ハイブリッド車にはモーターで走行できるよう大容量の高圧バッテリーが搭載されており、修理・交換が必要になると数十万円の費用がかかります。そのため、バッテリーの寿命は実質的なハイブリッド車の寿命であり、どのくらい乗れるのかに関わってきます。
この記事では、ハイブリッド車に搭載されているバッテリーの寿命や、各国内自動車メーカーの保証内容について解説します。また、ハイブリッド車を長持ちさせるためのコツも紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
ハイブリッド車の寿命にはバッテリーが関係している

ハイブリッド車には2つのバッテリーがあり、走行に用いられる「駆動用バッテリー」は、寿命がきて交換するとなると数十万円の費用が必要です。大金をかけて修理するなら新しい車に乗り換えようとする方が大勢いることから、バッテリーの寿命はハイブリッド車の寿命といわれています。
この記事を最後まで読むことで、ハイブリッド車の寿命や寿命が近付くと現れるサインについて理解できます。
ハイブリッド車がどれくらい乗れるのか気になっている方は、要チェックです。
ハイブリッド車のバッテリーはどのくらいもつのか

ハイブリッド車には2つのバッテリーが搭載されており、どちらも車を動かすのに重要な役割を担っています。
バッテリーの交換は、数ある車の修理項目のなかでも高額になりやすく、とくに駆動用バッテリーの場合は数十万円になることもあるでしょう。
ここでは、ハイブリッド車の駆動用バッテリーと補機用バッテリー、それぞれがどのくらいもつのか解説します。
駆動用バッテリーの寿命は5年~8年、走行距離だと10万kmが目安です。しかし、これはあくまでも目安であり、ドライバーの運転の癖や走行環境、車の保管方法などによってもバッテリーの寿命は異なります。
可能な限りシビアコンディションは避けたり、定期的に長距離の走行をして適度に充電を行ったりなど、車に負担の少ない走行を心がけることで目安よりも長持ちさせることが可能です。一方で、バッテリーを酷使し続けていると、あらゆる部品に負担がかかり、寿命を縮めてしまう原因になります。
駆動用バッテリーは、長持ちするようタフに造られていることが特徴です。
補機用バッテリーの寿命は、3年~5年程度です。ガソリン車に搭載されているバッテリーと同じ12Vの鉛バッテリーで、定期的な交換が必要です。
主に電装品への電力供給が役割ですが、補機用バッテリーが機能しなくなるとハイブリッドシステムの起動ができず車を動かせなくなります。
補機用バッテリーの交換はセルフでも不可能ではありませんが、後部座席下やトランクルームに搭載されている車種は困難でしょう。ガソリン車と同じようにエンジンルームに搭載されている車種なら比較的容易に交換が可能です。
補機用バッテリーも駆動用バッテリー同様に、走行環境や運転方法などによって実際の寿命が異なります。
ガソリン車よりもハイブリッド車の方が長持ち

ハイブリッド車の補器用バッテリーと、ガソリン車に搭載されているバッテリーは同じ12V鉛バッテリーです。しかし、ハイブリッド車の補機用バッテリーの寿命が3年~5年であるのに対し、ガソリン車のバッテリーの寿命は2年~3年と短命です。
バッテリーはエンジンを始動させる際に、セルモーターに電気を送っています。ハイブリッド車とガソリン車ではエンジンの稼働率が異なることが、それぞれのバッテリーの寿命に差が生じる理由です。
ガソリン車の方がより大きい負担がかかっているため、ガソリン車のバッテリーの寿命が短くなってしまいます。
どちらも共通して、バッテリーの寿命をある程度把握し、突然のバッテリー上がりに困らないよう「そろそろ寿命がくる」といった段階で交換しておくことがおすすめです。
モーターに使用する電力は、車が減速する動きの際に発する熱を使って「回生ブレーキ」という機能で充電を行っています。
エンジンの働きを軽減させることで、燃費性能の向上に効果があります。
国内自動車メーカーのバッテリー保証
ハイブリッド車は現在、多くの自動車メーカーから販売されていますが、保証の期間や内容はメーカーによって異なります。
トラブル知らずの良い状態が続くことに越したことはありませんが、もしも購入後不具合があり、修理や交換が必要になった際に保証があると無料での対応が可能です。
ここからは、国内自動車メーカーのバッテリー保証について詳しく紹介します。
トヨタの場合は、新車から5年間もしくは走行距離10万kmのどちらか早い方までを対象に無料の保証修理を行っています。
対象には、エンジン機構や電子制御機構、ハイブリッド機構などさまざまな部品が含まれています。
保証を受けるには、法律によって定められた点検を適切に受けていることと、その記録がされたメンテナンスノート・定期点検記録簿を保持していることが条件です。定期的に点検を行っていないと、保証の対象外になってしまうため注意が必要です。
ホンダの場合は、ハイブリッド車のハイブリッド機構を走行距離は無制限で、新車登録から10年目まで保証してくれます。
もし、外出先で不具合が発生してしまった場合でも、全国のホンダで対応が可能であり、契約したディーラーまで持ち込む必要がありません。
走行距離無制限はほかのメーカー保証にはあまり例のない、ホンダならではの特徴です。
保証を受けるには、納車時に渡される保証書が必要になります。紛失しないよう、メンテナンスノートなどと一緒に保管しておきましょう。
日産の場合、リチウムイオンバッテリーは新車登録から8年、走行距離16万kmの保証があります。年式でみると他のメーカーよりも短く感じますが、走行距離は16万kmと長く設定されていることが特徴です。
一般的に車を購入した多くの方が、走行距離10万kmを目安に乗り換えています。これは、バッテリーに限らず、ほかの部品も経年劣化が目立ってくることが理由です。
このことからも、日産の走行距離の保証は、年間の走行距離が多い方でも安心です。
スズキの場合は、新車登録から5年、走行距離10万kmの早い方まで保証の対象です。
スズキ新車延長保証制度「保証がのびた」に加入しておくと、より長期的に保証が受けられます。保証期間を延ばすのは有料ですが、万が一故障してしまった際に修理することを考えると、保証の延長はしっかりと備えておきたい方におすすめです。
中古車の場合は「スズキOK保証」があり、延長プランによって受けられる保証の内容が異なります。バッテリーが対象外になる場合もあるため、注意が必要です。
三菱の場合は、初年度登録から8年、走行距離16万km以内であれば保証が受けられます。このとき、三菱が指定する工場にてバッテリー容量の測定を行い、容量が66%を下回っている場合にのみ適用されるため気をつけましょう。
もし三菱の指定工場以外の場所で駆動用バッテリーの修理を行ってしまうと、対象期間内であっても保証が受けられなくなってしまいます。保証が失効されないよう、車の定期的な点検とメンテナンスを受ける工場選びに注意が必要です。
スバルの場合は、一般保証や特別保証、バッテリー保証と複数のメーカー保証があります。
バッテリー保証は、新車登録から8年もしくは走行距離16万km以内であれば保証の対象期間です。
エアコンやナビなどが含まれる一般保証は、新車登録から3年または6万km以内、エンジンやブレーキなどが含まれる特別保証は、新車登録から5年または10万km以内が対象です。
メーカー保証が終了しても延長できる保証延長プランもあり、しっかりと備えたい方に適しています。
中古車の場合も保証期間内であれば、メーカー保証を受けられます。保証を受けるために必要な条件を満たしているかどうかもチェックしておきましょう。
バッテリー交換にかかる費用

ハイブリッド車のバッテリーは2種類あり、それぞれ役割や交換費用が異なります。
補機用バッテリーなら安全面に考慮しながらセルフでの交換も可能です。しかし、駆動用バッテリーの場合は高圧電流が流れているため危険性が高く、専門知識と技術を持ったプロでないと行えません。
ここからは、バッテリー交換にかかる費用を紹介します。
駆動用バッテリーの交換費用は、15万~40万円程度です。これは中古部品である「リビルド品」を用いた場合の交換費用であり、もし新品のバッテリーを使用するとなると、60万円近くかかることもあります。
駆動用バッテリーの交換費用はあらゆる部品のなかでも、とくに高額であり、交換を行わずに車の乗り換えを選択される方も多くいます。
駆動用バッテリーには高圧電力が流れていることから、セルフでの交換はできません。必ず対応してくれる整備工場で行う必要があり、作業手数料がかかってしまうことも高額になる要因でしょう。
補機用バッテリーの交換費用は、2万~4万円程度と数万円で交換できます。バッテリーの本体代は、メーカーの純正品だと3万円程度ですが、社外品の適合品を選ぶことで1万~2万円程度に抑えられます。
バッテリーの本体代のほかに、ディーラーや自動車整備工場で交換依頼するとなると、作業手数料が1万円程度必要です。
作業手数料は、整備工場によって金額が異なります。より安く抑えるには、複数の整備工場で見積もりをとり、比較してみることがおすすめです。
エンジンルームにバッテリーが搭載されている場合は、自分で交換するのもひとつの手段です。
ハイブリッド車を長持ちさせるためのコツ

どれだけハイブリッド車の良い状態を保っておけるかは、ドライバーの運転方法や走行環境、日頃のメンテナンス状況が大きく影響しています。
ハイブリッド車ユーザーの多くの方が「愛車をなるべく長持ちさせたい」と考えているのではないでしょうか。
ここからは、なるべくハイブリッド車を長持ちさせる方法について紹介します。
ハイブリッド車は蓄電と放電を繰り返していますが、短距離走行ばかりだと十分に充電が行えないほか、エンジンやモーターにも負担がかかってしまいます。
普段は家の近所の買い物や、家族の送迎でしか車を使用しないという方も多いでしょう。しかし、ハイブリッド車の寿命を長くするには、1~2週間に1度は、1時間程度車を走らせるよう、ドライブに出かけたり、遠出の買い物に出かけてみたりすることをおすすめします。
人間がしばらく体を動かしていないと訛ってしまうのと同じように、車も適度に動かすことがポイントです。長距離の走行や高速での走行を行うことで、エンジンが温まり、充電も十分にできるでしょう。
夏場には直射日光の当たる場所で駐車している車の車内は、50度近くまで上昇します。バッテリーは熱に弱く、真夏の車の保管方法によっては大きな負担をかけてしまうため、とくに注意が必要です。
車庫やカーポートが無い駐車場では、サンシェードなどを使用して、できる限りの暑さ対策を行いましょう。JAFの実験によると、サンシェードを使用した車と対策をしなかった車では、ダッシュボードの最高温度が22度も異なりました。
真夏の高温は、ドライブレコーダーやナビなどの電装品にも良くありません。少しの手間が、ハイブリッド車を長持ちさせることに繋がります。
バッテリーの寿命が近付くと、あらゆる前兆があるため、これらを見逃さないように気をつけることと、定期的に点検を受けてバッテリーの状態を確認しておくことが重要です。
バッテリーが寿命を迎えてしまうと、車を動かせなくなってしまうため、外出先で不具合が起きてしまうとレッカー車を呼ぶなどの対処が必要になります。
プロの目で車を見てもらうと、バッテリー以外にも気付かなかった車の状態が知れます。あれもこれも交換していると高くついてしまいますが、安全なカーライフを送るためにも、信用できる業者を見つけて定期点検を受けましょう。
短距離走行の繰り返しは、「シビアコンディション」といわれる車にとって過酷な走行環境・使用方法に当てはまり、バッテリーに限らずあらゆる部品の劣化が早まってしまうため、注意が必要です。
普段は短距離走行ばかりという方も、週末はドライブに出かけて1時間ほど走らせることをおすすめします。
寿命が近づくと現れる現象
バッテリーの寿命が近付いているのに、そのままにしておくと、ある日突然車が動かせなくなってしまいます。
しかし、普段から車の状態をよく観察しておくと「そろそろ寿命かな」と感じることが可能です。
ここからは、ハイブリッド車のバッテリーの寿命が近付くと現れる現象について紹介します。当てはまるものが無いかチェックしておきましょう。
駆動用バッテリーの寿命が近付き、モーターの出力が低下してくると、モーターの動きを補うためにエンジンが駆動します。エンジンが駆動することで、結果的に燃費が悪くなります。
本来ならモーターだけで走行できるようなシーンでも、エンジンが駆動することで、従来よりもエンジンの稼働率が高くなり燃料を消費してしまうことが原因です。
エアコンを頻繁に使用していたり、高速道路を走ったりしていないのに「最近ガソリンの減りが早い」と感じるようになれば、駆動用バッテリーの寿命を疑いましょう。

メーターパネル内にバッテリー警告灯が点灯した場合は、近いうちにハイブリッドシステムが機能しなくなることを表しています。
バッテリー警告灯が点灯する原因は、ハイブリッドシステムの性能が基準値を下回っている場合や、バッテリーの電圧や温度に異常をきたしている場合などです。
警告灯は色別に緊急性を分けており、赤色は危険、黄色は注意を意味しています。
バッテリー警告灯が赤色で表示され、点灯した際には車を安全な場所に移動させて、ディーラーや加入している自動車保険に連絡するなど適切な対応をとることが重要です。
ハイブリッド車を長らく使用していると、これまでモーターで走れていた場所でもエンジンを使っていることに気付くことがあります。
とくに「坂道での走行時にエンジン音が目立つ」「加速が鈍い」と感じる場合は、バッテリーの劣化によってモーターの出力が低下していることを表しています。
また、アイドリングストップを使用しているときでも、勝手にエンジンがかかったりアクセルを踏み込んだときにタイムラグを感じたりすることも寿命が近付いているサインです。
走り慣れた道を走っているときに違和感があれば、ハイブリッド車の寿命を疑いましょう。
中古のハイブリッド車は選び方に注意

中古のハイブリッド車を購入する際は、走行距離と年式のバランスを調べておきましょう。一般的には、1年に対して8,000~1万kmといわれています。
走行距離が短いと車内など使用感が無く状態が良いように感じますが、登録してからの年数に対してあまりにも走行距離が短い場合は、動かさずに放置されていた可能性もあります。
長らく動かされずにいたハイブリッド車は、バッテリーにダメージを与えるおそれがあり、あまりおすすめできません。
購入後に何らかの不具合があったときにも対応してもらえるよう、メーカー保証や販売店の保証内容をよく確認しておくことも重要です。





