新車試乗レポート
更新日:2023.05.09 / 掲載日:2021.12.28

【マツダ MX-30 EV】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】

文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス

 国内外で新しいEV(電気自動車)が続々とデビューしているが、航続距離や充電効率、使い勝手などは車種によって大きく異なる。さらに冬など気温の低いシーズンは、走行用バッテリー自体の性能が低下。さらに、キャビンを暖めるために電気を使ってヒーターを稼働させる必要があることから、どうしても航続距離が短くなってしまいがちだ。

 では、最新EVの航続距離は、外気温によってどれほど短くなってしまうのか? 本連載の番外編として、今回は2021年5月にテストしたマツダ「MX-30 EVモデル」の性能を改めてチェックすることにした。

 今回も監修と解説は、EVや自動運転車といった先進技術に造詣が深い自動車ジャーナリスト・石井昌道氏に依頼。前回のテストと同様のルートを走り、実際の使用状況を想定した走行パターンでチェックを行うことで、季節の違いによるEVの性能差をチェックする。

マツダ MX-30 EVモデルのプロフィール

MX-30 EV

 マツダ初の量産EVとして、2021年1月より発売がスタートした「MX-30 EVモデル」は、特徴的な観音開きの“フリースタイルドア”や日本車としては稀有なクーペSUVのスタイル、そして、素材使いにこだわったインテリアなど、新たなクルマづくりへの挑戦が随所に見られる個性派だ。

 スペックは、バッテリー容量が35.5kWhで、カタログ記載の航続距離はWLTCモードで最長256kmと、ライバルに比べてかなり控えめ。これは「LCA(ライフ・サイクル・アセスメント=製造から廃棄までのトータルでの二酸化炭素排出量)を考慮した結果」だという。

 ちなみに「MX-30」のラインナップに、2022年、ロータリーエンジンを発電機とする“マルチ電動化技術”を採用した仕様も加わる予定だ。

  • ■テスト中の気温変化
  • ・1回目(2021年5月):最低17℃/最高28℃
  • ・2回目(2021年12月):最低7℃/最高12℃
  • ■グレード構成&価格
  • ・「EV」(451万円)
  • ・「EV ベーシックセット」(458万7000円)
  • ・「EV ハイエストセット」(495万円)
  • ■電費データ
  • ◎交流電力量消費率
  • ・WLTCモード:145 Wh/km
  •  >>>市街地モード:121Wh/km
  •  >>>郊外モード:129Wh/km
  •  >>>高速道路モード:152Wh/km
  • ◎一充電走行距離
  • ・WLTCモード:256km

発進時の車内温度の低さやワイパーの作動などが電費に大きく影響することがわかった

 

 今回のMX-30 EVのテストは、前回のリーフe+と同じく冬場にどれぐらい電費が悪化するのかをみるのが目的。前回は5月にMX-30 EVをテストしていて、気温は早朝で18℃、昼間は30℃を超える暑い日だった。今回は12月にしては気温が高いほうだが、それでも1日を通して9~11℃程度。ちなみに、このEVテストでのエアコンの温度設定は、23~25℃の間で乗員が快適に感じるところに随時切り替えている。

 今回の高速道路の電費はその1が5.3km/kWh、その2が5.9km/kWh、その3が6.4km/kWh、その4が6.5km/kWhとなっている。5月のテスト時はその1とその2を通した電費しか記録していなかったが、それでは制限速度100km/hと70km/hの区間が混在してしまうので、現在のようにその1とその4は制限速度100km/h区間、その2とその3は70km/h区間と分けるようにしている。

 比較できるように今回のデータもその1とその2を通しにすると5.6km/kWhとなり、5月の7.2km/kWhから22%ほど悪化したことになる。

 その3は今回の6.4km/kWhに対して5月は7.3km/kWhだったので13%ほどの悪化。

 その4は今回が6.5km/kWhなのだが、5月は5.9km/kWh。5月は交通量が少なく、制限速度の100km/h付近でずっと走れたが、今回は交通量が多くて70km/h制限区間と同じようなペースになってしまったことが影響している。年末はどこも混み合うのだ。

 また、リーフe+と同じく、その1とその2は朝で気温が低く車内も冷えた状態からスタート。雨によって電装品負荷も大きかった。その3以降は気温が高まり、車内も比較的に暖まった状態からのスタートという違いも大きかった。

車内が暖まっていれば外気温による電費の変化は感じられなかった

自動車専用道路である箱根ターンパイク(アネスト岩田ターンパイク)を小田原本線料金所から大観山展望台まで往復した

 ターンパイクの上り区間は5月が1.9km/kWhだったのに対して今回は1.8km/kWhとほぼかわらない。これは車内がすでに暖まっていてヒーターにかかる負荷が少なかったからだと思われる。下りでは1.36kWh分が回生された。前回も1.0kWhと、他のモデルに比べて少なかったので、計測ミス等を疑っていたのだが、どうやらあまり多くは回生されない部類のようだ。

デフォッガーやワイパーの作動もエアコンの半分程度、電力を消費することがわかった

 一般道の電費は前回が5.8km/kWhだったのに対して今回は5.9km/kWhとほぼ同等、ちょっと良くなった。ちなみに同日テストのリーフe+は4月が6.2km/kWhで今回が5.7km/kWhと10%ほど悪化した。

 今回の外気温は9~11℃、リーフe+の4月は18℃前後、MX-30の5月30℃前後と大きく違う。一般的にEVは夏のエアコンよりも冬のヒーターのほうが負荷がかかり、電費の悪化が大きくなるものだが、今回は12月にしては暖かな日であり、春からの悪化はさほど大きくはなく、さすがに30℃ではエアコンの負荷もそれなりにあったのだろうと推測できる。 

 とはいえ、一般道は信号のタイミングや周囲の状況などの影響が大きいため電費が変動しやすく、10%程度の違いが生じてもおかしくない。

東名横浜青葉ICから環八の丸子橋まで約22kmの距離を走行した

タウンユースを前提とした総電力量ゆえ、200km程度の移動で合計3回の充電を必要とした

海老名SAでの急速充電テスト ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません

 バッテリー容量が少ないMX-30は街中メインで使うべきEVであり、当EVテストのように高速道路の割合が多く、半日で200kmほど移動するにはあまり向いていない。それを承知でテストさせてもらっているが、今回は電費が悪化する冬場で雨の影響もあり、しかも気象条件によって撮影場所移動が増えてしまったこともあって、合計3回も急速充電することになった。

 スタート時のバッテリー残量は86%で走行可能距離は149kmと表示されていたが、そこから31.2km走った海老名SAでは68%、118kmに。あまり意味はないのだが、90kWの大出力タイプの急速充電器を使い、30分で5.5kWh分が充電され、82%、144kmに回復した。

 復路の海老名SAに向かっているときにちょっと不安だったので手前の大磯PAで継ぎ足し充電。11%、22kmの状態で、40kWの急速充電器を10分使って5.8kWhを充電。30%、55kmに回復した。そこから約20kmの海老名SAに到着したときは22%、41kmで、40kWの急速充電器を使って30分で16.3kWhが充電され77%、137kmに回復した。

 急速充電はバッテリー残量が少ないときは、ガバッと勢いよく入っていくが、上限に近づくほど勢いが削がれ、80%以上ではだいぶ絞られるものだが、バッテリー容量が少ないほど顕著なようだ。

 往路海老名SAでは30分で68%→82%でプラス14%。わずか5.5kWhしか入らなかった。

 大磯PAの10分、11%→30%のプラス29%、5.8kWhにも及ばない。

 復路海老名SAは30分でプラス55%、16.3kWh。充電開始直後は35kW程度の出力だったが、終了間際は80%に到達していないながらも25kW程度に絞られていた。

 ちなみにリーフe+は、90%程度でも30kWぐらいだった(急速充電器は40kW、90kWのどちらでも)。器の大きさは、バッテリー残量が上限に近づいたときの絞り方にも影響するわけだ。

特徴的な観音扉のため後席へのアクセス性は劣る。だが空間自体は短距離移動に十分な広さがある

マツダ MX-30 EVはどんなEVだった?

テストを監修した自動車ジャーナリストの石井昌道氏

一般道の電費を除けば、寒い冬場は電費が悪化する傾向がおおむね見られた今回のテスト。常識的に言われてきたことでも、実際にやってみて確認することは大切であり、状況によっては必ずしも思った通りにならないこともあるのがわかった。

今回の一般道の電費が思いのほか良かったのは、MX-30 EVはバッテリー容量が少ないゆえに車両重量が軽く、それだけストップ&ゴーが多い一般道の電費が有利という要因もあるのだろう。大容量ならば使い勝手がいいが、重くなって電費は悪くなるというジレンマに対して軽量なシティコミュータータイプの良き面でもある。また、EVならではの上質かつ運動性能の高いシャシー性能が際立っているのがMX-30 EVの魅力。ロングドライブには向かないかもしれないが、EVのポテンシャルの高さを見せてくれるモデルなのだ。

マツダ MX-30 EV ハイエストセット

  • ■全長×全幅×全高:4395×1795×1565mm
  • ■ホイールベース:2655mm
  • ■車両重量:1650kg
  • ■バッテリー総電力量:35.5kWh
  • ■モーター定格出力:80.9kW
  • ■モーター最高出力:145ps/4500-11000rpm
  • ■モーター最大トルク:27.5kgm/0-3243rpm
  • ■サスペンション前/後:ストラット/トーションビーム
  • ■ブレーキ前/後:Vディスク/ディスク
  • ■タイヤ前後:215/55R18
  • 取材車オプション
  • ■メーカーオプション:特別塗装色(セラミックメタリック 3トーン)
  • ■ディーラーオプション:ナビゲーション用SDカード
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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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