新車試乗レポート
更新日:2022.05.27 / 掲載日:2022.05.26

【試乗レポート トヨタ ノア】渋滞時に手放しできる「アドバンスト ドライブ」を試す

文●ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス、トヨタ

 クルマと人間の距離が近づいてきている。クルマが、まるでドライバーに寄り添うように運転を手助けし、運転が苦手なひとでも、疲れているときでも、安全に目的地までたどり着けるように陰ながらサポートしてくれるところまで進化してきたのだ。

新型ノア・ヴォクシーは、購入後にもアップデートで機能が向上

ノア ハイブリッド S-Z 2WD(7人乗り)

 今回、フルモデルチェンジした新型ノア・ヴォクシーで、高速道路を中心に運転支援機能を試すことができた。運転支援の充実は新型の大きな話題だが、デビュー時の試乗車には一部機能が実装されていなかった。それがアップデートにより、機能が使えるようになったというのが背景にある。そう、新型ノア・ヴォクシーは、購入したあとでも機能をアップデートできる仕組みが備わっている。クルマがより、コンピューターやスマホに近い存在になってきて、ハードだけでなくソフト分野の進化が問われる時代がやってきている。

渋滞時に手放しを実現する「アドバンスト ドライブ(渋滞時支援)」を試す

「アドバンスト ドライブ(渋滞時支援)」の機能説明

 では、新型ノアに採用された運転支援機能について説明しよう。ここでいう運転支援とは、ドライバーが行う操作の一部をクルマがサポートすることで、負担を軽減するというもの。トヨタでは、こうした技術を「トヨタ チームメイト」と命名している。
 背景にあるのが、2021年11月から施行された新型車への自動ブレーキ装着の義務化だ。これを実現するために新型ノア・ヴォクシーにも、画像センサーとミリ波レーダーセンサーが全車に標準装備された。それらを活用すれば、特別に部品を追加することなく、前のクルマに追従する高度なクルーズコントロール機能が追加できる。だが、ここまでは軽自動車でも実現していることで、特別目新しさはない。今回、新型ノア・ヴォクシーがトヨタ初の機能として実現したのが、高速道路や自動車専用道路の渋滞時に、条件が整ったときにステアリング操作までをクルマが行う「アドバンスト ドライブ(渋滞時支援)」だ。まとめると、渋滞時に条件が整えばハンドルから手を離すことができる機能ということになる。
 「アドバンスト ドライブ(渋滞時支援)」を搭載するには、セットオプションを含めてある程度の出費が必要。たとえば今回の試乗車「ハイブリッド S-Z(7人乗り)」では、「緊急時操舵支援」+「フロントクロストラフィックアラート」+「レーンチェンジアシスト」、「ブラインドスポットモニター」+「安心降車アシスト」、「パーキングサポートブレーキ」とセットオプションとなり価格は13万4200円。これまでも水素自動車のMIRAIやレクサス LSといった高級車に同様の機能は搭載されていたが、「渋滞時に特化した普及版」というのがトヨタ初の部分になる。機能制限があるとはいえ、普及価格帯のミニバンに「ハンズオフ機能」が搭載されたことは大きなトピック。おそらく、これから登場する新型車にも同様の機能が搭載され、普及していくのだろう。

 というわけで、実際に「アドバンスト ドライブ(渋滞時支援)」を体験するべく、あえて渋滞を求めて高速道路を走ってみたのだが、実際にはなかなか機能はオンにならなかった。
 ここで改めて「アドバンスト ドライブ(渋滞時支援)」の作動条件を示す。以下はトヨタによる説明の抜粋だ。

 アドバンスト ドライブの操作手順

[1]車線内維持および先行車追従中。(レーダークルーズコントロール+レーントレーシングアシスト)
[2]ドライバーが安全確認をできる状態であるとシステムが判断した場合に、システムの開始を表示。
[3]ステアリングから手を放して走行できる状態。

 つまり、いくら渋滞中であっても、システムがすべての条件を満たさない限り「アドバンスト ドライブ(渋滞時支援)」は作動しない。なお、システムが作動すると、メーター内に作動を知らせるインジケーターが現れるため、作動すればすぐにわかるようになっている。
 最終的に、短時間ではあるが「アドバンスト ドライブ(渋滞時支援)」を体験することができた。それは間違いなく作動し、作動中はステアリングから手を離すことができた。それはそれでもちろん凄いことなのだが、作動速度が40km/h以下の渋滞中であるため周囲も含めスピード感がなく、正直に言えばそれほどの感動はなかった。作動中、もの珍しさもあり色々と視線を動かしているとシステムから前をちゃんと見なさいと音声でアドバイスされてしまった。あくまでもドライバーの監視下でのみ作動するためのセーフティ機構だ。

標準装備のレーダークルーズコントロールとレーントレーシングアシストが秀逸!

ノア ハイブリッド S-Z 2WD(7人乗り)

 返すがえすも印象的だったのが、標準装備されるレーダークルーズコントロール+レーントレーシングアシストのレベルが非常に高かったことだ。ステアリングから手を離すことこそできないものの、実質的にはほとんどステアリングを自分で操作していないのだ。これは、レーダークルーズコントロールとレーントレーシングアシストの合わせ技によるもので、今回テストした千葉木更津から都心へと向かうルートでは、制限速度内であるかぎりステアリングに手を添えて前を見ているだけでほぼ全区間を走り抜けてしまった。基本的には車線中央をしっかりと保持するのだが、路外にある障害物がクルマに近づきそうな場合は進路をずらす細やかさを持つし、カーブでの動きはさらに見事だ。カーブが近づくとステアリングが微妙に動き始め、まるでベテランドライバーの運転のように車体の向きをスムーズに曲げていく。曲率が大きなカーブでは流れに沿ったまま、きついカーブでは手前で減速するため、ジェットコースターに乗せられているような怖さがないのも良かった。当然、アクセルもブレーキも操作する必要はない。ステアリング操作に力を使わないから肩はずっとリラックスしているし、足もフロアに置いたまま。運転による疲労は少ないし、ゆっくり走っていることが苦にならないことが新鮮だった。

新型ノア・ヴォクシーでは、レーダークルーズコントロールの制御もより自然なものになった

 たしかに「アドバンスト ドライブ(渋滞時支援)」はトヨタ初というフレーズも手伝ってインパクトがある。だが、新型ノアの魅力はそうした華やかなところだけではない。ボディのしっかり感もそうだし、すごく自然になったハイブリッドシステムの手応えもそうだし、大きな力を使わずに開けられ、好きなところでぴたっと止まるバックドアもそう。いろいろなところの仕上がりレベルがどれも高いのだ。使ってみて、走らせて、改めてとても丁寧にしっかりと作り込まれているクルマだとしみじみ実感した。

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