車を運転する人は、引っ越しをしたときに運転免許証や住民登録と同様に、車検証の住所も変更しなければなりません。
車検証の住所情報は、自動車社会において所有者の安全や健全な取引などの公益を実現するために重要です。
この記事では、住所変更手続きにおける必要書類や、手続きを怠ったときのリスクについて解説します。
内容を理解して、転居の際に無駄なくスムーズに変更手続きができるようにしましょう。
車検証の住所変更をするなら必要書類を把握しておこう
車検証には所有者の住所が記載されています。車検証に記載された住所は、陸運局や軽自動車検査協会が管理しています。
住所はこれらの機関から重要な通知を送ったり、道路運送車両法による所有者の移転の記録などに使われたりする重要情報であるため、変更があったときは速やかに手続きを行わなければなりません。
しかし、実際に引っ越しで住所が変わっても、どこかから「お知らせ」などの通知が届くわけではありません。自ら申請する必要があります。
また、住所変更手続きの認識があっても、その方法や必要書類がわからないまま時間が経過してしまうこともあるでしょう。そのため、まずは住所変更手続きのための必要書類を解説します。
必要書類を知っておくことで、引っ越しの際に取得する書類に無駄をなくし、車検証を含む、各種住所変更手続きがスムーズに進められます。
車検証の住所変更時の必要書類
車検証の住所変更手続きに必要な書類は、軽自動車とそれ以外の普通自動車の場合で異なります。これは、流通車両を管轄する組織が異なるためです。
それぞれの組織が住所変更時に必要としている書類の違いについて理解し、それぞれの届け先を覚えておいてください。
軽自動車の所有者住所は、軽自動車検査協会が管理しています。
車検証の住所変更の手続きには以下の書類が必要です。
②住民票または印鑑証明書
③申請書
④軽自動車税申告書
住民票は新住所だけでなく前住所の記載もあることから、転居の履歴を確認できるため、各種住所変更手続きでは提出が必要となるのが一般的です。
しかし、軽自動車の車検証については住民票に代えて印鑑証明書でも可能です。他の住所変更手続きで余った印鑑証明書があれば流用できます。
また、軽自動車では車庫証明が必要ありません。普通自動車の住所変更手続きと比べると揃える書類が少なく済みます。
普通自動車の所有者住所は、居住地域の陸運局が管理しています。
車検証の住所変更の手続きには以下の書類が必要です。
②車庫証明書
③住民票
④申請書
⑤手数料納付書
⑥自動車税申告書(環境性能割・種別割)
軽自動車の変更手続きと比較すると、車庫証明書と手数料納付書が追加で必要です。また、軽自動車では住民票の代わりに印鑑証明書でも認められていますが、普通自動車では住民票に限定されていることに注意してください。
軽自動車検査協会は軽自動車の新規登録や車検の更新、ナンバープレートの交付、車検証の記録内容に変更があった際などに手続きする場所です。
陸運局(地方運輸局)は自動車が誰のもので、どこに駐車されているものかを管理する組織です。
どちらも全国に点在し、管轄する地域に属する車両所有者の住所を管理しています。車検証の住所変更は、所有する車種によっていずれかの場所で手続きを行う必要があります。
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必要書類の内容や入手方法
車検証の住所変更に必要な書類を紹介しましたが、それぞれどういう書類なのか、またどこで用意できるのかについて、ここからは解説していきます。
当日に変更手続き先で入手可能なものもあれば、事前に準備が必要なものもあります。書類ごとの入手方法を知っておき、スムーズな変更手続きができるよう、無駄のない準備をしてください。
車検証の住所変更を行うため、当然ですが車検証の原本が必要です。
車検証は、車検に合格したときに交付を受ける「自動車検査証」の通称です。車体番号や登録年月日など、所有する自動車に関する情報が網羅されているほか、所有者の住所も記載されています。
法律上、車検証を保有していなければ公道を走行できないため、ダッシュボードの中など車内に保管している人がほとんどでしょう。
なお、車検証を紛失している場合は直ちに再発行手続きをしなければいけません。再発行手続きも陸運局で申請します。
車庫証明書は、自動車を適切な場所に保管するための証明書です。違法駐車の防止や盗難等犯罪リスクの低減、事故や事件の際の所有者追跡などを目的として普通自動車の登録時に必須の書類です。
居住区管轄の警察署で取得できます。地主に手配を依頼する車庫証明付属書類の発行に時間を要することもあるため、車庫証明書の手配は同時進行で早めにしておきましょう。
申請書は、住所変更の他、自動車の名義変更など車検証の記載事項に変更が生じた際、新たな車検証を発行を申請するための正式な書類です。手続きが完了すると、新しい車検証が発行されます。
陸運局や軽自動車検査協会現地で用紙をもらえるほか、インターネットからダウンロードも可能です。ダウンロードであれば、あらかじめ必要事項を記入して現地で他の書類とともに渡すだけなのでスムーズに手続きできます。
申請書は機械で読み取る仕様であるため、丁寧に記入してください。
車検証情報が整備されていることにより、円滑な自動車移転手続きやトラブルの防止といった恩恵を受けています。したがって、陸運局の管理する情報はインフラであり、車検証住所の変更手続きには350円の検査登録印紙を貼付することにより手数料を支払わなければいけません。
手数料納付書は陸運局に置かれており、印紙も陸運局内で販売されています。申請書の提出時にその場で納付書を入手できますが、印紙税を購入するためのお金を忘れずに用意していきましょう。
なお、軽自動車の場合は手数料がかかりません。
自動車税申告書は、自動車税の納付書の郵送先を変更するための書類です。自動車税の納付書が正しい住所に届かなければ、支払いができずに自動車税が未納となり、車検を受けられなくなります。
自動車税申告書は自動車税事務所で入手できます。
軽自動車でない限り、住所変更の事実を疎明する書類として住民票が必要です。住民票には前の住所も記載されているため、住所の履歴を確認できます。
印鑑証明書には従前住所の記載はありませんが、現住所が記載されています。軽自動車の場合は住民票に代えて印鑑証明書の提出でも可能です。
住民票や印鑑証明書は住民登録のある市町村で取得します。現在ではマイナンバーカードがあれば、コンビニの複合機を利用して行政サービスから取得できるようになりました。
車の所有者本人が手続きに行けない場合は、代理人に手続きを委任する「委任状」が必要です。
委任状は、委任者(本人)と受任者(代理人)を記載し、委任事項を記載することで効力を発します。委任事項には「移転登録」と記載してください。
委任状の書面は陸運局や国土交通省のホームページからダウンロードできます。
ひと昔前は住所変更の手続きに関して署名と押印が必要でした。
現在は一般的な考え方として、重要な財産の移転に関するものに実印の押印が必要とされています。車検証の住所変更はこれに該当しないため、印鑑証明書を添付した実印の押印という形式は求められなくなりました。
陸運局、軽自動車検査協会ともに月末付近は混雑が予想されます。極力混雑日を避けることで、短時間で変更手続きが済ませられます。
車検証の住所変更する時の流れ
ここまでで解説した必要書類は事前に準備しておくものもあれば、提出先で記入するものもあります。普通自動車の住所変更の場合、陸運局での流れは以下の通りです。
- 手数料納付書・申請書の記入
- 印紙の購入
- 必要書類(上記書類、車庫証明書、住民票、自動車税申告書、委任状)の提出
- 更新後の車検証の交付を受ける
- 自動車税の申告窓口で変更内容を申請
- ナンバープレートの更新(必要な場合のみ)
軽自動車の場合は窓口が軽自動車検査協会となりますが、基本的な流れは同じです。
車検証の住所変更をせずにいた場合のリスク
住所が変わったときに、市町村から車検証の住所変更を促させるわけではありません。しかし、変更手続きを怠ると困ることがあります。
ここでは、住所変更をしなかった場合の具体的なリスクについて解説します。最悪の場合、自動車を運転できなくなることもあるため、自発的に変更手続きをしましょう。
毎年納付する自動車税の納付書は、車の所有者の住所宛てに案内とともに郵送されます。宛先の住所は車検証の登録住所であるため、住所変更手続きをしていない場合、従前の住所に届いてしまいます。
転送扱いにしていなければ、新しい住所に届かないため、自動車税の納付ができません。自動車税が未納の状態だと車検を受けられないため注意が必要です。
自賠責保険は、一定期間ごとに更新手続きが必要です。更新通知も車検証の登録住所宛てに郵送で届きます。したがって、住所変更をしていないと更新通知が届かず、自賠責保険の更新手続きができず失効してしまう可能性があります。
自賠責保険は自動車を保有するにあたって強制加入の保険です。自賠責保険が失効した状態で運転してしまうと、罰金などのペナルティが科せられます。
道路運送車両法第109条2号には、転居時の車検証の住所変更について規定されています。住所変更手続きは引っ越しの日から15日以内に行うものとされており、違反した場合には50万円以下の罰金が科せられます。
車検証の登録住所は、車社会の健全な秩序を保つために重要な情報です。だからこそ変更手続きを怠ったときに重いペナルティが伴います。
転居したときは、車検証の住所変更を忘れないようにしましょう。
再発行の手続きは、登録住所を管轄する陸運支局もしくは軽自動車検査協会で行います。もしも転居した後に紛失に気が付いたときは、前住所の管轄支局に行かなければならないため、車検証の保管には十分注意しましょう。
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シチュエーション別!住所変更の手続きの注意点
住所変更の手続きのパターンはシチュエーションによってさまざまです。「前住所とは違う管轄地域に引っ越した場合」や「車検と同時に住所変更手続きをする場合」「車の所有者と使用者が異なる場合」など、住所変更する人の状況やタイミングによって、それぞれ留意すべき事項があります。
ここでは、住所変更の代表的な5つのシチュエーションについて解説します。当てはまるものがあれば、ぜひ参考にしてください。
車のナンバープレートにはナンバーの他に、プレート上部に管轄地域の表示があります。所有者が管轄の違う地域に転居した場合は、ナンバープレートを改めなければなりません。
ナンバープレートを取り換えるには、当然車そのものも必要となるため、陸運局や軽自動車検査協会には車で行きましょう。
車検証の住所変更手続きに加えてナンバープレートの変更作業が伴うため、その分時間を要することに注意してください。
車検を取り扱う事業者の中には、車検証の住所変更手続きを代行してくれるところがあります。したがって、車検の有効期限が近いタイミングで住所が変わったときは、車検と同時に住所変更手続きの依頼が可能です。
ただし、前述した通り、法律により車検証の住所は転居の日から15日以内に行うものと決められているため、この期間内に車検および住所変更手続きをしなければいけません。
また、すべての車検事業者が住所変更手続きの代行までしてくれるわけではないため、あらかじめサービスに含まれているかどうかを確認しておきましょう。
車の所有者と使用者が異なる場合は、通常の住所変更よりも手続きが煩雑です。
よくあるのが、車を購入して自動車税を払っているのは親だけど、実際に車を使用しているのは子供であるというような場合です。このようなケースでは、所有者と使用者のどちらか一方の住所が変わった場合、両者の必要書類を準備する必要があります。
カーリースのように、所有者がリース会社であるようなケースでは、所有者(リース会社)の住所が変わっても使用者の書類は不要となる「Bタイプ車検証」というものが使われています。
ただし、Bタイプ車検証の場合でも、使用者の住所が変わったときは所有者(リース会社)に連絡しなければいけないため、混同しないように覚えておきましょう。
車検と同時に住所変更手続きを行う場合で述べたように、手続き代行業者に依頼できます。ディーラー、自動車販売店、整備工場、カー用品店などの車専門事業者の他、行政書士の中にも代行サービスを行うところがあります。
住所変更手続きは平日に行う必要があるなど、自分で行くのが難しい場合もあるため、代行業者に任せてしまえば簡単です。
もちろん代行手数料がかかる他、事業者によっては住所変更のみの代行は受け付けていないなどの制約があるため、事前に各事項について確認しておきましょう。
結婚などの理由により、住所と氏名が同時に変更になることもあります。車検証の登録事項には氏名の情報も含まれているため、同時に氏名変更の手続きも必要です。
この場合、住所変更時に必要な書類に加えて戸籍謄本が必要です。
住所変更と同様に、車の所有者と使用者が異なる場合は、どちらか一方の氏名が変わったら双方ともに手続きしてください。
車検証がない状態で公道を運転することは法律違反です。車検証を失くしたことに気が付いたときは、速やかに再発行手続きをしてください。
転居後に車検証の紛失に気が付いても、再発行手続きは前住所の管轄支局で申請しなければなりません。
車検証の紛失は、車を日常的に使う人にとっては緊急事態です。このようなときこそ代行業者に依頼すると良いでしょう。