日本車は壊れない、自動車は動いて当たり前!と思いがちですが、実は約1万点の部品から構成された複雑な機械です。そう考えると、故障しないということはむしろ奇跡のようにも感じます。

私たちの生活においてとても身近な自動車ですが、多くの部品から構成されているため、安心してカーライフを楽しむためには日々の点検が非常に重要になってきます。

ここでは安心安全のカーライフを送るために行わなくてはならない日常点検をわかりやすく解説していきます。

そもそも日常点検って何?

そもそも日常点検って何?
突然ですが、みなさんは自転車を乗る前に、どんなところをチェックしますか?

空気圧やチェーンのゆるみなどを確認する方も多いかと思います。ところがこれが自動車に変わると、不思議と意外と何も見ないという人が多い気がします。

自転車と同様に、自動車も乗る前のユーザーの点検が非常に重要な意味を持っています。日常点検は正式名称「日常点検整備」と言い、実は法律で義務化されている点検です。

決められた点検項目を、適したタイミングでチェックすることで故障を未然に防ぐことができますので、一度も実施したことがない方はぜひこの機会にしっかりと行ってみてください。

点検項目は15項目

日常点検において定められた点検項目は15個あります。まずはどういった場所なのか、流れを確認していきましょう。

大まかに次の3つの場所から順番に点検していきます。

  1. エンジンルーム
  2. 車の外周
  3. 運転席まわり

それではひとつずつ順を追って解説していきます。

クルマをあまり好きでない方も、これはすべてのドライバーがやらなくてはならない義務の点検ですので、一緒にお付き合いいただければと思います。

エンジンルームを開けて

エンジンルームを開けて
まず最初にボンネットを開けてエンジンルームからチェックします。

①ブレーキ液

タンクの場所は奥の方についていることが多く、規定値内(FULLとLOWの間)かどうか、LOWより下回っていないかチェックします。もしこれが減っているとブレーキが利かなくなってしまう恐れがあるので、すぐに自動車工場などに相談してください。

②冷却水

リザーバタンクを見て冷却水が規定値内(FULLとLOWの間)であるかをチェックします。冷却液は緑やピンクの場合が多く、タンクを見つける際の参考にしてください。

③エンジンオイル

エンジンについているレベルゲージを抜き取って、不着しているオイルを一度すべて拭き取ります。そして再度元に位置に差し込んでから、再び引き抜くとオイルの位置がわかります。オイルが先端の目印(穴や波線など)の間になっているか確認します。

④バッテリー

バッテリー液の量が横から見て規定値内(FULLとLOWの間)に入っているかチェックします。

⑤ウォッシャー液

ウォッシャー液が格納されています。噴水マークがついている蓋が目印です。減っているようであれば水を補充しましょう。ただの水を追加しても大丈夫です。

車のまわりを一周して

車のまわりを一周して
エンジンルームの点検が終わったら、ボンネットを閉めてから、次は車のまわりを一周するように点検していきます。

⑥ライト・ランプ

ヘッドライトやブレーキランプ、ウインカーなどがしっかり点灯するか確認します。点灯しない状態で走行していると、安全性の面で良くないのはもちろんですが、整備不良車として警察に捕まってしまうこともあります。日常点検んでないと中々見つけられない部分ですので確実にチェックしましょう。

⑦タイヤのひび割れ

タイヤは古くなってくるとひび割れなどが発生します。駐車場が砂利や土の場合は発生しやすいので注意しましょう。一番タイヤの厚みが薄い側面がひび割れた状態は特に危険で、走行中にバーストして事故につながる場合があります。大したことがなく見えても実はひびが深い場合もありますので、もし発見した場合は高速に乗らず、近場の整備工場などにご相談ください。

⑧タイヤの空気圧

地面との接地面のたわみ具合で空気圧を判断します。明らかにいつもよりたわんでいたら危険ですので、近場の整備工場ややガソリンスタンドなどに相談してください。車のタイヤも自転車と同じで、自然と空気が抜けていきますので、乗る前には必ず確認するつもりでもやりすぎにはならないでしょう。

⑨タイヤの溝

タイヤの溝がしっかり残っているか確認します。1.6mm以下になるとスリップサインが出てきます。その状態では停止までの距離が増えて危険ですし、整備不良車として罰則規定もありますので、減ってきたら早めの交換をしましょう。

運転席に座って

運転席に座って
次に運転席に座って各種点検を行います。

⑩エンジンのかかり具合

エンジンをかけて、スムーズにかかるか、アイドリングが安定しているかを確認します。いつもよりかかりにくい場合はバッテリーの劣化など異常が考えられます。何日も続くようでしたら整備工場などに相談しましょう。

⑪ウォッシャー液のかかり具合

ウォッシャー液を噴射させてワイパーの動作範囲にかかるか確認します。詰まっていたり、方向がずれてしまっていると、ワイパーで汚れが落とせず走行中思わぬ視界不良になり危険です。

⑫ワイパーのふき取り具合

ワイパーがしっかり動作するか確認します。ガラスを保護するためにウォッシャー液を出してから動かしましょう。きれいにふき取れるか確認して、ふき残しがあるようであればワイパーゴムの交換などを検討しましょう。

⑬ブレーキの踏みしろ・効き具合

フットブレーキを何度か踏んで、違和感がないか確認します。明らかにいつもと違うと感じたら乗らずに整備工場などに相談しましょう。

⑭サイドブレーキの引きしろ(踏みしろ)

サイドブレーキの引きしろが大きすぎないか確認します。完全に引いてもまだ余裕がありそうな場合はサイドブレーキがしっかり効いていない可能性もありますので整備工場に相談してください。なおサイドブレーキは運転席横ではなくブレーキペダルのとなりについている車もあり、その場合は踏みしろで確認します。

⑮エンジンの低速・加速状態

アイドリング時や加速時の回転がスムーズに続くか確認します。アクセルペダルにひっかかりがないかもチェックポイントです。しっかり暖機させて回転が安定してから確認してください。

以上で15項目で終了です。結構いろいろな項目があることに驚きですね。

ボンネットの開け方がわからない時

教習所以来、何年も(何十年も)ボンネットを開けたことがないという方は、実は結構多いのではないでしょうか?

実はとてもカンタンなので、ぜひこの機会に愛車のボンネットを開けて日常点検をスタートしていただければと思います。

ただし、走行直後は非常に高温になっています。またエンジンがかかっている時はベルトなどが高速回転しているので危険です。エンジンを停止させ、しっかりと冷えている状態で開けるようにしてください。

ボンネットの開け方とキープの仕方
ボンネットの開け方とキープの仕方
①ボンネットオープナーを引く

大抵の車は運転席の足元あたりにボンネットをひらくレバーがあります(ガソリンの給油口と間違えそうなレバーです)。これを引くとボンネットが「ガコン」と少し浮き上がります。

②フックを外してボンネットを持ち上げる

車両の前方に移動して、浮き上がったボンネットの隙間に手を入れます。中央あたりにフックがありますので、手探りで外してボンネットを持ち上げます。手探りのため、初めての場合はフックの位置がわからず苦戦するかもしれませんが、覚えてしまえばカンタンです。

③ボンネットを開いたままキープする

片手でボンネットを支えた状態で、エンジンルームの手前か左右に棒状のステーが付いているので、それを外してボンネットの穴に差し込みます。これでボンネットを固定(開いた状態をキープ)させることができます。(ステーはボンネットの裏についている場合もあります)

閉め方

ボンネットは、落とすように閉めましょう。

最近は軽量化目的でボンネットがアルミニウムなどのやわらかい素材でできている車種もありますので、ボンネットを手で押し込んで閉めるやり方では凹んでしまう場合がありますのでご注意ください。

  1. ボンネットを手で少し持ち上げて支える
  2. ステーを収納する
  3. ボンネットを少しずつ下げて、ある程度の高さから落とす

これで完全に閉まります。

もし落下させる勢いが足りず浮いた状態になってしまったら、もう一度開けて、ある程度の高さまで持ち上げてから再び落として閉めます。「ガシャン!」と大きな音が出るので不安になる方もいるかと思いますが、故障ではありませんのでご安心ください。

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チェックシートを使おう

ここまで説明してきましたが、最初は流れのイメージを掴んでいただければ大丈夫です。

実際に点検を行う際は、国土交通省のホームページに、チェックシートのPDFが公開されていますので、これを活用すると便利です。最初のうちはチェックシートを印刷して、ひとつひとつ確実に点検するようにしましょう。

洗車で気付くことも多い

洗車で気付くことも多い
クルマは面積が大きく自分で洗うのは一苦労です。そのため年末に自動洗車機に入れて、あとは自然乾燥で終わりという方も少なくないと思います。

一方で自動洗車機は傷がつくからと手洗い洗車する方もいらっしゃいます。最新の洗車機は傷がほとんどつかなくなっているそうですので、個人的なこだわりの部分もあるかと思いますが、自分で手洗い洗車をした場合、愛着が湧くだけでなく、ふき取りをしている間に「あれっ・・・こんな傷なかったぞ?」と言うようなマイカーのちょっとした変化にも気が付くようになり、それが日常点検にもつながったりします。

洗車は自分でしない派の方も、たまにはご自身で愛車を磨いてあげるのもよいかもしれませんね。

JAF出動理由TOPは何?

JAF出動理由TOPは何?
ロードサービスの代名詞とも言えるJAF(ジャフ)。そのホームページによると、出動要請がかかる原因は「バッテリー上がり」と「タイヤのパンク」が約半数なのだとか。

日常点検の点検項目にどちらも入っていますので、しっかりと日常点検を行っていれば、突然のトラブルもしかすると防げていたかもしれません。

「会社に行こうとしたら車が動かない」「出かけた先でタイヤがパンクして予定が狂ってしまった」などにならないためにも、2大トラブル原因のバッテリーとタイヤは日頃から特に注意して点検しましょう。

バッテリー上がり

バッテリー上がりとは、ライトの消し忘れで過放電して(電気がなくなって)しまい、またバッテリーが劣化して充電できなくなりエンジンがかからなくなってしまうことです。

最近のバッテリーは高性能化していて、寿命のギリギリまで性能が続くものが多いようです。昔はエンジンのかかりが悪くなってきたらバッテリーが弱ってきたのかな?と判断できましたが、最近では劣化していてもわかりにくくなっていて、ある日突然エンジンがかからなくなる、ということもあるようです。

日常点検で少しでも異変を感じたら早めに整備工場などでバッテリー性能をチェックしてもらった方が良いかもしれません。

タイヤのパンク

タイヤの劣化や空気圧不足によるバーストが最も危険です。日常点検でタイヤの状態を確認していれば防げるものもありますが、一方で道路の異物などを踏んでしまうなど防げない場合もあります。

万が一パンクしてしまった時、ロードサービスをすぐ呼べる場所なら良いですが、そうでない場合には自分で応急処理をしなくてはならないケースもあるかもしれません。

パンクしてしまった時のために、日頃からスペアタイヤ(またはパンク修理キット)のチェックと使い方の確認もしておきましょう。

意外と知らない点検のあれこれ

自動車では言われて初めて気が付くことが多い気がします。

例えばタイヤをギリギリまで使おうとすることは、一見モノを大事にする人のように思えますが、実際はただ危険なだけです。止まれない車ほど怖いものはありません。

ここでは日常点検において意外と知られていない事などをご紹介しようと思います。

タイヤは靴

タイヤは靴
人間が靴を履くようにクルマも靴(タイヤ)を履いています。走る・曲がる・止まるために最も重要なパーツで、人間の靴と同じように、傷んだり磨り減ったら交換する必要があります。

クルマは軽自動車でも1t近くの重さがあり、これを支えているのが4つのタイヤです。唯一地面と接していている部位であることを考えると、安心安全のカーライフを送るためにも常に注意してチェックしておきたいところです。

本当に義務化されているの?

日常点検整備(日常点検)は「道路運送車両法」で定められた点検です。罰則規定こそありませんが、行わないと違法行為ということになりますのでご注意ください。

日常点検整備

第47条の2 自動車の使用者は、自動車の走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に、国土交通省令で定める技術上の基準により、灯火装置の点灯、制動装置の作動その他の日常的に点検すべき事項について、目視等により自動車を点検しなければならない。

「適切な時期」であり毎回とは書かれていませんが、業務用の車両については毎回の点検を義務付けられていますから、自家用でもなるべく頻繁に行った方が良さそうです。

定期点検は必要?

定期点検は必要?
日常点検の他に6か月点検(半年点検)、1年点検(法定12か月点検)、車検(車検と法定24か月点検)などがあります。

法定点検はその名の通り法律で義務化された点検で、法定12か月点検は26項目、24か月点検は56項目もの点検項目となっています。

これらは専門的な知識が必要な点検で、しかも重要部位になりますので、安心安全のためにぜひディーラーなど専門の自動車整備工場に依頼してください。

点検時期を忘れがちな方は

定期点検の時期になるとハガキでお知らせが来るなどしますが、つい忙しくて忘れがちなドライバーも多いのではないでしょうか?

最近では、設定した点検時期やオイル交換距離になると表示や警告音でドライバーにお知らせしてくれる機能を持ったクルマもあります。もしこのような機能がついている車種にお乗りの方は、せっかくの機能なのですから使わない手はありません。

設定方法などは取り扱い説明書に記載がありますので、まずは該当車種かどうか確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。

まとめ

日常点検は非常に大切な行動で、しかも義務付けられているものです。
15項目の点検項目に沿ってあせらずしっかりとチェックすれば大丈夫です。

①日常点検は使用者の義務
②乗る前に15項目点検項目に沿ってチェックする
③ボンネットを閉める時は落とすように
④慣れない内はチェックシートを使う
⑤タイヤとバッテリーに注意しよう

最初は時間がかかると思います。お出かけの際は少し早めに家を出て日常点検をしっかり行えるだけの時間を取るように心がけましょう。


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