をすることなく快適に走行するために確認する点検です。車検は保安基準に適合するかを検査していることに重点を置いていますので、車の走行性能を維持させていくためには法定点検は必要だと言えます。
法定点検は道路運送車両法第48条に規定されていますが、受けなかった場合の罰則規定はありません。そのため、12か月点検は受けない方も多いと思います。通常は24か月点検を受けます。それは車検時に行うことになるからです。
車は使用年数や走行距離によって消耗していく部分もあります。例えばブレーキパッド等は車検で通ったとしても、その後の走行ですり減ってしまい、安全に運転することが困難になるかもしれません。定期的に点検して車の状態を把握することで、この時期には交換が必要だということの指標になります。
法定点検の点検項目数は自家用車の場合、2年ごとに56項目あり、「点検整備記録簿」に点検結果と整備内容について記録されます。どの時期に点検をしたのか、消耗部品の交換はいつ行ったか知ることで、交換時期についても検討することが可能です。
自家用車であれば、点検整備記録簿は2年間保存することになります。実際、どのように点検をしたのか分かるカルテになっていますので、車の状況を把握する時に役立つことを考えると、便利でしょう。
バス、トラック、タクシー、レンタカー等の事業車に関しては、運行する前の日常点検は必須になっており、義務です。
その結果に応じて不具合がある時や不具合になる可能性がある場合、必要な整備を行わなければなりません。安全面を確保する上でも必要不可欠なことです。
また、法定点検も点検内容が自家用車とは異なっています。車種によっても異なりますが、3ヵ月点検・6ヵ月点検が義務付けられています。
法定3ヵ月点検の対象は、バスやトラックなどです。そして、事業用車両の維持管理を担う整備管理者は整備管理規定に沿って、業務を行う必要があります。
定期点検を怠ったり違反すると30万円以下の罰金になります。
点検項目については、バス、トラック、タクシー(事業車)、大型トラック(自家用)、レンタカー(乗用車以外)は47項目で、被けん引自動車は20項目です。
6ヶ月点検の対象は、中小型トラック(自家用)、レンタカー(乗用車)が22項目になっています。
やはり不特定多数の乗客を載せたり多数の荷物を運搬したりする業務用の車両に関しては、走行距離も一般の自家用車に比べて長くなり、車体の大きさから事故が起これば被害も大きくなります。点検の頻度が上がるのはそのためであり、安全面と社会的視点から考えても納得のできる内容と言えるでしょう。