新車試乗レポート
更新日:2019.08.15 / 掲載日:2019.08.15

SUV最前線 MAZDA CX-30海外試乗!

【MAZDA CX-30】SKYACTIV-D 1.8ボディカラー:ポリメタルグレーメタリック(海外仕様車)

その人気が衰えることのない、今一番アツいカテゴリーがSUV。その最新情報をお伝えしよう。まずはマツダの新型、CX-30(サーティ)の海外試乗記からだ!
●文:山本シンヤ●写真:マツダ

ファミリーユースも考えた上での設計だ

海外向けも含めると、CX-3、CX-4(中国専用)、CX-5、CX-8(日本専用)、CX-9(アメリカ専用)と数多くのクロスオーバーSUVラインナップを持つマツダ。しかし、「Cセグメント市場でガチに戦えるモデルは?」と言うと空白だった……。

ちなみにCX-3はBセグメントのデミオがベースのため「少し小さめ」、逆にCX-5はCセグメントとDセグメントの中間サイズで「ちょっと大きめ」なのだ。そこでCセグメント・コンパクトクロスオーバーのジャストサイズで登場したのがCX-30である。

マツダの見解は、前席優先でパーソナルユースがメインのCX-3、後席やラゲッジも重要視しファミリー需要を狙っているのがCX-30と語るが、もしかしたら今後のSUVモデルは全て二桁名称になる可能性も否定できない。

このように車名はやや変化球気味だが、クルマのコンセプトは「直球勝負」である。開発主査の佐賀尚人さんは「CX-30は『機動性の良さ』『室内空間の高さ』『デザイン』という3つの柱をコンパクトサイズの中で実現できるかに挑戦した一台です」と語る。

機動性の良さはボディサイズに表れている。CX-30は世界戦略モデルとして開発されているが、全長4395×全幅1795×全高1540mmとまるで日本市場を見据えたかのような絶妙なボディサイズ。取り回しの良さも特徴の一つで、最小回転半径5.3mは一回り小さなCX-3と同じだ。

次に室内空間の高さだが、実は全長もホイールベース(2655mm)もマツダ3より短い中で、ヤングファミリーの家族構成の変化にも対応できる居住性と積載性をどのように実現させたのか?

まず、日本/アジア人体格と欧米人体格どちらでも乗りやすいヒップポイントを設定した上で、フロアを下げシートバックのトルソ角を立て、アップライトなポジションとするなど様々な工夫を加えることで、後席は身長183cmまでカバー。ラゲッジルームは家族構成の変化に対応できるスペースを目指し、単純な容積拡大ではなく実際に大型ベビーカーや荷物が収納できるスペースを確保、リヤゲート開口部や開口高さなども考慮した設計が行なわれている。

その上でマツダらしいデザインを実現。ちなみにマツダ3と比べるとコンサバに見えるが、これにもちゃんと理由がある。チーフデザイナーの柳沢亮さんは「深化した魂動デザインと言う意味ではマツダ3もCX-30も同じ考え方ですが、役割に合わせて振れ幅を変えています。CX-30は幅広いユーザーを想定していますので、ある意味直球勝負のデザインと言っていいと思います」と語る。単純な品の良さだけでなくクラッディングを厚めにすることで、上半分はスポーツカーのようなタイト感、下半分はSUVの力強さを表現する二面性はCX-30独自の個性と言えるだろう。

icon マツダ3を超える素直さとしなやかさ重厚感にも驚きだ

【MAZDA CX-30】SKYACTIV-G 2.0+マイルドハイブリッドボディカラー:マシーングレープレミアムメタリック(海外仕様車)

  • センターディスプレイは運転者側に向け角度を持たせた。

  • 現行モデル同様Boseサウンドシステムも用意される模様。

  • 細部まで、内装の質感は高い。

ドライビングの安心感もマツダ3以上のもの

インテリアはマツダ3譲りのシンプルながら質の高い横基調のインパネで構成されているが、家族で乗る事をイメージし包み込むような空間を演出。クラフトマンシップはアッパーのステッチやインテリアカラーなどマツダ3以上に徹底してこだわった。上級仕様にはリッチブラウン内装、普及モデルはネイビーブルー内装が採用されるようだが、個人的にはネイビーブルー内装はこれまでのマツダにないモダンな印象でCX-30の世界観に合っていると思った。

メカニズムはマツダ3に準じており、欧州向けのパワートレーンはガソリン(2.0L+Mハイブリッド)、ディーゼル(1.8Lターボ)、そしてスカイアクティブX(2.0L+Mハイブリッド)。シャシーも新世代車両構造技術「スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャー」を水平展開。走りの考え方はマツダの考える「人間中心の思想」に基づき、クルマに乗っている状態が「自然で違和感がない」を目標に、走る/曲がる/止まるに関して「究極の滑らかさ」を実現させる走りだ。これをマツダ3に対して全高+100mm、車両重量+50kgの基本素性の中で成立させた。

そんなCX-30は日本では今年の冬に発売予定と言われているが、今回マツダ3のスカイアクティブXと同タイミングで試乗。試乗車は左ハンドルの欧州仕様で、ガソリンが2.0L+Mハイブリッド(123PS/213N・m)+6AT、ディーゼルが1.8Lターボ(116PS/270N・m)+6MTの組み合わせである。

走り始めの一転がりからクルマの動きの滑らかさや目線がブレないフラット感の高い乗り心地、速度域や走るステージを問わず、クルマの動きと人間の感覚にズレがなく滑らかな挙動と違和感がないハンドリング。これらはマツダ3譲りだが、全高+100mm、車両重量+50kgがいい方向に働いており、マツダ3よりも素直なロールとよりしなやかさを増した足の動きの重厚感に、正直驚いた。

ちなみにマツダの目指す走りは、クルマの挙動を抑え込むのではなく、クルマの挙動(ヨー、ロール、ピッチ)を総合的にコントロールできれば積極的に動かしたほうがいいという考え方だ。それを踏まえると、マツダ3よりも基本素性が不利ではあるが、クルマの動きが大きいCX-30のほうが、結果的にマツダの目指す走りに対して有利に働いているのだろう。

更にマツダ3よりも目線が高く、広いガラスエリアと死角の少なさによる解放感も、間違いなくドライビングの安心感に繋がっていると感じた。この辺りはマツダ3よりも幅広いユーザーが使うことを考えたCX-30らしさでもある。

エクステリア

新魂動デザインの要素「余白」「反り」「移ろい」の元、書道の筆使い「溜めと払い」がCX-30の造形テーマ。ラインではなく面の動きでそれらを表現。

インテリア

インパネの写真が本文中にもあるネイビーブルー内装。白いシートとなるのがリッチブラウン内装だ。前席乗員間距離はCX-5同等の740mm。

  • インパネの写真が本文中にもあるネイビーブルー内装。

  • 白いシートとなるのがリッチブラウン内装だ。前席乗員間距離はCX-5同等の740mm。

  • サブトランクを含め430Lの容量と、1020mmの開口幅を確保してファミリーユースにも対応。開口部下端の地上高は731mm。

icon MAZDA CX-30 SKYACTIV-D 1.8ボディカラー:ソウルレッドクリスタルメタリック(海外仕様車)

●主要諸元(CX-30 欧州仕様車)●全長×全幅×全高(mm):4395×1795×1540 ●ホイールベース(mm):2655●パワーユニット:SKYACTIV-G 2.0/SKYACTIV-D 1.8/SKYACTIV-X ●トランスミッション:6速MT/6速AT ●サスペンション:マクファーソンストラット式(前)、トーションビーム式(後) ●ステアリング:ラック&ピニオン式 ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(前)、ディスク(後) ●タイヤ:215/65R16、または215/55R18

欲を言えば、走りにもう少しパンチが欲しい

パワートレーンは必要十分な性能で不満はないものの、欲を言えばもう少しパンチが欲しい。これはエンジンの問題だけでなくATの問題も大きいと思う。ただ、日本仕様はマツダ3にも搭載される156PS/199N・m仕様の2・0L(Mハイブリッドなし)だと思うので、印象は少し変わるかもしれないが……。

ディーゼルは巡航してしまえば全く問題ないが、日常域で最も使うはずの1500~2000rpmのトルクはディーゼルとは思えない程薄い上にターボラグも大きめ。おまけに日本仕様よりハイギヤードなギヤ比もドライバビリティの悪さに輪を掛けてしまった。個人的にはCX-5/8用の2・2Lターボを搭載してほしいが、それが厳しければ1・8Lにも2ステージターボを装着して欲しい。パワートレーンに若干課題はあるが、今までそこまで感じていなかったのに気になってしまうのは、他の性能が飛躍的にレベルアップしているからだろう。とはいえ、総合性能ではマツダのクロスオーバーSUVシリーズ最良の仕上がりと言っていい。

イチオシのパワーユニットはやはりSKY ACTIV-Xか!?

  • 試乗した2.0L+Mハイブリッドユニット。

  • このユニットは日本には導入されないだろう。一押しは、SKY ACTIV-Xとなりそう。

  • 全長4400mm以下を目標に開発。

  • 新世代車両構造技術「SKY ACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」をCX-30にもフル投入。

2.0L+Mハイブリッド(123PS/213N・m)は欧州の馬力課税をクリアするためのユニットで、日本仕様は普通の2.0L-NA(156PS/ 199N・m)だろう。ディーゼルは欧州向けと共通の1.8Lターボ(116PS/270N・m)、そしてスカイアクティブX(180PS/224N・m)も設定される。さてどれがお勧めなのか? マツダ3+50kgのCX-30にはガソリン/ディーゼル共に物足りなさがあるので、やはりSKY ACTIV-Xか!?

兄貴分CX-5とどっちが買い!?

  • 【CX-30】CX-30のほうが「ちょうどいい!」と感じるかもしれない。

  • 【CX-5】ボディ大型化が進む現在のクルマ。ミドルクラスではあるが、日本で乗るにはちょっと大きい、と感じる方もいるだろうCX-5。

  • 【CX-30】

  • 【CX-5】

  • 【CX-30】

  • 【CX-5】

CX-30/CX-5 ボディ比較

※CX-30の数値は暫定値。

CX-5のサイズが絶対必要でなければCX-30を!

今後マツダはCX-5とCX-30の2トップ体制で販売ボリュームを拡大していく計画だと言うが、ここではそんな2台の比較である。エクステリアはどちらも深化した魂動デザインだが、先代と基本コンポーネントを共用するCX-5に対し、オールニューのCX-30のほうが個性は強い。インテリアはCX-30の圧勝でマツダのヒエラルキーを変えてしまっている。室内の広さに関しては絶対的なサイズの大きなCX-5が有利だが、CX-30とのサイズ差ほど優勢かと言うと……?

この辺りはCX-30のパッケージの上手さが光る。走りに関しては操舵の滑らかさや一体感、しなやかな足さばき、静粛性と全ての性能はスカイアクティブビークルアーキテクチャーを採用するCX-30の圧勝。CX-5も悪くはないが基本素性が違う。しかし、パワートレーンはガソリン/ディーゼル共にCX-5が勝る。CX-30はガソリン/ディーゼルはちょっと力不足だが、スカイアクティブXなら問題ない。総合的に見ると、筆者はCX-5のあのサイズがどうしても必要な人以外にはCX-30を自信を持ってお勧めする。

【結論】CX-30は国産/輸入含めた同カテゴリートップクラスの完成度

マツダ3は市場の変化に合わせ、キャラクターを変化させた。その一方、CX-30はコンパクトクロスオーバーSUVの「直球勝負」で開発された。そう考えると、従来のアクセラ ハッチバックの事実上の後継車は実はCX-30なのかも!?マツダ3譲りのフットワークにクロスオーバーの安心感、更にSKYACTIV-Xと世界と戦う武器をたくさん持つCX-30、同クラスの国産車/輸入車含めてトップクラスの完成度の高さを持った一台と言っていいだろう。後は価格がどうなるか……である。

提供元:月刊自家用車

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