新車試乗レポート
更新日:2023.05.09 / 掲載日:2023.02.06

【トヨタ bZ4X 4WD】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】

文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス

 欧州や中国では、クルマを取り巻く環境や政府の補助金政策なども追い風となり、EV(電気自動車)のセールスが急進。対する日本も、普及はまだまだこれからという状況ながら、補助金の充実や新しいEVの登場&上陸など、EV関連のニュースが次々とメディアをにぎわせている。そうした状況もあり、「そろそろかな」とEVが気になり始めている人も案外多いのでは?

 とはいえエンジン車とは異なり、EVの所有はハードルが高いのも事実。航続距離や充電効率、使い勝手などは車種によって大きく異なるため、どんなモデルが自分にとってベターな選択なのか、見分けるのがまだまだ難しい。

 本連載は、EVや自動運転車といったクルマの先進技術に造詣が深い自動車ジャーナリスト・石井昌道氏の監修・解説の下、各社の注目モデルを毎回、同様のルートでテスト。実際の使用状況を想定した走行パターンでチェックすることで各モデルの得手不得手を検証し、皆さんの“EV選びの悩み”を解決することを目的とする。

 今回フォーカスするモデルは、トヨタ「bZ4X」の4WDモデル。トヨタブランドのモデルとしては初となる量産EVの4WDモデルは、果たしてどんな実力を見せてくれるのだろう?

【第36回 ボルボ XC40リチャージ】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】

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トヨタ bZ4X(4WD)のプロフィール

bZ4X(4WD)

 2021年12月14日、トヨタ自動車は将来的なEV戦略説明会を開催。2030年までに30車種のEVを市場投入し、2030年にはグローバルで350万台のEV販売を目指すとアナウンスした。

 2021年5月の2021年3月期決算説明会の席上、トヨタ自動車は「2030年に200万台のEVとFCEV(燃料電池車)を販売する見通しだ」と発表した。

 それからわずか半年後となる2021年12月14日には、改めてEVの将来戦略に関する説明会を開催。その席上、豊田章男社長は「2030年までに30車種のEVを市場投入し、2030年にはグローバルマーケットで350万台のEV販売を目指す」と力説した。

 この350万台という数字は、完全なるEVブランドへの転換を目論むレクサスブランドのそれを含んだものだが、わずか半年あまりで計画を大幅に上積みしたトヨタの決断は、メディアだけでなく多くの人々を驚かせた。

 このように、EV“にも”注力し始めたトヨタ自動車が、本家であるトヨタブランドに初めて投入した量産EVが、ここに紹介する「bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」だ。2021年12月14日のEV戦略説明会で多数のコンセプトカーともにプロトタイプが公開され、2022年5月に発売がスタートした。

 bZ4Xは、スバルとの共同開発によって誕生したSUVスタイルのEVで、トヨタとスバルのエンジニアが共同開発した“e-TNGA”と呼ばれるEV専用プラットフォームを採用する。一見すると同ブランドの「RAV4」にも似ているが、完全なるオリジナルの車体を与えられたEV専用モデルである。

 スバル版の「ソルテラ」とは異なり、bZ4Xはサブスクリプション(リース)のみでの販売となり、トヨタのサブスクサービス「KINTO(キント)」を通じて提供される。

 ユーザーはbZ4Xの車両本体や利用に伴う税金、メンテナンス費用、さらに任意保険まで含んだ総額を毎月一定額ずつ支払いながら利用権を獲得する。リースのみでの販売に対しては賛否両論あるが、走行用バッテリーの劣化やリセールバリューの低下など、まだまだ払拭できないEV購入に関する不安要素をトヨタ側が考慮しての対応である。

 bZ4Xのスリーサイズは、全長4690mm、全幅1860mm、全高1650mmで、ホイールベースは2850mm。SUVスタイルのEVとしては全高が低めで、長いホイールベースの恩恵もあってサイドビューは伸びやかだ。

 搭載するバッテリーは71.4kWhとそれなりに大容量だが、その配置などをゼロから吟味できるEV専用プラットフォームの採用により、キャビンのフロアには余計な張り出しがない。そのため、特にリアシートは大人でもゆったり座れるなど、キャビンはゆとりにあふれる。

 さらにそうした恩恵は、ラゲッジスペースでも感じられる。フル乗車時で奥行き985mm、最大幅1288mmという荷室空間は、レジャードライブのアシとしても活躍しそうだ。

 ひさしのないトップマウントメーターやダイヤル式のシフトセレクターなど、コックピット回りのディテールはこれまでのトヨタ車には見られない新鮮なもの。また、クロスを貼ったダッシュボードなど、質感向上のための新たなトライも見られる。

 駆動方式はFWDと4WDとが用意されるが、今回テストしたのは4WDモデル。フロントとリアにそれぞれ最高出力109ps、最大トルク169Nmのモーターを配置したツインモーター仕様だ。ちなみにFWD仕様は、最高出力203.9ps、最大トルク266Nmのモーターで前輪を駆動する。1度の満充電で走れる航続距離(WLTCモード)は、4WD仕様で最長540km、FWD仕様は最長559kmとなる。

■グレード構成&価格
・「Z」<FWD>(契約期間10年/申込金38万5000円/1〜4年目月額利用料10万6700円/4年目以降は割引あり)
・「Z」<4WD>(契約期間10年/申込金38万5000円/1〜4年目月額利用料11万5500円/4年目以降は割引あり)

■電費データ
「Z」<4WD>※18インチタイヤ装着車
◎交流電力量消費率
・WLTCモード:134Wh/km
 >>>市街地モード:120Wh/km
 >>>郊外モード:125Wh/km
 >>>高速道路モード:146Wh/km

◎一充電走行距離
・WLTCモード:540km

【高速道路】FWDモデルとの差はカタログ値に近く納得できるもの

 先月はトヨタbZ4Xとスバル・ソルテラという共同開発されたモデルのそれぞれFWDをテストしたが、今回はどちらも4WDを連れ出した。

 bZ4XはZグレードで18インチの標準装着タイヤを履く。テスト当日はスタート時の外気温が5℃と1月の標準的な寒さ。一般的にEVはヒーターを使用すると電費が悪化し、過ごしやすい季節に比べると20〜30%は落ちると言われている。当EVテストでの実績では15〜20%といったところ。スタート地点まで40分ほどヒーターオンで走ってきているので、それなりに車内は暖まっている状態だ。高速道路電費は制限速度100km/h区間のその1が4.1km/kWh、その4が4.9km/kWh、制限速度70km/h区間のその2が5.5km/kWh、その3が4.9km/kWhだった。

 今回、スタート時点を30分ほど早めたところその1での交通の流れが良く、8〜9割方は制限速度をキープできたので、いつもより電費は辛めに出ているが、データとしての確度は高いといえる。その4はそれなりに交通量が多く、制限速度をかなり下回った区間もあったので電費は良く出ていた。制限速度70km/h区間では、その2は比較的スムーズに走れたが、その3は軽い渋滞がいくつか発生してペースダウン。こちらは逆にペースが遅いほうが電費が悪化したが、加減速が多いことが影響したようだ。

 約1ヶ月前にテストしたbZ4Xはその1が5.1km/kWh、その4が5.2km/kWh、その2が5.2km/kWh、その3が5.5km/kWh。交通状況の影響などを差し引いて比べると、7〜8%程度はFWDのほうがいいといったところ。カタログのWLTCモード電費では、FWDの20インチと4WDの18インチでは7〜8%の差なので、だいたい性能通りの違いが出たということだ。

【ワインディング】クラスの標準的な電費データとなった

 約13kmの距離でスタート地点とゴール地点の標高差が963mもあるターンパイクでは、登りの電費はどのモデルも良くはない。

 bZ4X 4WDの登りの電費は1.4km/kWh。それでもbZ4X FWDとかわらなかったのでまずまずといったところだ。DセグメントSUVのなかでも標準的だろう。

 下りでは電費計の推測から、3.25kWh分の電力を取り戻した。ここではFWDよりも、前後にモーターを持つ分有利なのかと思いきや、FWDは3.6kWh分を回生していた。ターンパイクではACCを使ってなるべく走りを一定にしているつもりだが、こうやって差がつくこともある。たった13kmの短い距離なので、ちょっとしたことでかわってきてしまうのも致し方ないところであり、許容できるばらつきの範囲内だろう。下り始めるときの航続可能距離は120km(エアコンオン時)だったが、13kmを走って135kmまで伸びていた。

自動車専用道路である箱根ターンパイク(アネスト岩田ターンパイク)を小田原本線料金所から大観山展望台まで往復した

【一般道】WLTCモードと実電費の差は若干物足りなさがある

 

 一般道での電費は4.9km/kWhで、FWDの5.1km/kWhに比べると4%ほど悪かった。WLTCモードの市街地電費では2%程度の差になっているので、今回はほぼデータどおりだったようだ。一般道は信号のタイミングや周囲の交通環境で電費がバラつくので致し方ないところではある。WLTCの市街地モード電費は8.13km/kWhで、達成率は68%。少し物足りない気もするが冬場であることを考えればぎりぎり納得いく数値であり、車両重量2010kgのSUVとしても、標準的といえる電費だ。

東名横浜青葉ICから環八の丸子橋まで約22kmの距離を走行した

【充電】エアコンのON・OFFで走行可能距離にかなりの差が出る

海老名SAでの急速充電テスト ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません

 走行可能距離276kmからスタートし、150.4km走行して復路海老名サービスエリアに到着したときには走行可能距離96kmになっていた。

 ちなみにbZ4Xの走行可能距離はエアコンのオン・オフでかわり、たとえばスタート時にエアコンオンだと276kmのところエアコンオフにすれば382kmになり結構な差がある。エアコンオンはけっこう辛めに出しているようだ。

 出力40kWの急速充電器を30分使用して17.9kWhを充電され、走行可能距離は194kmに増えた。充電開始直後から終了まで安定して35〜36kWの出力が出ていたので、ほぼ順調と言える。それでも30分で100km走行分だと少し物足りない。今回の実電費で照らし合わせると、片道500km級のロングドライブだと3回の急速充電が必要になりそうだ。90kW以上の高出力充電器の普及がのぞまれる。

前席とのゆとりはかなりあり、足元もフラットでかなりゆとりがある

bZ4X(4WD)はどんなEVだった?

テストを監修した自動車ジャーナリストの石井昌道氏

 bZ4Xとソルテラは、FWDでは走りの性能に違いはないがAWDでは差別化が図られている。bZ4Xは万人受けするタイプで、全般的にソフトな乗り心地。エンジン車やハイブリッドカーから乗り換えても違和感が少ないというもトヨタらしいところだ。

 FWDのときも述べたが、バッテリー残量の表示がないのはやはり不便に感じられる。化学物質であるバッテリーの正確な残量を%表示するのは無理があると言われるが、大いに目安になるはずだ。ドライバーが頼れるのは航続距離だけで、過去走行を参考にした電費とバッテリー残量、エアコン使用の有無で割り出した数値ゆえ、乖離しても仕方がないので、かなり余裕をもった充電をしておかないと不安になる。

bZ4X Z<4WD>※18インチタイヤ装着車

■全長×全幅×全高:4690×1860×1650mm
■ホイールベース:2850mm
■車両重量:2010kg
■バッテリー総電力量:71.4kWh
■フロントモーター定格出力:59.0kW
■フロントモーター最高出力:80kW(109ps)
■フロントモーター最大トルク:169Nm(17.2kgm)
■リアモーター定格出力:59.0kW
■リアモーター最高出力:80kW(109ps)
■リアモーター最大トルク:169Nm(17.2kgm)
■サスペンション前/後:ストラット/ダブルウィッシュボーン
■ブレーキ前後:Vディスク
■タイヤ前後:235/60R18

取材車オプション
ボディカラー(ブラック×プレシャスシルバー)、パッケージオプション/18インチタイヤ×パノラマムーンルーフ<パノラマムーンルーフ(電動サンシェード/挟み込み防止機能付)、おくだけ充電、フロアマット(ラグジュアリータイプ)>、カラードキャリパー(ブルー)、リヤスポイラー、前後方2カメラドライブレコーダー、寒冷地仕様

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石井昌道(いしい まさみち)

ライタープロフィール

石井昌道(いしい まさみち)

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

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