初めて車を運転する方や、子どもを乗せて走る方は「もし事故に遭ったら対応できるだろうか?」と不安になるかもしれません。
近年、あおり運転など危険運転のニュースが増え、事故への備えに関心が高まっています。そのようなドライバーの強い味方となるのが、自動車保険の「ドライブレコーダー特約」です。
この記事では、ドラレコ特約の仕組みやメリット・デメリットを解説し、加入すべきか悩んでいる方の疑問に答えます。
自動車保険のドライブレコーダー特約で安全を守ろう
ドライブレコーダー特約は、保険会社から通信機能付きのドライブレコーダーが貸与される特約です。ドライブレコーダーを車に取り付けることで、安全運転をサポートし、事故対応をバックアップしてもらえます。
ここからは、そんなドライブレコーダー特約について詳しく紹介していきます。
ドライブレコーダー特約とは?
ドライブレコーダー特約は、保険会社から通信機能付きの高機能ドライブレコーダーをレンタルできる特約です。事故時に強い衝撃を感知すると保険会社への緊急通報が自動で行われ、事故前後の映像が保険会社と共有されます。
また、運転状況に応じて危険な場面では警告音や音声で注意を促したり、運転診断レポートが提供されたりするサービスも含まれています。そのため、「事故対応の迅速化」と「安全運転の促進」が期待できる特約です。
ドライブレコーダー特約の特徴は、事故が起きた瞬間に映像が保険会社へ即時送信される点です。
ドライブレコーダーが強い衝撃を検知すると、車載の通信を通して自動的に保険会社に連絡が入ります。同時に、その前後の録画映像データがリアルタイムで保険会社の事故対応センターに送信されるのです。
保険会社はすぐに状況を把握できるため、現場への救急車や警察の手配、ロードサービスの出動など初動対応を迅速に行えます。ドライバーがパニックで電話できない場合でも、ドライブレコーダーが助けを呼んでくれるため安心です。
ドライブレコーダー特約の内容は保険会社によってさまざまです。提供されるドライブレコーダーの機種や性能も異なり、基本は前方のみの録画ですが、会社によっては後方カメラを追加できる場合もあります。
サービス面でも違いがあり、例えば損保ジャパンでは運転特性スコアが良好だと翌年の保険料割引を受けられるのです。他社でも専用アプリで運転診断結果を確認できたり、事故時にオペレーターと通話できるボタンが付いたりするなど、各社に特徴的な機能があります。
ドライブレコーダー特約を選ぶ際は、自分に必要な機能や特典が含まれているか、各社の違いを比較してみましょう。
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ドライブレコーダー特約を契約するメリット
ドライブレコーダー特約にはさまざまなメリットがあります。
事故時の迅速な対応や証拠映像の確保といった安心面から、自分でドライブレコーダーを購入する手間が省ける利便性、さらには安全運転を後押しする機能まで、多くの恩恵を受けられます。
ここからは、ドライブレコーダー特約を契約するメリットを5つ紹介します。
ドライブレコーダー特約を利用すると、事故発生時に素早い対応が可能になります。ドライブレコーダーが衝撃を感知すると自動で保険会社に通報されるため、ドライバー自身が電話連絡できない状況でも、すぐに保険会社とつながるのです。
専用のオペレーターと車内から直接通話でき、ケガの有無や事故状況を落ち着いて伝えられます。オペレーターはその場で適切な指示やアドバイスをくれるため、パニックになりがちな事故直後でも安心です。
必要に応じて救急車や警察への連絡も代行してもらえるため、初期対応が格段にスピーディーになります。
ドライブレコーダーの映像は、事故やトラブル発生時に客観的な証拠として役立ちます。
双方の言い分が食い違う交通事故でも、録画映像があれば状況を正確に証明が可能です。保険会社への事故報告の際にも、映像があることで過失の判断がスムーズに行われます。
あおり運転の被害や当て逃げ事故などでも、相手の車のナンバーや当時の様子を映像で記録できていれば、警察への届け出や保険金請求を有利に進められるでしょう。
また、保険会社と映像を共有しておけば、示談交渉や保険金支払いの場面でも客観的な資料として役立ててもらえます。
ドライブレコーダー特約を付ければ、自分でドライブレコーダーを探して購入する手間が省けます。
通常、自分でドライブレコーダーを買う際は、どの機種が良いか、どのような機能が必要か、どこで買うのが安いかなど、調べることが多いでしょう。そんな時にドライブレコーダー特約なら、保険会社指定の機種を送ってもらえるため、そうした悩みから解放されます。
保険契約時に特約を申し込むだけで完了するため、店頭やネットで購入手続きをする時間も節約できます。届いた機器を車に取り付けるだけで済み、機種選びや購入の手間を大幅に省ける点は大きなメリットです。
ドライブレコーダー特約で貸与される機種には、安全運転支援機能が搭載されているものもあります。
例えば、前方車両に接近しすぎた場合や走行中に車線からはみ出しそうになった場合、さらにはわき見運転を検知した際に、警告音や音声でドライバーに注意を促してくれるのです。アラート機能によって、ヒヤリとする場面を未然に防ぐ手助けとなり、事故を起こさないようサポートしてくれます。
ドライブレコーダー特約は事故後の対応だけでなく、日頃から安全運転を心がけるための味方にもなってくれるのです。
ドライブレコーダー特約には、安全運転度を診断するサービスが付いている場合もあります。
ドライブレコーダーが記録した走行データをもとに、急ブレーキや急ハンドルの回数、速度超過の有無などを分析し、運転傾向を点数やレポートで示してくれます。スマホアプリや専用サイトで診断結果を確認でき、自分の運転の癖や改善点を把握可能です。
また、運転特性スコアが80点以上になると翌年度の保険料が割引される保険会社もあり、安全運転診断によって運転技術の向上や保険料節約につながる可能性があります。
ドライブレコーダー特約を契約するデメリット
ドライブレコーダー特約には多くの利点がありますが、一方で押さえておくべきデメリットも存在します。
特約を付けることで保険料が上がることや、自分の好みのドライブレコーダーを選べないことに加え、保険会社を乗り換える際に機器を返却する必要があるなどの制約もあります。
ここからは、ドライブレコーダー特約を契約するデメリットを6つ紹介します。
ドライブレコーダー特約を利用すると、特約保険料を毎月支払う必要があります。金額は一般的に月額650円~850円ほどです。
一見小額ですが、1年では約8,000円~1万円、数年契約を続ければ市販のドライブレコーダーが購入できるほどの費用になります。
つまり、長期間利用する場合は特約を付けるより自分でドライブレコーダーを購入した方がトータル費用を抑えられる可能性が高いです。あくまで追加サービスに価値を感じるかどうかがポイントで、映像を記録したいだけなら購入した方が経済的でしょう。
特約で利用できるドライブレコーダーは保険会社が指定した機種のみです。自分で好みのドライブレコーダーを選ぶことはできないため、機能が不十分だったり逆に必要以上だったりしても変更できません。
また、多くの場合は前方撮影のみ対応で、後方カメラや駐車監視機能などが付いていないこともあります。
映像の画質や視野角、GPSの有無などスペックにこだわりがある方にとって、機種を選べない点はデメリットとなるでしょう。特約申し込み前に、貸与されるドライブレコーダーの仕様を確認しましょう。
ドライブレコーダー特約で貸与された機器は、自動車保険の契約を解約したり他社に切り替えたりする際に、保険会社へ返却しなければなりません。
特約を外した後に、そのドライブレコーダーを使い続けることは基本的にできないのです。所定の期日までに返却しない場合、違約金や機器代相当の費用を請求されることもあるため注意しましょう。
また、他社の保険に乗り換えてドライブレコーダー特約が利用できなくなった場合は、自分で新しいドライブレコーダーを用意する必要があります。
ドライブレコーダー特約の便利なサービスは、自分の運転情報を保険会社に提供することで成り立っています。走行速度や位置情報、加速度センサーのデータ、さらには事故時の映像などが保険会社のサーバーに送信され、分析・活用されます。
保険会社側も個人情報の取扱いには十分注意していますが、「自分の運転を常に見られている」と感じてしまう人もいるでしょう。プライバシーの面で抵抗を覚える場合、この点はデメリットとなり得ます。
ドライブレコーダー特約を扱っている保険会社自体が、現時点では限られています。
2023年時点では、大手損害保険会社の数社(東京海上日動、損保ジャパン、三井住友海上、あいおいニッセイ同和など)で導入されていますが、いずれも代理店型の保険です。
ダイレクト型(ネット型)の自動車保険にはドライブレコーダー特約がなく、現在加入中の保険会社によっては利用できない可能性があります。
ドライブレコーダー特約で送られてきたドライブレコーダーの取り付けは、基本的に自分で行う必要があります。業者の派遣などは通常なく、自宅に届いた機器を自分でフロントガラス付近に設置し、電源コードを配線しなければなりません。
車いじりに慣れていない人にとっては少し面倒に感じる作業でしょう。ディーラーや指定業者に依頼も可能ですが、その場合は別途工賃が発生する可能性があります。
ドライブレコーダー特約の加入に向いている人の特徴
ドライブレコーダー特約はすべてのドライバーに必要といったわけではありませんが、向いている人もいます。
例えば、どのドライブレコーダーを選べばいいのか分からない方にとって、保険会社が機器を用意してくれるドライブレコーダー特約は大きな助けとなります。また、運転に不安があり、万が一の際にも充実したサポートを受けられる安心感が欲しい方にも適したサービスです。
ここからは、ドライブレコーダー特約の加入に向いている人の具体的な特徴を見ていきましょう。
市販のドライブレコーダーは種類が豊富で、価格や性能もさまざまです。そのため「どれを選べば良いか分からない…」と悩んでしまう方も多いでしょう。
自分に合うドライブレコーダーを決められない場合、ドライブレコーダー特約の利用がおすすめです。保険会社が選定した機種を貸与してくれるため、自分で細かなスペックを比較検討する必要がありません。
機器の品質も保険会社のお墨付きといえるため安心ですし、万一故障したときも保険会社が交換対応してくれるため、アフターサポートの面でも心強いでしょう。
ドライブレコーダー特約は、運転中の安心感を重視したい方にもぴったりです。
交通事故はいつ起こるかわからず、初心者ドライバーや小さなお子さんを乗せているドライバーにとって、不安を感じる場面もあるでしょう。ドライブレコーダー特約を付けていれば、万が一事故に遭った際に自動通報で迅速に助けを呼べるため、「一人ではない」と安心感があります。
また、あおり運転などのトラブルに遭遇しても映像が残ると思えば心強いものです。安全第一で運転したい方にとって、ドライブレコーダー特約は強い味方となります。
自賠責保険の名義変更は必要あるの?手続きの仕方も教えます!
ドライブレコーダー特約の加入に向いていない人の特徴
ドライブレコーダー特約があまり向いていない人もいます。
すでに性能の良いドライブレコーダーを自分で取り付けていて、それで十分と感じている方は、特約による追加費用を払う必要はないでしょう。
また、保険料を極力抑えたい方や、ドライブレコーダーの機種・機能に強いこだわりがある方も、自分で好きな機器を選んだほうが満足できるかもしれません。
さらに、運転情報が保険会社に伝わることに抵抗を感じる方や、頻繁に保険会社を乗り換える可能性がある方にとっても、ドライブレコーダー特約は向いていないと言えます。
あおり運転による事故件数は増えている
近年、あおり運転(車間距離を詰めるなどの危険運転)による事故が社会問題となり、件数も増加傾向にあります。
警察庁の統計では、2018年に車間距離不保持の取締件数がそれまでの年から大幅に増加し、2020年にはあおり運転に対する厳罰化(妨害運転罪の新設)も行われました。
それでも依然として、あおり運転に起因する事故やトラブルのニュースは後を絶たず、ドライバーの不安要素となっています。
ドライブレコーダーを取り付ける人が増えている
ドライブレコーダーを取り付ける人が年々増加しています。実際、近年のアンケートでは半数以上のドライバーがすでに車にドライブレコーダーを搭載しているとの結果もあります。
2010年代半ばには普及率が1割程度と低かったものの、あおり運転が社会問題化した2018年前後から需要が急速に高まりました。価格の低下も後押しとなり、「ドライブレコーダーはもしもの備え」として今や多くのドライバーに受け入れられています。