新車試乗レポート
更新日:2022.04.01 / 掲載日:2021.11.17

【試乗レポート BMW M4クーペ】気絶するほど気持ちがいい真のスポーツカー

BMW M4クーペ

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス

 スポーツカーは、その運動能力を活かすべく速く走っている時だけが楽しい。……スポーツカーに対してそんな印象を持っているのなら大きな誤解だ。運動性能の高いスポーツカーは、実は、ゆっくり走っていても運転が楽しいのだから。

 なぜなら、真のスポーツカーはドライバー操作に対する反応が素直で心地いいからだ。切れ味が悪いナイフはイライラするが、スパッとイメージ通りに切れれば爽快。動きの鈍いスマホやパソコンはストレスが溜まってくるけれど、サクサクと動けば気分も晴れやかになってくる。クルマだって同じことがいえる。

 ドライバーが“1”だけアクセルを踏んだら、ちょっと足りない“0.9”でも多すぎる“1.1”でもなくしっかりと“1”だけ正確に加速する。ブレーキやハンドルだって同様。ドライバーの操作をわずかな過不足もなく正確に反映するクルマは乗っていて心地いいし、そもそもスポーツカーは運転を楽しむためにドライバーの操作をリニアに反映するように作られたクルマ。だから、真のスポーツカーなら決して飛ばさなくても、運転して気持ちいいのだ。

4シリーズを基本としながらレーシングカー的な迫力を与えた

M4クーペ コンペティション

 なぜそんなことを言い始めたかといえば、試乗したBMW「M4」がもたらすあまりの爽快感に気絶しそうなくらい気持ちよかったから。峠道をハイペースで走るのが楽しいのは言うまでもない。しかしそれだけではなく、街をゆっくり走って交差点を普通に曲がるだけでもクルマとの対話が心地いいのだ。

 ジワリとアクセルを踏んだ時、ゆっくりとハンドルを切った時、さらにブレーキまですべての操作の反応が忠実かつ繊細で味わい深い。そのうえ、エンジン音と排気音が絶品なのだから気持ちが昂らないわけがない。自慢の直列6気筒エンジンの響きはまるで管楽器。いつまでも聞いていたくなる、深みのある音色が色っぽい。

 M4は、速く走るためだけのクルマだと思ったら大間違いである。

 ところで、そんなM4がどんなクルマかといえば、ひとことでいえばBMW「4シリーズ」の最高峰モデル。「M3」がイメージできるのであれば、“M3のクーペ版”と考えればいい。

 かつてはBMWの3シリーズの中にセダンボディとクーペボディがあり、M3にもセダンとクーペが存在した。しかしBMWのラインナップ再構築に伴って、先代モデルからはクーペは4シリーズとして独立。そのため、従来「M3クーペ」と呼ばれていたモデルは「M4」となったのである。

 とはいえ、クルマの持つオーラは標準の4シリーズとはずいぶん違う。車体をはじめ、斬新すぎて賛否両論のフロントグリルをはじめとする基本は4シリーズと同じだが、フロントバンパーはより攻めたデザインだし、フェンダーの張り出しも左右で40mm増している。そのうえルーフはカーボンだからまるでレーシングカーのような雰囲気。戦闘力の高さを主張している。細かいところで言えば、フロントフェンダーに付くバッジやM専用デザインのドアミラーも“らしさ”を演出するアイテム。クルマ好きを刺激する要素が散りばめられている。

 そのルックスはまるで鍛え抜いた筋肉のようで、あの美しい4シリーズ標準車も、このM4を見た後では少し物足りなくなってしまうほどだ。

モータースポーツの匂いを漂わせるインテリア

M4クーペ コンペティション

 いっぽうでインテリアは、グリップの太さが特徴的なMハイパフォーマンスシリーズ共通のハンドルをはじめ、変速制御を調整するスイッチが備わったシフトノブ、それから強靭なホールド性を備えるだけでなくどことなく未来的なデザインとしたシートなどをコーディネート。つまりドライバーの身体が接する部分は専用の仕立てとなっている。加えてハンドルにまで組み合わせたカーボンファイバーのパネルが視覚的にもレーシーさを強調している。エクステリア同様、この雰囲気が刺さらないスポーツモデル好きはいないのではないだろうか。こういったコーディネートを楽しめるのもスポーツカーを持つ喜びのひとつだ。

最高出力は510馬力にも到達

M4クーペ コンペティション

 M4とひとくちにいってもパワートレインは複数あり、まずエンジンは全車とも排気量3.0Lの直列6気筒ターボだが最高出力はベーシックなタイプが480馬力で、高性能仕様となる「M4コンペティション」は510馬力。いっぽうトランスミッションは、480馬力モデルが6速MTで、510馬力モデルは8速ATとなる。かつてはMTといえば速く走るための武器のひとつだったが、昨今はATなど2ペダルのほうが速い(シフトアップ/ダウンのタイムロスが少ないから)。いっぽうでなぜMTを残すかといえば、自分自身で変速操作することによってクルマとの一体感を楽しみたい人や、過激なドリフトなどアクロバティックな走りをしたい人が対象。参考までに、M4コンペティション(510馬力+8速AT)の停止状態から時速100kmまでの加速タイムはたったの3.9秒。とんでもない速さである。

 さらに、新型の大きなトピックは後輪駆動に加えて「xDrive」と呼ぶ4WDモデルが選べるようになったことだ。これまでM3やM4は後輪駆動のみだった。しかし500馬力を超えてくるとさすがに2つのタイヤだけでパワーを受け止めるのには限界があり、より多くのパワーを路面へ伝えるためには4WDの力を借りたくなるというわけだ。とはいえ、後輪へのトルク配分を増やすモードや、完全に後輪駆動とする2WDモードなど、単に速さを求めるのではなくドリフトなどドライバーが楽しむ走りにもしっかり対応するあたりがMモデルらしい。

本拠地はやはりサーキットにある

 冒頭では「ゆっくり走っても悦楽に浸れる」と書いたM4だが、もちろん性能を引き出すような走りも刺激的なのはいうまでもないだろう。アクセルペダルを踏み込むとまるでロケットのようなダッシュを決めるし、エンジンは全域にわたる繊細な感触から高回転への盛り上がり、高回転でのパンチ力、さらには刺激的な音まで文句のつけようがない。コーナリングの身のこなしは絶品で、高速コーナーの安定感はもちろんだが、6気筒エンジンなのでパッケージング的には曲がりやすい特性ではないはずなのに狭い峠道のタイトなコーナーの曲がり始めでもスッと鋭く向きを切り替えるのはさすがだ。1.7トンを超える車両重量にもかかわらず、狭い峠道でもここまでキビキビと走るのだから驚くしかない。

 不満があるとすれば、あまりにも性能が高すぎて一般道ではそのごく一部しか引き出せないこと。それでも味わい深いのだが、性能を楽しむのであればやはり本拠地はサーキットなのだ。

BMW M4クーペ コンペティション (8速AT・Mスペックトロニック)

  • ■全長×全幅×全高:4805×1885×1395mm
  • ■ホイールベース:2855mm
  • ■車両重量:1730kg
  • ■エンジン:直6DOHCツインターボ
  • ■総排気量:2992cc
  • ■最高出力:510ps/6250rpm
  • ■最大トルク:66.3kgm/2750-5500rpm
  • ■ブレーキ前後:Vディスク
  • ■タイヤ前・後:275/35R19・285/30R20
  • ■新車価格:1298万円-1433万円(全グレード)
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工藤貴宏(くどう たかひろ)

ライタープロフィール

工藤貴宏(くどう たかひろ)

学生時代のアルバイトから数えると、自動車メディア歴が四半世紀を超えるスポーツカー好きの自動車ライター。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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