新車試乗レポート
更新日:2019.05.24 / 掲載日:2018.12.28
トヨタ新型スープラプロトの実力を試乗インプレッション!
FRピュアスポーツマシンとして開発情報が伝えられていた、新型スープラがいよいよデビューとなる。その最終段階とも言えるプロトモデルをサーキットで試乗した。雨中のハードコンディションの中で明らかになったその戦闘力とは?
●文:山本シンヤ ●写真:佐藤 正巳/トヨタ
TOYOTA スープラプロト

■主要諸元(スープラプロト)
●ホイールベース:2420mm●駆動方式:FR●パワートレーン:3L直6ターボ●トランスミッション:8速AT●タイヤサイズ:フロント・255/35R19、リヤ・275/35R19
圧倒的な回頭性のよさと安定感を両立
17年ぶりに復活する新型スープラ。BMWと共同開発されているが、ハードは共通だが開発は兄弟車のZ4とは完全に別チーム。走りの味付けはトヨタのマスターテストドライバー成瀬弘(故人)の愛弟子の一人、HerwigDaenens氏が担当している。
ロングノーズ/ショートデッキのFRスタイルは未来的だが、リヤのフェンダー処理などは80系の面影も残る。インテリアはインパネ、ドアトリムなどはカバーで覆われ詳細は不明だが、操作系はBMWのインターフェイスに近い。ちなみに歴代スープラは小さいながらもリヤシートが装着されていたが新型は完全な2シーター仕様になっている。
パワートレーンは直列6気筒の3Lターボ(B58)+8速AT(ZF製8HP)の組み合わせ。低速から湧き出るトルクはもちろん、ターボラグを感じない滑らかさ、そしてレッドゾーンの6800rpmまでレスポンスよくキッチリ回るフィーリングにニンマリ。ATはノーマルモードだと滑らか&スムーズだが、スポーツモードはシフトスピード/ダイレクト感などはDCTに決して負けていない。
プラットフォームは最新BMWが採用するCLARをベースにスポーツカー用に最適化。水平対向エンジン搭載のトヨタ86を超える低重心で242mmのホイールベースとワイドトレッドの比率はスポーツカーの黄金比1・6を実現している。ボディ剛性はカーボンボディのレクサスLFAをも超えるそうだ。サスペンションはフロント・ダブルジョイントストラット(M4用)、リヤ・5リンク、タイヤはミシュラン・パイロットスーパースポーツ(フロント・255/35R19、リヤ・275/35R19)を履く。
そのハンドリングは、素性の良さを活かした鋭い回頭性やロードホールディング性の高さによる絶対的な走行性能や、ドライバーの意志に忠実な挙動を感じさせてくれるもの。一方で、今回試乗したヘビーウエット路面ではリヤの流れ方の唐突さやカウンターを戻す時の姿勢の乱れがやや気になったのも事実だ。恐らくロック率を0~100%まで連続可変可能なアクティブデフの制御やサスペンションセットに課題があるようだが、今回の乗ったプロトは最終仕様ではないため量産までに改善されるはずだ。
とはいえ、このパッケージと決して軽くはない重量を機敏に動かすコントロール性の高さなど、次世代FRスポーツとして久々に痛快な走りを備えたモデルである事は間違いない。

ロングノーズ/ショートデッキのスタイリングを持つFRマシン。前後重量配分は理想的な50:50になっている。
直列6気筒エンジンを搭載しているにもかかわらず、水平対向エンジンを採用している86よりも、低い重心高を実現。

ヘビーウエット路面というあいにくのコンディションだったが、FRスポーツとして圧倒的な回頭性の良さとコーナリングでの安定性を発揮した。
開発者interview

<多田哲哉氏>トヨタ自動車株式会社 ガズーレーシングカンパニーGR開発統括部 チーフエンジニア
ピュアスポーツとしての性能を求め公道で徹底的にチューニング
――スープラが復活に至った経緯を教えてください。
多田 86の欧州試乗会でスペインにいた時、現会長の内山田から「ドイツのミュンヘンに行け、ただし内緒で」と言われましたが、「これはスープラの事だな」と直感しました。スープラの復活は北米からのリクエストが大きかったです。
――BMWと開発する上でどのような苦労がありましたか?
多田 86をスバルと共同開発した時も大変でしたが、その比ではありませんでした。文化はもちろんクルマ作りのアプローチも全然違うので開発当初はギクシャクしていましたが、「どんなクルマにしたい」と言う本音をぶつけ合った事で大きく前進。彼らも「お前たちはどんなクルマにしたいのか?我々は何でも協力する」と。
――スープラの名を継承する上で変えた所、変えなかった所は?
多田 変えなかったのは「直列6気筒エンジン」と「FRレイアウト」、変えた所はスポーツカーとしての基本素性の部分でした。
――歴代スープラは2+2ですが、新型は2シーター仕様です。
多田 ピュアスポーツとしてベストなホイールベース/トレッド比を優先するため、今回は2シーターに割り切っています。また、重心高は水平対向を搭載する86よりも低く、ボディ剛性はアルミ/スチールボディながらカーボンボディのLFAを上回っています。
――様々な場所でプロトがスクープされていましたがその理由は?
多田 リアルワールドでの走り込みのためです。今回は正式発表前なのでサーキット試乗でしたが、ワインディングでも凄く楽しいマシンです。