ハイブリッド車は、低燃費であることや、走行性能が高いことから、多くのドライバーに選ばれています。しかし、長く乗り続けるためにはバッテリー寿命を理解し、適切なメンテナンスを行うことが重要です。
この記事では、ハイブリッド車の基本的な仕組みから、バッテリー寿命と長持ちさせる方法まで分かりやすく解説します。さらに、国内メーカー各社のバッテリー保証についても解説しているため、あわせて参考にしてください。
ハイブリッド車とは?
ハイブリッド車は、ガソリンエンジンとモーターを組み合わせて動力を得ている車のことです。そのため、走行状況に応じてエンジンのみ、モーターのみ、またはその両方を併用することで効率的なエネルギー利用を可能にしているのです。
これにより、燃料消費を抑えながら走行できるため、ガソリン車よりも燃費性能に優れています。また、市街地を走行する際はモーターをメインに稼働し、高速走行ではエンジンが力を発揮するなど、場面に応じて最適に駆動するのも魅力的です。
走行時の静粛性も高いほか、CO2の削減につながることから環境負荷の軽減にも一役買っています。近年は充電機能を備えたプラグインハイブリッド車も登場し、より環境性能を高めています。
ハイブリッド車の寿命はバッテリーで決まる
ハイブリッド車を長く乗るためには、バッテリーの状態管理が欠かせません。なぜなら、ハイブリッド車の寿命はバッテリーで決まるからです。
搭載されるバッテリーは、車を動かすための「駆動用バッテリー」と、電装品を動かす「補機バッテリー」の2種類に分かれます。
駆動用バッテリーは容量が大きく、走行性能に直接影響するため、劣化を早期発見することが重要です。
補機バッテリーは一般的な自動車のバッテリーと役割が似ていますが、交換サイクルはやや短めです。
走行距離や使用環境に応じた点検を続け、ハイブリッド車をより長く、安心して利用しましょう。
ハイブリッド車のバッテリーの寿命目安
ハイブリッド車の性能を支える重要な部品がバッテリーです。寿命はバッテリーの種類によって異なります。
万が一、適切な時期に交換しなければ走行性能や安全性に影響するため注意してください。長く安心して乗るために、まずはバッテリーの寿命目安を理解しましょう。
ここでは、駆動用バッテリーと補機バッテリーの寿命について解説します。
駆動用バッテリーは、ハイブリッド車を走らせるための動力源です。寿命の目安は5年〜8年で、走行距離に換算するとおよそ10万kmといわれています。
一般的に使われるガソリン車用バッテリーよりも寿命は長い傾向にありますが、走行状況や使用環境によっては短くなる可能性があることを覚えておきましょう。
寿命が近づくと、メーター内に警告灯が表示されるバッテリーがほとんどです。そのため、このサインを見逃さずに早めの交換を心がけましょう。
また、バッテリーの劣化を放置すると、走行性能の低下や燃費悪化につながるため、定期的な点検も欠かせません。
補機バッテリーは、エアコンやライトなどの電装品を動かす役割を持っています。寿命の目安は3年〜5年で、駆動用バッテリーよりもやや短い傾向にあります。
補機バッテリーの寿命は走行状況や使用環境によって変動しますが、寿命を迎えるとハイブリッドシステムが起動できなくなり、車自体を動かせなくなるため注意してください。そのため、定期的に補機バッテリーの状態を確認し、必要に応じて交換しましょう。
特に、長期間乗る予定がある場合、駆動用バッテリーと同様に早めの点検や交換を意識してください。
このように、安心して車を使い続けるためにはバッテリーを放置せず、こまめに点検・交換することが重要です。
例えば、高温多湿の地域や短距離走行が多い場合は、劣化が早まる可能性があります。寿命が近づくと警告灯が点灯することがあるため、その際は早めに点検や交換を行いましょう。
ハイブリッド車のバッテリー交換費用の相場
ハイブリッド車のバッテリー交換費用は、種類によって大きく異なります。そのため、予算や車の状態に合わせて、適切な交換方法を選ぶことが重要です。
ここでは、駆動用バッテリーと補機用バッテリーの交換費用相場について解説します。
駆動用バッテリーの交換費用は、20万円〜60万円程度が相場といわれています。価格が高い理由は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池といった高性能な電池を使用しているためです。
費用を抑えたい場合、新品ではなくリビルト品を選ぶ方法があります。リビルト品とは、中古バッテリーの劣化部分を交換し、再利用できる状態にしたものです。リビルト品であれば15万円〜30万円程度で交換できる可能性があります。
ただし、駆動用バッテリーは高電圧のため、交換には専門的な電気知識が必要です。安全性を確保するためには、専門業者に依頼するのがおすすめです。
補機用バッテリーの交換費用は、1万5,000円〜3万円程度が相場といわれています。これに加えて、作業工賃が別途2,000円〜3,000円ほどかかります。
駆動用バッテリーに比べてサイズが小さいため、価格も抑えられているのが特徴です。
また、交換作業はガソリン車のバッテリー交換と同じ要領で行えるため、経験があれば自分ですることも可能です。ただし、少しでも不安がある場合、安全性を確保しながら確実に作業してくれる専門業者に依頼しましょう。
ハイブリッド車のバッテリーを長持ちさせるコツ
ハイブリッド車のバッテリーは適切な扱いをすれば寿命を延ばせるのをご存知でしょうか。
実は、日常的に少し意識を変えるだけで、交換時期を遅らせられる可能性があります。
ここでは、ハイブリッド車のバッテリーを長持ちさせるコツを2つ紹介します。
バッテリーは高温環境に弱く、炎天下に長期間置かれると劣化が早まるといわれています。そのため、直射日光が当たる場所や、密閉されて内部温度が上昇しやすい場所での保管は避けましょう。
特に、夏場は高温によるダメージが大きいため注意が必要です。
長持ちさせるためには、屋内駐車場や屋根付き駐車場、日陰を確保できる場所で保管するのが望ましいといわれています。このように、環境の影響を受けにくい場所を選ぶことで、バッテリーの性能低下を防げるのです。
バッテリーは過充電すると劣化が進行しやすくなるといわれています。そのため、100%付近までの充電を繰り返すと、必要以上の化学変化が進み、寿命が短くなる可能性があるのです。
反対に、容量が少ないまま放置する過放電状態も避けなければなりません。なぜなら、過放電が続くとサルフェーションが発生し、充放電の反応ができなくなるためです。
サルフェーションとは、鉛バッテリー放電時に生成された硫酸鉛が固まりになる現象です。
そのため、バッテリーを長持ちさせるためには、充電容量を30%〜80%の範囲に留めることを意識しましょう。
ただし、メーカーや車種によって保証対象となる部品の範囲が異なることがあるため注意してください。購入時には保証書を確認し、自分の車に適用される条件を正確に把握しておきましょう。
【国内メーカー6社】ハイブリッド車のバッテリー保証は5年間が基本
国内主要メーカーのハイブリッド車バッテリー保証は、ほとんどが新車登録から5年間または走行距離10万kmまでが基本です。
ただし、メーカーや車種によっては保証対象の部品範囲が広かったり、保証期間が延長される制度が用意されていたりする場合があります。また、BEVバッテリー搭載車など特殊なケースでは、期間や距離が大幅に延びることもあります。
購入時には、自分の車種に適用される保証内容を必ず確認することが大切です。
トヨタのハイブリッド車は、新車登録から5年または走行距離10万kmまでバッテリーが保証されます。さらに、バッテリー以外にも以下の部品が保証対象なのが嬉しいポイントです。
- ハイブリッドトランスアクスル
- スタータージェネレーター
- インバーター
- DC-DCコンバーター
- ハイブリッドコントロールコンピュータ
- バッテリーコンピュータ
- 冷却装置
これにより、バッテリー関連の主要部品を幅広くカバーし、安心して長期間利用できるサポート体制が整っています。
ホンダの保証期間は、新車登録日から5年間または走行距離10万kmまでです。ただし、バッテリーの寿命は走行距離や置かれている環境によって異なります。使用状況に左右されるため、保証内容を理解したうえで定期的な点検を受けましょう。
この保証は、バッテリーが万が一故障した場合に備えるものであり、それ以上の保証を受けられる訳ではないため注意が必要です。
レクサスは、ハイブリッド車のバッテリー保証を走行距離10万km以内としています。ただし、BEVバッテリーが搭載されている車の場合は特例があり、新車登録日から10年間または走行距離20万kmまで保証されることを覚えておきましょう。
レクサスは高級車ブランドならではの長期保証により、バッテリーの信頼性と顧客満足度の向上を図っています。そのため、購入時には対象車種と保証内容をしっかり確認しましょう。
スズキは、走行距離10万kmまでの保証を設けています。さらに、新車購入時や初回・2回目の車検時に「保証が延びた」という延長保証制度に加入すると、最長で7年間の保証が受けられます。
この制度を利用すれば、長期的にバッテリーの不具合に備えることが可能です。確かに保証の延長に費用はかかりますが、長く乗る予定がある人にとっては大きなメリットとなる可能性があります。
そのため、車検前に延長保証制度の必要性を確認し、状況によっては加入することをおすすめします。
日産は、駆動用のリチウムイオンバッテリーを5年間または走行距離10万kmまで保証してくれます。また、正規の補機バッテリーを購入して交換した場合、25か月または4万kmの追加保証が付くのも嬉しいポイントです。
ただし、駆動用と補機用で保証期間が異なるため、交換時にはそれぞれの保証内容を確認しておきましょう。
スバルは、バッテリーを走行距離10万km以内まで保証してくれます。さらに、以下の部品も保証対象です。
- 電動オイルポンプ
- DC-DCコンバーター
- ハイブリッド制御装置
- 駆動用モーター
- インバーター(駆動モーター用・電動オイルポンプ用)など
主要な電動部品をまとめて保証することで、ハイブリッドシステム全体の信頼性を高めてくれているのがポイントです。
また、過充電や過放電を避けることも大切です。満充電や容量がほとんどない状態を長時間続けると化学変化が進み、寿命が短くなるため、充電容量は30%〜80%を目安に留めておきましょう。
ハイブリッド車とガソリン車どっちがお得?
ハイブリッド車とガソリン車は、それぞれメリットとデメリットが異なります。そのため、バッテリー寿命や燃費性能、車両価格、メンテナンス費用などを比較し、自分の利用スタイルに合った選択をしましょう。
ここでは、ハイブリッド車とガソリン車を比較し、どちらがお得なのか解説します。
ガソリン車のバッテリー寿命は、一般的に2〜3年程度とされています。これに対し、ハイブリッド車の駆動用バッテリーは5〜8年ほど持つため、ガソリン車に比べておよそ1.5〜2倍は長く使用できるといわれています。
寿命が長いことは交換頻度を減らすことにもつながるため、結果的に手間や時間的コストを抑えられるのです。
ただし、ガソリン車のバッテリーは交換部品の価格が安く、作業も比較的容易で、専門知識がなくても対応できるケースが多いといわれています。そのため、寿命の短さが必ずしも負担に直結するとは限りません。
一方、ハイブリッド車の駆動用バッテリーは高額かつ専門的な交換作業が必要なため、長寿命であっても交換時の費用や手間の負担は大きくなることを覚えておきましょう。
ハイブリッド車は、ガソリン車に比べて車両価格が高めに設定されています。その理由は、エンジンとモーターを組み合わせた複雑なシステム構造や、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの高性能バッテリーが搭載されているためです。
これらの技術は燃費や静粛性の向上に寄与しているものの、初期費用を押し上げる要因にもなっているのです。また、部品の数や構造が複雑であるため、メンテナンス費用や修理費用もガソリン車より高くなる傾向にあります。
特に、駆動用バッテリーやモーター関連部品の修理は専門知識を要し、作業工賃も高くつく可能性があります。そのため、燃費性能の良さだけでなく、購入から廃車までの総コストを把握したうえで選択しましょう。
ハイブリッド車は燃費性能や静粛性に優れているため、長距離走行や頻繁な運転を行う人にとって魅力的でしょう。さらに、環境負荷を軽減できる点も人気の理由となっています。
しかし、車両価格やメンテナンス費用はガソリン車より高くなる傾向があり、バッテリー交換などの大きな出費が発生する可能性があることを覚えておきましょう。
ガソリン車は購入費用や修理費用が抑えられやすく、初期投資を少なくできるのがメリットです。そのため、どちらが「お得」かは一概に決められないのが現状です。
年間の走行距離、利用環境、維持管理にかけられる予算などを総合的に考慮して判断するのが望ましいといわれています。購入前にシミュレーションを行い、長期的なコスト比較をしてからどちらを購入するか決めましょう。