新車試乗レポート
更新日:2024.04.30 / 掲載日:2023.12.27

惚れたら買い! 新車で買えるロータリーはこれだけ【マツダ MX-30 Rotary-EV】

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス

 クルマは「どんな人にどんなクルマを売るか。そのためにはどういったクルマを造ればいいか」をまず考えてから開発していくのが一般的です。いわゆるマーケティングです。

どうしてもロータリーを復活させたいマツダの執念

MX-30 Rotary-EV MX-30 Rotary-EV Industrial Classic

 そんななか、マツダ「MX-30 Rotary-EV」に乗って思いました。このクルマは一般的なマーケティングを経て作られてはいないのではないか……と。

 「こういうマーケットがありそう」といった理詰めじゃなくて、開発陣が「こういうクルマを造りたい」と考えて作ったクルマではないか。ストレートに言ってしまえば、ロータリーエンジンを積むこのクルマを世に送り出すことがマツダの悲願であり、MX-30 Rotary-EVの発売でついにそれを実現できたのではないか、と。

「ロータリーエンジンはマツダの魂。」

「これぞマツダの象徴的存在。」

「だから、なんとしても復活させたかった。」

 開発に携わったスタッフと話をしていると、それがひしひしと伝わってきたからです。

 クルマの概要を説明すると、MX-30 Rotary-EVはマツダの「MX-30」というSUVに、プラグインハイブリッドシステムを組み込んだPHEVというのがシンプルないいかたでしょう。駆動力を生むのは100%モーターで、バッテリー残量が多いときはエンジンをかけずにEVのように走行。バッテリーが減ってくるとエンジンをかけて発電し、その電気を使って走ります。

MX-30 Rotary-EV MX-30 Rotary-EV Industrial Classic

 バッテリーは走行中に充電するほか、プラグイン充電器に接続しての外部充電もおこなえるのがポイントのひとつ。満充電からエンジンを掛けずに走れる距離は、カタログ値(WLTCモード)で107km。実質的には70~80kmほどでしょう。つまり、日常はそれで事たりてしまうのです。

 そしてこのMX-30 Rotary-EVにおいてほかのPHEVとは大きく違う特徴、そしてマツダにとって特別な存在となっている理由はエンジン。あくまで発電専用なのですが、11年ぶりに復活したロータリーエンジンを積んでいるのです。

 爆発力をピストンの上下運動から回転運動に変換する一般的なエンジンに対して、ロータリーエンジンは爆発によりローターと呼ばれるおにぎりのような三角形の部品をまわすことで、直接回転運動としてエネルギーを取り出せるのが特徴で構造が全く違います。一般的なエンジンとは仕掛けがまったく違い、何を隠そうそのエンジンを長く生産し続けたのは世界中の自動車メーカーの中でマツダだけ。そのエンジンを積んで「ル・マン24時間耐久レース」で優勝もした。

 生みの親こそマツダではありませんが、育てたのは実質的にマツダであり、マツダもマツダのエンジニアもロータリーエンジンには特別な思いがあります。

 何を隠そうそんなロータリーエンジンは、2012年の「RX-8」生産終了をもって、現役から退いていました。そんななかでの、11年ぶりの復活。新たなるロータリーエンジンの幕開けとなるMX-30 Rotary-EVは、マツダとして特別な思い入れのある1台なのです。マツダの魂と言えるこのエンジンの復活は、同社にとってまさに悲願だったといっていいでしょう。

 ちなみにこのクルマにどうしてロータリーエンジンを積んだかといえば、エンジニアによると「ロータリーエンジンはコンパクトだから」とのこと。それは嘘ではないでしょう。しかし、根底にある本当の理由は「なんとしてでもロータリーエンジンを復活させたかった」だと感じられるのは、気のせいでしょうかね。

 走りは基本的にEVと同じ感覚です。

走りは穏やかで扱いやすく、EV出力制御の巧みさを感じる

 駆動力をすべてモーターで作り出すのだから当然のことで、モーターならではの滑らかさは絶品だし、アクセル操作に対する駆動力の出し方といった制御もマツダは上手ですね。いかにもEVらしい鋭く急激な駆動力のかかり方をするのではなく、ガソリン車のように穏やかかつ素直で扱いやすい印象を受けました。初めてのモーター駆動車としても全く違和感なく運転でき、EVの出力制御において、マツダは一目置けるメーカーだと改めて実感する乗り味です。

 ただ、一般的なEVと異なるのは、バッテリーが減ってくるとエンジンをかけて走れること。だからEVのウィークポイントである航続距離は気にしなくてもいいし、ロングドライブでは充電しなくてもガソリンさえ給油すれば走り続けることができます。

 ちなみに、エンジン始動時の走行性能もEV状態と基本的に同じ。一部では「バッテリーが減ると動力性能が落ちる」という誤解もあるようだが、一般的な走行においてはそうはなりませんので心配はいりません。ちなみに加速性能は、圧倒的な速さはありませんが踏み込めば周囲の流れをリードできる実力(モーターのトルク特性により発進や中間加速は自然吸気2.5Lエンジンクラスのガソリン車より力強い)。ちなみに最高時速は日本の高速道路の制限速度を上回る140km/hです。

 ノーマルモードで走っているとバッテリー残量が45%程になると自動的にエンジンがかかりますが、始動のショックなどは皆無。しかしメーター内にローターをかたどったアイコンが現れること、そしてエンジンの作動音でエンジン始動がわかります。ちょっと気になるのはその作動音がゴーっという低周波の物で、耳に心地よいと感じる類のものではないこと(個性は十分にありますが)。かつてロータリーエンジン搭載車に乗っていた人がロータリーサウンドを期待すると、「ちょっと違う」となってしまうかもしれません。そこだけ注意が必要です。

 音に関しては、せっかくなので電子音を駆使してかつてのロータリーエンジンの音を車内に響かせるなどのアイデアがあるといいように感じました。2ローターの「13B」と3ローターの「20B」、さらにはル・マンで優勝した4ローターエンジンの甲高い音も選べたら楽しそうじゃないですか?

 というわけでMX-30 Rotary-EVはかつてのロータリーエンジン車のような刺激や個性はないけれど、乗りやすくて快適。だけど音にはもう一工夫欲しい。それが発電用ユニットとして生まれ変わったロータリーエンジンの印象です。

唯一無二の個性を持つMX-30

 ところでこのユニットが搭載されるMX-30は、一般的な5ドアボディではなく観音開きとしたドアが特徴的。ただし実用性では一般的な5ドアに分があるので、特に後席を頻繁に使うファミリーユーザーなどは相性が良くないかもしれません。そういう点で“人を選ぶクルマ”というのは否定できません。

 しかし「個性的なクルマが欲しい」とか「ロータリーエンジンが欲しい」というなら、唯一無二の選択肢と言っていいでしょう。乱暴に言えば「惚れたら買え!」です。

 たしかに、総合15.4km/L、市街地モードでは11.1km/L というWLTCモード燃費はハイブリッドカーとして考えると優れたものではありません。しかし、考え方を変えて「日常は充電して電気で走るEV。遠くへ出かけるときだけガソリンエンジンを使う」と考えれば、そこは大きな欠点とはならないのではないでしょうか。自宅に充電環境があるという条件は付きますし、せっかくのロータリーエンジンが宝の持ち腐れという人もいるかもしれません。でも、そういう使い方がこのクルマにとってもっとも適しているように思えます。

 イチオシは、愛車にRX-7などロータリーエンジンを所有しているロータリーファン(もしくは元オーナー)が日常使いのクルマとしてセカンドカーに購入すること。ロータリーエンジン漬けの生活なんて、ファンにはたまらないことでしょう。

まとめ

 MX-30 Rotary-EVは誰にでもオススメできるクルマではないし、たくさん数が売れるクルマともいえないモデル。しかし、ファンにとってはたまらない1台だし、マツダにとってもやっと市場へ送り出せた念願の1台なのです。

 マーケティングではなく、熱意で作られたクルマと言っていいのではないでしょうか。ここにマツダの悲願が、ひとつのカタチで実現したのです。

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工藤貴宏(くどう たかひろ)

ライタープロフィール

工藤貴宏(くどう たかひろ)

学生時代のアルバイトから数えると、自動車メディア歴が四半世紀を超えるスポーツカー好きの自動車ライター。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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