交通事故に遭遇したとき、自分に非がない場合でも修理費用や治療費の負担が発生する可能性があります。特に加害者側から十分な補償をしてもらえなかったり、手続きに時間がかかったりする場合は、自分の保険を利用すると早期の補償を受けられます。
この記事では、もらい事故に該当する具体例や、その際に利用できる自動車保険について詳しく解説します。
もらい事故でも自分の自動車保険の利用を検討しましょう
もらい事故の場合、加害者が無保険であったり、事故後の対応が遅れて補償を受けるまでに時間がかかったりすることがあります。そのため、自分の保険を活用することで迅速に補償を受けられます。
また、事故後の修理費や治療費の支払いが発生する際に、経済的な負担を軽減したいときも自動車保険は有効な手段です。
もらい事故とは?
もらい事故とは、被害者側に落ち度が一切なく、加害者に全面的な責任がある交通事故を指します。
例えば、信号待ちで停車している際に後方から追突されたり、センターラインを越えてきた対向車に衝突されたりした場合などがもらい事故に該当します。
このような事故では、基本的に加害者側の自動車保険によって補償されることになりますが、加害者が適切な保険に加入していない場合や、示談交渉が長引くこともあるため、注意が必要です。そのため、被害者側が自分の保険を利用するケースもあるのです。
もらい事故の具体例は、以下のような状況です。
- 停車中に後続車に追突される
- 信号無視をした車に衝突される
- 対向車がセンターラインをはみ出してきたことによる正面衝突
- 駐車場内での一方的な衝突 など
もらい事故は被害者側に何の落ち度もありません。そのため、加害者側の責任で補償が行われるべきですが、スムーズな解決が難しい場合、自身の保険の活用も視野に入れましょう。
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もらい事故で利用できる自動車保険
もらい事故では、基本的に加害者側の保険による補償がメインですが、被害者自身の自動車保険を利用することで迅速に対応できる可能性があります。
ここでは、もらい事故の際に役立つ保険について解説します。早急な解決を求めている場合や、金銭面的負担の対策をしたい方はぜひ参考にしてください。
人身傷害保険とは、車に搭乗中に事故でケガを負ったとき、治療費や収入の補償、さらには精神的損害に対する補償を受けられる保険です。過失割合に関係なく補償を受けられるため、もらい事故で相手側の補償が遅れる場合でも迅速に対応できる点が特徴です。
さらに、通院や入院にかかる費用だけではなく、後遺障害が発生した場合の補償も含まれるため、長期的な治療が必要なケースにも備えられます。
また、事故による精神的負担への補償があるため、交通事故によって生じる生活の変化にも対応可能です。
車両保険とは、事故によって損傷した車両の修理費を補償してもらえる保険です。もらい事故でも、加害者側の対応が遅れる場合、自身の車両保険を利用することで早期に修理を進められます。
ただし、車両保険を使用すると次年度の保険料が増加する可能性があるため、慎重な判断が必要になるでしょう。
また、事故による損害が大きく車両が全損扱いとなった場合、契約内容によっては新車購入のための補償が受けられる可能性があります。
車両保険無過失事故特約とは、もらい事故において車両保険を使用しても、等級が下がらず保険料の負担増を防いでくれる特約です。
通常、車両保険を使用すると、保険の等級が下がり、翌年以降の保険料が上がる可能性があります。そこで登場するのが、車両保険無過失事故特約です。
この特約を付けていると、等級が維持されるため、保険料が変動せずに済むのです。その結果、もらい事故による修理費用を自己負担なくカバーしつつ、今後の経済的負担を抑えられます。
この特約は、高額な修理費が予想される場合、特に力を発揮してくれるでしょう。
搭乗者傷害保険とは、運転者や同乗者が事故で負傷した際に、あらかじめ設定された金額を受け取れる保険です。治療費の実費ではなく、定額で補償されるため、迅速に資金を確保できるのが特徴です。
さらに、治療費だけではなく、事故後の入院や通院に伴う経済的負担も軽減できます。また、事故による後遺障害が発生した場合、障害の程度に応じた補償を受けることも可能です。
搭乗者傷害保険に入っておけば、被害者の生活の安定をサポートし、事故後の不安を軽減してくれるでしょう。
代車費用特約とは、事故によって自分の車を修理に出す際、修理期間中の代車費用を保険で補償してくれる特約です。加害者側の補償を待たずに代車を手配できるため、仕事や日常生活への影響を最小限に抑えられます。
万が一、修理にかかる期間が長引いた場合、一定の期間にわたって補償を受けられるため、長期間の修理が必要な場合でも安心です。さらに、契約内容によっては、車両の種類や代車のグレードを選択できるケースもあります。
これにより、事故後の移動手段に困ることなく、スムーズに日常生活を送れるでしょう。特に仕事で車を使ったり、家族の送迎で車を頻繁に使ったりする方は、この特約を付帯しておくことで大きな安心感につながります。
無保険車傷害保険とは、加害者が自賠責保険や任意保険に加入していない場合でも、被害者への補償をしてくれる保険です。無保険の加害者との事故では、適切な補償を受けることが難しくなるため、この保険に加入していると安心です。
もらい事故に遭遇した場合、基本的に加害者側の保険を利用しますが、状況によっては自身の保険を活用することで迅速に補償を受けられます。
自分の加入している保険内容を確認し、定期的な見直しを行いましょう。
もらい事故で気を付けたいこと
もらい事故は自分に落ち度はありませんが、補償を受けるために気を付けたいことが2つあります。
これから解説する2点をよく覚えておかないと、思わぬトラブルに発展する可能性があるため、しっかり理解しておきましょう。
もらい事故では、自身の保険会社から示談交渉はできません。なぜなら、法律上で加害者側の過失が100%の場合、被害者の保険会社が示談交渉を代理で進められないためです。
この場合、被害者自身が加害者側の保険会社と交渉を行う必要があります。しっかり自分の言葉で交渉できるように事故の状況を正確に把握し、適切な証拠を揃えることが重要です。
もし、示談交渉が難航した場合、弁護士に相談することも検討しましょう。特に加害者側が責任を認めない場合や、補償金額に納得できない場合には、法的な専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
もらい事故では、加害者が被害者側にも過失があると主張するケースが少なくありません。例えば、加害者が「被害者の車が急停止した」「適切な回避行動を取らなかった」などと主張し、過失割合を低くしようとする場合があります。
このような事態を防ぐためには、事故現場での証拠をしっかりと確保することが大切です。ドライブレコーダーの映像、目撃者の証言、警察の事故証明書などが重要な証拠となります。
また、加害者の保険会社が過失割合を不当に主張してきた場合には、弁護士に相談し、適切な対応を行うことが望ましいです。
もらい事故時の示談交渉方法
もらい事故に遭ったとき、示談交渉をどのように進めるかが重要なポイントです。なぜなら、保険会社が介入できないため、被害者自身が交渉を行うか、弁護士に依頼する必要があるためです。
適切な方法を選択することで、スムーズな示談交渉ができるでしょう。
ここでは、もらい事故に遭ったときの示談交渉方法を3つ解説します。
1つ目は、自分で相手側と示談交渉する方法です。この方法を用いる場合、事故の証拠をしっかりと揃え、自分に過失がないことを明確に主張しましょう。
それだけではなく、損害賠償の請求額についても、修理費や治療費の見積もりをもとに正確な金額を提示しなくてはなりません。示談交渉は長期化することもあるため、冷静に対応しながら交渉を進めることが重要です。
交渉が難航した場合、弁護士のアドバイスを受けることも検討してください。
2つ目は、弁護士費用特約を利用して弁護士に示談交渉してもらう方法です。弁護士費用特約を付けている場合、追加の費用負担なしで弁護士に示談交渉を依頼できます。
もらい事故の示談交渉は、専門的な知識が必要になるケースが多いため、弁護士に依頼することで、適切な賠償金を受け取るまでの交渉をスムーズに進められるのです。
また、加害者側が過失割合を不当に主張してきたり、補償金額に納得できなかったりした場合も、弁護士のサポートがおすすめです。
弁護士費用特約は比較的安価な保険料で付けられるため、万が一に備えて加入しておきましょう。
3つ目は、弁護士の法律相談で依頼する方法です。弁護士費用特約がない場合でも、法律相談を利用して示談交渉の見通しを立てられます。
弁護士に相談すると、示談金の適正金額や過失割合についてのアドバイスを受けられるだけではなく、自己交渉を行う際の判断材料を得ることも可能です。
さらに、示談交渉が難航している場合、費用を考慮しながら弁護士に正式に依頼するかを検討できます。無料相談を実施している弁護士も多いため、示談交渉に不安がある場合は一度相談してみてはいかがでしょうか。
一般型は全損や部分損の修理が補償されますが、金額が高めに設定されています。一方、エコノミー型は一般型より金額が安いものの、補償条件が厳しく設定されています。
どちらに加入するかはメリット・デメリットをしっかり理解して判断しましょう。
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加害者が不明なもらい事故の補償について
加害者が特定できない交通事故に遭遇した場合、被害者がどのように補償を受けられるかを理解しておくことが重要です。なぜなら、当て逃げやひき逃げに遭った場合は、加害者が特定できないため、通常の示談交渉ができないためです。
実は、このような場合でも、被害者が適切な補償を受けるための方法が2つあります。自分が加入している保険を活用する方法や、政府の保障制度を利用することで、一定の補償を受けられるのです。
ここでは、当て逃げやひき逃げの事故においてどのような保険が利用できるのかについて詳しく解説します。
当て逃げ事故の場合は加入している保険を活用しましょう。
当て逃げ事故では、加害者が特定できないため、加害者側の保険から補償を受けられません。しかし、自分が加入している車両保険を利用することで、修理費用の補償を受けられます。
ただし、車両保険の種類によって補償範囲が異なるため、契約時に補償内容を確認しておきましょう。例えば、一般型の車両保険に加入していれば、当て逃げ事故による損害も補償対象になりますが、エコノミー型の車両保険では補償の対象外となる可能性があります。
また、保険を利用すると等級が下がり、次年度の保険料が上がる可能性があるため、利用の判断は慎重に行ってください。
ひき逃げ事故に遭い、加害者が特定できない場合には、政府が運営する「自動車損害賠償保障事業」を利用できます。
この制度では、被害者が受けた損害額を国が立て替えて支払う仕組みになっています。具体的には、治療費や逸失利益、慰謝料などが対象です。
ただし、支払いを受けるには一定の条件があり、警察に届け出を行って事故証明を取得する必要があります。また、申請手続きには時間がかかる場合があるため、早めに手続きを進めることが望ましいでしょう。
もらい事故時に利用できるその他の保険
もらい事故に遭ったとき、自動車保険以外にも活用できる保険があることをご存知でしょうか。
これらの保険を適切に活用することで、被害者の経済的な負担を軽減できます。保険によって補償内容が異なるため、自分に最も合った保険を選ぶことが大切です。
最後に、もらい事故に遭ったときに利用できる自動車以外の保険について解説します。
交通事故によるケガの治療費は、健康保険を利用して支払うことが可能です。特に、加害者側の保険会社からの支払いが遅れたり、示談が成立しない場合に、被害者が自己負担を避けたりするための手段として健康保険を利用することが推奨されます。
健康保険を利用する際には、「第三者行為による傷病届」を提出する必要があり、これを怠ると後日トラブルになる可能性があるため注意が必要です。
「第三者行為による傷病届」には、マイナンバーカード、免許証、保険証などの本人確認書類、第三者行為による傷病届、印鑑などが必要になるため、必要書類も準備しておきましょう。
通勤中や業務中に交通事故に遭った場合、労災保険を利用できます。労災保険を適用することで、治療費や休業補償を受けられます。
特に、通勤途中の事故は「通勤災害」として認定されるため、一般的な交通事故とは異なり、勤務先を通じて申請を行わなくてはなりません。
労災保険を利用すると、加害者側の保険の支払いを待つことなく、迅速に治療を受けられます。
生命保険には、もらい事故によるケガを補償する特約が付帯されている場合があります。
例えば、傷害特約や災害入院特約などがこれに該当し、入院や手術の際に一定額の給付金を受け取ることが可能です。
長期間の入院が必要な場合には、生活費の補填として有効に活用できるため、加入している生命保険の補償内容を確認しておくことが重要です。