目次
自動車保険の保険料は、様々な要素に基づき決められています。その要素の一つが「料率クラス」です。
この記事では、料率クラスの仕組みについて詳しく解説していきます。
自動車保険料を決める要素とは?
自動車保険の保険料は、契約車両の車種やグレード、運転者の範囲や年齢、免許証の色など様々な要素から判断しています。さらに、車の使用目的や走行距離なども保険料に関係していきます。
また、保険料の割引率の区分となる等級も保険料が決まる重要な要素です。他にも、基本補償のオプションとなる特約の付帯の有無も保険料に関係してきます。
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料率クラスとは?
自動車保険の保険料は、車検証に記載されている車の型式ごとに数字でクラス分けされている「料率クラス」も影響します。
車は装備や性能、形状や構造といったその特性によって事故の発生リスクに差が見られるため、料率クラスでは、その車の過去の事故状況、保険の支払回数や金額など様々な条件から数字でクラスを設定しています。
料率クラスの数字が大きくなると割引率も低くなるため、保険料は高くなります。
料率クラスの決め方は、車両の事故や盗難の発生率が指標となっています。
事故が多い車両はその分保険料の支払件数や支払額が多くなり、保険会社の損益に大きく影響を及ぼします。また、盗難被害に遭いやすい車両も同じく保険金の支払いに関係してきます。
事故や盗難の発生率が多い車両に関しては、料率クラスも高めに設定されているのです。
料率クラスを決める際は、過去における事故や盗難の発生率のデータが必要になりますが、新型車は過去データがありません。
そのため、車両の販売価格や似たような車種の料率クラスを参考にして過去の保険料の支払いデータなどをもとに決められることが多いです。
大体、料率クラスは2~8の間になるとされています。
料率クラスは各保険会社が個々に決めているというわけではなく、「損害保険料率算出機構」が、過去の事故実績や盗難実績などのデータをもとに決めています。
この機構は、損害保険業の健全な発達と保険契約者などの利益を保護する目的で1948年に設立された団体です。
ほとんどの保険会社は機構の会員となっており、算出された料率クラスの数字を自社の保険商品に取り入れています。
車の型式別の事故や盗難の発生率は一定ではなく、車の販売台数などによって年々変化します。
例えば、今年は全体的に事故が多かった車種でも、翌年は減る場合もあるでしょう。以前に既に決められた料率クラスのまま保険料がずっと同じとなると、保険料の負担が不公平になる可能性があります。
そのため、損害保険料率算出機構では年に1回、料率クラスの見直しを行います。前回の見直しから1年間の事故発生状況などのデータを車種、型式別に比較し、新たな料率クラスを設定しています。
料率クラスの項目について
料率クラスは、4つの項目で車の型式別に1~17までの数字で区分けされています。
4つの項目とは、自動車保険の基本補償である「対人賠償保険」「対物賠償保険」「傷害保険」「車両保険」のことです。
料率クラスの数字が大きいと、過去の保険金支払いの実績が多いということになりますので、保険料が高くなります。逆に数字が小さいと過去の保険料の支払実績が少ないので、保険料が安くなります。
対人賠償保険とは、契約車両を運転中に交通事故により他人を死亡させる、ケガを負わせるという損害に対し、法的に賠償責任を負った際に補償でカバーできる保険のことです。
具体的には、病院の治療費や葬儀費用、事故に遭わなければ得られていたであろう収入などの逸失利益、精神的な苦痛に対する慰謝料などが含まれます。
通常は強制保険である自賠責保険からまず補償されますが、その上限を超える賠償金に関しては対人賠償保険でカバーされます。
対物賠償保険とは、契約車両を運転中に交通事故に遭遇し、相手の車や自転車、ガードレールや標識、建物などに損害を与えた場合に補償される保険のことです。
具体的には、車の修理費用やレッカー代、ガードレールなどの補修費用といった直接損害や、店舗の損壊による休業期間中の逸失利益や、従業員の給与などといった間接損害が補償されます。
傷害保険には「人身傷害」と「搭乗者傷害」の2つがあります。どちらも契約車両を運転中に事故を起こし、運転者や同乗者が死傷するといった損害に対する補償を行う保険です。
人身傷害の場合は過失割合に関係なく実費が支払われます。また、相手との示談交渉の前に保険金を受け取ることが可能です。
搭乗者傷害の場合は部位や症状別に支払われる保険金が決まっている点が人身傷害とは異なります。
車両保険とは、契約車両を運転中に事故、災害で自身の車が受けた損害に対する補償を行う保険です。
具体的には、車同士の衝突、盗難や落書きなどの器物損壊、台風や洪水などの自然災害が当てはまります。
車両保険には「通常タイプ」と「エコノミータイプ」の2種類があります。
エコノミータイプは、通常タイプと比較して補償範囲が狭く、ガードレールなどに衝突する単独物損や相手が特定できない当て逃げなどは補償されません。しかし、その分保険料は安くなります。
また、車両保険では補償される時に支払われる保険金のうち自己負担となる免責金額を設定することも可能です。免責金額が高いと自己負担は増えますが、その分保険料を抑えることができます。
料率クラスが高すぎると車両保険に入れない場合もある
料率クラスは、上記の4つの項目に対して設定されていますが、車両保険に関しては料率クラスが大きいと加入を断られる場合があります。
具体的にいくつまでというのは保険会社によって異なりますが、一般的には15~最大の17になると断られる可能性が高いです。
車両の時価が高額ないわゆる高級車は、海外でも高く売れるので盗難率が高い傾向です。また、事故により損害を受けると修理費用も高額になる可能性があります。
そうなると、契約者が支払う保険料よりも保険会社が支払う保険金のほうが高くつき、保険会社にとって利益とならない場合があるため、断られてしまいます。
普通乗用車の料率クラスは、以前は1~7までの区分分けでしたが、2020年1月からは1~17までの区分分けとなっています。
普通乗用車は、車種が同じでも型式によって料率クラスが異なります。一般的に、2~7くらいまでの数字で設定されている車が多いです。
小型乗用車の料率クラスも、普通乗用車と同様に以前は1~7まで区分分けされていましたが、2020年1月からは1~17までの区分分けに変更されています。
小型乗用車の料率クラスも、同じ車種であっても型式によって料率クラスが異なります。一般的には、2~6くらいでクラス分けされている車が多いです。
軽自動車に関しては、以前は料率クラスが設定されていませんでした。
しかし、2020年1月から普通乗用車と普通貨物車の料率クラスの区分分けが細かくなったのと同時に、軽自動車にも料率クラスが設定されました。ただし、クラスは1~3までの区分となっています。
軽自動車はクラス区分が3つしかないので、型式による保険料の差異はさほど大きくありません。
普通乗用車と小型乗用車が適用される1~17までの料率クラスでは、1クラス間の保険料の格差は約1.1倍です。最も小さいクラス1と最も大きいクラス17とでは、保険料の差額が約4倍にもなります。
例えば、料率クラス1の車の保険料が5,000円とすると、料率クラス17では20,000円にも跳ね上がることになります。
軽自動車の場合はクラス分けが3つなので、各クラス間の保険料率の差は約1.1倍、クラス1と3の保険率の差も約1.2倍となっています。
料率クラスの設定は、2023年1月現時点では普通乗用車、小型乗用車、軽乗用車の3車種のみとなっています。
軽貨物車、小型貨物車、普通貨物車、キャンピングカーなどの特殊用途自動車には料率クラスは設定されていません。
ただ、今後の交通事故の発生率や販売台数などの変化により、新たに設定される可能性はゼロではないので注意しましょう。
料率クラスの確認方法について
車の料率クラスは、損害保険料率算出機構のサイトにアクセスすれば確認することができます。検索ページにメーカーや車種、型式などの情報を入力すれば簡単に調べることが可能です。
また、自身が加入している自動車保険の保険証券にも記載されているはずなので、確認してみましょう。
ただし、損害保険料率算出機構の検索サイトの結果と実際に加入している自動車保険の料率クラスは、誤差が生じることがあります。
機構の会員である保険会社の場合、そのまま料率クラスを自社の保険商品に使用することができますが、修正を加えることも禁止されていません。そのため、保険内容に合わせて機構が算出した料率クラスに手を加えられている場合もあるので、注意しましょう。
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料率クラスが高い車について
自動車保険において、料率クラスは車種や型式によって異なります。
料率クラスの高い車には特徴があるので、覚えておくと車を購入する時の参考になるでしょう。
では、料率クラスの高い車とはどのような車なのか、見ていきましょう。
海外や中古車市場で人気の車種は、盗難による保険金の支払い実績も多くなります。
日本車は耐久性があり、品質が高いので海外でも根強い人気を誇っています。また、新車では手が届かない高級車でも、中古車なら購入できるという方も多いでしょう。そのため、盗難による被害が多く、料率クラスが高くなる傾向にあります。
盗難率が高い車はミニバンやSUV、電気自動車などです。具体的にはランドクルーザー、ハイエース、レクサス、プリウス、アルファード、ヴェルファイアなどが該当しています。(2023年時点)
交通事故により車が破損した場合、対物賠償保険や車両保険から修理費用が支払われます。特に対物賠償保険は補償額が無制限で設定されている場合も多いです。
もし修理費用が高額となる車が補償対象であれば、その分保険会社の支払額も大きくなります。そのため、修理費用が高額になりそうな車に対しては、保険会社も万一の事故に備えて料率クラスを高くして、事前に多めに保険料を受け取っておく必要があるのです。
高齢者は身体や脳の機能が若い頃に比べて衰えつつあり、交通事故の発生率も高くなっています。また、若者は運転免許を取得してから日が浅く、運転経験が少ない方も多いでしょう。
そのため、運転技術が未熟だと判断されています。結果的に高齢者と若者は交通事故発生リスクが高いため、自動車保険においても年齢区分で保険料が高めに設定されています。
高齢者と若者がよく乗る人気のある車について統計をとり、料率クラスは高めに設定してあります。
自動車保険では、前年に無事故もしは交通事故で保険を使っても等級に影響しないノーカウント事故の場合は、翌年の等級が1つ上がります。
保険に新規契約した時は6等級からのスタートですが、無事故やノーカウント事故であれば年々等級が上がり、保険料の割引率が大きくなっていく仕組みです。
その結果、保険料が徐々に安くなっていきます。しかし、等級が上がっても逆に保険料が前年よりも高くなるケースがあります。
料率クラスは年に1回見直しが行われています。そのため、前年の事故率や盗難率などが高いと車の料率クラスの数字が大きくなり、保険料に影響してくる場合があるのです。
料率クラスが低い車の探し方
車を所有する上で、万一の事故に備えるためにも自動車保険はなくてはならないものです。しかし、保険料を考える上で少しでも節約したいと思う方は多いでしょう。
保険料を節約したい場合、車の料率クラスに着目することは大事です。
料率クラスが低い車の特徴としては、販売台数が多い、販売から数年経過している車などが当てはまります。また、料率クラスが低い車種もあるので、以下で詳しく説明していきます。
車の販売台数が多い車ほど、料率クラスは低くなる傾向です。
車を購入すると、ほぼ全てのドライバーが自動車保険に加入し、毎年保険料を納めています。販売実績と保険加入率は比例しており、販売台数が多いとその分利益となる保険料が多く集まるため、料率クラスが低くなるということです。
今売れている人気の車種を探していくと、おのずと料率クラスの低い車に出会える可能性が高いです。
新しく販売される最新の車種や型式の車が気になるという方も多いでしょう。しかし、料率クラスを考えると、販売してから年数が経過していない車というのは避けたほうが無難だとされています。
料率クラスは、販売開始から数年間は上がったり下がったりして定まりません。そのため、販売1年目は料率クラスが低くても数年で高くなり、保険料が初年度よりも高くつく場合があります。
料率クラスは、一般的に車が販売されてから3~4年で、ある程度安定していきます。安定してきた時期に料率クラスが低い車種や型式を選んで購入すれば、大きく上がったり下がったりすることはあまりないので安心できるでしょう。
料率クラスは車種によっても変わってきます。一般的に軽自動車やコンパクトカーは、料率クラスがトータルで見ても低めに設定されています。
特に軽自動車は3つしかクラス分けがされておらず、保険料も普通車と比べると安いです。
コンパクトカーは型式などによって差はありますが、2~6程度の数字で設定されています。
一方、普通乗用車のエコカーや高級車などはやはり料率クラスが高めで、2桁になっている車が多いです。
料率クラスを検索サイトで事前に調べておこう
今自分が加入している自動車保険の料率クラスがどの位が知っておくことは、保険料を抑えるためにも必要なことです。
また、今後車を購入する予定の方にとっても、先に料率クラスを把握しておくことは、車の維持費を考える上で有益だと言えます。
料率クラスは損害保険料算出機構のホームページで検索できるので、サイトにアクセスして調べてみることをおすすめします。
また、正確に知りたいという方は、加入している保険の保険証券を確認するか、保険会社に問い合わせてみると良いでしょう。