納税は国民の義務であるため、怠ると延滞金や督促など様々なペナルティがあります。
車を所有していても、自動車税や自動車重量税といったいくつかの税金が課せられます。この税金が未納状態だと車を売ることができないのか、疑問を持っている方もいるかもしれません。
そこで今回は、車に課せられる税金が未納の車でも売れるのか、売れないならどのように納税すればいいのかなど、車の売却と税金の関係について詳しく解説していきます。
車の税金が未納だと本当に売ることができないの?
結論を先に言うと、税金が未納状態だからといって車が売れないわけではありません。自動車に関する税金の中で売却に直接関係してくる税金は1つだけで、その他は影響がない税金ばかりです。
まずは、車を売却できる・できないに影響を及ぼす税金と及ぼさない税金をそれぞれ解説していきます。
未納だと車を売ることが難しくなるのは「自動車税」
車に関する税金といえば、毎年5月ごろ納付書が送付されてくる「自動車税及び軽自動車税」を思い出す方が多いかもしれません。
その他にも、車検を受ける際に自賠責保険料とともに支払う「自動車重量税」や購入時にその車の環境性能や車両価格に応じて課せられる「環境性能割(旧・自動車取得税)」と「消費税」があります。
このうち、未納状態だとその車を売ることが難しくなるのは、自動車税及び軽自動車税です。
そこでまずは自動車税について詳しく見ていきましょう。
自動車税・軽自動車税は、車という財産を持っているのであれば一定額の税金を負担する能力があるという考えから、毎年4月1日時点の所有者に対して課せられる税金です。
自動車税は、排気量1L以下が25,000円、1L超~1,5L以下が30,500円、1.5L超〜2L以下なら36,000円と、エンジン排気量が増えるごとに税額も上がっていきます。(この金額は、2019年10月1日以降に新車登録した自家用乗用車の場合です)
軽自動車税は、排気量によって税額が変わることはなく、2015年4月1日以降に新規取得した自家用乗用・四輪の軽自動車の場合は、一律10,800円となっています。
自動車税は都道県に、軽自動車は市町村に納める普通税で、特に用途は定められていません。
しかし、日本の道路が世界屈指の高水準で整備されているのは、車の所有者が毎年きっちりと自動車税もしくは軽自動車税を納税してくれているおかげと言えます。
なお、自動車税も軽自動車税も年1回の納付になりますが、自動車税は月割計算される「月割り税」であるため、車を手放した時期によっては還付金が発生します。一方、軽自動車税は一括計算の「年税」であるため、還付金が発生しないので覚えておきましょう。
車の売買契約が成立すると、前の所有者から新しい所有者へ名義変更が早い段階で行われます。
名義変更がスムーズに行われないと、毎年4月1日時点の所有者に納税の義務が生じるので、次年の自動車税納付書が元の所有者に届いてしまう可能性があります。
売却後に名義変更を行う際は、手続き的な話だけをすれば納税証明書は必要ないため、自動車税が未納であっても名義変更できる場合があります。
名義変更するには、その車の車検が有効である必要があります。その車検を受けるには納税証明書が必要になりますが、車検の有効期限は通常2年なので、2年目の自動車税が未納で納税証明書がなくても車検自体は有効なので名義変更できてしまいます。
ただし、既に車検が切れている車を買い取ったり、買い取った車を一時抹消して陳列し、「車検付きの車」として転売したりする場合、必然的に2年目の納税証明書も必要になります。
そもそも一時抹消するためには、未納分の自動車税などを納付する必要があるため、買取業者はどんな車検状態の車でも、買い取る際は必ず納税証明書の有無を確認します。
つまり、その年の自動車税が未納である場合、納税をして納税証明書を入手しておかないと次の車検を受けることができないため、買取を断る業者が多いのです。
自動車税・軽自動車税を納付書できちんと納税した場合、手元に納税証明書が残っているでしょう。
しかし、この納税証明書をどこに保管したのか忘れてしまったり、紛失したりして売却や車検の時に困ってしまう方も多いかもしれません。
納税証明書は、納税さえしていればすぐに再発行できます。自動車税は各都道府県税事務所に、軽自動車税は各市町村役場に行って、身分証明書と印鑑、納税した時の領収書やレシート(納付後2週間以上経過していれば、各窓口でデータとして確認できる)などを持って手続きを行えば、数百円の手数料で再発行してくれます。
買取業者に再発行手続きを任せることもできますが、高い代行手数料を請求されるかもしれません。納税証明書の再発行はそれほど費用も手間もかかりませんので、車の売却を考えているのであれば自分で事前に準備しておいたほうがお得です。また、売却手続きをスムーズに進められます。
車の売り時はいつ?タイミングを誤ると損することも!
自動車税が「未納」でも車を売ることができるケース
自動車税が未納のままだと車を売ることは難しい理由を解説してきましたが、あくまでも「難しい」というだけで全く売ることができないというわけではありません。
そこでここからは、自動車税が未納でも車を売ることができるケースを挙げていきます。
一時抹消している車、つまり車検が切れられていてナンバーも返却されており公道を走行できない車は、自動車税や軽自動車税の課税対象ではありません。そのため、未納状態であっても売ることができます。
また、月割りのできる自動車税の場合は、一時抹消したタイミングによって還付金が発生することもあります。そのため、出張や入院などで長期間車を使わない場合は一時抹消していたほうがお得です。
ただし、売却時は公道を走れないため、車載車で引き取ってくれる買取業者を選ぶ必要がある点には注意しましょう。
自動車税が未納だと車が売れない理由を解説しましたが、たとえ自動車税が未納状態であったとしても、手続き的に「売却後の名義変更」まで進めることができます。そして、極端な話にはなりますが、未納分を立て替え納付さえすれば一時抹消も継続車検も可能になり、すぐ転売できる状態に持っていけます。
そのため、それほど多くはありませんが、買取査定額から自動車税などの未納分+納税代行手数料分を差し引いた形で買い取ってくれる業者も稀にあります。
特に、希少価値の高い車や業者側の条件に合う車(顧客のリクエストにマッチするなど)は、税金が未納でも買い取ってくれる可能性が高いです。
ただし、手数料分が買取額から引かれることと業者の心証が悪くなることを考えると、査定前に納税しておいたほうがいいでしょう。
車にかかるその他の税金について
自動車税や軽自動車税について詳しく解説してきましたが、車を所有するとかかる税金は他にもあります。
ここからは、車にかかるその他の税金について詳しく見ていきましょう。
環境性能割とは、2019年10月の消費税引き上げに伴い、廃止された「自動車取得税」の代わりに導入された税金のことです。自動車を購入したタイミングで本体費用と同時に支払う点は、元の自動車取得税と同じです。
ただし、自動車取得税がその車の「取得価額」によって税額が決まっていたのに対し、環境性能割は燃費のよい車は税負担が軽くなり、燃費の悪い車は税負担が重くなる点が異なります。
環境性能割は、燃費性能によって0~3%まで税額算出の基本となる税率が変化します。そのため、燃費性能が極めて高い車は税金が免除になることもありますし、反対に燃費性能が低い車は数十万円の税金がかかってしまうこともあります。
車を購入する際は気になる税金ですが、車の売却に直接関係してくるものではありません。
自動車重量税とは、所有している自動車の車種や重量、新車登録時からの経過年数に基づき課せられる税金のことです。自動車税と同様、公道を走行する車全てに課せられる税金となります。
自動車税が都道府県や市町村に収める「地方税」なのに対し、自動車重量税は国に納める「国税」です。
また、自動車重量税の課税タイミングも自動車税と同じ1年に1度ですが、毎年納付する必要はありません。車検時に「諸費用」などとして自賠責保険料や印紙代とともにまとめて支払うのが一般的です。
自動車重量税が未納だということは、必然的に車検を受けていない(もしくは受けることができない)ため、公道を走行することはできません。
ただし、車検を受けていないというだけで、売却するのには全く支障はなく、それだけでその車の価値が下がるわけでもありません。
また、自動車重量税は納付タイミングが車検時でその費用として計算されています。そのため、自動車税のように車の買取査定額から余計にマイナスされることもありません。
車にかかる税金というより、車を売却した時に限りかかってくる話になりますが、車に限らず物を買ったり売ったりすると「消費税」が発生します。
例えば、本体価格100万円の車を購入した場合、販売店には消費税を加えた110万円を支払うことになります。ただし、これは商取引の話で、個人名義のユーザーが日常使用している車を売却した時には消費税はかかりません。
そのため、買取業者が買取見積書や契約書の中で「査定額110万円(うち消費税10万円)」と消費税を計上していても、一般ユーザー側に消費税納税の義務は発生しないということです。
また、車を売ると多かれ少なかれお金が手に入るので、「所得税が発生するのでは?」と心配している方もいるかもしれません。ただし、所得税は簡単に言うと「得た利益」に対してかかる税金です。
車を売却した時に所得税が発生するのは、その車の購入費用より売却益のほうが高く「利益が出た場合」になります。よほどのレア車・旧車などをプレミア付きの価格で売却しない限り、車の売却で所得税が発生することはないでしょう。
車を売るときの自動車税の取り扱いで注意すべきこと
最後に、車を売る時の自動車税の取り扱いで注意すべきことを説明していきます。
車を売却する前に、以下の内容をチェックをしておきましょう。
自動車税や軽自動車税が未納でも、車を売ることができないわけではありませんが、車を売る時の業者選びにおいて、その選択肢の幅が狭まるのは紛れもない事実です。
そして、売却先の選択肢が減れば、愛車を高く売るために必要な相見積もり(査定見積もりの比較)の効果が薄れてしまうでしょう。
また、税金を納めていないという負い目を業者側に突かれ、未納分以上に愛車を安く買い叩かれてしまう可能性もあります。
何より、自動車税などの納税は自動車を所有して使っている方が果たすべき義務です。そのため、未納分がもし残っているようなら、その納付を済ませてから買取査定に出したほうがいいでしょう。
車の売却と自動車税の関係で注意してほしいのが、「毎年4月1日」というタイミングです。
自動車税は、毎年4月1日時点の所有者に納税の義務が生じます。そのため、例えばAさんがB買取店に売却した車の名義変更が3月末に成立した場合、Aさんに次の年の自動車税の納付義務が発生することはありません。
一方、売却タイミングまたは名義変更の成立が4月1日を超えてしまうと、その年の自動車税の納付義務者がAさんになってしまいます。
もちろん、車を売りたいというタイミングは人それぞれですが、4月1日直後に売ってしまうと金銭的に損をすることになります。そのため、名義変更の手続きにかかる時間を考慮すると、可能であれば3月中旬には売却したほうがいいでしょう。
なお、売却ではなく廃車にする場合も、4月1日を強く意識することをおすすめします。なぜなら、月割り税である自動車税は廃車にすると未経過分が還付されますが、満額返還されるわけではありません。また、年税である軽自動車税に至っては、そもそも還付制度すらないからです。
自動車税と軽自動車税は、環境に与える悪影響が高まる恐れがあるといった理由から、新車登録(または届出)から13年のタイミングで金額が上がります。
例えば、2019年9月までに購入した排気量1L以下の自動車税額は通常29,500円、軽自動車税は10,800円です。
一方、新車から13年を超えると、排気量1L以下の自動車税額が34,000円(+4,500円)、軽自動車税額は12,900円(+2,100円)にそれぞれ増額されます。
さらに、新車から18年を超えると、車検の時に支払う自動車重量税の税額までアップします。
こういった理由により、13年目と18年目に差し掛かる前も、車を売却するタイミングとして検討するといいでしょう。
自動車税や軽自動車税をしっかり納付して車を売却したとしても、4月1日までに万が一名義変更が行われなかったら、自動車税の納税義務は元の所有者(車を売ったユーザー)側に発生してしまいます。
また、廃車の際の抹消手続きについても、4月1日時点で抹消登録されていなければ、自動車税が発生し元の所有者に納付書が届きます。
そのため、個人間取引の場合や売却・廃車のタイミングが4月1日直前だった場合は、きちんと名義変更や抹消手続きが完了したかどうかを確認しましょう。
なお、口頭ではなく名義変更後の車検証や、抹消したことを証明する書類(登録識別情報等通知書)のコピーを取っておけば、より安心です。
車の売り時はいつ?タイミングを誤ると損することも!