ハイブリッド車にはモーターだけでなくエンジンも搭載されていることから、エンジンを冷却するウォーターポンプも併せて設置されています。
しかし、ハイブリッド車の場合はエンジンの稼働率も低く、ウォーターポンプがどれくらいもつのかや、不調を起こしたときのサインが分からないという方も多いでしょう。
この記事では、ハイブリッド車のウォーターポンプの役割や寿命の目安、交換するサインや費用などについて詳しく紹介します。
ハイブリッド車の警告表示の原因の多くがウォーターポンプ

ハイブリッド車にはタイミングチェーンが用いられた車種が多いことから、ウォーターポンプも予備交換の必要がなく、単体での交換が可能です。これは、タイミングベルトの場合だと、交換を行う際にタイミングベルトを外す必要があったことが理由です。
単体での交換ができるようになり、より寿命や交換の目安が分からなくなったという方も多いでしょう。この記事を最後まで読むことで、ウォーターポンプの寿命や不調のサイン、修理する場合の金額の目安と交換方法などが分かります。
ウォーターポンプとは?
ウォーターポンプは、冷却水を循環させてエンジンのオーバーヒートを防ぐ役割のある重要なエンジンパーツの一つです。タフな部品であり、交換頻度は高くありませんが、寿命や不調のサインを知っておくことで、適切なタイミングを見極められます。
ここでは、故障すると現れる症状や、ラジエーターとの違いなどについて解説します。
ウォーターポンプには、冷却水を循環させてエンジンの焼き付けを防ぐ役割があります。
エンジンの燃焼室では油温が150度近くまで上昇しており、そのままの状態にしておくと爆発のリスクもあるため危険です。そこで、冷却水を使ってエンジンの熱を吸収し、高温になった冷却水をラジエーターで冷やして再度エンジンの熱を吸収しに行く動作が行われています。
この冷却水を運び続けることがウォーターポンプの役割です。そのため、正常に作動しなくなると冷却水を循環させる機能が低下して、エンジンに影響を与えてしまいます。
ウォーターポンプが不具合を起こすと、エンジンの熱を取り除けなくなり、あらゆるトラブルを起こしてしまいます。エンジンが動かなくなり、出先の場合にはロードサービスや加入している自動車保険に連絡をして助けを呼ぶ必要があるでしょう。
「オーバーヒート」といっても、いきなり爆発するのではなく、水温計の警告灯が赤色で点灯したり、アクセルペダルを踏んでいないと車が動かなくなったりする症状から現れます。
しかし、これに気付かず走行を続けてしまうと、最悪の結果、炎上してしまう恐れがあり、こうなると人命も危険にさらされることになるでしょう。
ウォーターポンプと間違われやすいのが「ラジエーター」です。ラジエーターは、車が走ることで発生する空気抵抗を利用して循環させる冷却水を冷やす役割があります。
そのため、ラジエーターは風が当たりやすいように車体のエンジンルーム前方に設置されていることが特徴です。ボンネットを開けると手前にある大きな部品が確認できるでしょう。
車のエアコンの暖房・冷房機能にも、このラジエーターが取り込んだ熱や冷気が用いられています。
ウォーターポンプは「運ぶこと」が役割であり、ラジエーターは「冷ますこと」が役割です。
近年では電動のウォーターポンプが増加している

一部のハイブリッド車には、従来のエンジンで駆動するものではなく、モーターを使って作動する「電動ウォーターポンプ」が採用されています。
電動ウォーターポンプのメリットは、エンジンの負担が軽減されることによる燃費性能の向上や部品の数の削減です。必要な部品が減ると、その分レイアウトの自由度が上がり設計もしやすくなります。
電動と機械式の違いによる寿命の違いや故障の原因などに違いはありません。電動ウォーターポンプでも10万km程度の走行や10年経過した辺りで交換が必要です。
機械式のウォーターポンプの単体の交換費用は2万円程度ですが、電動式のウォーターポンプの場合、費用は4万円程度かかってしまうことに気をつけましょう。
ウォーターポンプの寿命はどのくらい?
従来のウォーターポンプは、タイミングベルトの交換タイミングに合わせて予備交換がされていました。これは、交換を行うにはタイミングベルトを外さないといけなかったことが理由です。
しかし、近年ではタイミングチェーンが普及し、単体での交換も可能になりました。
ここからは、ウォーターポンプの寿命について、詳しく紹介します。
運転方法や走行環境によっても前後しますが、目安は走行距離10万kmです。
普段あまり車を使用せず、走行距離が10万kmに達するまでに十数年かかりそうだという方は、10年を目安にしておくと良いでしょう。使用頻度が少なくても、経年劣化は進んでいるため、ほどほどの年数でウォーターポンプの寿命がくると考えておくことがポイントです。
タイミングベルトを採用している車は、タイミングベルトの寿命に合わせた交換が推奨されています。
タイミングチェーンの場合は単体での交換が可能であるため、それぞれの寿命に合わせると良いでしょう。
ウォーターポンプが不具合を起こすと、エンジンが適切に冷却されずにオーバーヒートを起こしてしまう可能性があります。
ウォーターポンプが正常に機能できなくなると、冷却水を循環させられず、エンジンの熱を適切に取り除けなくなります。熱の吸収がされないまま高温状態が続いてしまうと、水温計の警告灯が点灯し、最悪の結果エンジンから煙が出たり爆発したりする恐れがあります。
ウォーターポンプの不調は、エンジンの故障に直結するため、寿命がきたら使い続けることは避けましょう。
ウォーターポンプの不調のサイン

ウォーターポンプの調子が悪くなると、エンジン周辺から異音がしたり、冷却水が漏れたりします。
ウォーターポンプが不調なまま放置してしまうと、最悪の場合にはオーバーヒートを起こしてしまうため、不調のサインが見られる際にはなるべく早めの対応が必要です。
ここからは、ウォーターポンプの不調のサインについて解説します。
シャフトベアリングの破損が確認されたり、冷却水が漏れていたりした場合は、故障が疑われます。
冷却水は蒸発によって少しずつ減少していますが、補充しても2~3週間で大幅に減っているような場合は冷却水が漏れ出ている可能性が高いです。
また、機械に組み込まれた回転軸の動きを支えるシャフトベアリングの故障も、放置すると劣化を早めます。シャフトベアリングの状態を確認するには、プロの方にお任せするのが一般的です。
冷却水の減りが早いときや、エンジンの下から冷却水が滴っているのを確認できた際には早めの対処が必要です。
インストルメントパネル内の水温計が「H」に近づいている状態を放置すると、エンジンが焼きついてしまいます。
水温計はH(ホット)とC(コールド)のアルファベットが記されており、冷却水の温度が正常値であるか表すことが役割です。
冷却水の温度が正常である場合、水温計の針は中間を指していますが、ウォーターポンプに異常が発生し、冷却水を正常に循環させられなくなると水温計の針はHに近づきます。
冷却水が高温な状態だとエンジンの熱を正常に吸収できなくなり、オーバーヒートになるリスクが高くなってしまうため注意が必要です。
走行中にエンジン付近から「キーキー」「ウォーン」というような普段は聞かない異音が発生した際にも、故障している可能性があります。
「エンジン付近からの異音=ウォーターポンプの故障」と断言はできませんが、ウォーターポンプが正常に作動しないときにも異音の症状が出るため注意が必要です。
異音を放置してしまうと、ベアリングの働きが低下してしまいます。異音が発生した段階で早めにメンテナンスを受けることで、エンジンへのダメージを抑えられます。
変な音がするかもと感じたら、早急に点検を行いましょう。
オーバーヒートを起こした場合には、ウォーターポンプだけでなく他のあらゆる部品にダメージが及んでおり、廃車を余儀なくされるリスクもあります。
オーバーヒートとは、エンジンの温度を適切に下げられず高温になり過ぎて、発煙や爆発を起こしてしまう現象のことです。
水温計の警告灯が赤色で表示された場合は、すぐに安全な場所に車を移動させ、状況次第ではロードサービスや保険会社に連絡する必要があります。
このように、ウォーターポンプの不調は重大な事故に繋がる恐れがあるため、軽く見てしまわないよう注意しましょう。
タイミングチェーンであればウォーターポンプ単体での交換が可能ですが、タイミングベルトの場合はタイミングベルトを外さないとウォーターポンプの交換ができません。同時に交換するならば、7万円程度見ておきましょう。
ウォーターポンプを修理するならいくらかかるのか

ウォーターポンプの修理費用は、単体の場合は2万円です。しかし、ウォーターポンプの状態によっては、ほかの部品も修理・交換が必要になるケースが多く、もしエンジンに支障をきたしている場合には数十万円の修理費用が必要になります。
ここからは、ウォーターポンプを修理するとなると、費用はいくらかかるのか詳しく解説します。
早めに対処でき、エンジンに支障がなくてウォーターポンプの交換だけで済む場合には2万円程度で修理が可能です。
実際の交換費用はどこの業者に依頼するかによっても異なりますが、自分で行わず業者を利用するならどこでも共通して作業手数料は発生します。
作業手数料は1万円程度の業者が多いですが、少しでも費用を抑えるなら複数店で見積もりを取って比較を行いましょう。相見積もりに対してイヤな顔を露骨に見せるような業者は、今後の取引を考慮して避けておくのが無難です。
また、金額だけでなくサービス面も含めて検討することが満足な修理を受けるためのポイントです。
もし修理に出して、ウォーターポンプだけでなくオルタネーターやエンジンの修理も必要と判断された場合には、修理費用が跳ね上がるおそれがあります。
オルタネーターの交換が必要な場合は5万円以上、エンジンも交換が必要となると数十万円以上の費用が必要です。
修理費用が高いと依頼を躊躇してしまいがちですが、修理を先延ばしにしてしまうことで、現時点で異常のない部品まで劣化を早めてしまう可能性があります。そうなると結果的に段々と修理項目が上乗せされ、より高額となってしまいます。
ウォーターポンプだけの時点で交換できるよう、日頃から定期的な点検が重要です。
走行距離の多い車は、ウォーターポンプ以外にもあらゆる部品に経年劣化が生じていることが考えられます。
例えば、ブレーキパッドやスプリングなども交換頻度の少ない部品ですが、目安は10年で交換とされています。
また、ハイブリッド車の場合は、駆動用バッテリーの寿命も10年もしくは走行距離10万kmが一般的であり、自費で交換するとなると数十万円の費用が必要です。
こうしたことからも、複数の部品を交換するなら、修理費用を頭金にして乗り換えたほうがお得になるケースもあります。長く乗り続けている愛車は思い入れもありますが、今後のコストも含めて検討しましょう。
冷却水は漏れていなくても蒸発によって少しずつ減少します。冷却水の不足は、ウォーターポンプの故障を引き起こしてしまうため、異常が発生する前に冷却水を補充しておくことが重要です。
補充する冷却水は、業者に依頼するほかにも、カー用品店やホームセンターで購入したものを自分で入れることでも対応できます。
ウォーターポンプの交換方法
ウォーターポンプの交換は複雑であり、基本的には自分で行わずに整備工場にてプロに依頼するのがおすすめです。
しかし、依頼するとなると場所によっていくらかの作業手数料が必ず発生するため、ウォーターポンプの交換にかかる金額は高くなってしまいます。
ここからは、ウォーターポンプの交換方法について詳しく紹介します。
自分でウォーターポンプの交換を行うには、まず冷却水を抜き取り、ラジエーターフィンの損傷に注意を払いながらラジエーターを外します。そのあと、タイミングベルトを外してウォーターポンプを交換し、ラジエーターを元の場所に戻しましょう。
冷却水を補充したあとは、冷却水流路に入り込んだ空気を抜くため「エア抜き」を必ず行います。
セルフで交換作業を行う場合は、作業手数料が発生しないことがメリットですが、ボルト外しやホースの着脱など細かい作業も多く、難易度が高いことからも車の知識があまりない場合は、業者に依頼することをおすすめします。
自分での交換作業に自信がない方や、面倒な手間はなるべく省きたいと考えている方にはプロへの依頼がおすすめです。作業手数料は発生してしまいますが、正確かつスピーディーに対応してくれるでしょう。
車検や定期的な点検を依頼する行きつけの自動車整備工場があると、何か不具合があったときにも依頼しやすいです。
依頼する業者を探す際は金額ももちろん重要ですが、接客や整備技術なども重視しておきましょう。気持ち良い接客や整備は、満足な依頼を実現させるうえでとても重要なポイントです。
2~3店舗で見積もりを取り、相場を把握しておくことも大切です。
ウォーターポンプの交換を依頼できる場所

ウォーターポンプの交換を依頼できる業者は数多くありますが、場所によって費用やサービス内容などが異なるため、自分が重視する条件に合った場所を選ぶことが重要です。
場所によっては期間限定のキャンペーンを行っている可能性もあり、複数店調べてみることがおすすめです。
ここからは、ウォーターポンプの交換を依頼できる場所について紹介します。
ディーラーでメンテナンスを受ける場合、メーカー保証の対象であれば無料で受けられる可能性があります。
ディーラーで修理・交換を行うメリットは、メーカーの純正品を使用できることです。保証対象外の際は、自動車整備工場で交換するよりも費用は高くついてしまう傾向があることがデメリットですが、信頼性を重視したい方は、ディーラーでのメンテナンスが適しているでしょう。
整備担当スタッフは限られているため、スムーズにサービスを受けるには、事前に予約を行っておくことがポイントです。交換に必要な日数などは、店舗の忙しさによって異なります。
自動車整備工場は、なるべく費用を抑えたい方に適しています。メーカー保証が利用できる状態ならディーラーですが、そうでない場合には自動車整備工場で交換をするほうが安く済みます。
自動車整備工場では、社外品の選択肢もあり作業手数料も整備工場によって異なるため、自分の重視する条件に合わせやすいことがメリットです。
しかし、ディーラーとは異なり、自動車整備工場は店舗によってサービス内容や金額などにバラつきがあることがデメリットとして挙げられます。
満足できる自動車整備工場を見つけるには、見積もりを複数取って比較することが重要です。





