車を所有している限り、車検は必ず受けなければなりません。しかし、何らかの理由で車検切れになってしまうケースも考えられます。
そんな時、車はどのように扱えばいいのでしょう。車検切れを迎えた車を公道で運転するのは禁じられており、やがて自賠責も切れるなど想像以上に大きなデメリットを負うことになります。
その詳しい内容や、改めて車検を受ける方法、そして車検切れの車を処分する方法などを説明します。
車が「車検切れ」のままではリスクとデメリットしかない
車検の有効期間が過ぎてしまうと、いわゆる「車検切れ」の状態になります。
このまま放置しても、公道で運転はできない、自賠責が切れれば罰則が重くなる、それでも自動車税は課せられる…と、いいことはありません。
車検切れの状態は早めに解消しましょう。
車検切れの状態で公道に出ると罰則の対象になる
車検切れの車で公道を走ると、たとえそれが「車検を受けるための移動」だったとしても懲役刑や罰金刑を受けることになります。
さらに自賠責が切れていれば、ますます処分は重くなり、免許停止といった行政処分も免れられないでしょう。
車検切れかどうかはフロントガラスに貼られた車検標章を見るとすぐ分かる上に、今はナンバーを自動で読み取るNシステムも発達しています。
以下では、車検切れで公道を運転した場合の罰則について説明します。
車検切れの車で公道を走ると、6ヶ月以下の懲役か300,000円以上の罰金となります。また、刑事罰とは別に行政処分として免許停止・取り消しを受けることもあり、違反点数は6点です。
これに加えて自賠責保険が切れていれば、さらに違反点数6点が加わり合計12点となる上に、刑事罰も1年以下の懲役もしくは500,000円以下の罰金となります。また、事故を起こしても自賠責の補償はされません。
車検切れの車は、たとえ「車検を受けるため」の移動だとしても公道は走れません。そのため、レッカー移動などの方法を考える必要があります。
車検切れの車で公道を走っても、「そう簡単にはバレないだろう…」と思うかもしれません。
しかし、車のフロントガラスに貼られた検査標章には車検満了日が記されており、それを見ると一発で車検切れかどうかが分かります。
また2018年からは、Nシステムと呼ばれるナンバーの自動読み取り装置が公道に設置されるようになりました。これが全国の運輸局に配備されたことで、車検切れの車はますます見つかりやすくなっています。
所有している車が車検切れの状態になっても、それだけで問題があるわけではなく罰則を科せられるのはあくまでも公道に出た場合だけです。
車検切れの車をただ所有しているだけであったり、私道を走ったりするのであれば特に問題はありません。
ただし、車検の有効期限は検査標章に記された満了日の24時を過ぎた時点で終了になるため、日付が変わる直前に公道を走るような場合は要注意です。
また、車検切れになってから改めて車検を受けるとなると、公道を走らずにどのように車を移動させるかという問題が出てきます。
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車検切れによるその他のデメリット
車が車検切れの状態で公道を走れないとしても、ナンバーが付いている限りは自動車税の納税義務が生じます。その車が運転できるかどうか、使われているかどうかは関係ありません。
また、車検切れと同時期に自賠責保険も切れてしまうと、それだけでさらに違反となります。
以下では、車検切れによって生じるこれらのリスクについて詳しく説明します。
車検切れになった車がもう乗る予定がないものだとしても、ナンバーが付いている限りは毎年自動車税が課せられることになります。
実際にその車が運転できるかどうか、使われているかどうかに関わらず、4月1日午前0時時点の持ち主に納税義務が生じるのです。
よって、車検切れの車を放置しておいても余計な費用がかかってしまいます。後述しますが、乗らない車は廃車にするか買取業者に売却した方が良いでしょう。
自賠責保険は車検の有効期間をカバーできるように加入することがほとんどなので、車検切れの後もしばらく(数日~1ヶ月)は有効期限内であることが多いです。それでも、油断しているといつかは期限が切れるので注意が必要です。
有効期限切れを迎えて自賠責保険に未加入の状態になっていると、それだけで違反点数6点、1年以下の懲役あるいは500,000円以下の罰金が科せられることになります。
もしも車検切れで公道を走ったことで自賠責保険切れがバレたのであれば、さらにペナルティがプラスされるでしょう。
また、自賠責保険に未加入の状態で人身事故を起こすと、自己負担分が大きくなります。保険会社で扱う自動車保険(任意保険)は、あくまでも自賠責保険でカバーできない分だけを補償するものです。
そのため、本来なら自賠責保険で払われるはずだった分も自分で払うことになります。
そもそも車検切れとはどんな状態か
そもそも車検制度とは、自動車の構造や装置を定期的にチェックして、その車が安全に走行できるように保つための制度です。
その有効期限が切れたということは、車の安全性が保証されなくなったことを意味します。よって車検が切れると、さまざまなリスクやデメリットをもたらします。
その詳細を以下で説明します。
車検制度は、正式には「自動車検査登録制度」といい、道路運送車両法にもとづき車両の定期的な検査を行うものです。
そして、安全性に問題がないことを確認し、持ち主の所有権の公証も含めた登録を行います。
車検の対象となる車は排気量250cc未満の普通自動二輪車と小型特殊自動車以外で、車検の有効期限は車両によって違ってきます。
例えば、よくあるケースでは軽自動車は初回が3年、2回目以降は2年ごとで、運輸支局(検査登録事務所)や、運輸局長から認証・指定を受けた民間の自動車整備業者などで車検を受けることになります。
車検の有効期間は、フロントガラスに貼られている検査標章に大きく書かれているので常に把握しておきましょう。
基本的なところで言えば普通乗用車、軽自動車、それに排気量250cc超の小型二輪車の3種類の場合、1回目は新車登録から3年後に、また2回目以降は2年ごとにそれぞれ車検を受けることになります。
車検期間は、商用車、レンタカー、自家用車によってまた異なってきます。
もし普段から車の整備などで付き合いのあるディーラーや整備業者があれば、車検の時期が近づいてくると連絡をくれることもあるので安心です。
車検切れの車を移動させて車検に出すには?
車検切れとなった車は公道を走ることができません。改めて車検を受けるためには、何らかの方法で車を移動させる必要があります。
こうした場合、自分で運転せずに車を運ぶ方法として2つの選択肢が考えられます。
以下でそれぞれのやり方を説明しますので、参考にしてください。
車検をしてくれる業者の中には、自宅まで車を引き取りに来てくれるものもあります。あるいは、自宅でなくても会社などの駐車場へ来てくれる場合もあり、いずれも車検が終了すれば元の場所に届けてくれるので便利です。
注意点は、無料ではないという点です。
普段から付き合いのある業者などの場合はサービスしてくれることもあるかもしれませんが、ほとんどの場合は有料ですので事前に確認しておきましょう。
「仮ナンバー」を装着することで、車検切れの車でも公道を走行することができます。
車を運転していると、ごくまれに赤い斜線が引かれているナンバープレートを見かけることがあります。これが仮ナンバーです。
ただ、この仮ナンバーも装着すれば無条件にいくらでも走行できるようになるわけではありません。
入手するには役場での手続きが必要になりますし、走行できる範囲や期間などにも制限が設けられているので注意が必要です。
仮ナンバーの申請は、自分が住んでいる地域の市町村役場で行います。
手続きにあたって「運転免許証」「認印」「車検証」「自賠責保険証」を持参し、窓口で「自動車臨時運転許可申請書」を受け取って記入してください。
この申請書には、仮ナンバーを使って走行する予定の経路も記入します。これらの内容に不備がなければすぐに仮ナンバーが交付されますが、ここで手数料が700~800円かかるので(自治体によって金額に差があります)お金を準備しておきましょう。
申請する際に最も注意が必要なのが、自賠責保険に加入しているかどうかです。普通に車を運転する場合と同様に、仮ナンバー使用時も自賠責保険への加入は必須となっています。
基本的に、自賠責保険は車検の有効期限よりも長い期間で加入していることが多いので、この時点でまだ有効なこともあります。しかし、万が一未加入の状態だったら、先に自賠責加入の手続きを済ませておいてください。
仮ナンバーは、必ずナンバープレートと同じ場所に装着しなければなりません。
「見えればいいだろう」と思ってダッシュボードに置いただけだったり、ただ持っているだけの状態で運転したりすると法律違反になるので絶対にやめましょう。
仮ナンバーの装着は、紐やワイヤーで固定する程度で十分です。走行中に外れるようなことがなければ問題ありません。ネジやドライバーなどの工具を使うような難しい作業は不要です。
走行中に仮ナンバーが落下するなどして紛失すると、実費で約1,800円を払って弁償することになります。
万が一紛失した場合、そのままだと返却期限も過ぎて罰則が科せられるので、すみやかに市町村役場に連絡してください。
申請手続きが完了すると仮ナンバーはすぐに交付されますので、申請は車検を受ける当日でも問題ありません。
しかし、その有効期限は3~5日と短い上に土日祝日を含めて数えるので、意外と短いです。
また仮ナンバーは、有効期限を過ぎても返却しなければ6ヶ月以下の懲役または300,000円以下の罰金となることがあります。そのため、仮ナンバーは交付された当日のうちに車検を終えてすぐ返却するのが理想的です。
また仮ナンバーを装着して走れるのは、申請時に書類に記入した経路のみです。それ以外を走ると違反になるので注意しましょう。
車の買取価格は売値の何割が基本なの?
車検切れの車は処分することも可能
車が車検切れの状態で、なおかつもう乗るつもりがないという場合は廃車か売却を検討するといいでしょう。
車は所有しているだけでも自動車税がかかってしまいますし、早めに廃車にすればお得に還付を受けることができます。
以下では、廃車にする場合と売却する場合のそれぞれの特徴と、手続き方法について説明します。
乗らない車の処分方法の一つとして「廃車」がありますが、普通自動車の場合、廃車手続きによって自動車税の還付が受けられます。廃車にした時点での残存期間に応じて、支払った分が戻ってくるのです。
ただし、これは普通乗用車の話で、軽自動車は税金の還付はありません。実際に廃車を検討する際は、その点に気を付けましょう。
廃車手続きとは、具体的にはその車の名義(車籍)を消すことをいい、そのためには抹消登録を行うことになります。
抹消登録には「一時抹消登録」と「永久抹消登録」の2種類がありますが、完全に廃車にするのは永久抹消登録です。
永久抹消登録をするとその車は二度と公道を走れなくなり、自動車税も課せられなくなります。
ちなみに一時抹消登録は、海外出張、入院、盗難などの理由でしばらくの間車を使わない場合に利用します。
車を廃車にするのであれば、できるだけ廃車専門の買取業者に依頼するのがおすすめです。
自分で手続きを行うと手間と費用がかかって大変ですが、専門の業者であれば面倒な手続きも全て任せることができます。
こうした業者は買い取った車をそのまま再販するわけではなく、分解して中古のパーツを販売することになります。よって、車検を受けておらず安全性に不安があるような車でも、買い取りを依頼すれば問題なく対応してくれるでしょう。
また同じ理由から、故障や事故によってもう動かせないことが明らかな車でも、買い取りに応じてくれることが多いです。手持ちの車の状態がどんなに悪いとしても、一度相談してみる価値はあります。
ほとんどの車買取店にとって、買い取る車の車検の有効期限が切れているかどうかは大きな問題ではありません。
以下では、車検切れでも気にせず売却できるその理由と、実際に売却する時のポイントについて説明します。
車検切れの車を買い取ることは、業者にとって珍しいことではありません。たとえ車検の有効期限が残っている車を買い取ったとしても、中古車として店頭に並べているうちに期限切れになることがあるからです。
また、業者によっては買い取った車を海外へ輸出したりもします。車検制度はあくまでも日本国内で通用する制度なので、海外では車検切れかそうでないかは全く問題になりません。
こういった理由から、買取業者にとって車検が切れていてもマイナス要素にはならないことが分かります。依頼をすれば喜んで買い取ってくれるでしょう。
車を売却する際の買取価格は業者によって異なるので、まずは査定を受けることになります。
車検切れのため公道を動かせない車は、自宅まで出張して査定してくれる「出張査定」を利用するのがおすすめです。
買取店の多くがこの出張査定に対応しており、多くの場合は無料で行ってくれます。
お店にとっては手間のかかるサービスですが、他店より少しでも多くの車を買い取るためにこういった形で対応しているのでしょう。
通常買取店に車を査定してもらうというと、直接車を持っていく「持ち込み査定」が一番頭に浮かぶという方も多いかもしれません。しかし、持ち込み査定だろうと出張査定だろうと査定の基準は同じなので、買取金額が変動することは少ないです。
査定基準自体はどの買取業者も同じですが、査定の結果算出される買取価格には違いが出てくるものです。そのため、複数の買取業者に査定を依頼する「相見積もり」を利用して、どこが最も高く買い取ってくれるか確認しましょう。
相見積もりで買取価格を比較する場合は、最低でも3社以上から見積もりを出してもらうのがおすすめです。
あまり多すぎるとかえって手間と時間がかかりますが、比較対象は多い方がいいです。
中古車の買取業者には、「特定の車種の扱いが得意」だとか「海外などの販売網を持っている」など、それぞれ特徴があります。相見積もりをしてみると業者によっては100,000円以上の価格差があって驚かされるケースもあります。