世の中に流通しているすべての自動車には車検証が発行され、自動車ごとに性能に関する情報、登録に関する情報、所有者に関する情報が記載されています。したがって、自動車が役目を終え、廃車とする場合には車検証情報に変更が生じるため更新が必要です。
この記事では、車検証が果たす役割、内容に変更が生じたときに必要な手続きとその方法について詳しく解説します。
車を運転する人であれば、人生において何度も車検証情報の更新が必要な機会に遭遇するため、重要な情報としてぜひ覚えておきましょう。
- 国内で流通しているすべての車の車検証情報は、国土交通省がデータベースで管理しています。
- 廃車手続き含め、車検証情報を更新する場合は車検証が必要です。
- 廃車手続きには「永久抹消登録」と「一時抹消登録」の2種類があります。
- 車検証を紛失したときは、速やかに再発行手続きが必要です。
- 廃車続きが完了すると、手続きの種類ごとに証明書が発行されます。
- 廃車手続きは自分で行うだけでなく、代行業者に依頼できます。
廃車手続きには車検証が必要
日本では流通している車の車検証情報は、国土交通省がデータベースとして保管しています。
一般的に車検証は、車検に合格した自動車として、安全性を認められた車である証明書という印象です。しかしそれだけではなく、犯罪に使われた車の追跡や、取引の透明性の担保にも使われます。
物理的な安全性の他、法的、経済的な安全性の形成にも一役買っており、人間で言うところの戸籍に該当する情報といえるでしょう。
車検証は現存する車にだけ発行されます。人間が死亡したときに死亡届を提出するのと同様に、廃車となり流通市場から消えた車はその存在を抹消する登録が必要です。廃車となったのに車検証情報がそのままでは、流通実態との整合性がとれないためです。
車検証の果たす役割を念頭に、廃車手続きのほか、車検証情報の更新が必要となるシーンについて1つずつ覚えていきましょう。
車検証が必要になるシチュエーション
車検証が必要になるシチュエーションは以下に解説する5つの場面です。
シチュエーションごとに、なぜ車検証が必要なのかにフォーカスして解説します。
公道を走行するときは、常に車検証を車内に備え付けていなければなりません。さらに、フロントガラスに車検満了日を記載したステッカーを外から見えるように表示する必要があります。
公道は多くの自動車が入り乱れる空間であり、安全性が担保された自動車であることを外見上わかるように表示することで、車社会の安心を確保しています。
車検証の携行および車検満了日のステッカー表示は、道路運送車両法で定められた事項です。違反すれば罰則が科せられるため、決して車検証やステッカーのない状態で運転しないように注意してください。
車検の正式名称は自動車検査登録制度といい、国が定めた車の保安基準を満たしているか検査する制度です。主に車の各機能が正常に作動するかどうかの「安全性」と、排ガス基準が一定水準に収まっているかの「公害防止性能」が検査されます。
車検証は車検に合格したことを証明する書面です。車検を通せない車は、公道を走る車として不適格とみなされ、車検証が発行されません。
車検証には有効期限があります。期限を更新するために車検を受けるときには、有効期限が切れていたとしても、それまでに発行されていた車検証が必要です。
車検を受けるためには自動車税を納付していることが要件であり、納税証明書が必要です。車検証と一緒に保管しておくとよいでしょう。
車検証には車に関する情報だけでなく、所有者情報も記載されています。車ごとに明確に所有者が管理されることで、中古車市場の透明性を担保し、安全な取引市場が形成されているのです。
また自動車税の納税義務者は所有者であるため、名義変更していないと、前の所有者が自動車税を請求され続けてしまいます。したがって、車を売却するときは所有者の名義変更が必要となるため、車検証が必要です。
名義変更の手続き義務者は新所有者です。売買による所有者の変更には車検証だけでなく、本人確認書類や売買を証明する書類など、他に必要となるものもしっかり確認しておきましょう。
家族間での受け渡しや、知り合いへの譲渡など、車業者が関与しない所有権の移転時にも所有者の名義変更が必要です。売却時と同様に新所有者が手続き義務者となるため、自動車と同時に車検証も引き渡します。
個人間取引においては、名義変更の必要性を明確に認識している者が介在しないことも想定されるため、手続きが漏れやすいシチュエーションといえます。
前述した通り、そもそも車検証を備えていない自動車は公道を走れません。違法性を認識し、譲渡人、譲受人どちらの立場であっても、自動車と車検証がセットであることを必ず確認してください。
車検証が発行されている自動車は、すべて国土交通省のデータベースで管理されています。国内の流通自動車はすべてデータベースに存在しているため、廃車となった場合には、データベースから削除する手続きが必要です。
車検証には登録に関する情報が記載されているため、廃車時には廃車登録を運輸支局にて行います。廃車となったときも、最後まで責任ある行動を心がけましょう。
しかし廃車手続きに関しては、車検証の再発行に代えて「現在登録等証明書」の取得により進めることも可能です。車検証の再発行よりも手続きが簡単で所要時間も短いため、廃車手続きするためだけであれば、現在登録等証明書の取得をおすすめします。
廃車手続きは主に2種類
廃車とは車を解体するなど、スクラップを意味するように思えますが、手続き上の廃車とは車検証の登録情報の抹消を指します。
廃車手続きは、主に永久抹消登録と一時抹消登録の2種類です。それぞれどのようなケースで使われるのか、またメリット、デメリットについて解説します。
今後の車の使用状況に応じて使い分けましょう。
永久抹消登録とは、それまで乗っていた車を解体して公道を走れない状態にするときの手続きです。廃車と聞いたときに一般的にイメージされる手続きでしょう。
永久抹消登録はそれまで登録されていた車検証情報(車籍)を完全に抹消します。この登録をすると、再度の登録は不可能で、その車には二度と乗れません。
永久抹消登録には解体証明書が必要です。解体事業者やその中間事業者に依頼すれば発行してもらえます。
損傷や劣化が著しく、中古車として販売できない場合は永久抹消手続きをとるのが良いでしょう。
車を解体せず、一時的に流通市場からの登録を抹消する手続きを一時抹消手続きといいます。一時抹消登録のメリットは、登録期間中に自動車税や自賠責保険料が発生しないことと、中古車新規登録することで、再び公道を走れるようになることです。
都会への単身赴任や海外出張などで、長期間車の使用機会がなさそうなときは、一時抹消登録をおすすめします。
一方、デメリットは、保管スペースや維持費は引き続き発生する点です。一時抹消登録手続きのあと、結局解体することになれば、その時点で永久抹消登録手続きが必要なため、はじめから永久抹消登録すればかからなかった費用や手続きが余分に発生します。
一時抹消手続きは、今後車を使う見込みがあるかどうか、十分に検討して決めてください。
車検証は紛失しても再発行できる
もし車検証を紛失してしまった場合は、再発行が必要です。前述した通り、公道を運転するときは車検証を携行していないと罰則が科されるため、紛失時は再発行するまで運転できません。
ここからは、車検証の再発行手続きについて解説します。紛失に気が付いたとき、速やかに手続きできるよう覚えておきましょう。
車検証の再発行は、「自分で手続きする方法」と「代行業者に依頼する方法」の2つがあります。
自分で手続きする場合は、管轄の運輸支局、軽自動車の場合は軽自動車検査協会に出向く必要があります。所要時間は、事前に必要書類を整えていれば1時間程度です。
運輸支局、軽自動車検査協会は、平日のみ開いています。受付時間は8:45~11:45、昼休憩をはさんで13:00~16:00です。
平日が仕事の人にとっては、わざわざ休みをとらなければならないためスケジュールの調整が必要です。
代行業者に依頼して再発行手続きする方法もあります。自分で運輸支局等へ行くのが難しい人や、時間のない人にはこの方法がおすすめです。
注意したいのは、代行業者へ依頼すると代行手数料がかかることです。代行業者は、ディーラー店や自動車整備事業者、カー用品店など、自動車事業に関連する業者の他、行政書士なども請け負うところがあります。
代行手数料と自分で手続きする手間とを天秤にかけ、都合の良いほうを選びましょう。
廃車手続きは、車検証に代えて「現在登録等証明書」の提出でも進められます。現在、登録等証明書は車検証情報の登録内容を証明する書類で、車検証とほぼ同じ内容が記載されています。
車検証の再発行と比較して、現在登録等証明書の取得の方が手続きが簡単です。車検証を紛失していても、あとは廃車手続きをするのみという場合は、現在登録等証明書を利用することをおすすめします。
ただし、必要書類の記載時間や添付書類を揃える時間と手間、運輸支局までの往復時間を加味すると、所要時間はさらに長くなります。平日に受付しなければいけないことも鑑みて、代行業者への依頼も検討しましょう。
廃車手続き完了後に受け取る証明書
廃車手続きが完了すると、それまでの車検証がなくなる代わりに発行されるのが、完了を証明する証明書(通知書)です。発行される証明書は一時抹消登録か永久抹消登録か、また対象自動車が普通自動車なのか軽自動車なのかで異なります。
ここからは、それぞれの手続きごとに発行される証明書の種類と、どのような場合に必要になるかを解説します。名前が似ていて混同しやすいため、しっかりと区別して覚えてください。
登録識別情報等通知書は、普通自動車を一時抹消登録したときに発行される証明書です。
以前は一時抹消登録証明書という書面が発行されていましたが、平成20年11月に廃止され、代わりに登記識別情報等通知書が発行されるようになりました。
登録識別情報等通知書を用いてできる手続きは、以下のとおりです。
- 一時抹消後の中古車新規登録
- 自賠責保険料の返金手続き
- 任意保険の引継ぎ
- 一時抹消後の輸出抹消
- 解体届出
平成20年11月以前に一時抹消登録したものについては、現在でも一時抹消登録証明書で各種手続きが可能です。
登録事項等証明書は普通自動車の登録内容が記載された書面です。すなわち普通自動車の登録情報を完全に抹消したときは、登録事項等証明書は廃車を証明する書面となります。
登録事項等証明書を用いて可能な手続きは、以下のとおりです。
- 自賠責保険を解約する場合
- 任意保険を中断する場合
- 新しい車の車庫証明を申請する場合
- 登録識別情報等通知書を紛失した場合
登録事項等証明書は商業登記簿謄本のように、現在の登録内容を記載している「現在登録事項等証明書」と、新規登録時から現在までの変更履歴まで記載された「詳細登録事項等証明書」の2種類があります。
軽自動車を一時抹消登録したときは、自動車検査証返納証明書という書面が発行されます。登録識別情報等通知書の軽自動車版だと覚えましょう。
自動車検査証返納証明書を用いて可能な手続きは、基本的に登録識別情報等通知書のときと同じです。
紛失すると再発行はできず、軽自動車検査協会にて新たに中古車新規登録しなければなりません。これには一週間ほどかかる事前審査が必要であり、必要書類も多いため大変手間がかかります。紛失しないよう、大切に保管してください。
廃車手続きを代行してくれる業者
ここまでで解説した通り、廃車手続きでは一時抹消登録と永久抹消登録のいずれかが必要です。いずれの登録も手続きする場所は、管轄の運輸支局、もしくは軽自動車検査協会です。
平日しか開いていないなど制約が多い中、車検証の再発行と同様に代行業者に廃車手続きの依頼ができます。自分で手続きするのが難しい人にとってはありがたいサービスです。
ここからは、どのような事業者に代行を依頼できるのかを解説します。いざというときに役に立つよう、覚えておいてください。
廃車を検討するシチュエーションとして多いのが、車を買い替えるときです。新しい車を購入する先のディーラー店では、ほとんどの場合、前の車の廃車手続きを代行してくれます。
単純に代行費用を請求されるときもあれば、廃車予定の車にリセール価値が残っている場合は、代行費用が下取り価格から差し引かれることもあります。
新しい車の購入から廃車手続きまで一気通貫で完了させられるのが、ディーラー店に依頼する最大のメリットといえるでしょう。
自動車業界には廃車買取業者という、廃車の解体のほか、残った部品を金属資源やリサイクルパーツとしてリセールする事業者が存在します。廃車買取業者も廃車手続きを代行してくれる事業者のひとつです。
廃車買取業者は残ったパーツの海外販路を持っていることが多く、一般的には値段が付かないような車でもそれなりの値段になります。商品として積極的に廃車部品を求めているため、ここでは廃車手続き代行費用が無料であることも珍しくありません。
スクラップ同然の車に値段が付くだけでなく、代行費用もかからないため、ユーザーにとって金銭的なメリットが大きい依頼先といえます。
自動車業界以外の事業者では、車検証の再発行と同様、行政書士も廃車手続きの代行を請け負ってくれます。廃車手続きは行政手続きの一種であるため行政書士の職務の範囲内です。
ただし、行政書士は法律家であるため、行政手続きとして廃車登録するに留まります。物理的な自動車の引き取りや解体作業は専門外であるため、通常の自動車買い替えサイクルの中で利用するメリットはあまりないでしょう。
廃車手続きを業者に依頼するメリット
代行業者に依頼するメリットは、手続きにかかる時間と手間を引き受けてもらえることです。
廃車手続きは必要な書類の準備のほか、仕事で忙しい平日に受付するなど、手続きのために大きくスケジュールを割かなければなりません。そこで代行業者に依頼すれば、仕事に穴をあけることなく必要な手続きを完了させられます。
業者を厳選すれば、代行費用がかからないケースもあるため、お金の面を気にすることなく依頼できます。