ハイブリッド車を購入する方の多くは、そのシステムを活かした高い燃費性能に期待しているでしょう。しかし、カタログ燃費の高いハイブリッド車を選んでも、走り方や環境によっては車が持っている性能を発揮できません。
この記事では、ハイブリッド車の燃費の良い走り方や、メンテナンスの重要性などについて詳しく解説します。また、ハイブリッド車とガソリン車の違いについても紹介するため、燃費性能を高めたいと考えている方は要チェックです。
ハイブリッド車の燃費はドライバー次第

ハイブリッド車のカタログ燃費(WLTCモード)は、世界基準で定められた測定方法で算出された数値であり、実際に高速道路や市街地を走った数値ではありません。
実燃費は車の状態やドライバーの運転の方法、走行環境などによっても異なるため、できる範囲で燃費に良い扱い方をすることが重要です。
この記事を最後まで読むことで、ハイブリッド車の特性を引き出す運転のコツや、メンテナンスの重要性などが理解できます。
なぜハイブリッド車は燃費が良いのか
ハイブリッド車はガソリン車に比べて燃費性能が高く、低燃費の車をお探しの方にも適しています。
近年ガソリン代は高騰しており、燃料代が維持費に大きく影響しているため、とくに普段から車を使用する方は燃費性能を重視しておくのがポイントです。
ここからは、ハイブリッド車の燃費性能が高い理由について、詳しく解説します。

ハイブリッド車はエンジンだけでなく、モーターも搭載しており、ハイブリッドシステムの種類や条件下によってモーターで走行を行います。エンジンの稼働率を下げることで、ガソリンの消費を軽減していることが低燃費の要因です。
ハイブリッドシステムの種類は、主に以下の3つがあります。
- シリーズ方式
- スプリット方式
- パラレル方式
エンジンは蓄電のみで使用し、走行は完全にモーターが行うタイプや、低速走行時にはモーターで加速時などより多くのエネルギーが必要となった際にエンジンも稼働させるタイプなど、それぞれ仕組みが異なります。
ガソリン車はブレーキを踏むとブレーキパッドがディスクローターを挟み込み、摩擦でブレーキをかけています。このときに生じる運動エネルギーは熱として放出され、そのまま何かに活用されることはありません。
一方でハイブリッド車の場合はブレーキ時にもモーターを使っており、アクセルから足を離して減速する際には発電機として働きます。
減速時の運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、バッテリーを充電する仕組みを「回生ブレーキ」といい、ハイブリッド車の実燃費はいかにこの回生ブレーキを効率的に行えるかがポイントです。
エンジンの動きをサポートしたり代わりに駆動するモーターの充電は、この回生ブレーキが担っています。
ハイブリッド車の特性を活かす運転のコツ

燃費性能に優れる車に乗っていても、ドライバーがエコな運転を意識していなければハイブリッド車の魅力はあまり感じられません。
ハイブリッド車で低燃費を実現させるには、よりハイブリッドシステムが効率的に稼働できる運転の仕方を行うことがポイントです。
ここからは、ハイブリッド車の特性を活かす運転のコツを紹介します。
発進や加速時など、アクセルペダルを踏み込む際には、勢いでグッと踏むのではなく「ふんわり」と軽く踏むことがポイントです。急にアクセルを踏むと瞬時に多くのエネルギーが必要になり、モーターだけでは補いきれずにエンジンが始動してしまいます。
低燃費を実現させるには、いかにモーターだけで走行できるかがポイントです。加速後、目標の車速になれば早めにアクセルから足を離し、モーター走行をすることが効果的です。
急アクセルを避けてふんわりアクセルを心掛けることは、安全運転にも繋がります。ついアクセルをグッと踏み込んでしまう癖のついている方は、アクセルの踏み方を意識してみましょう。
回生ブレーキとは、車の減速時に発生する熱を活用して、電力の充電を行うハイブリッド車の機能です。ガソリン車だと、そのまま放出されてしまうだけの熱を利用していることから、「回生ブレーキ」と呼ばれています。
いくらアクセルペダルの踏み方を意識していても、駆動用バッテリーの充電が十分でないとモーター走行はできません。モーター走行を行うには、走行中に効率良くバッテリーの充電を行えるかが重要であり、回生ブレーキをどれだけできるかがポイントです。
このようなことから、エコドライブを実現させるには、急ブレーキを避けて早めのブレーキを行いましょう。
前を走る車との車間距離を詰めて走行してしまうと、アクセルとブレーキを忙しく踏み変える運転方法になってしまい、安全面でも燃費面でも良くありません。
エコな運転を行うには、前を走る車との距離にゆとりを持ち、定速で走行するよう心掛けることがポイントです。適切な車間距離を保っていると、先の信号や標識も認識しやすく、回生ブレーキを効率的に活用できるでしょう。
坂道を登る際は、坂の途中でスピードが落ちてきてからアクセルを踏み込むのではなく、坂道の手前で加速し、勢いを付けて登りきるのがおすすめです。
自転車を漕いでいたとき、坂道の手前で助走を付けて登った経験のある方は多いのではないでしょうか。上り坂の途中で失速してしまい、そこから自転車を降りずにペダルを踏み続けるのはとても体力を消耗します。
車も同じであり、坂道の途中でアクセルを踏み込むことは、より多くのエネルギーを必要としてしまいます。坂道の手前で加速する際には、前方車両や周囲の状況を確認しつつ、安全に考慮したうえで行いましょう。
ハイブリッド車に搭載されている「エコジャッジ」は、走行状況を採点してくれる機能で、ゲーム感覚で楽しみながらエコドライブを身に付けられることが魅力です。
急アクセルや急ブレーキ、定速走行など自分の運転の現状を数値化して把握できます。仮に今の状態が燃費に良くない走り方をしていても、ドライバーは無意識で行っている可能性も高く、エコジャッジ機能は自分自身の運転方法を見直すきっかけにもなるでしょう。
車種によってはひと言メッセージが添えられていたり、点数の内訳が表示されたりする車もあります。大半のハイブリッド車に備わっている機能であるため、自分の現状を知るために試してみると良いでしょう。
ハイブリッド車とガソリン車の燃費の違い

現在発売されている車種によっては、同じグレードでもハイブリッド車とガソリン車、両方のタイプを販売しているモデルもあります。同じグレードであるため、デザインや安全性能などは同じですが、燃費性能と車両価格には大きな違いがあります。
例えば、トヨタが生産・販売するRAV4は、プラグインハイブリッド車とハイブリッド車、さらにガソリン車とグレードによってさまざまなタイプが販売されていることが強みのひとつです。
「Adventure」というグレードにはハイブリッドモデルとガソリンモデルがありますが、カタログ燃費はハイブリッド車が20.3km/L、ガソリン車は15.2km/Lなので、5.1km/Lの差があります。
低燃費の車をお求めの方は、「ハイブリッドモデルが良い」と考えるでしょうが、RAV4のハイブリッドモデルはガソリンモデルよりも60万円以上も高いことに注意が必要です。(Adventureで比較)
維持費はハイブリッド車の方が安く抑えられますが、維持費の浮いた額で購入時の差額を取り戻せるかが検討すべきポイントです。
メンテナンスが燃費を左右する
ドライバーがどれだけエコな運転に気を配っていても、タイヤの空気圧が不足していたり、エンジンオイルが劣化していたりすると、本来の燃費性能を発揮できません。
エコな運転のためには、運転の仕方だけでなく、車の状態にも気をつけておくことが重要です。
ここからは、燃費性能に影響を与えるメンテナンスの項目について紹介します。

タイヤの空気圧は走行をすることで自然と少しずつ減っていくため、1ヶ月に1度を目安に定期的な点検が必要です。
タイヤの適正値は、車種やタイヤサイズなどによって異なり、運転席ドアを開けた辺りに貼られたシールで確認できます。この適正値を下回ってしまうと、転がり抵抗が大きくなり、燃費が悪化してしまいます。
JAFが行ったテストによると、空気圧が適正値から30%減少したタイヤだと燃費は平均4.6%悪化し、60%減少したタイヤだと平均12.3%も燃費が悪くなっていました。
タイヤの空気圧が適正でないと、燃費が悪くなるだけでなく、パンクやバーストの危険性もあります。とくに高速道路を走る前などは忘れずにチェックしておきましょう。
バッテリーもいきなり調子が悪くなるのではなく、経年劣化が進むと徐々に性能が落ちてきます。
駆動用バッテリーの性能が落ちてくると、以前はモーター走行できていた場所が、モーターの力だけでは走れずエンジンが稼働するようになります。そうなると燃料の消費が増え、結果的に燃費が悪くなってしまう仕組みです。
バッテリーの交換費用は高額であることから、少し燃費が悪くなった程度では交換に踏み切れない方が多いでしょう。寿命を感じたら、無料で交換が受けられるメーカー保証なども調べておくことをおすすめします。

エンジンオイルは車の血液のような役割を持つ部品のひとつで、ハイブリッド車もエンジンを搭載している以上、定期的な交換が必要です。
エンジンオイルはエンジン内部のカスを取り除く「洗浄作用」や金属同士の摩擦を軽減する「潤滑作用」などがあります。エンジンオイルが劣化してしまうと、これらの作用が低下してしまい、エンジンの燃焼率が落ちてしまう原因になります。
ハイブリッド車のエンジンオイルの交換目安は、半年もしくは3,000km~5,000km走行ごとです。
ハイブリッド車だからエンジンオイルは燃費に直接影響は無いと考えている方も多いかもしれませんが、ガソリン車と変わらず定期的な交換が重要です。
エアフィルターとは、エアコンフィルターとはまた異なる部品で、エンジンに送られる空気のチリやホコリを受け止めるマスクのような役割があります。
交換の時期を過ぎてしまったエアフィルターを使い続けていると、目詰まりを起こしてしまい適切に空気が送られなくなってしまいます。エンジンに空気が送られなくなると、燃料が完全燃焼できないことで、燃費の悪化に繋がってしまうのです。
交換時期の目安は、走行環境によっても異なりますが、基本的には20,000km~30,000km走行したくらいに点検してもらうことをおすすめします。
ハイブリッド車のバッテリーは耐久性が高いですが、EVモードを使い過ぎるとバッテリーを酷使することになり、寿命が縮んでしまいます。EVモードの使い過ぎには気をつけましょう。
少しの意識で変わる燃費性能
運転の仕方やメンテナンス以外にも、燃費性能に影響を与えるポイントがあります。不要な荷物を積みっぱなしにしたり、エアコンを使い過ぎたりする状況は、燃費性能の観点から見ると好ましくない状態です。
神経質になる必要はありませんが、少しの意識で燃費に違いが出てきます。
ここからは、燃費性能に影響を与える心構えについて紹介します。
例えば、クーラーボックスやタープなど重量のあるものは毎回出し入れをすることが面倒に感じて積みっぱなしにしている方も多いでしょう。しかし、不要な荷物の積みっぱなしは燃費の観点から見ると避けておきたいポイントです。
車両重量が重たくなるほど、車を動かすエネルギーがより多く必要になります。人が身軽な状態で走るのと、両手に荷物を抱えて走るのとでは、身軽なほうが軽快に走れるのと同じイメージです。
一つひとつはさほど重たくない荷物でも、数が合わさることで意外と重量が増えています。燃費性能を意識するなら、不要は荷物は都度下ろしておきましょう。

カーエアコンはエンジンを動力としているため、使えば使うほど燃費が悪くなってしまいます。
ハイブリッド車には、さまざまな電装品が搭載されていますが、エアコンはナビやライトなどに比べてはるかに消費電力が多く燃費に影響を与えます。
エアコンは使い方にバラつきがあることから、カタログ燃費を調べるときにはエアコンの使用は加味されていません。
かといって、「エアコンを使わないようにする」と人体へ影響が出てしまう恐れがあるため、無理は禁物です。
不要なときにはエアコンを切るなどして、無駄使いをしないよう気をつけましょう。
目的地を決めない気ままなドライブも楽しいですが、走ることが目的でない運転は、事前に目的地とルートを確認しておくことがおすすめです。
行き先が決まっていなかったり、目的までのルートがあやふやだったりすると、遠回りして無駄な走行をしてしまう恐れがあります。
燃料代を少しでも節約したいと考えている場合は、事前の計画が重要です。山道のような上り坂が続くルートは、燃費が悪くなってしまいがちであるため、迂回ルートを探してみるのもひとつの手段です。
考えすぎるとドライブが楽しくなくなってしまうため、負担にならない程度に行いましょう。
ハイブリッド車の維持費に関する注意点

魅力の多いハイブリッド車ですが、良いことばかりではありません。走行環境や運転の仕方によってはハイブリッドシステムの恩恵を受けにくかったり、メンテナンス費用がガソリン車よりも高くついてしまうこともあります。
後悔しないためにも、ハイブリッド車の注意点も事前に把握しておくことが大切です。
ここからは、ハイブリッド車の維持費に関する注意点について紹介します。
ハイブリッド車はガソリン車に比べて構造が複雑であることから、もし不具合が生じた際の修理・交換費用は高額になってしまう傾向があります。
定期的に交換が必要であるエアコンフィルターやエンジンオイルなどは、ハイブリッド車・ガソリン車の違いによる費用の差はありませんが、エンジンまわりやバッテリーに不調が出た際には要注意です。
補機用バッテリーは、ガソリン車の場合、セルフで交換ができます。しかし、ハイブリッド車の場合は設置場所がトランクルームや後部座席の下であることが多く、セルフでの交換は困難です。
プロに依頼せざるを得ないことも、メンテナンス費用が高くついてしまう原因のひとつでしょう。
ハイブリッド車は低速走行で、停止と発進を繰り返すような街乗りに適しています。
本来、ガソリン車であれば街乗りのようなシーンでは燃費が悪くなってしまいますが、ハイブリッド車ならモーター走行ができるためハイブリッド車ならではの良さを実感できるでしょう。
しかし、その一方で車両価格がガソリン車よりも数十万円高いことから、あまりにも使用頻度が少ないと浮かせた燃料代で車両価格の差額を取り戻すのにかなりの時間がかかってしまいます。
通勤や買い物、家族の送迎など普段から頻繁に車を足替わりに利用している方に、ハイブリッド車はおすすめです。





