新車試乗レポート
更新日:2023.05.09 / 掲載日:2021.04.30

【第1回 日産 リーフe+】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】

文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス

 欧州や中国では政府の補助金政策などが追い風となり、EV(電気自動車)のセールスが急上昇。対する日本も、普及についてはまだこれからといった状況だが、ここへ来て新型車が続々と登場している。そうした情報を耳にし、「ウチもそろそろ」とEVが気になり始めている人、案外多いのでは?

 しかし、エンジン車とは異なり、EVの所有には高いハードルがあるのも事実。航続距離や充電効率、使い勝手などは車種によってマチマチで、どのモデルが自分にとってベターな選択なのか、見分けるのはかなり難しい。

 本連載の目的は、そうした“EV選びのお悩み”を解決することだ。EVや自動運転車両といったクルマの先進技術に造詣が深い自動車ジャーナリスト・石井昌道氏の監修・解説の下、各社の注目モデルを毎回、同じルートでテスト。実際の使用状況を想定した走行パターンでチェックすることで、それぞれの得手不得手を検証していく。

 第1回目にフォーカスするのは、日産自動車の「リーフe+(イー・プラス)」。量産EVのパイオニアは、果たしてどんな魅力を備えているのだろうか?

【第2回 日産 リーフNISMO】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】

 

日産 リーフe+のプロフィール

日産 リーフe+

日産 リーフe+

  日産「リーフ」は量産EVの草分けとして2010年12月にデビューし、2017年9月、2代目となる現行モデルへとフルモデルチェンジ。2019年1月には、標準モデルの40kWhに対して、62kWhの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載し、モーターの出力もアップさせた「リーフe+」をラインナップに加えた。初代からのグローバル累計販売台数はすでに 50万台を突破している。

 また「リーフに変える。くらしが変わる。」のキャッチコピーからもうかがえるように、日産自動車は、リーフが家庭用の蓄電池代わりに使えることなど、人々のライフスタイルを変える存在であることをアピール。そのためのインフラづくりはもちろんのこと、政府や自治体、日産ディーラー等への働きかけによる充電スポットの拡充など、EVの普及に向けた積極的な取り組みを行っている。

 現行モデルのボディサイズは、全長4480mm、全幅1790mm、全高1560mm(e+は1565mm/可倒式ルーフアンテナ装着時はそれぞれ1540mm/1545mm)で、ホイールベースは2700mmに設定。

■グレード構成&価格
<40kWh仕様>
・「S」(332万6400円)
・「X」(382万5800円)
・「XVセレクション」(406万3400円)
・「アーバンクロム」(411万8400円)
・「G」(419万3200円)
・「NISMO」(429万8800円)
・「AUTECH」(410万800円)

<62kWh仕様>
・「e+ X」(441万7600円)
・「e+ アーバンクロム」(471万200円)
・「e+ G」(499万8400円)
・「e+ AUTECH」(469万2600円)

 

 

高速道路での電費をチェック! WLTCモード燃費とのズレを確認、ドライバーによる差が出た結果に

高速道路での電費テストデータ ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません

高速道路での電費テストデータ 天候:くもり 「高速その1」時間:7:00-8:27、気温10度、「高速その2」時間:12:31-13:11、気温19度、「高速その3」時間:13:45-14:04、気温18度 ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません

 スタート地点から小田原まで、第三京浜→首都高・横浜北西線→東名高速→小田原厚木道路を経るが、それぞれ制限速度が違い、しかも電費が悪化するはずの100km/h制限の区間が渋滞していて一般道よりも電費は良好なぐらいの状況だった。

 だから6.8km/kWhと良好な数値となっている。復路は70km制限区間が6.4km/kWh、100km/h制限区間が5.6km/kWhで、それなりに速度域の差が出ている。高速道のほうが悪化していく傾向は見られるのだ。

 ただし、電費データとWLTCの市街地モード・郊外モードを比べると必ずしもリンクしていない感もある。じつはこのテストは第2回のリーフNISMOと同時に行った。2台が連なって走ると後続車のほうが電費が良くなる傾向が強いことを経験から知っていたので、数分の間隔をあけて走行。それならば交通状況も大きく変わることはないはずで、実際に2台の走行所要時間はほぼ同一。

 WLTCモード燃費では、リーフNISMOのほうが概ね10%は電費が悪いのだが、ちょくちょく逆転現象が起きているのだ。考えられるのはドライバーの差。2人でかわるがわる運転していたのだが、特定のドライバーが電費がいい傾向にある。

 テストコースできっちりと条件を揃えた厳密なテストではなく、あくまでリアルワールドの交通のなかを自然に走らせるコンセプトなのでバラつくのは当然で、これもまた生のデータなのだが、短い距離での電費テストは誤差も生じやすいので、次回からはもうちょっとは管理を徹底したい。

  • 往路の高速テストコース。第三京浜道路から首都高を経由し東名

     

    往路の高速テストコース。第三京浜道路から首都高を経由し東名

     

  • 往路の高速テストコース。小田原厚木道路の小田原西ICから東名厚木ICを経由し横浜青葉ICまで走行。途中海老名SAで充電を行った

    往路の高速テストコース。小田原厚木道路の小田原西ICから東名厚木ICを経由し横浜青葉ICまで走行。途中海老名SAで充電を行った

     

 

ターンパイクでの電費をチェック! 上りは車重の重さが影響したが、下りの回生で挽回

ターンパイクでの電費テストデータ ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません

ターンパイクでの電費テストデータ 天候:くもり 「ターンパイク上り」時間:9:06-9:26、気温9度、「ターンパイク下り」時間:11:06-11:27、気温12度、 ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません

 ターンパイクの上りは1.6km/kWhとやはり激しく燃料消費した。ここでのリーフNISMOの数値は1.8km/kWhでモードから考えれば逆転現象。だが、車両重量が重いことを考えればさもありなん、といったところだ。

 下りではバッテリー残量計が30%から37%に増加。車載燃費計から計算すると、4.7kWh分を回生で取り戻したことになり、リーフNISMOを1.2kWh上まわった。重い車両重量は回生量を増やす効果があるものと推測できる。上りと下りのトータルでの電費は6.9km/kWhでリーフNISMOを上まわった。上りで負けた分を、取り戻した回生の威力は凄い。ただし、ここでもドライバーによるバラツキも多少は疑われ、モード燃費の差よりも小さいので、重いのが絶対に有利とは断言できない。

 また、比較的に長時間にわたって回生し続けるので、バッテリー温度が上昇しないかという心配もあったが、車載メーターで確認したところ両車ともほとんど上昇はみられなかった。ちなみにe+の62kWhのほうが、スタンダードな40kWhよりも冷却効率が悪くなりそうなイメージがあるが、実際には逆。40kWhは2並列なのに対して62kWhは3並列となるからだ。サーキットなどフルパワーで連続走行すると、温度上昇してセーフモードに入るのは40kWhが先だ。

 いずれにせよ、片道15.5kmで963.6mもの標高差があるステージを、郊外モード燃費並みにしてしまうのだからEVの回生は有効なのだ。

自動車専用道路である箱根ターンパイク(アネスト岩田ターンパイク)を小田原本線料金所から大観山展望台まで往復した。

 

自動車専用道路である箱根ターンパイク(アネスト岩田ターンパイク)を小田原本線料金所から大観山展望台まで往復した

 

 

一般道での電費をチェック! WLTCモードとの乖離は少ないが、NISMOとの差は想像以上に少ない

一般道での電費テストデータ ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません

一般道での電費テストデータ 天候:晴れ 「一般道」時間:14:36-15:46、気温18度 ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません

 一般道の電費は6.2km/kWhで、WLTC市街地モードの約85%だから、まあ妥当なところだろう。ただし、郊外路モードや高速モードと実電費との差、リーフNISMOとの相対比較ではもう少しよくてもいいかな? とも思う。これまたリアルワールドでの走行なので、バラツキが出るのは仕方ないが、もしかしたらリーフe+はバッテリー容量が多く、車両重量が重いため(リーフNISMOの160kg増)、街中でストップ&ゴーが多いと、落ち込みが少し多いのかもしれない。

 とはいえ、別項のコラムでも述べたとおり、EVは、とくに発進や低速域で加速の仕方による電費の変動は、エンジン車の燃費に比べるとずいぶんと少なく、低速域の効率もいいので、街中を得意としていることは間違いない。

東名横浜青葉ICから環八の丸子橋まで約22kmの距離を走行した

 

東名横浜青葉ICから環八の丸子橋まで約22kmの距離を走行した

 

 

急速充電器テスト! 大容量バッテリーのメリットも確認

海老名SAでの急速充電テスト ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません

海老名SAでの急速充電テスト ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません

 復路の海老名SAでの充電は、40kWの急速充電器で行った。じつは到着した時間の数分のズレで、リーフNISMOが90kWでリーフe+が40kWを使うことになってしまったのだが、本来なら逆が望ましいところ。クルマ側の受け入れ能力の最高値はリーフNISMO (40kWh)が50kW、リーフe+(62kWh)が70kWだからだ。

 バッテリー残量24%で繋いで最初のうちは36kWほどの出力で充電されていく。29分が経ったところでも34kWだったので、落ち幅は小さいが、62kWhバッテリーの受け皿が大きいからだ。最終的にはバッテリー残量57%となったが、これぐらいならさほど充電器のパワーが絞られないということであり、大容量バッテリーの使い勝手のよさはこんなところにも表れる。

 ちなみにリーフNISMOのほうが最初のうちは44.7kWと40kW充電器より出力が大きかったが、28分が経ってたしかめると24.7kWだった。そのときのバッテリー容量はすでに80%に達していたのでだいぶ絞られるのだ。

 充電器の表示による充電量は17.6kWhで、奇しくもリーフNISMOとほぼ同等だった。

後席足元チェック! フロアに段差はなく、前席のシート下に足先が入る

 

後席足元チェック! フロアに段差はなく、前席のシート下に足先が入る

 

 

リーフe+はどんなEVだった?

テストを監修した自動車ジャーナリストの石井昌道氏

テストを監修した自動車ジャーナリストの石井昌道氏

 62kWhの大容量バッテリーによって、航続距離は458km(WLTCモード)におよぶのが魅力のリーフe+。現行の2代目リーフはプラットフォームやタイヤまでもキャリーオーバーであるものの、フルモデルチェンジ時にはそれ相応の改良が施され、進化はしている。

 以前にエンジニアに取材したところでは、ダンパーの質をあげたのが効果的だったそうだ。たしかに、重たいe+であっても、操縦安定性は確保されていて、乗り心地もまずまず。ただし、サスペンションもタイヤもソフトタッチで、もう少しシャキッとして欲しいと思う場面もある。リーフNISMOは、その点で質が高く、運転が好きな人はそちらを検討するのもアリだろう。

 今回の走行はトータルで202km。こちらは満充電ではなく。スタート時が70%、復路の海老名SAで24%になり、急速充電で57%へ。ゴール時は45%だった。ほぼ満充電でスタートしたリーフNISMO同様、無充電でも12%ほど残る計算で、おそらく50km程度の航続可能距離が表示されただろう。家庭などの200V普通充電で満充電近くにしておけばもう100kmぐらいは行けそうであり、改めて大容量の良さを知った。90kWの急速充電器が増えてくれば、使い勝手はさらに高まるはずだ。

日産 リーフe+ G(62kWh)

 

■全長×全幅×全高:4480×1790×1565mm
■ホイールベース:2700mm
■車両重量:1680kg
■バッテリー総電力量:62kWh
■モーター定格出力:85kW
■モーター最高出力:218ps/4600-5800rpm
■モーター最大トルク:34.7kgm/500-4000rpm
■サスペンション前/後:ストラット/トーションビーム
■ブレーキ前後:Vディスク
■タイヤ前後:215/50R17

取材車オプション
■メーカーオプション:特別塗装色、後席クッションヒーター+後席ヒーター吹き出し口+高濃度不凍液

■ディーラーオプション:LEDフォグランプ、ドライブレコーダー、ウインドウ撥水、トノカバー、デュアルカーペット

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