中古車業界での「事故車」とは、事故に遭った車のことではなく、特定の修復歴がある車のことを指します。そのため、事故に遭った車でも売却できる可能性は十分にあります。
事故車を売却するなら一括査定の活用が便利です。専門の販売業者などを含めた複数の業者へ相談できるという利点があります。
高値での買い取りが難しそうな事故車ですが、売却を検討している方はこの記事を読んで、知識を身につけておきましょう。
事故車は一括査定と相見積もりで有利に売却しよう!
重要部品などに修理を施した車は「事故車」と呼ばれます。事故車は故障のリスクが高く、査定でも減額あるいは値段がつかない場合が多いです。
しかし、売却先を工夫して選ぶことで、少しでも有利に売却することが可能です。海外の販売ルートを持つ販売業者や、解体したパーツを売買する業者なら売却する余地があります。
こういった業者を見つけるには、一括査定サービスを利用するのが便利です。
「故障車」「事故車」「修復車」の定義
はじめに、よく使われる「故障車」「事故車」「修復車」という言葉の定義を整理しておきましょう。
特に勘違いしやすいのが事故車と修復車になります。
故障車と呼ばれる車は、その名の通り、どこかの箇所が故障している車を指します。これはすぐに直せる程度の小さなものから、車が動かなくなる程の大きなものまで全て含んでおり、細かい明確な定義はありません。
ただし、車の査定に関して言えば、次に説明する事故車には該当しないものの故障はしている車という位置づけになります。
例えば、エアコンが効かない、異音がするなどの現象が見受けられるものは全て故障車と言えるでしょう。
次に事故車の定義ですが、これは字面だけだと「事故を起こした車」のように思えます。
しかし、中古車業界では「車の重要な骨格部分に修復を施した車」のことを事故車と呼びます。そのため、事故に遭遇した経歴があるかどうかは関係ありません。
中古車業界における事故車とは、車の重要な骨格部分に修復を施した車のことです。そのため、事故車は「修復車」とも呼ばれています。
その修復が事故に由来するものか否かは関係なく、事故を起こした車でも、骨格部分の修復歴がなければ事故車とは呼びません。
修復歴があると故障しやすい車と見なされるため、買取査定では大きく減額となるか、値段がつかなくなる可能性があります。
こうした修復歴がある車は激安中古車として販売されていることがあり、購入する際はかなり慎重な姿勢で臨む必要があります。中には、事故車であることが明確に説明されないまま販売されるケースもあるからです。
また、事故車である事実を隠したまま査定や売却をすると、後でトラブルになるということもあり、車を売却する際の重要なポイントです。もし隠していたことが売却後にバレてしまうと、損害賠償に発展してしまうかもしれません。
車の査定時によく基準となるのが、日本自動車査定協会(JAAI)による「中古車査定基準」です。この基準に従うと、以下で挙げる骨格部品に損傷・修復があるものが「事故車」に該当することになります。
- クロスメンバー
- サイドメンバー
- インサイドパネル
- ダッシュパネル
- ピラー
- ルーフ
- センターフロアパネル
- フロアサイドメンバー
- リアフロア
- ラジエータコアサポート(交換されたものに限る)
ただし、重要な骨格部分とされるのは溶接接合されているものだけで、ネジ止めされている箇所は該当しません。
パーツに曲がりや大きな凹み・交換履歴があると修復歴ありとなります。
次に、修復した履歴があっても「事故車」扱いとはならないパーツを挙げていきます。
- フロントバンパー
- フロントフェンダー
- ロアスカート
- ボンネット
- トランクリッド
- リアフェンダー
- リアバンパー
- サイドシルパネル
- ドア
これらは車の骨格とは関係がないため、たとえ修理の規模が大きかったとしても、また事故による損傷があっても事故車とはなりません。
フレームからボルトで外せるかどうかが目安となります。
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事故車でも売れる理由
事故車は車にとって重要な部分に損傷・修復歴があることから、高値で売却するのは難しいとされています。
しかし、できるだけ有利に販売する方法が2つありますので紹介します。
車の買取業者の中には、事故車や低年式車、過走行車のような、通常だと売却するのに問題があるような車を専門に買い取ってくれるところもあります。
特に、海外に販売ルートを持っている業者はこのような点で頼りになるでしょう。
事故車のように問題のある車は、日本国内でほとんど価値がありません。しかし、海外では、多少問題のある車でもメンテナンスをこまめに行い完全に使えなくなるまで乗り潰すことが多くあるので、売れることがあります。
もちろん、業者に依頼せずとも、個人で輸出して売却することも可能ですが、そのためには英語力が必須となりますし、インボイス・パッキングリスト・船荷証券に輸出抹消登録証明書などを用意する必要があります。
一般の中古車買取店が事故車などを簡単に買い取らないのは、輸出販売するにはこうした高いハードルがあるためです。検疫や費用の問題もあるので、やはり全て任せられる専門業者に依頼するのがいいでしょう。
車の処分や売却方法として「部品取り」と呼ばれるやり方があります。これは問題のある車から使える部品だけを抜き取るものです。こうした形で車を評価してくれる業者に売れば、廃車同然の車でも値段がつくことがあります。
この部品取りは、解体業の許可を得ている場合しかできず、個人が行うと違法行為となるので注意が必要です。
また、取り外した部品を前項のように海外輸出して販売する業者も存在しています。
事故車の買取事例
事故車は売れないと廃車にしてしまうケースもありますが、ここまでの内容で、必ずしも売れないわけではないということが分かりました。
実際に、事故車買取の専門業者なら数十万円で買い取ってくれることもあります。事故車を少しでも高く売りたいなら、こうした専門業者への売却を検討しましょう。
専門業者であれば、事前に修理をせずとも引き取ってもらえます。(修理してしまうとかえって赤字になることが多いです)
以下は、事故車の買い取りを専門とする業者の買取金額の一例です。
- スイフト(事故車)…70,000円
- インプレッサ(事故車・自走不可)…40,000円
- エスティマ(事故車・低年式・10万㎞越え)…23,000円
- キャロル(事故車・自走不可)…30,000円
- アリオン(事故車・バッテリー上がり)…30,000円
もちろんこれは一例なので、実際に査定を受けてみないと一概には言えません。しかし、廃車にするよりは値段がつく可能性があるでしょう。
事故車におすすめの査定方法
一般の買取業者では、なかなか高値がつかない事故車を買取査定に出す場合は、複数の業者に依頼し、最も高値をつけてくれるところを探すのがおすすめです。
このやり方の2種類のパターンを、以下で説明していきます。
車を売却する方法の一つに、「出張査定」というやり方があります。
これは自宅などの車を保管する場所へ査定士に直接来てもらい、その場で査定してもらうというものです。事故や故障で動かない車でも見てもらうことができます。
複数の業者に依頼して査定価格の見積もりを出してもらい、その中で最も高値をつけてくれた業者に売却すれば、事故車でも有利に売却できるでしょう。こうした見積もりを比較する方法は「相見積もり」と呼ばれています。
このように、車を売却するにあたり「出張査定」と「相見積もり」を組み合わせると大きな効果を発揮します。
車の査定基準はどこでも一律なので、業者のところに直接車を持ち込んで査定してもらう場合と出張査定では結果が変わることもありません。ただし、業者によっては出張査定は有料の場合もあります。
また、複数の業者に依頼するのは手間がかかります。この手間を省くことができるのが、次に説明する「一括査定」です。
前項で説明した「出張査定+相見積もり」は、複数の業者に査定を依頼する手間がかかるという点がデメリットでした。この点をカバーできるのが「一括査定」です。
一括査定は、Web上の専用サイトから申し込みを行います。ここで1回申し込むだけで、登録されている複数の買取業者へ自動的に情報が行き渡ります。
後は買取業者から「査定と買い取りを任せてほしい」という営業電話がくるのを待つだけです。その後の流れは「出張査定+相見積もり」と同じです。
しかし、一括査定の場合は、見ず知らずの業者から営業電話が大量にかかってくることが多く、中には悪質な業者も交じっている可能性があるので、細心の注意を払いましょう。
事故車は高値買取が難しいだけに、複数の専門業者に査定をしてもらい、少しでも高い査定額をつけてくれるところを見つけることが大切です。
事故車専門の業者を自力で探すのは難しいので、一括査定を上手に活用すれば大いに役立つでしょう。
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事故車を高く売るための手順
ここまでで、事故車と呼ばれる車の特徴や、売却する場合の注意点、適した売却方法などを説明しました。
次に事故車をできるだけ高値で売るための手順を解説していきます。
売却予定の車に修復歴があり、一般的な市場価格での売却が望めないようであれば、まずは複数の業者から査定をしてもらいましょう。
自力で専門業者を探してもいいですし、一括査定を利用して買取業者の候補を絞るという手もあります。
そして、業者が出す査定価格の見積もりを比較し、最も高値をつけてくれた業者へ買い取りを依頼します。この段階が、一般的な買取業者にするか、事故車の専門業者にするかの分岐点です。
事故車の疑いがある車を複数の業者に査定してもらうのは、買取価格を見るだけではなく、その車が本当に事故車なのかどうかを確認する意味合いもあります。そのため、査定の結果、事故車や故障車ではないことが判明することもあります。
その場合、改めて業者が出してきた買取価格の見積もりを比較して、最も納得できるところへ売却しましょう。
もし事故車や故障車ではないのであれば、事故車専門の業者よりも普通の業者に売ったほうが高値がつきます。
一方、事故車の疑いがある車を査定にかけてみて、やはり事故車であることが確定したら、事故車専門の業者に売ることを改めて検討しましょう。
一括査定を利用している場合でも、仕切り直しのためにここでいったんキャンセルすることが可能です。
もちろん、一括査定サービスを通して査定してくれた業者の中に、事故車を取り扱う業者も含まれているかもしれません。その場合は、そのまま買い取ってもらうのが最も効率的です。
故障や損傷がある車を売却する際の注意点
ここからは、修復歴があり、事故車となる可能性がある車や、故障や損傷がある車を売却する際の注意点を説明します。
注意点はいくつかありますが、最も大切なのは「故障・損傷・修復歴を隠してはいけない」ということです。
修復歴がある車は「事故車」と見なされ、査定額の減額は避けられません。
しかし、修復歴を隠したり嘘をついたりすると、バレたときに結局減額となりますし、最悪の場合は契約のキャンセルや損害賠償に発展します。
一括査定や普通の出張査定では、実車の査定前から、車の状態について大まかな聞き取りなどが行われます。軽微な傷などは話す必要はありませんが、故障・損傷・修復歴については、この時点で隠したりせずに正直に説明しておきましょう。
修復歴があると知っていて意図的に隠した場合、法律的には契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)を問われる可能性が高いです。これは簡単に言えば、車の場合は故障や不具合があった場合に売り主が責任を負うというルールです。
修復歴を隠した状態で売買契約が成立し、それが後でバレてしまうと、代金の返却のみならず車の移送費用や保管料まで請求されることもあります。
修復歴と思われる事項があれば、必ず説明しておきましょう。
最近は車の修復技術も進歩を遂げているので、プロの査定士でも修復歴に気付かないことがあります。
そう考えると、修復歴を隠して査定に出してもいいのではないか?と思うかもしれませんが、それはリスクが高すぎます。
修復歴を隠して車を売却するのは、法律的に「告知義務違反」となり、後でバレた際に相応の責任を取らされることになるでしょう。損害賠償、各種費用の請求などのリスクを考えると、修復歴を隠すことは賢明ではありません。
車の査定は厳しく行われます。仮に、車を査定に出した時点で隠していた修復歴の存在がバレなかったとしても、次の買い主への引き渡し時などに再チェックが行われるので、どこかの段階でほぼ確実に発覚するでしょう。
修復歴の存在と、それを隠匿していたことが発覚すれば、当然車の売り主は告知義務違反として民事上のペナルティを課せられることになります。
トラブルに発展することのないよう、修復歴は隠さずに査定を受けましょう。
故障や損傷があると査定時にマイナスとなるのは確実なので、修理しておいたほうが有利になるのではないか?と思うかもしれません。
しかし、小さな傷や凹みは自力でも修復できるものの、素人が修理するとかえって状態が悪化することもあります。見た目は修復されていても、プロの査定士が見ればかえってマイナスになるかもしれません。
また、大きな損傷の場合、修理すれば結局修理代が高くつきます。いくら査定で有利になると言ってもその修理代をカバーできるかは分からないので、修理はせずに査定に出したほうがいいでしょう。
車を売却すると、自動車税の残り期間分が買取金額にプラスされることがあります。査定を受ける段階で、この分が金額に反映されているかどうか確認しましょう。
これは業者によって対応が異なるので、実際の車の買取金額は少額なのに、自動車税分が含まれていて得したように見えるだけだった、ということもあります。
もともと事故車は高値売却が簡単ではないので、こうした見落としがないようにしましょう。