新車のハイブリッド車を購入した際、なるべく良い状態を維持できるよう「慣らし運転を行うべきか」と悩まれる方は多いのではないでしょうか。
かつては常識とされた慣らし運転ですが、現代の自動車製造技術の進化により、慣らし運転への考え方は大きく変化しました。
この記事では、慣らし運転への主要自動車メーカーの公式見解から、慣らし運転のメリット・デメリット、実際に慣らし運転を行う際の走行距離や期間などの方法を詳しく紹介します。
ハイブリッドの慣らし運転はケースバイケース
ひと昔前までは常識ともされていた慣らし運転ですが、近年の車は精密に作られており、納車直後から慣らし運転を行わずに通常走行が可能です。
しかし、足回りの部品が馴染むことやドライバー自身がエンジンとモーターの切り替え動作に慣れるためにも、最初の1,000kmは急加速や急ブレーキを避けて穏やかな運転を心がけるのが良いでしょう。
メーカーによって推奨内容も異なるため、取扱説明書を確認し、自分の車に合った対応をとることが大切です。
「慣らし運転」とは?
慣らし運転とは、新車を購入した際やエンジンの部品を交換した後に車を適切な状態に仕上げるために行う運転のことです。一般的には初期の1,000km程度、急加速や急ブレーキを避けて、エンジン回転数を抑えて走行します。
これによりエンジン内部の部品同士が滑らかに馴染み、摩耗を抑えられるのです。滑らかに作動するようになってから、高回転まで使います。
また、慣らし運転はブレーキやサスペンションなど他の車の部品の安定性を確認する期間とも考えられるでしょう。適切に行うことで、車の性能を最大限に引き出し、長持ちさせることが可能です。
慣らし運転のメーカーの見解
慣らし運転が推奨されているかどうかは、メーカーや車種によってもそれぞれ異なります。仮に一般的には不要といわれていたとしても、ご自身の車のメーカーが慣らし運転を推奨しているなら、慣らし運転は行うべきと考えるのが良いでしょう。
ここからは、慣らし運転について、国内の各自動車メーカーの見解について紹介します。
国内の多くの自動車メーカーが、現代の車に「慣らし運転は不要」という見解を表しています。
人気モデルを数多く販売しているトヨタも「安全運転に心がけていれば、慣らし運転は不要」という内容の文章を公式サイトにて公開しています。
ホンダやスズキも同様に「慣らし運転は必要ありません」と示しており、これは業界全体の特別な慣らし運転は不要であるというトレンドを反映しているといえるでしょう。
しかし、これは適度な車速とエンジン回転数であることが前提です。安全運転を心がけて、激しい運転を行わないことは、慣らし運転の期間を問わず必要なことであるという意味にも取れます。
多くの自動車メーカーで慣らし運転が不要とされている一方で、日産はエンジン車に対して「走行距離1,600km~2,000kmまでは、適度な速度とエンジンの回転数を保って運転する」という内容で推奨しています。
また、スバルはハイブリッド車にも慣らし運転が推奨されており、現代の車でもすべての車が慣らし運転不要というわけではありません。
自分の愛車のメーカーが推奨する方法に沿って、慣らし運転を行うか否かを決めるのが良いでしょう。
ハイブリッド車の慣らし運転の現状
ひと昔前までは、当たり前のように認知されていた慣らし運転ですが、近年では慣らし運転は不要といった情報もよく見聞きするでしょう。
技術の発達によって慣らし運転が要らないとされている場合もありますが、車や状況によっては推奨されているケースもあります。
ここからは、ハイブリッド車の慣らし運転の現状について紹介します。
多くのメーカーが慣らし運転を必要としない背景には、現代の自動車製造技術の進歩があります。
昔の車は部品の精度がそこまで高くなく、納車直後は各部品が馴染んでいないため、急な負荷は故障や、トラブルの原因になっていました。
しかし、現代では製造技術が発展し、とても精度の高い部品が作られるようになりました。また、現代の車は、工場で製造された時点で厳しい品質管理とテストが行われています。これにより、部品同士の余計な負荷や摩擦が大幅に減少し、慣らし運転を行わなくても正常な状態を保てるようになったことが、慣らし運転を不必要とする理由です。
稼働量はガソリン車に比べて少ないものの、ハイブリッド車にもエンジンは搭載されています。どの種類のハイブリッド車もエンジンを全く使用しないというわけではないため、ハイブリッド車もガソリン車同様に慣らし運転を行っておくことがおすすめです。
慣らしが必要なのは、パワーユニットや駆動系だけではありません。サスペンションやブレーキなども初期段階から激しい操作は負担をかけてしまうおそれがあるため、長持ちさせるには丁寧な使用が必要です。
このようなことからも、ハイブリッド車の種類は問わず、どれにおいても慣らし運転は必要だと考えるのが良いでしょう。
「慣らし運転=新車」といったイメージを抱いている方も多いでしょうが、慣らし運転は新車購入時に限らず、タイヤやブレーキパッドの部品を新しくした際にも推奨されます。
例えば、タイヤの場合は時速80km以下で100km走行すること、スタッドレスタイヤなどの場合は時速60km以下で200km以上走行することがおすすめです。
慣らし運転により、タイヤの表皮が取れてゴムのグリップが利きやすくなることや、タイヤの交換前後による性能の差に慣れる期間が確保できます。
購入した車が新車でない場合も、部品を新しくした際には慣らし運転を取り入れてみましょう。
慣らし運転をするメリットとデメリット
慣らし運転は車の寿命を延ばしたり、自然とエコな運転ができたりすることがメリットですが、過度に行ってしまうと返って負担をかけるデメリットもあります。
ここからは、慣らし運転をするメリットとデメリットについてそれぞれ紹介します。
慣らし運転は、車の部品が馴染む「アタリ付け」を促し、結果的に愛車の寿命を延ばす効果が期待できます。エンジン内部のピストンやシリンダー、ギア類などの金属部品は、製造段階で非常に細かい凹凸があります。
これらに始動直後から強い負荷をかけてしまうと、激しく擦り減ってしまうおそれがあるため、均一に馴染ませるためにも慣らし運転は効果的です。
ギア類も同様に、嚙み合った面に少しずつアタリをつけることで、キレイに減っていきます。部品の寿命を延ばし、車のコンディションを維持することが、慣らし運転の大きなメリットです。
慣らし運転には、エコな運転が自然にできるメリットもあります。急加速や急ブレーキなど、「急」がつく運転を避けて、ふんわりとしたアクセル・ブレーキ操作を行うことは、結果としてそのままエコドライブの基本にもつながります。
この期間に身についた丁寧な運転の習慣は、慣らし運転が終わった後も燃費の良い運転を続けるうえでとても効果的です。
とくにハイブリッド車では、モーターでの発進や目標速度に達したらアクセルを離してモーター走行に切り替えるなど、エコドライブのポイントが多くあります。慣らし運転を行うことは、ハイブリッド車の性能を発揮する運転方法を身につける良い機会でもあるでしょう。
慣らし運転が終わってからも回転数を抑えた運転をし続けていると、燃えカス(カーボン)やデポジットが溜まってしまう原因になります。修理が必要なトラブルが起きてしまうと、節約したガソリン代は車の修理代で帳消しになってしまうでしょう。
製造過程での精度が上がっている現代の車では、慣らし運転をした車と、行わなかった車とではそこまで大きな差はないという声もあります。
このような点から、ハイブリッド車の慣らし運転にはデメリットもあるため、慣らし運転自体を行うかどうかからどの程度行うかまで、よく考えておくことが重要です。
車のエンジンやブレーキなど様々な部品を馴染ませるようなイメージで、丁寧な運転を心がけましょう。
ハイブリッド車の慣らし運転の方法
「慣らし運転を行っておこう」と考えていても、実際にどのような手順で行えば良いのか分からない方も多いのではないでしょうか。慣らし運転の効果を効率的に得るためには、適切なやり方で行うことが重要です。
ここからは、ハイブリッド車の慣らし運転の方法について、エンジン・駆動系、ブレーキやタイヤなど、それぞれ紹介します。
慣らし運転の期間は、メーカーの見解や車種、対象の部品によって異なります。基本的にはトランスミッションやエンジンなどの主要機械部品の慣らしは「1,000km程度で完了する」とされています。
しかし、より丁寧に慣らしを行う場合は3,000~5,000kmを推奨する声も。また新車購入時だけでなく、ブレーキパッドやサスペンションなどの足回りの部品を新品に交換した際にも慣らし運転が必要でしょう。
新品になった箇所によって慣らし方が異なるため、交換を実施した際にはプロに方法を確認しておくことが重要です。
エンジンや駆動系の慣らし運転では、急激な負荷を避けることが基本です。急加速や急減速を行わないように注意し、回転数の管理も行いましょう。従来の慣らし運転では、走行距離500kmまでは2,000回転までとし、その後500kmごとに500回転ずつ上限を上げていく方法が主流でした。
ハイブリッド車の場合はシステムがエンジンの回転数を自動で制御するため、高回転を避けるような運転を心がけることが重要です。
また、始動時にはエンジンを十分に暖めることもポイントです。エンジン内部のオイルがほかの部品にも行き渡り、摩耗を防ぐ効果が期待できます。
エンジンや駆動系だけでなく、ブレーキやタイヤ、サスペンションといった足回りの部品も初期の丁寧な操作が推奨されます。ブレーキパッドやタイヤは、新品の状態ではまだ本来の性能を発揮しきれていないため、段階的な負荷が必要です。
ブレーキパッドは急ブレーキや無理に温度を上げるような走り方を避けて、丁寧に運転を行うことが大切です。タイヤも同様に、初期の100km程度は急な操作を避け、徐々に道路に馴染ませることで本来のグリップ性能が引き出されます。
サスペンションについても、初期の急ハンドルや過度な負担は避けるのが良いでしょう。
高速道路は一定速度を維持しやすいことから、エンジンやトランスミッションに負担がかかりにくい特徴があります。しかし、エンジンは様々な回転数や負荷で動作するように設計されているため、同じ速度・同じ回転数で走り続けるのは、負担がかかる部品に偏りが生じてしまう可能性があり注意が必要です。
走行中の速度を時速10kmごとに変化させるなど、段階的に上げたり下げたりすることでエンジンがあらゆる負荷に適応しやすくなります。
長距離走行は、各部品を均一に馴染ませる良い機会です。合流時や追い越し時には、無理のない範囲で急加速に気をつけましょう。
新車時、初期の1,000km程度の走行では、エンジン内部の部品が馴染む過程で細かい金属片が発生してエンジンオイル中に混入する可能性があります。これらの金属片は、エンジンに悪影響を与える大きさではないとされていますが、1,000km程度走行したらオイルとオイルフィルターを交換することが推奨されています。
新車の早めのエンジンオイルの交換は、エンジン内部をクリーンに保ち、部品の保護に貢献するでしょう。メーカーによっては慣らし運転中のオイル交換をおすすめしていないケースもあるため、取扱説明書を確認するか担当スタッフに確認しておくことがポイントです。
しかし、新車購入後間もない頃は、急加速や高速回転を避けて、丁寧な運転を行うことが車の良い状態をキープする重要なポイントです。
ドライバー自身が慣れることが重要
ハイブリッド車本体を慣らすことも重要ですが、ガソリン車とハイブリッド車ではブレーキの感覚なども異なることから、ドライバー自身がハイブリッド車の感覚に慣れることも大切です。車もドライバーも慣れることで、より快適なカーライフが送れるでしょう。
ここからは、ドライバー自身が慣れることの重要性について、詳しく解説します。
ガソリン車とハイブリッド車では、ブレーキの感覚も大きく異なります。とくに「回生ブレーキ」はハイブリッド車ならではの特徴で、減速時にモーターを発電機として利用し、エネルギーを電力に変換して駆動用バッテリーに充電するシステムです。
回生ブレーキを上手く活用するには、早めにアクセルペダルから足を離し、走行する必要があります。また、ハイブリッド車は走行状況に応じて自動的にエンジンとモーターを切り替えているため、切り替わりのフィーリングに慣れることも重要です。
まずはアクセルペダルの力加減を調整できるよう、ハイブリッド車ならではの特徴に慣れましょう。
ドライバー自身が運転に慣れ、エコなドライブを身につけることはとても重要です。ふんわりとしたアクセルは燃費向上の基本であり、慣らし運転にも良い運転の仕方だといえるでしょう。
加速・減速の繰り返しや、頻繁な信号待ちは燃費を悪化させてしまいます。先行車との車間距離を適切に保ち、無駄な加減速を減らすことで、エコな走行につながります。
また、高速道路では速度を抑え、一定の速度で走行することを意識しつつ、料金所手前などでは早めにアクセルペダルを戻してゆるやかなブレーキ操作を行いましょう。
慣らし運転中に身につける「丁寧な運転」は、そのままハイブリッド車のエコドライブに活用可能です。
新車を購入したあとの定期点検は、車両の状態を確認し、長く安全に乗り続けるうえでとても重要です。とくに1ヶ月点検は、メーカーが車の安全を保証するために行う点検であり、不具合がでる可能性のある項目を中心に点検が行われます。
慣らし運転の有無に関わらず、定期点検を有効的に活用し、車の状態をプロの目で確認してもらうことはドライバーにとって大きな安心材料になるでしょう。
ハイブリッド車のバッテリーの管理も寿命を延ばすうえで必要不可欠です。補機用バッテリーは3~4週間乗らないだけでバッテリー上がりを起こすことがあるため、たまにの頻度で1時間以上走行充電させることをおすすめします。
それぞれの車に合った期間や距離は、オーナーズマニュアルを確認しましょう。全力での加速や、長距離を最高速度で走行することは避けておくことが重要です。